東方project × ONE PIECE ~狂気の吸血鬼と鮮血の記憶~   作:すずひら

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前回のまとめ

・クーロン滅亡
・生き残りの女性たちを保護



九龍の女性たちと紅美鈴の国造り

 

 

メイリンは置いてきた。

ハッキリ言ってこの先の戦いにはついてこれそうにもない。

 

いやまぁ、冗談だけどね。

でも凪の帯(カームベルト)の中にある島に、クーロンの生き残りの女性たちと一緒に置いてきたのは本当。

なんでそんなことをしたかって言うと、保護することにした女性たちが懇願したせいだ。

 

私が転移魔法で飛ばした後彼女たちは酷く混乱していて、そのままじゃあねとお別れできる状態じゃなかった。

だからまぁ、数日だけ面倒を見てあげることにした(メイリンが)。

私はスカーレット海賊団に戻ってこの先の航路の相談とかをクルーとして、三日後島に戻ってきた。

すると、なんとまぁメイリンは島の女性たちにやたらと懐かれていた。

懐かれるというか、それはもう信頼とかの域を超えて依存のレベルだった。

 

私はその光景にひどく見覚えがある。

かつてラフテルでも見た。

そうして私は神様になったのだから。

 

困り顔のメイリンに話を聞いてみると、なにやら色々とやり過ぎたらしい。

 

まず手始めにクック仕込みの料理。

ただでさえおいしいメイリンの料理は、クーロンでひどい扱いを受けていた女性たちが食べるにはあまりにも過分だっただろう。

舌と胃がびっくりしなかったか心配だ。

 

次に文化。

……いや、これは私も悪いかな。

この島は無人島だったから居住環境とかが何もなく、早急に家を建てる必要があった。

私も流石に魔法でポンと家を建てることはできないので、ラフテルまで行って売り家をいくつか拝借してきて島に設置した。

0から作ることはできなくても出来合いの物を持ってくるのは簡単だ。

ラフテルの職人さんありがとう。

彼女たちの美意識に合うようにできるだけ中華っぽいのをチョイスしたけど、まぁこれもクーロンのものよりは格段に上等なものだ。

ま、家自体より家に住めるということの方が彼女たちには大きかったみたいだけど。

仲のいいグループに分かれて共同で一つの家に住んでもらうことにしたんだけど、今まで家畜かそれ以下の扱いを受けていた彼女たちにとってこれはかなり意味が大きかったようだ。

 

そして火だるま事件。

え?

なんでもメイリンが火だるまになったらしい。

自分で火をつけたそうだ。

ちょっと何を言っているかわからないですね……。

 

「ええっと、どういうことなの、メイリン?」

 

「はい、キノコを食べたんですよ」

 

「キノコ?」

 

「ええ。なんか食べると笑い出すキノコとか怒り出すキノコとか生えてて、面白くて色々食べてたんですよね。そしたらなんか体中からキノコが生えてくるようになっちゃって。やっぱり最後に食べたあれがまずかったのかなぁ……」

 

……私がこの世界にやってきた初めのころ、山菜を食べて毒にのたうち回ったことを思い出した。

そう、あの時はノビルみたいなのを食べては腹を下し、ウドみたいなのを食べては汗がとまらなくなり、しいたけみたいなキノコを食べて笑いが止まらなくなったんだった。

多分今なら妖力の扱いも慣れたものだし、一切の変調をきたすことなく食べきることもできるだろうと思う。

吸血鬼に毒なんて効かない。

ただ、あの頃はまだ自分の体の性能をしっかりと把握していなかったし、知らないものを口に入れるとかって言う愚行を平然と行うだけの未熟な精神だった。

まぁ、あれだ。

あの頃は若かった、ってやつだ。

そんな黒歴史を思い出してしまい、未知のキノコを拾い食いしたことに関してはメイリンに強く言うことはできない。

 

「それで、どうなったら火だるまになるの?」

 

「ええっと、体から生えてくるキノコは手で抜くことができたんですけど、抜いても根が残るみたいで次から次へと生えて来てしまって。しかもキノコが生えるごとに“気”を吸われてしまうので、しかたなく燃やすことにしたんですよ」

 

