五機目 不死鳥
「まさか義兄さんがあそこまで運動能力が高いとは思いませんでした。
体育の授業で男子最強は兄さんですね。」
「まぁあれくらいなら余裕だ。」
俺は黒歌の妹、小猫と話しながら部室へ向かう。
もうこの生活には順応し、黒歌が痴女化したのは俺のせいじゃない事は伝わったかわりに何故か『義兄さん』とよばれるようになっていた。確かに年上である事は明かしたが、何故そうなるのかはわからん。前に聞いたら、
『義兄さんは本当に気づいてないんですか?姉様はあんなにアピールしてるのに。』
と言われた。意味がわからん。何故黒歌がここで出てくる?
そんな事を考えていると部室に着いたようだ。
「……やはりお前か、魔王の女王。」
「この間の借りを返しに来た訳では無いので安心してください。」
またあの銀髪の女だ。
隣では小猫が目を見開き、俺と奴の顔を見比べている。
「義兄さん、貴方は最強の女王に何をしたんですか……?」
「聞くか?」
「いや、やめときます。」
おっと、どうやら木場と変態が来たようだ。
「揃ったわね。
実は部活の前に話しておきたい事があるの。」
「お嬢様、私が話しましょうか?」
「結構よ。実は……。」
その瞬間、突然紋章が出現し炎が巻き上がった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
イッセーside
オッス、イッセーだ。
なんか知らんが突然目の前にチャラい男が出てきてパニック中だ。
「人間界は久しぶりだな。
愛しのリアス、会いに来たぜ。」
なんだ、こいつ‼︎
馴れ馴れしく部長に寄り添いやがって‼︎
「さて、リアス。式の会場を見に行こう。日取りも決まってるぜ?
何事も早い方がいいだろう。」
「離してちょうだい、ライザー!」
「おい、アンタ。部長に失礼だぞ!
大体女の子にその態度は無いぜ?」
俺も我慢が効かねえ!
嫌がる部長に無理強いするやつは許せねえよ‼︎
「あ?誰だよ、お前。」
「俺はリアス・グレモリー様の眷属、『兵士』の兵藤 一誠だ‼︎」
「ふ〜ん、あっそ。」
ヒデェ‼︎なんだよこいつ!
感じ悪いやつだな!
「つーか、アンタ誰だよ!」
「なんだよ、リアス。俺の事を下僕に話してないのか?
そもそも俺の事を知らないやつがいるのか?」
「自分が有名人と信じて疑わないやつ程滑稽なものはねぇな。」
「なんだと、貴様‼︎」
ちょ、サソリ‼︎いきなり喧嘩売るな‼︎
「サソリ様、話の腰を折らないでください。」
「テメェの指図を受けるつもりはねぇ。」
「テメェと呼ぶのはおやめください。私の名前はグレイフィアです。」
なんでこいつはこんなに怖いもの知らずなんだよ‼︎
部長のお兄さんの女王だぞ⁉︎
「お、おい。
こいつもリアスの眷属なのか?何で最強の女王にタメ口な上にテメェ呼びができるんだ?」
「残念ながら彼は私の眷属では無いわ。
何でグレイフィアにあんな態度をとれるのかは知らないけど……。
朱乃、胃薬頂戴。サソリとグレイフィアのやり取り見てたら痛くなったわ。」
「どうぞ、リアス。ついでに私もいいかしら?」
「近いうちに義兄さんの所為で私もお世話になりそうです。」
「僕もだよ……。」
この数分でみんなグロッキーじゃねぇか‼︎
そして諸悪の根源!不思議そうな顔すんな‼︎
「兵藤 一誠様。この方はライザー・フェニックス様。純血の上級悪魔であり、古い家柄を持つフェニックス家のご三男であらせられます。」
はい?
「そして、グレモリー家時期当主の婿殿でもあらせられます。」
婿?
え、まじで?婚約者なの?
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ‼︎」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
全く煩い奴だ。
この薄汚いガキの馴れ馴れしさで大体想像がつくだろう。
そのガキは今、リアスと共にソファに座り、姫島から紅茶を受け取るところだった。
「どうぞって、あら?」
「やはり美味い。」
俺は奪い取った紅茶の飲み干すと、取った時と同じ様にチャクラ糸で姫島に返す。
「貴様!どこまで俺を馬鹿にする‼︎
リアスの女王は俺に紅茶を出したんだぞ‼︎」
「客人でも何でも無いガキが偉そうにするな。
それと俺は傀儡の手入れで忙しい。話しかけるな。」
「何だと‼︎」
「サソリの言う通りよ!
