タマモが戻って来てくれたことにより、二人の間に漂っていた不穏な空気はさっぱり無くなった。緊張の糸がほぐれたか、強張っていたナギの顔が次第に笑顔を取り戻していく。
「タマモ…戻ってきてくれたか…」
「当然だ。お前らが苦戦してると見て駆けつけた訳だが、以外と近くのエリアにいてビックリしたぞ。」
ここまで追い込めたのはイジスによる活躍が大きい訳だが、先程のあの合わせ技には驚いた。
タマモはギルドスタイルなので狩技を二つまで扱える。その狩技である血風独楽と獣宿し【餓狼】を鬼人化と併用し、あそこまでの痛手を与えたのだ。もうタマモは既に狩技を使いこなしており、彼女の適応能力の高さにナギは舌を巻くばかりだった。
感嘆するナギを後目に、イジスが話し掛ける。
「んで、雷の件は大丈夫なのか?」
「あぁ、もう大丈夫だ。私は少しずつでもいいから雷嫌いを直そうと決心した。私を勇気付けてくれたナギには、その、感謝をしたいが……」
始めこそ自信に満ちていたが、最後の方は俯き加減にして言いにくそうだったのでよく聞き取れなかった。やはり、と思いナギはタマモに問いかける。
「やっぱりまだ、自信ないか…?」
「そっ、そんな事はない。それより、雷狼竜の追跡はしなくて良いのか?」
仲間との再会で忘れていたが、今は狩猟依頼の方が先決だ。ナギは気持ちを切り替え、二人の目を見て言う。
「相手は弱っている。でも、気を抜いちゃダメだ。それにこれ以上狩猟時間を伸ばすと時間切れで撤退する事になるかもしれない。気を引き締めて行こう。」
「ああ。」
「おう。」
各々の方法で肯定する二人。依頼達成は、もうすぐだ。
◆◆◆
エリア3にて、雷狼竜は滝の前で佇んでいた。恐らくこれ以上消耗しないように体を休めているのだろうが、自分達にとってはこれ以上とないチャンスだ。ナギは狩猟の終盤で仕掛けようと思っていた物をタマモに投げ渡す。
「おっとと…何だこの円筒形の物は?」
「落とし穴だよ。そいつに誘導して、一気に決める。」
「私に仕掛けろと?」
「この中ではお前が一番気付かれないように移動できるはずだ。だから頼まれてくれ。」
しばし逡巡した後、タマモは、
「…了解だ。」
と承諾してくれた。走り出した彼女の素早い動きを見ていると、足元に泡があり、それで滑っているかのような錯覚を覚えた。
いや、錯覚ではない。ミツネsシリーズに付与されているスキル「泡沫の舞」による効果だ。しばらく彼女の舞うような動きを見ていると、仕掛け終わったらしくこちらに戻ってきた。
「あとは誘導するだけだ。罠に掛かったら…」
「すまん、俺に任せてくれないか?」
ナギの言葉をイジスが制する。その目には、何かに燃えるような闘志がみなぎっていた。
「いいのか?お前一人で。」
「俺もあの雷狼竜には痛手を被っちまったからな…俺の手でケリ付けてやりたいんだよ。」
「はは…じゃあ、任せた。」
「おう。んじゃ、ちょっくら仕留めてくるぜっ!」
言い放った勢いのままイジスは駆け出す。滝の前に立っていた雷狼竜はそれに気付き、自らの縄張りに入った小癪なハンターに跳びかかろうとする。しかしイジスはそれをガードで受け流し、雷狼竜を押し返す。その着地点に待っていたのは大きな穴だった。
トラップツールが正常に作動し、落ちた獲物をネットが絡め捕って離さない。イジスはもがき続ける雷狼竜の前に立ち、微笑を浮かべながら極星銃槍ストリゲーツを構えた刹那。
轟。と、小さな太陽が発生した。
その正体はガンランス使いの狩技の一つ、覇山竜撃砲だ。その炎球は雷狼竜の巨躯を包んでも有り余るほどの大きさで、肉を灼き、骨を焦がす。
そうしてイジスは一連の動作を終える。着弾点を見やると、雷狼竜の巨体は地に伏しており、二度と動くことは無かった。
「やった、のだな…」
タマモが信じられないといった様子で呟く。ナギは倒れ伏す雷狼竜に黙祷を捧げ、二人に向き直る。
そして三人共口を合わせてこう言った。
『任務完了』
ハイタッチの音が、孤島のエリア3に鳴り響いた。
◆◆◆
「これが超電雷光虫なんですねぇ~…ありがとうございます~!」
エメルはその場でぴょんぴょん飛び跳ね、可愛く一回転した後こう言った。
「まぁ、忘れず採集できて良かったです…」
「今回は俺の手柄だな…感謝しろよぉ?」
イジスが我が世の春とばかりに主張してくる。確かに今回はコイツの活躍が大きい。とりあえず今は「ありがとう」とだけ言っておいた。後で何か奢ってやろう。
「まぁ、何はともあれ達成できて良かったです。」
「えぇ~こちらとしても大満足です~!あ、報酬については既にギルドに話を通してありますのでご心配なく~」
「よっしゃ!これで財布も潤うぜ―!」
「お前は場の空気を読めよ…ていうか何処で散財したんだ…」
とりあえず龍歴院には帰って来れた。しかし、帰りにタマモが『飛行船酔いも克服するぞ…』と息巻いていたのだが克服は失敗に終わり、見事にダウン。今は別室で休んでいる、とのこと。
「全く、タマモも無理するなぁ…それより、エメさん。」
「はい?何でしょうか~?」
「ユクモ村、自分達と一緒に着いてくるんでしょう…?というか、始めからそれが目的の一つだったから自分達に声を掛けたんじゃないですか?」
エメルは『?』という様子で人差し指を顎に当てながら小首を傾げる。あざとい事この上ないが、今は気にしない事にした。
「とぼけたって無駄ですよ。タマモが言ってたんです、『あの研究者、ユクモ村行きのチケットを持っていたな…』って。」
「ふっふっふ、歩が3つ。やっぱり~バレちゃいましたか~?実は今度は研究の材料にユクモ地方の品物が必要になりまして~、それを調達する目的が半分と~、」
「もう半分は?」
「もう半分は~、純粋に温泉とかお料理とかを楽しみたいだけです~!」
「研究より料理ですか……」
「おっ!?料理か…ユクモ温泉たまご、美味しそうだな~…」
「他にも~ドリンクとかいろいろあるみたいですよ~」
「マジか!?ナギ、頼むから旨い店案内してくれ!」
意気投合して盛り上がるイジスとエメルを見ていると、マイハウスが大所帯になる事だけは覚悟しておかねば…と思うナギであった。
一番好きなキャラクターは?
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ナギ
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タマモ
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イジス
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エメル
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サジ