仕方なく自分の体に火をつけるその神経は理解できない。

ああ、そういえばこの子は昔から自分のことになるとわが身を顧みない軽率な行動をとることが多かった。

まぁ炎に巻かれた程度じゃなんともないからなのかな……。

実際メイリンは見た目はちょっと髪の先が焦げてるくらいで平気そうだ。

服だって私が作ったシルク100%ならぬ妖力100%のものだから燃えたりしないし。

本当は全身の熱傷ってすごく危険なんだけど、メイリンは体内の気を操作して回復力を上げたりできるもんね。

あ、それ以前に“実の力”を使えば一発か。

 

とか思ってたら、まさにそれ絡みでやらかしていたらしい。

頼れるところを見せたくて、島にいた大型の魔獣や周辺海域の海王類と“実の力”を使って戦ってみせたそうだ。

この子の実力なら能力どころか覇気すら使わずに仕留められるだろうに。

 

「で、何。どこまで使ったの? 龍気? 部分龍化? 天候操作? まさか“虹色”までは使ってないよね?」

 

「アハハ……ええと、全身龍化、しちゃいました」

 

「…………」

 

アホだ。

ここにアホの子がいる。

そんなことしたら神様認定待ったなしでしょう、もう!

 

……だめだ、メイリンとクーロンの女性たちを見てると、黒歴史を思い出してしまう。

土の民の前で空中に浮いてみたりレーヴァテインで炎出してみたりをぽんぽん気軽に行ってた昔の私を見ているようで本当につらい。

 

 

メイリンは悪魔の実の能力者だ。

悪魔の実はクックが存命のころ一緒にラフテルへと里帰りした際に、クックから誕生日プレゼントとしてもらったそうだ。

ちなみに誕生日プレゼントとして悪魔の実を贈るのは非常に難しい。

なにせ悪魔の実と言えばラフテルの住人が渇望してやまない憧れのブツである。

これを売買するために貨幣経済(ベリー)がラフテルに導入されたというくらいには大きなものだ。

そんなわけで非常に値が張る。

 

悪魔の実は“悪魔の木”があるわけではなく、あらゆる樹木の果実に寄生するように実がなる。

唯一群生が確認されているのは私が最初に暮らしていた洞窟の前に生えているもので、それは国が管理していてラフテルに多大な貢献をした人に国家勲章的なものと一緒に褒美として渡しているらしい。

その他は場所もランダムに突然実がなるので、見つけた人は宝くじに当たったようなもの。

ラフテルでの最高級の贈り物とされているし、クックが手に入れたのも偶然に近かっただろう。

 

クックはそれを自分で食べるのではなく、メイリンに贈った。

老い先短い自分よりも未来ある少女に、ということらしい。

メイリンは喜んでそれを受け取り、食べた。

 

発現した能力は龍化。

ラフテル流に言えば動物(ゾオン)系幻獣種の悪魔の実、リュウリュウの実の能力者といったところかな。

普段の人間形態時でも龍気(クック命名)という覇気とはまた異なる気の力を操れるようになる。

さらにその上の段階である部分龍化を行うと、龍の角と尻尾が生え、体の一部分に防御力の高い龍鱗を発現させたりすることが可能となり、天候を操る能力まで使えるようになる。

ちなみに空も飛べる。

この部分龍化をした龍人形態時に龍気を使うと体内に元々ある気と混ざり合い、虹色の龍気が可視化されるようになる。

これを龍闘気(ドラゴニックオーラ)(私命名)という。

別に額に竜の紋章は輝かないし、メガンテ以外の全ての魔法を防げるわけでもないけど。

いや、なんとなく昔の記憶が刺激されて、ね。

そしてさらに上の段階として全身龍化があるわけだ。

 

メイリンが全身龍化を使うと、蛇のような巨大な龍になる。

俗にいうトカゲ型の西洋竜ではなく、蛇型の東洋龍、アニメ日本昔話のオープニングに出てくるあれを思い出してくれればいい。

そりゃあもうカッコよくて、大きくて強そうな外見だ。

 

で、メイリンは頼れるところを見せたくて、この姿で、島にいた大型の魔獣や周辺海域の海王類と戦ってみせたそうだ。

 

……悪魔の実を食べたことは別にいい。

リュウリュウの実の能力は他の実の能力に比べても明らかに強力だし、十二分に“当たり”といっていい能力だ。

私の苦手な雨を天候操作で対処できるのも素晴らしい。

普段から実の力を使うのも、能力の訓練という意味でありだろう。

私だって妖力の使い方は使いながら学んだんだから。

ただそれをね、人前で、しかもクルーとかラフテルの住民以外の前でやるとかね。

 

そりゃもう神様ルート一直線だよ。

 