貴方は私たちにとって招かれざる客なの‼︎
私も貴方と結婚する気は無いわ‼︎」
これだけ居づらい雰囲気でよくまだ居座る気でいるな。
「それは以前にも聞いたよ。だがな、リアス、そういうわけにもいかないだろう?
君のところの御家事情は君が思っている以上に切羽詰まっているんだよ。」
「余計なお世話だわ!!私が次期当主である以上、婿の相手くらい自分で決めるつもりよ!!
父も兄も一族の皆は焦りすぎだわ!!当初の話では、私が人間界の大学を出るまでは自由にさせてもらえる筈だった!!」
「そうだな。キミは基本的に自由だよ。だけどな、リアス、君のお父さんもサーゼクスさまも心配なんだよ。今じゃ生き残ってる純血悪魔の数も減ってしまったからね。
君も純血悪魔の新生児が貴重だって知っているだろう?
それに御家も君が結婚しないかぎり断絶してしまうかもしれないからね。
早く安心したいんだろう。」
「私は家を潰す気は無いわ。婿養子だって迎え入れるつもりよ。」
「おおっ、流石リアス!!じゃあ、さっそく俺と……。」
「でも、あなたとは結婚する気は無いわ!!
私は私が決めた人と結婚するわ。
家柄の悪魔だって、それくらいの権利はあるわ!」
「チッ!」
ここまで嫌いとはっきり言われてめげないとはな。
もはや呆れを通り越して笑えてくる。
「…俺もな、これでもフェニックス家の看板を背負った悪魔なんだよ。
この名前に泥を塗る訳にはいかないんだよ。
そのためにこんな人間界の狭い部屋に来てやったのに、ダメだと言われてはいそうですかで帰れないんだよ。
というかな、俺は人間界が嫌いなんだ。
この世界の炎と風は汚すぎる。炎と風を司る悪魔としては、耐えがたいんだよ!!」
こいつ、炎を振りまきやがったな?
殺す。
「おい。」
「何だ……っ‼︎」
「傀儡の手入れをするって言ったのに炎を撒き散らしやがって、傀儡が燃えたらどうするつもりだ?
お前をこの場で人傀儡に変えてやろうか?」
「(な、何だ‼︎こいつから出てくる殺気は‼︎
この近くに最強の女王がいるってのにそれすらも霞む程の力を感じるだと⁉︎
あ、ありえない!
こんな化け物が存在しているなんてありえない‼︎)」
「……サソリ様、矛をお納め下さい。
そんな殺気を飛ばしていては話し合いが成立しません。」
「……いいだろう。
1回だけチャンスをやろう。次は殺す。」
脅しはこれで十分だろう。見ればリアスも立つのがやっとぐらいだ。アーシアに至っては気を失っている。
「ライザー様もお気を付け下さい。彼は私の背後を容易に取る程の実力者。再生の炎を持ってしても、死を免れるのは難しいでしょう。」
「何だと⁉︎」
「触らぬ神に祟りなし。
この国の言葉ですが、彼にこそ当てはまる言葉です。次に彼の逆鱗に触れれば私でも止められませんよ?」
酷い言いようだが、まぁ聞かなかった事にしておこう。
もうこのガキは俺に歯向かって来まい。
「さて。話が逸れましたがこうなるとは、旦那様もサーゼクス様もフェニックス家の方々も重々承知でした。正直申し上げますと、これが最後の話し合いの場だったのです。これで決着がつかない場合のことを皆様方は予測し、最終手段を取り入れることとしました」
「最終手段?
どういう事、グレイフィア?」
成る程、アレか。
「お嬢様、ご自分の意見を押し通すのでしたら、ライザー様と『レーティングゲーム』にて決着をつけるのはいかがでしょうか?」
「なっ⁉︎」
「レーティングゲーム?」
「爵位持ちの悪魔たちが行う、下僕同士を戦わせて競い合うゲームのことだよ。」
「お嬢様もご存知の通り、公式の『レーティングゲーム』は成熟した悪魔しか参加できません。しかし、非公式の純潔悪魔同士のゲームならば、半人前のあくまでも参加できます。この場合、多くが……。」
「身内同士のいがみ合い、よね。」
こんなくだらねぇ出来レースを仕立て上げてまで結婚させてぇ訳か。
「つまり、お父様方は私が拒否した時のことを考えて、最終的にゲームで今回の婚約を決めようってハラなのね?……どこまで私の生き方をいじれば気が済むのかしら…っ!」
「つまり、お嬢様は拒否されると?」
「いいえ、こんな好機はないわ!
