泡狐竜と少女   作:佐渡山 創

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少女との出会い編
狩猟の準備は怠るべからず


ユクモ村の朝は早い。まだ眠気が抜けず目が半開きのまま、ゆっくりと体を起こした。

 

「んん~…あ?もう日が昇ってる…」

 

少し気だるげな口調で呟いた青年、ナギ。だるそうなのは断じて元からの性格ではない。

水瓶に張ってある冷水で顔を濡らすと、幾分シャキっと目も覚める。だんだん思考が明瞭になって行き、本日のやるべき事を思い出した。

 

「いっけね、今日は泡狐竜の捕獲依頼があったんだった」

 

慌てて外に飛び出すナギ。このユクモ村に常駐して、二ヶ月が経とうとしていた。

 

 

二ヶ月前、ナギは竜歴院所属のハンターとして正体不明の謎の龍「オストガロア」を討伐し、その名を竜歴院の管轄に轟かせた。

もちろんそれはユクモ村も例外ではなく、訪れるやいなや食えや歌えやの大宴会が始まった。ちなみにその時の記憶をナギはあんまり覚えていない。商人や村人に大量の果実酒を勧められた後、気付いたらベッドの上にいたという次第だ。

そんな二ヶ月前の追憶に浸りながら、一路村長の元を目指す。村長は今日も紅い毛氈(もうせん)の引かれた長椅子に座り、優雅に茶を飲んでいた。

 

「おはようございます。村長。」

「あらナギさん、おはようございます。まだ眠そうですわね。一杯お茶でもいかがです?」

「わざわざありがとうございます……げほっ!?」

 

ナギは勧められたお茶を口に含む。が、次の瞬間、思いっきりむせ返った。忘れていたが、このお茶の味は今でも慣れない。緑色のドロッとした物が入っていて、始めて見たときは薬草を煮込んだのかと思ったものだ。

 

「あらあら、ふふふ…」

「…いや、笑わないで下さい。それより、昨日相談した依頼はどうなりました?」

「それなら、受付嬢のコノハさんに話を通しておきましたわ。」

「そうですか、ありがとうございます。」

 

そう言ってナギは足早に村長の元を去り、受付嬢に依頼の事を伝える。

 

「えーっと、こちらの依頼ですね。タマミツネの捕獲になります。」

依頼は正式に通っており、書類を提示してきた。それに自身の名前を記入。印を押し、これで正式に依頼の受理は完了。

 

「よーっし、後は装備を整えるだけだな」

 

と自宅に戻り、装備BOXから愛用のミツネsシリーズを取り出す。

泡狐竜の素材をふんだんに使いこしらえられたそれは、泡立つ上滑液によって紫色に染め上げられている。

一式防具を着込んだ後、これまた愛用の太刀「たまのをの絶刀の斬振」を担ぎ、腰に結びつけた。

その他にもアイテムの常備も忘れない。こうして諸々の作業を終えたナギは、「準備完了」と呟き渓流へと向かった。

 

この後、予想だにしない事が起こると知らずに。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

渓流へ着いたのは夕方だった。昼過ぎにユクモ村を出発したが、いくら近いと言えど到着に半日はかかるのでこんな時間となった。

まぁ目的地は夜の渓流なので、ここまでは予定通りだ。

 

「ちょっと早いけど、探索始めるかな。」

 

ナギは誰に話しかけるでもなくそう呟くと、ベースキャンプを出発した。

 

 

 

 

エリア2に着くと、辺りはもう夜の帳が下りて暗くなっていた。しかし月明かりに照らされ周りは明るく、ジャギィが何頭かうろついているだけだ。

 

「ん~やっぱり居ないよな。次行くか…」

 

エリア2からエリア4へと続く坂を下る。

エリア4に入った瞬間、空気が一変した。

 

「…ここにいるな」

 

声を潜め呟く。ハンターならだれしもが持っている直勘がモンスターの存在を告げる。狩りの前独特の緊張した空気が流れ始め、獲物は侵入者に勘付きゆっくりと振り向いた。

 

泡狐竜タマミツネ。そう呼称される海竜種のモンスター。全身を紫色の毛と桃色の鱗で覆い、頭部には蘭の花弁の如くヒレが伸びる。その姿は花魁を彷彿とさせ、えも知れぬ柔らかい威圧感を放っていた。

しかしそんな威圧に怯えている場合ではない。コイツとはこの装備を作るべく何度も渡り合った、いわば因縁の相手なのだ。もう慣れている。

渇いた唇を湿らせ、ナギは冷静に一太刀目を振り下ろす。それを革切りに、泡狐竜の咆哮が木霊した。

 

「キエエアアアアアアアーーーーーッ!!」

 

や、やっぱうるせー!この防具には聴覚保護のスキルが付いておらず、ただ耳を塞ぐしかない。

咆哮にたじろいでいると、眼前から泡狐竜の姿が消えた。

 

「なっ!?」

 

違う、消えたのではない。泡狐竜はサマーソルトを浴びせようと、天高く舞い上がったのだ。

油断していたため、サマーソルトをモロに喰らって吹っ飛ばされた。

 

「痛ってぇ…容赦ねぇなっ!」

 

しかしこちらも負けてはいられない。背中のたまのをの絶刀の斬振を引き抜き、泡狐竜の後足に叩きつける。

会心の手応え。肉に刃が通り、紅い光芒がほとばしる。

 

「せいっ!」

 

そこから突き、上段斬り、切り下がりとコンボをつなげ練気を練っていく。

練気が溜まり、集中力と刃の切れ味が増す。

その時、泡狐竜はとぐろを巻き、口から水圧レーザーを繰り出した。

それを紙一重の所でジャスト回避し、一気に泡狐竜の元まで詰め寄る。ナギはブシドースタイルにしているため、ギリギリの回避ができるのだ。

 

(チャンス!)

 

それが予想外だったか、泡狐竜の動きが鈍くなる。

ジャスト回避、一文字斬りと繋げたその先は。

気刃無双斬りが炸裂し、刀身が白く、輝いた。

 

 

 

 

 

 

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