そんなわけで私はメイリンを連れて帰るのを諦めた。

彼女たちにとってメイリンは死にゆく窮地を救ってくれた救世主であり、初めて得た庇護者であり、絶対的な強者だ。

加えて悪魔の実の存在を知らなかったらしいクーロンの女性たちにとっては、龍に変化できるメイリンは神様の使いか、神様そのものに思えていることだろう。

こんな状態で、「じゃあ帰るのであとは頑張ってね」とできるならそもそも彼女たちを助けてはいない。

つまるところ、少なくとも彼女たちが自立できるまでくらいはメイリンが面倒を見てあげる必要性ができたわけだ。

今回のことはまぁ、八割がた自業自得と言って差し支えないとは思うけど。

 

 

メイリンを置いていくにあたって私もいくつか手助けをすることにした。

まず、彼女たちとの約束だった魔法。

生まれてくる子供が必ず女の子になる呪いだ。

これを一人ずつにかけ、なおかつ遺伝するように調整した。

孫が男の子にならないようにという配慮だけど、遺伝し続けるとかほんと呪いだよね。

 

そして、男がいなくても子供を作れるようにもした。

具体的には適当なそれっぽい石板に生命創造の魔法をこめて、覇気を込めることで発動するようにした。

魔力を扱える人が私以外にいないから別のエネルギーを魔力に変換する必要があり、こんな処置になった。

生活基盤が整っていないうちにぽんぽん孕まれても困ると思うので、この石板はメイリンに預ける。

これで子供も神様から授かる(意図せずして処女受胎でもある)形になり、ますますメイリンへの信仰が深まりそうだけど、この期に及んではもう気にしない。

私も気にしないことで今日まで生きてきているんだから。

まぁ、覇気は生命力そのものだから、それで子供が生まれるというのはあながち間違ってもいないだろうと思う。

 

あといくらかの物資と、ラフテル製の辞書と各種書物とかをあげた。

日本語の勉強から必要になるだろうけど、長期的な発展のためには必要だろうと思う。

農作業の基礎を説いた本とかも、日本語読めなきゃ意味ないからね。

 

サービスで服も作ってあげた。

彼女たちみんな戦闘後のボロボロの衣服しかもってなかったからね。

折角だから中国っぽいチャイナドレスを提唱してみた。

すると、感触は悪くなさそうなんだけど、どうやらみんな薄着の方が好みらしい。

うーん、戦闘時以外は服の着用を認められていなかったクーロンの戦奴だったから、服を着ないのが普通になりつつあるのかな。

それとも単に熱帯気候の住人だから?

正直注文されたビキニアーマーらしき服とか作る気にはならなかったので、チャイナドレスを一着とほかにもいくつか作っておいてくることにした。

あとは自分たちで作るがいいさ。

紡錘技術の確立は私だって苦労したんだから。

 

そして、一番私が苦労したのは名付けである。

まず、国の名前を決めて欲しいとメイリンに言われた。

国というか今はせいぜい村といった規模だけど、集団のまとまりのためにたしかに名前は必要だろう。

クーロンの名前を流用するのも彼女たちの心情を思えば控えた方がいい。

でもなんで私に振るかな。

 

「メイリンがつければいいじゃない」

 

「あまりいいのが思いつかなかったんですよぅ」

 

「んー、例えば?」

 

「ええと、もとが九龍(クーロン)だったから……八龍とか……いや、数が増えた方が強そうかな。十龍、百龍、千龍、万龍……うーん、いっそのこと神龍とか?」

 

「……それは」

 

メイリンの意外な弱点。

この子、名付けのセンスがない。

いやまぁ私も人のこと言えるかどうかは分からないけど、少なくともここまでは酷くないはずだ。

そして最後のはそれ以上いけない。

あとクーロンが九龍なのは私が名前の響きから勝手に決めただけで、実際のところ使ってる文字は彼ら独自のものだからね。

 

と、そういう成り行きで私が彼女たちの集団名を決めることになり、一分くらい悩んだ。

それで決めた新たな国の名前はアマゾン・リリー。

女性ばかりの集団だからアマゾネスと百合からとってアマゾン・リリーだ。

分かりやすくていいよね。

ちなみに魔法で子供が宿るので、iPS細胞とか目じゃないくらい百合(女性同士の恋愛)に優しい島だったりする。

 

