「……黒歌。」
「わかったにゃん。……っ‼︎」
カラス共を回収し、アジトへの帰り道。
何者かにつけられていると感じ、黒歌に感知させたがかなりの手練れの様だ。追跡は苦手の様だがな。
黒歌に目で合図すると開けた場所に降りる。
「出てきたらどうだ?
追跡がバレバレだ。」
「気付かれていましたか。
私はザーゼクス様の眷属、『女王』のグレイフィアと申します。」
現れたのは銀髪の女。
成る程な。確かに強者だ。
「目的は黒歌の討伐と俺の捕獲といったところか?」
「まぁ、そんなところですね。」
巻物を開き、傀儡を取り出す。
「人傀儡『ライト』。
SS級のはぐれ悪魔なだけに殺すのは苦労した。
それだけに1番気に入っている。」
素早く傀儡に仕込んだ武器、苦無付きの鞭と鉤爪を出して女を攻撃する。
だが、女も組手の要領で受け止めていく。さっきの蹂躙劇を見ていたのか、攻撃を一つも受けない様に立ち回っている。
「やはりお強い。次はこちらから参ります。」
女はそう言うと魔弾を放ってくる。
それを回避し、ヤツを捕らえようと鞭を放つ。
「(……おかしい。こいつ、何を狙っている?)」
こいつの攻撃は明らかにおかしい。
それを把握するために次の攻撃に移る。傀儡の口を開かせるとそこから毒針を連射する。
それに対して女は魔弾で撃ち落とす。
「フフッ、ここまで強いとは。
SS級はぐれ悪魔のライトと言い、貴方の力は想像以上ですね。」
「はあ‼︎」
黒歌が女へ渾身の一撃を叩き込む。が、それもガードされる。
「黒歌、お前は下がってろ。」
「なんでにゃん‼︎
この女は最強の『女王』と呼ばれる程の実力者にゃん‼︎」
「警戒する必要は無い。
こいつの目的は鼻っから俺たちの足止め。こちらをどうこうするつもりは無い。
それに足止めは成功しちまった様だしな。」
「グレイフィア、ご苦労だったね。」
赤い髪の男が俺たちの前に躍り出る。
「やぁ、はじめまして。
私はザーゼクス・ルシファー。魔王をやっている者だ。」
「俺たちに何の用だ?
戦いならまた今度にしてもらうぞ。まだテメェを殺せる程の傀儡はまだ完成してないんでな。」
軽く挑発をいれるがこの程度では何の反応も無い。流石は魔王と言ったところか。
「残念ながら私は戦いに来た訳では無い。話し合いをしに来たんだ。」
「話し合いだと?」
「我々としては君たちを相手に取るのは避けたい。何せSS級はぐれ悪魔すら倒して自分の力にしているのだからね。
君だってそこにいる黒歌さんと同じ様にはぐれ認定されるのは嫌だろう?三大勢力全てを相手にするのは流石に辛いだろうからね。」
「それが何だ?
俺は元いた場所ではビンゴブックに載っていた人間だ。殺しに来るのが人から人外に変わっただけだ。」
「……ならば、こう言えばどうかな?
その人形は完成してないんじゃないか?」
「っ‼︎」
「それだけ多くの仕掛けが施された人形だ。精密に作られているんだろう。
でも、お尋ね者と一緒にいて決まった拠点を持たない君が本当の意味で完成させる事は出来ないんじゃ無いか?」
チッ!こいつ、そこまで考えてやがったか。そこを踏み込まれるのは想定外だ。
この流れ、奴の提案は……。
「君の人形作りの場所をあげよう。そして黒歌のはぐれ認定も解こう。
こちらの条件を飲んでくれたらね。」
「悪魔になる事が対価か。」
「話が早くて助かるね。」
こいつ、黒歌までダシに使うか。はぐれである事による動き辛さまで考えてやがる。
「ダメにゃ‼︎
サソリをこっち側に引き込むなんて‼︎」
「それは彼が決める事だろう?」
「……いいだろう。」
「サソリ‼︎」
「それは良かっ「ただし、誰の下にもつかねぇ」……ほう。」
「俺は弱者に従えるのはごめんだ。そしてテメェに従えるのもな。」
「ザーゼクス様に敵わないのによくそんな態度が取れますね。」
「いつ俺が敵わないと言った?
俺はこいつを殺す為の傀儡がまだできていないと言っただけだ。手持ちの傀儡を一気に使えば殺す事は可能だ。そもそもお前はいつでも殺せる。」
「私を殺せる?一体何を……っ‼︎」
そう、奴が俺に気を取られている間に傀儡の素体の能力を使っておいた。こいつの固有能力は雷遁。
すでに圧縮した雷をあいつの後ろにセットしてある。奴の力を持ってしてもこの距離なら対処出来ないのはわかっている。
「お前は悪魔になれとは言ったが、誰かの下につけとは言っていない。問題は無いだろう。」
「……仕方ないね。グレイフィア、悪魔の駒を。」
「正気ですか⁉︎」
「今回は私達の負けだ。
君は後ろを取られたし、私は言葉の隙間をやられた。彼を悪魔側に引き込めるだけ良しとするべきだ。」
「くっ!……かしこまりました。」
最悪の事態は避けれたな。誰かの下につくのは暁だけで十分だ。
「これが悪魔の駒だ。この王の駒を自分の胸に当ててくれ。」
「こうか?」
すると駒は俺の身体に吸い込まれた。
「悪魔への転生は終了だ。」
「そうか。
なぁ、これが女王の駒か?」
「そうだが?」
「黒歌、お前がなっとけ。」
そう言いながらおれは女王の駒を黒歌に投げる。
「ええ⁉︎(ま、まさかこれは暗に私の事が好きって事かにゃん?///
も、もしそうならそれに答えるにゃん‼︎)
よ、喜んでサソリの女王になるにゃんっ‼︎///」
こいつは何でこんなに顔が赤いんだ?風邪引かれるのは困るんだが。
「さて、君たちの新しい拠点を用意したいところだが、少し待ってほしい。
また連絡を入れよう。これを使えばやりとりが可能だ。持っていてくれ。」
そう言って奴は魔法陣の書かれた紙を渡す。
「帰るぞ、黒歌。」
「はい!///」
俺たちはアジトへ帰る。
そしてそれから数日後、俺たちは魔王のせいで想定外な状況に陥る事になる。
流石は美形。
黒歌もコロッと落ちてますね。
鈍感ですけど。