泡狐竜と少女   作:佐渡山 創

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狩人3人、挑むは雷狼竜

ナギたちは孤島のベースキャンプに居た。空高くカモメが飛び、眼下には青く渦巻く海が広がっている。各々荷袋からポーチにアイテムを移し替えたり、自分の武器を丹念に磨いていたりして、装備を整える。ジンオウガのいるエリアに予め目星は付いているので、準備ができ次第三人でそのエリアに向かう……

 

 

ハズだったのだが、どういう訳かイジスが『よし、やるか』と呟き、ナギの制止も聞かずに先に行ってしまっていたのだ。

 

「全く、チームワークを乱さないでくれよ…」

 

タマモに狩猟をする上での心得を説くまで待ってもらおうと思っていたのだが、行ってしまったものは仕方がない。自分達も行動を起こすとしよう。

 

「タマモ、行くぞ。」

「う、うむ…」

 

そう声を掛け二人はエリア1に出る。タマモはまだ幾らか不安そうだが、狩場では一瞬の不安や気の緩みが命取りとなる。気を引き締めて貰わねば。

 

そんな事を思いながら緩やかな斜面を乗り越えると、天高くから陽光が降り注ぎ、奥には海を臨む崖が待ち構える丘に出る。孤島といえばここからの眺めであり、ナギはこの景色が好きだった。

 

「おお…」

 

遅れて上ってきたタマモもこの景色に言葉を失う。孤島に来るのは初めてだろうから、より一層壮大に見える事だろう。

 

「いい景色だろ。俺は孤島に来たら、毎回ここに来るようにしてるんだ。」

「うむ、いい眺めだな…」

「感動的だろ?」

 

などと思い耽っていたが、すぐに無意味だった事に気付く。今はイジスとの合流、そしてジンオウガの狩猟が先決だ。

 

「こんな事してる場合じゃないな、行くぞ。」

「せっかく眺めていたのにな…まぁいい、了解だ。」

 

景色を見て幾らか落ち着いたのか、タマモの返事は先程よりも緊張の色が抜けていた。期せずしてリラックスに成功したらしい。

 

 

二人はエリア1と2を抜け、一路ジンオウガが居るはずのエリア5を目指す。そのエリアに到達し、果たしてナギの予想は。

見事に的中。雷狼竜は自分達に背を向け、悠然とエリア内を闊歩している。しかしナギは険しい顔になり、タマモも張りつめた空気を肌で感じ取ったか、真剣な面持ちを崩さない。

 

「行くぞ、左右から攻撃だ」

「…了解だ。」

 

各々の武器を抜刀し、走って雷狼竜に近付く。しかしナギ達が刃を振り下ろすより早く、雷狼竜は此方に気が付いた。相手の力量を見定めるかのように唸ると、四肢を踏ん張り跳びかかってきた。

 

「タマモ、避けろっ!」

 

そう指示すると、自分もジャスト回避をする。回避した後、雷狼竜に駆け寄って前脚に気刃無双斬りをお見舞いした。太刀の切れ味が冴え渡り、刀身が白く輝く。

 

(よしっ)

 

ナギは心の中で喜ぶ。タマモも上手く跳びかかりを回避したらしく、雷狼竜に斬撃を加えていた。

 

「雷を纏っていないなら、私だって…」

 

双剣を振り回しながらそう呟く。彼女は無難で扱いやすいギルドスタイルを選んだらしいが、それでも攻撃が当たらない絶妙な間合いを保っている。それは彼女の中のモンスターとしての感覚が遺憾なく発揮されている証拠でもあった。

 

雷狼竜は雷光虫を集めて帯電を開始し、背中が徐々に光を帯びていく。だがそれは同時に攻撃のチャンスでもあり、三振りの剣が確実に雷狼竜の堅殻を削っていく。

しかしそんなに攻撃を許す雷狼竜ではない。バックジャンプで後ろに距離を取ると、前脚を連続で叩きつけてきた。

 

「まずは右から来るぞ!」

 

攻撃の範囲外から見ていたタマモが方向を教えてくれる。それのお陰で一撃目は難なくジャスト回避出来たが、それ以降はどの方向から来るか分からない。もう一度雷狼竜を見ると、今にもナギを制さんとばかりにこちらを睨んでいた。ジャスト回避は連続では出来ない為、こういう連撃を持つモンスターとは相性が悪いのだ。

 

もう食らうしかない、と悟ったその時。

 

「うおおおおおおおりゃああっーーー!!」

 

青く澄み渡る空に現れた一つの影。その影は重力に身を任せ落下すると、手に持っている銃槍を叩きつける。そのまま渾身のフルバーストを放ち、雷狼竜の体を横倒しにした。

 

「どこ行ってたんだよ…イジス!」

「すまねえ、ちょっとな…」

 

現れたのはやはりイジスだった。エリアルスタイル装備の彼は通常よりフルバーストを放てる機会が多いので火力が高いのだ。

それにしてもピンチの時に駆けつけるなど何かのヒーローのようだが、どこかに隠れて隙を窺っていたのだろうか。勝手に行動した理由は後で聞いておこう。

 

「今になって現れるとはな…まぁ合流できたし、任務続行か?」

 

雷狼竜の頭に二段斬りをかましながらタマモが問いかける。

 

「勿論だ。このままたたみかけるぞっ!」

「了解だ!」

 

タマモは頭上で二つの剣を交差させ、刀身に紅い光を纏わせる。

双剣使いの技の一つである鬼人化だ。動きが大きく変わり、六段斬り、乱舞と繋げていく。斬撃が炸裂する度に沢山の水飛沫が飛び散り、辺りに小さな虹を創り出しては消えた。

 

だが雷狼竜は体制を立て直すと、さっきより目に見えて分かる程に多くの雷光虫を集め始めていた。背中が更に光を増し、遂に直視できない程の蒼光が迸って超帯電状態に移行してしまう。

 

「ひっ…!」

 

タマモの顔が恐怖に歪む。雷狼竜の反撃は、ここからだった。

 

 

 

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