ただ、名付けはそれだけにとどまらなかった。

なんと、クーロンの女性たち、彼女たちには個人名がなかったのだ。

専ら呼ばれるときは番号だったらしく、戦奴132番、みたいな。

さすがに可哀想だったし、メイリンも名前がなくて見習いコックちゃんと呼んでいた境遇と重ねちゃったので、こちらも私が名前を付けることに。

しかし約100人分の名前となるとさすがに大変だったので、こっちはちょっとずるをさせてもらった。

持ってきた辞書に載っている名前から適当に拝借してしまおうという寸法だ。

ただ、彼女たちには音の響きからして異言語だし、そこまでおかしくもないだろうと思う。 

 

適当にとった一冊は植物図鑑。

懐かしい。

著者名はモンブラン・マロン。

作製協力者としてフランドール・スカーレットとエクスナー・ルミニアの名前が記載されている。

これの著者は植物学者でもあったマロンだ。

私から元の世界の――マロンたちラフテルの住人にとっては(フラン)の住んでいた世界――の植物の名前を聞き取り、それをこの世界にある植物にあてはめたり、似たものを分類したりとかなり頑張って作成していた図鑑だ。

この世界に存在しない植物についてはイラスト(画・ルミャ)で表現したりと収録種数実に1万種という分厚い植物図鑑である。

ちなみに地球の植物の種数は知らないのでこれが多いのか少ないのかはわからないけど、個人でしかも航海の合間に作ったものとしてはかなり凄いものだと思う。

言語に関しては前世でかなり学んでいたので、広辞苑が25万、日本国語大辞典が50万語くらいの収録だったのは知ってるんだけど、さすがに植物に関しては私もそう詳しくはない。

なお私がラフテルで作った辞書の掲載語数はすでに50万を越している。

さすがに700年作り続けていない。

その分変な言葉とかこの世界独自の言い回しとか他言語とか大量に混じっているんだけど、まぁそれはご愛嬌ということで。

 

さて、それで女性たちには植物の名前から付けていくことにした。

できるだけこの世界のネーミングセンスに合うようなカタカナの物をチョイス。

サザンカ(山茶花)とか和名でも名前っぽいのはたくさんあるし困らない。

果物系のミカンとかレモンとかも名前に付けて違和感はないと思う。

パキラ、ポトス、ドラセナとかいかにも西洋名って感じのでも雰囲気が出る。

ああでも、女性に付ける名前だから観葉植物とかよりも花の名前の方が可愛らしいかな。

……彼女たちが戦闘を生業とする割とムキムキの女性たちな事には、目をつぶって。

とかいろいろ考えながらも名付けは完了した。

名前が植物由来なのはアマゾン・リリーの“百合”も植物だし、そう考えるとマッチしててよかったかも。

 

そうして、「あとは頑張って」とメイリンに言いのこして私は島をあとにした。

問題があればすぐに連絡できるように通信用の魔道具も渡してあるし、最悪本気の龍闘気を全開にしてもらえればどんなに距離があっても気づくだろう。

ま、メイリンには数年間の神様業を頑張ってもらおう。

……私の味わった苦労をメイリンも味わえばいい、とかとは思ってないからね?

 

 

 

 

フラン様が去った後、私は大変な苦労に見舞われました。

まず、アマゾン・リリーの女性たちに生活能力がないのが問題でした。

彼女たちは生まれた時から戦闘をすることだけで生き延びてきた戦奴であり、言い方はアレですが、皆脳筋でした。

リーダーの女性こそまだ頭はいくらか働くようでしたが、それでもランさんのレベルだったと言えば……いえ、この表現ではお二方に失礼ですか。

とにかく、彼女たちには生活能力が全くありませんでした。

まぁ、これは仕方のないことです。

私だって、スカーレット海賊団に拾われた当初は料理の仕方はおろか、掃除も洗濯も、なにもかもができませんでした。

全てを師父に手取り足取り教えてもらい、人の生き方というモノを学んだのです。

ですから、今度は私が彼女たちに教える番だということには否やはありません。

……それでも、疲れるものは疲れるのです。

修業とはまた違った気疲れというのか、これでは師父の厳しい修行の方がまだ楽だったかもしれません。

 

次に彼女たちが私に接する態度でした。

フラン様は終始私が龍化したことについて小言を述べていましたが、その意味がやっと分かりました。

彼女たちが私に向ける目はラフテルの人たちがフラン様に向けるものを数段濃くしたようなものでしたから。

私は傷心の彼女たちのメンタルケアもしなくてはなりませんでしたから、その態度をやめるようにということもできず、甘んじて受け入れるほかありませんでした。

 

メンタルケアと言えば、彼女たちの男嫌いは想定していたのですが、襲撃に怯える、というのが想定外でした。

クーロンが滅んだ原因である翼の生えたものたちの襲撃が彼女たちのトラウマになっているようです。

ここは凪の帯(カームベルト)に囲まれた襲いにくい島だと皆には伝えてありますが、トラウマとはそのような理屈で納得できるものではないのです。

私自身、トラウマの一つや二つ、経験がありますから……。

 

そこで私は考えました!