ゲームで決着をつけましょう、ライザー!」
「へー、受けちゃうのか。
俺は構わない。ただ、俺はすでに成熟しているし、公式のゲームも何度かやっている。今のところ勝ち星の方が多い。
それでもやるのかリアス?」
「いいわ、消し飛ばしてあげる‼︎」
「いいだろう。そちらが勝てば好きにすればいい。でもな、俺が勝ったら即結婚してもらうぞ。」
面白い事になったな。
「承知しました。
お二人のご意見は私グレイフィアが確認させていただきました。両家の立会人として、私がこのゲームの指揮を執らせてもらいます。よろしいですね?」
「ああ。」
「ええ。」
「わかりました。両家の皆様には私からお伝えしておきます。」
なぁ、リアス。まさか、ここにいる面子がキミの下僕なのか?」
「だとしたらどうなの?」
「これじゃ、話にならないんじゃないか?キミの『女王』である『雷の巫女』ぐらいしか俺の可愛い下僕に対抗できそうにないな」
そう言うと奴は指を鳴らす。
すると魔法陣が光り始め、15人の眷属悪魔が並ぶ。
「と、まぁこれが俺の可愛い下僕達だ。」
全員女か。
まともな奴が1人だけってのが何とも言えねぇな。
というか、変態のすすり泣く声が煩ぇな。
「お、おい、リアス…。この下僕くん、俺を見て大号泣しているんだが」
「その子の夢がハーレムなの。きっと、ライザーの下僕悪魔たちを見て感動したんだと思うわ」
「キモーい。」
「ライザーさまー、このヒト気持ち悪ーい。」
「そう言うな、俺の可愛いお前たち。上流階級の者を羨望の眼差しで見てくるのは下賎な輩が常さ。あいつらに俺とお前の熱々なところを見せつけてやろう」
奴が何をするつもりか気づき、チャクラ糸で小猫の目を塞ぐ。
転生悪魔になってからチャクラ糸の力が上がり、こんな芸当もできるようになっていた。
「義兄さん、何も見えません。」
「こんな下品なものは目の毒だ。」
「おまえじゃ、こんなこと一生できまい。下級悪魔くん」
「お前みたいな女たらしと、部長が釣り合うわけねぇーだろ!」
「でもそんなハーレムをお前は作りたいんだろ?
しかも、英雄色を好むって言ってな?
俺はいい言葉だと思うぜ?俺にぴったりだ。」
「何が英雄だよ!!
お前はただの鳥野郎じゃねーか‼︎
この焼き鳥め‼︎」
「き、貴様‼︎
この俺が焼き鳥だと!!下級悪魔のくせして調子こきやがって!!
目上の者に対する礼儀がなってねえ!!どうなっているんだリアス!!」
「こんな焼き鳥は食いたくねぇな。」
「義兄さんに同感です。
それからいい加減目を開けさせて下さい。」
塞いでいたことを忘れていた俺は小猫の目からチャクラ糸を外し、解放してやる。
「焼き鳥野郎なんぞ、俺の籠手で十分だ!!ゲームなんかしないでここで終わらせてやるよ!!来い、赤龍帝の籠手‼︎」
「ミラ、やれ。」
「はい。」
1人の女が前に出て変態に棍を叩き込む。
意気込みだけはいいが、実力が伴わなければ意味がない。
「みっともない。
大した事のない集団の下っ端にやられるとは。」
「何ですって‼︎」
「やめろ‼︎
俺たちじゃあこいつには敵わん。」
「2度目の過ちを犯さなかった事は褒めてやる。
そして、初めから俺の実力を感じ取れたそこの女もな。」
「レイヴェルが⁉︎」
「俺の眷属として欲しいくらいだな。如何なる状況でも冷静でいられる奴はそういないからな。
まぁ、そんな話は今はどうでもいいだろう。」
そもそも自分の眷属の実力を把握していないのはだいぶ問題だと思うが。
「話が逸れた。
リアス、ゲームは十日後でどうだ?お前もその期間なら準備はできるだろ?」
「私にハンデを与えるというの?」
「嫌か?屈辱か?
でもな、レーティングゲームってのは自分の感情だけで勝てるほど甘く出来てない。
勝つか負けるかその二択しかないんだよ。
でもな、俺とリアスじゃ力に開きがありすぎる。それを無くすために十日やるって言ってんだ。」
奴がそう言うとリアスは黙る。
「十日もあれば、君なら何とかできるだろう。
それからリアスに恥をかかせるなよ、リアスの兵士。お前の一撃がリアスの一撃なんだよ。」
奴の言い分は最もだな。
只の間抜けかと思えば、少しはまともな事を言う。
「リアス、次はゲームで会おう。」
奴はそう言い残して去っていった。
サソリが正式に小猫の兄になるのは何時になることやら。