唯湖アナザー~Where is my love~   作:月の海

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第2話

裏庭まで戻った私は大きく息をついた。

 

「…何をしているんだろうな私は」

 

理樹君が恋人である鈴君を気遣うのは至極当然なことだ。

 

それなのに私は鈴君に嫉妬じみた感情を抱いてしまっていた。

 

なぜなら私は―

 

―全てを覚えていたから

 

 

 

 

 

バスが崖から転落したあの後、次に目が覚めたのは病院のベットの上だった。

 

長く、温かい夢を見ていた気がした。

 

ふと携帯に目をやると新着1件の表示。

 

開いてみるとそれは理樹君からのメールだった。

 

『きっとそこにいくから、まってて』

 

そのメールで私はあの世界でのことを全て思い出した。

 

理樹君と付き合っていたこと、喫茶店でデートしたこと、クッキーを作ってあげたこと―

 

そして、理樹君を本気で愛していたことを。

 

だから私は理樹君を待った。

 

しかし、理樹君が現れることはなかった。

 

当たり前といえば当たり前のことで理樹君にその記憶はなかった。

 

でもそんなことは関係ない。

 

あの日約束したように今度は私が告白すればいい。

 

理樹君は驚くかな?

 

そんなことを考えながら私はまた眠りについた。

 

理樹君達が付き合いだしたことを知ったのはそれから少し後のことだった…

 

 

 

 

 

最初は動揺が隠せなかったがそれでも愛した男の選択を否定することなど出来なかった。

 

理樹君が幸せになってくれるならそれでいい。

 

そう思ったから二人を祝福したし、それが一番だと納得した。

 

したはずだった。

 

それなのに今、私は受け入れきれていなかった。

 

 

 

 

 

そのまま次の授業もサボり昼休みを迎えた。

 

教室に戻ろうという気にはなれなかった。

 

どうにも頭が回らない。

 

今日はもういっそ寮に戻ってしまった方がいいのかもしれない。

 

そう思った矢先、背後から声をかけられた。

 

理「来ヶ谷さん、ここにいたんだね」

 

今の私にとっては一番の招かれざる客だった。

 

本来ならこれほどの接近を許すことなどありえないことだが今は全く気付くことが出来なかった。

 

唯「あ、あぁ、どうかしたか?」

 

出来るだけ平静を装って答えた。

 

不自然ではないだろうか?

 

理「来ヶ谷さんのことが少し気になって」

 

その言葉に思わずドクンと胸が跳ねる。

 

「来ヶ谷さん数学以外でサボるってなかなかないじゃない?だから体調悪いのかと心配になって」

 

……その優しさは罪だよ理樹君……

 

唯「心配ない、大丈夫だ」

 

理「ならよかった」

 

理樹君の笑顔に痛みを覚える。

 

理「あれ?来ヶ谷さん、今日はいつものリボンじゃないんだね」

 

唯「え?」

 

私はつけているリボンに触れた。

 

指摘されて初めていつも使っているリボンと違うものをつけていたことに気付いた。

 

理「かわいいリボンだね」

 

唯「――ッ!!」

 

そのリボンは私のお気に入り、あの世界で理樹君に褒めてもらったものだった。

 

唯「…………」

 

理「?」

 

今ここにいるのは私と理樹君の二人だけ。

 

手を伸ばせば届く距離。

 

私は試されているんだろうか?

 

だんだん頭は沸騰し、何も考えることが出来なくなる。

 

唯「理樹…君……」

 

理「な、何?」

 

思考を放棄し、衝動のままに理樹君に近寄っていく。

 

目と鼻の先まで近づく。

 

理樹君は真っ赤になったまま金縛りにあったかのように動けない。

 

そのまま目を閉じ、理樹君の唇に――

 

ク「リキー」

 

唯&理「!!!」

 

即座に理樹君から離れ何事もなかったかのように振る舞った。

 

ク「ここにいたんですね」

 

唯「どうかしたのかね?」

 

ク「恭介さんが探していたようですよ?」

 

理「わ、分かった急いで行くよ」

 

早口でまくしたて逃げるように駆けていった。

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