今暮らしている場所が海の見える開放感のある場所なのがいけないのではないかと。

ここは海の幸も獲れますし、暮らすにはいい場所なのですが、如何せん空からの襲撃があると思うと頼りなくは感じてしまいます。

そこで私は島の中央にある大きな岩山を掘ることにしました。

中心部を円柱形にくりぬいて、その中で暮らすのです!

そうすれば周囲は岩の壁で襲撃に対しては安心感がありますし、上空だけを見張ればいいので労力も少なく済みます。

 

そう考えた私は早速龍闘気も使って人間掘削機になることにしました。

岩山の大きさはかなりのもので、素手で掘るのは割と大変でしたが、一か月もかからずに100人が住むには不足ない大きさの空間を掘ることに成功しました。

 

次に取りかかったのは門の作成です。

岩山の内部と外部をつなぐ門を作らなければ行き来ができませんからね。

この門にはとにかくこだわりました。

なにせ、この門が壊れてしまえば中に閉じ込められたり、外から入れなくなる(私は空から入れますが)ので頑丈さは重要です。

加えて、門とは顔。

仮にこのアマゾン・リリーを訪れる人がいた時に最初に目にするものですから、それが半端な物であってはいけません。

少なくともフラン様にお見せして誇れるような出来に仕上げなければ。

 

それから、悪魔の実の力も使って水脈を感知して岩山の内部に水を引くこともしました。

引っ越しをしなければならないのでラフテル製の住居を一旦ばらして岩山の内部で再び組み上げようともしましたが、ばらすのはともかく組み上げられるか心配だったので、地面ごと家を引っこ抜いて空から運んだりもしました。

それらと並行して日々の生活に必要な狩猟、採集を行ったり、彼女たちの教育を行いました。

水が十分に引けたら、今度は土を持ってこなくてはなりません。

農業も行わないと、さすがに狩猟採集だけでは安定した暮らしにはなりません。

 

毎日忙しく動き回り、いつしか一か月が過ぎ、半年が過ぎ、一年が過ぎました。

そして、気づけば私はアマゾン・リリー初代皇帝、紅美鈴として彼女たちの上に君臨していたのです。

 

うう、最初はどうあっても避けようと頑張ってたんですよ!

でも、神様扱いを避けるためには実体のある為政者としてふるまうしかなくて……。

今ならフラン様がラフテルで過ごされていた気持ちが分かります。

なぜフラン様が(本質的にはともかく対外的には)神ではなく王として落ち着かれたのか、なぜラフテルの運営に滅多に口を出さないのか。

めんどくさいですものね!

何をするにも私に伺いを立ててきたり、国自体が私を中心に私のために動いたり、私が出した指示ひとつで簡単に滅ぶのかと思うと、もうやってられませんよ。

しかも100人程度でこれですもんね。

フラン様はこことは比べ物にならないほど人口の多いラフテルと、もう700年以上は歩まれていると聞きます。

……ほんと、敵いませんね。

 

それに、なにより寂しい。

慕ってくれているのはわかるんですけど、どうしても壁を感じてしまいます。

常々フラン様が「フラン様じゃなくて船長とかキャプテンって呼んでね」「もっと気軽に接してくれた方が嬉しいな」とクルーの皆さんに言っていたのは、船長としての気遣いだけではなく、本心もかなりの割合で混ざっていたのではないでしょうか。

 

そんなわけで気が付けば私はアマゾン・リリーの初代皇帝になっていたのです。

王ではなく皇帝なのは、九龍(クーロン)のトップが皇帝だったためです。

勿論言葉は違いますが、彼女たちの言葉で「王の中の王」を意味するらしいですから、皇帝で間違いはないでしょう。

私がそれより劣るただの王になることは彼女たちには許せなかったようで、皇帝になってしまいました。

それもただの皇帝じゃなくて格の高さを表すために「始皇帝」「天上皇帝」「超帝」「覇王帝」「皇帝王」「無上猊下」とかいろいろ案を出されたので、それは流石に却下しました……。

