「あー!くそ!イライラする!!」
あれから数日が経った。俺はなぜ自分がここにいるのか、失われている昔の自分の記憶への腹いせに力任せに修行をしていた。
「まだだ…こんなものではまだエスデスにも勝てん…」
氷に対するのは炎だ。奴が氷の帝具使いで帝国最強を名乗るのならば俺は炎の帝具使いとして最強の名を広げてやる。
「おや?大星くんじゃありませんか?」
声をかけられ振り向くとそこにはナイトレイドの1人、シェーレがそこにいた。
「…あんたは…確かシェーレって言ったな。」
「ええ、たまたま近くを通っていたらあなたの姿が見えたので来ちゃいました。何をしていたんですか?」
「あぁ、修行だよ修行。俺はあんたらより弱い。だからこうやって肉体を鍛えてるんだよ。」
へぇ…と言いシェーレはそれから何も話さなくなってしまった。
そんだけかよ!!と言いたいが彼女の横顔はどこか悲しそうな顔をしていた。
「あなたは今迷っていますね。」
「…何が言いたい。」
「あなたは今悲しい目をしています。昔の私のように、今自分が何のために生きているのか分からなくなってしまっているような。」
そして続けてシェーレは自分の過去の話を俺にしてくれた。
「私は殺す時の顔が一番輝いています。ナイトレイドはそんな私を拾ってくれたんです。おかげで私は今の人生に満足しています。良い仲間とも出会えて、少しずつ、また私は私でいられる。そんな気がするんです。」
「…」
「だから大星君も、自分が何のためにこの世界に生まれてこうやって時間の波に進んでいるのか、もう一度考えてみてください。」
なんのため…か…忘れちまったよ。そんなもん。
「…まぁ、少し気が楽になった。ありがとな、シェーレ」
「私は貴方が本当はとても強いこと、そして誰よりも優しい心の持ち主だってことを知ってますよ。」
それでは、と言いシェーレはフラフラっと森の中に消えていった。
「…そこまで見透かされているとはな、恐ろしい女だ」
それからほぼ毎日といっていいほどシェーレは俺の元を訪れ、何度も俺に話をしにきた。
迷惑だとは思っていない。現にシェーレと話すのは面白い。
どこか天然っと言うかなんというか、とにかく話していると自然と笑みがこぼれる。
「シェーレも変な奴だな。」
「何がですか?」
「時間を割いて俺みたいな奴に話しかけに来るとはよ」
「…ほってはおけませんからね。貴方はもう私達の仲間だと私は思っていますよ?」
「…仲間…か」
「まだ殺すことに躊躇ってしまいますか?」
「まぁ…な」
帝都を変えたいのは本心だ。でもそのために人を殺し続けるなんてのはおかしい。とまだ心で思っている俺がいる。そして、その仲間と別れる時がくる…と考えると胸が苦しい。
「…そうですか。今日は私は任務があるので、少し早いですが失礼させていただきますね。」
「あぁ、またな」
またな、と言われてぴくっとシェーレの方が動く。
そして振り向き今までで見たことのない笑顔で
「はい!」と言いシェーレはまた森の中に消えていった。
「…そんな顔もできるんだな。」
いつからだろうか、ああやってみんなの笑顔を見て楽しむ日々は…
「い…つ…」
まだ俺は昔のことを思い出せずにいた。
〜帝都のとある街〜
「はぁ…なんでどこも店やってねぇんだよ。」
夜になり腹が減ったため俺は帝都の外れの街にやってきていた。
だが、不自然なほどに誰も外を歩く者はおらず、どこか重々しい空気すら感じた。
「おい!あんた!外にいると危ないぞ!」
「なぁ、なんで誰も外にいないんだよ。」
「なんでもかんでも!ナイトレイドが近くで現れたって話だぞ!今は帝具持ちの警備隊の人が向かってるらしいから、もう時間の問題だとは思うが、お前さんもはやくどこかに隠れなさい!」
「…帝具持ちだと…」
あの日ナイトレイドのボス、ナジェンダから話は聞いていた。帝具持ちが戦う時、必ず片方は死ぬ。と。
「…胸騒ぎがするぜ」
俺は急いで辺りを捜索し始めた。
…森の中を歩いて約10分ほど経った。どうやらまだ戦闘は起きていないみたいだが…
「あれ〜?貴方は何をしているんですか〜?」
「…お前は…ソリューだったか?」
「セリューですよ!!」
前に街で宮殿まで案内してくれた警備隊の女の子だ。
警備…隊の…?
「お前…ここで何をしている?」
「それはこちらのセリフですよ?私はナイトレイドが現れたと聞いたからここにいるんです。ナイトレイドをこの手で殺して正義を執行しにきたんですよ私は!!」
狂気に満ちた顔をしてセリューはそう言葉を放つ。すこし頭がおかしい奴って思ってしまった。
!!
不意に背後から殺気を感じたため慌てて身を移動させた。
その殺気の正体は…
「…シェーレ…」
「…大星さん。どうして貴方が警備隊と一緒に?」
「ナイトレイド!!殺す!!」
先手必勝!とセリューは生物型帝具のコロと言われる犬を使いシェーレに襲いかかる。
シェーレは帝具のエクスタスを使い斬り刻むが生物型の帝具は自動修正してすぐ元どおり。
「貴方がここにいては邪魔になります。すぐにこの場を離れてください。」
「お前…1人でなんとかできるのかよ…」
「早く…」
今までで見たことのないシェーレの怒った顔を見て少し後ずさりをしてしまった俺はなすがままにその場を立ち去ってしまった。
「あれれー?今の人は貴方たちとグルだったんですかー?」
「いいえ?全くの赤の他人ですよ?斬り殺そうと思ったら逃げられちゃいました。」
「…やっぱり悪はこの手で滅ぼす!!憎き存在!!」
「ハァハァハァ…!シェーレの奴なんで…!」
「俺とあんなに喋ってくれたのに結局は俺の事嫌ってたのかよ…くそ…やっぱり誰も信じられねぇ…」
「違うわよ。」「⁉︎」
そこにはツインテールのピンク髪の女の子、マインがいた。
「確か…マイン…」
「ッ…」
一瞬マインの顔が引きつったがすぐ真顔に戻りマインはこう言う。
「シェーレは警備隊にあんたもグルだって思われないようにあういう素振りを見せたのよ。あんたの事を思ってね。シェーレはめちゃくちゃ優しいやつなんだから。」
俺の…ために…
「分かったらさっさと帰りなさい。アレは私とシェーレで片付ける。」
そう言ってマインはその場を去ってしまった。
あれから俺はトボトボと歩きナイトレイドのアジトの方へ帰っていた。
なぜシェーレはあそこまでしてくれるんだ?
みんなに迷惑をかけ続けて、存在価値もない俺を…
『仲間だからですよ』
!!
その時俺の中で何かが弾け飛んだ。
…仲間…そうだ。俺もかつては仲間のために敵討ちのために死に物狂いでここまでやってきたんだ…
忘れていた…俺も帝都の変な環境に飲まれて本来の目的を忘れていたよ。
思い出させてくれたな。シェーレ…
俺は戦う決心をして帰る道と逆方向を向く。
「決心がついたよ…俺はみんなと笑いあう世界を築くために…暗殺集団に入ってやる!」
俺は足早に来た道を戻りシェーレとマインの元へ向かった。
ちょっと話がずれてきてますけど許してください(T ^ T)