本当は、「皇帝様!」と呼ばれるよりフラン様からいただいた「(ホン)美鈴(メイリン)」という名前の方がずっと尊いと思っているのですけどね。

こればかりは彼女たちに話したところで理解はしてもらえないでしょう。

 

その彼女たちは、龍たる私がトップに立ったので、自分たちはその下である「蛇」として「九蛇(クジャ)」を名乗り始めました。

部族名のようなものでしょうか。

九なのは多分九龍からきているのでしょう。

確かに所属というのは大事です。

私だってスカーレット海賊団の一員であるということには強い自負を抱いていますから。

 

ああ、フラン様のもとへ帰れるのはいつになるのでしょう。

少なくとも次代の皇帝を選出するまでは皇帝の座を降りることはできませんよね……。

最近では初めて石板の力で子を宿した女性がいますし、いましばらくは見守らないといけないでしょう。

フラン様とは時折連絡を取ってはいますが、やはり寂しいものです。

 

フラン様の方は私に代わるお世話係として、ラフテルから来た「にとり」という女の子を育てているそうです。

彼女が思ったよりも優秀で助かっている、と楽し気に話されていました。

うう、いつの間にか私の帰る場所がなくなっていそうで心配です。

……嘆いていても仕方ありませんね。

私は、私ができることをしなければ。

 

 






中華っぽい家
すでにクーロンを訪れてから年月が経っているので、クルーらによってラフテルへとクーロンの中華っぽい文化は輸出されています。
今回はそれが高度に発展したものを逆輸入した形。
加工貿易みたいなことをやってます。

食べると笑うキノコ(ワライダケ)
現実にもワライダケというキノコがありますが、そちらは食べると顔面神経が麻痺してひきつった笑い顔に見えることからの名前。
こちらは本当に笑い出します。

食べるとキノコが生えるキノコ
原作でルフィが食べたキノコ。
名前はカラダカラキノコガハエルダケ。
この時の伝承が巡り巡ってルフィを丸焼きにすることに繋がるのかもしれない。

悪魔の実はラフテルでの最高級の贈り物
なおさらにその上をいくものとなるとフランから下賜された物品などが当てはまる。
これは売ろうとか人にあげようとか思う人が皆無なため贈り物にはならない。
多分売ろうとしたり贈ろうとしたりするとその相手からフランへの不敬を疑われて極刑に処される。
こわい。

龍闘気(ドラゴニックオーラ)
ダイ大のドラゴニックオーラは竜闘気ですが、ここではメイリンの帽子の文字が龍であることも考慮して龍闘気です。
なお今話冒頭のドラゴンボールネタとこのダイの大冒険ネタはどちらも連載がワンピースと同じジャンプですが、両作品とも連載終了がワンピース連載開始前なので、一話のフランがワンピースを知らないという描写には矛盾していないということで。
ピクシブで竜闘気タグで検索するとダイ大じゃなくてメイリンしか出てこなくて笑う。

リュウリュウの実
実はこれ正しい名前ではなく、フランがそう思っているだけなので本当の名前は別にあります。
正式名称は今後登場予定。
全身龍化の見た目はモモの助のものを巨大化して凛々しくしたものを想定しています。
原作でモモの設定が完全には明かされていないので矛盾しなければいいなぁと願うばかりです。
ちなみにメイリンはモモと違って雲をつかんだりしなくても普通に飛べます。
あと、リュウリュウの実(仮)が他の悪魔の実と比べて強力な理由は、幻獣種であるとか以外にちゃんとした理由があります。
いままでで伏線張っているけど気づく人いるかな?

収録種数1万種の植物図鑑
参考までに地球の植物種数はだいたい20万―30万くらい。
学者によって分類が異なるので250万とかいう説もあります
マロンが書いたのはあくまでも自分が見聞きしたものとフランから聞いたものだけなので、この数ということで。


そういえばこの小説のタイトルは思いつかなかったので仮題で適当に決めたのですけど、正式名称を考案中です。
「東方海賊伝」だと原作がワンピじゃなくて東方っぽいなぁとか、「ラフテルの王にわたしはなる!」だと序盤でもうなってるじゃんとか「フランちゃんのワンピース」だと服飾の話に見える、とか迷走してます。
作中のメイリン以上にネーミングセンスがない……。
やっぱりタイトルでフランちゃんとワンピース要素を出したいところですが、うむむ。
なにかいい案でもあればメッセージでくれると嬉しいです。

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