オバロ世界を生きぬきたい   作:モーリン

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2話 情報

「身分保証が出来なければこの、エ・ランテルには入れない」

 

そんな言葉がプレートアーマーを着た門番から飛び出した。

あの後ふよふよと飛行し続け、壁に囲まれるように大きな街が視界に飛び込んできた。

それはまるで、古き良き西洋の街並みを大きな壁で取り囲んだ城下町のような雰囲気がある街。

 

そんな素敵な街の出入り口に設置されてある関所の前に着地して入れるかどうかを確認した結果がこれである。

 

「だが、まぁ……誠意を見せれば入れてやらん事もない」

 

にやにやと大きく開いている胸元とアセリアの美しい顔を見てそう口にする。

アセリアも門番の立場だったら気持ちは分からんでもないが、流石に公私は混同させないなー。

と思いつつ

 

「あ、じゃあいいです」

 

そうしてくるりと踵を返し、フライを唱え空へと昇っていく。

後ろからおい! と呼ぶ声が聞こえるが、正直アセリアにとって嫌な方向に転がる事しか予感がしないので、素直に退散しているのだ。

 

一応【転移(テレポーテーション)】で入れないことも無いが、無断で入ってその中でも防犯の為に身分証の提示が必要であれば目も当てられない。

衛士に御用されるだけだ。それだけは避けたい。

 

とりあえず、波風立てない様に情報を仕入れたい。

 

ここはどこなのか、周辺はどうなっているのか、何故【蘇生】が通用しないのか

その他に経済、文化、種族、歴史等々山ほど情報が必要なのだ。

若干混乱していたので判断を誤っていたのか分からないが、そもそも現実で「死者蘇生」は行われているのか

 

そもそも魔法がどこまで存在しているのか。

 

一応門番が空を飛んでいることに驚きはしていたが、それでも何か割り切っているようでその後の対応は普通であった。

そのことから考えるに魔法というものが存在しているのだろう。そうあたりを付ける。

 

だがそれはどこまで発動していいものなのか。

力とは争いを生みやすくするものだ。故に力の誇示は必要最低限に今は留めておきたいのが本音である。

今は第3位階魔法の【飛行(フライ)】を使用しているが、アセリア本人はこれくらいは流石に日常茶飯事だろう。という認識である。

 

そもそも、たまたま弱い人たちで弱いモンスターで、たまたまアセリアの力が彼らを上回っただけかもしれない。

そんな現実もあり得る。内心は俺tueeeee!が出来るかもと期待しているが。

 

そして、その認識はすぐに下方修正しなくてはならないとは、今は露とも思っていない。

 

「うーん、これが本物の自然なんだなー」

 

空を飛んでアセリアはそうつぶやく。

現実の世界は既に自然という物は存在せず、環境汚染が進み外には専用マスクが無いと出れず、最悪死んでしまう。

そんな荒廃した世界だからこそ、ユグドラシルが大好きだったのだ。

 

しかし今現状、ユグドラシルを上回る程の感動が胸中に漂っている。

鼻を刺激するのは自然豊かな土の香り、嗅いだことのない香りだが、すこし湿っぽくされど不快感は無く

すーっと息を吸えば「おいしい」そう感じざるを得ない程、いつまでも吸っていられる空気。

 

「さてと、外壁で覆われた町は無理だな。であれば、門番が居ない町か村を探してまずは身分証明を確立しないとなー」

 

今の大きな課題は身分証明。この世界はどんな形で身分を証明するかも分からない状況である。

その後、この世界の基盤作りと情報収集を同時に平行し、そのうえで何をするか。

 

「……何にせよ、まずは身分証明に情報だな」

 

とりあえず知的生命体との接触が第一である。そんな事をぐるぐる考えながら飛行していると眼下には人口およそ200人規模であろうか

民家らしき家が点在している空間を見つける。近くには川があり、また少し降下して肉眼でも人間がいる事を確認出来た。

 

「畑……仕事なのかな」

 

現実の世界においてアセリアは畑という物を見たことがない。それ故、一応小学校を出ているためある程度の知識はあるが、それでも農業の授業はなく

図書館の本で閲覧しただけで、予想でそう口にしただけである。

 

その場で滞空し、虚空に手を突っ込み一応ユグドラシル金貨がある事も確認している。

だが、ほとんど銀行へ預けてあるので手持ちは3万金貨とかなり心許ない。その事実に綺麗に整っている眉を寄せるが、無いものは仕方がない。

物々交換でも大丈夫なのかなーとそんな事を思いながら、畑仕事をしている年齢が30代だろうか、そんな男性の傍に着地することを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

リ・エスティーゼ王国のアベリオン丘陵のエ・ランテル側の森を北にしばらく行った所に位置する小さな村。人口は210名程で

主に農畜産をエ・ランテルへ売りに出して生活の糧を得ている農村である。主な農産物は穀物で需要は絶えない。

 

そんな村人の朝は早く、日が昇ったのと同時に起床し、各々の仕事を行う。男は畑を耕し、女は水くみ、薪割り等の仕事。

子供は大人の手伝いで学校へは通っていない。そもそも教育機関がないのだ。

街道はしっかりと作られており、エ・ランテルへ出稼ぎに行く際や、冒険者や行商人等にも利用されることが多い。

 

丁度王都とエ・ランテルとの中間に位置し、人口の規模以上に人がいるのだ。なので宿も盛んに切り盛りされており、街や都市の宿と違いかなりアットホームな雰囲気が好評で、それなりに有名な村である。

 

更に、トブの大森林からも往復で半日もかからない位置に存在しているので冒険者がこの村に滞在している事が多い。

トブの大森林は様々な薬草があり、薬師にとっては宝庫である。だがその反面ゴブリンやオーガも多数出現する為、冒険者でも危険な状況はある。

ただ、やはり距離があるので出現したとしてもゴブリン、オーガであり、ほぼ毎日滞在している何れかの冒険者がモンスターの襲撃が発生した場合対応するのが暗黙のルールである。

 

これは他の農村とは違うルールで通常であれば一人や二人、農村で冒険者の退役者や一線を離れた者を雇い、村の護衛を務めてもらうのが通常である。

どの農村でもモンスターの出現に警戒をしている。よくRPGゲームでは村や町はゲームの設定上イベント位しか襲われないが、現実はそうはいかない。

四六時中モンスターの危機に晒されているのだ。幸いモンスターも人が多い所にはあまり姿を現さないが、水辺や森には姿を現し被害者は後を絶たないのが現状である。

 

さらに国への納税で農作物を納品しているので基本的に農民は平和だがかなり苦しい生活を営んでいる家庭は少なくない。

また、王国民は農業従事者でも兵として徴兵する時期があり、その為王国に対して村々の評価はかなり低いと言わざるを得ないのだ。

 

「ふー…こんなものか」

 

銅製の鍬で柵に覆われた畑地を耕している男は布で汗を拭きながら、肺に溜まった空気を新鮮な空気と入れ替えるようにそう呟く。

朝から夕方に差し掛かるまで、穀物を育てるために畑を耕していたが、さすがに腰に来るのか姿勢をエビ反りにしつつ、鍬を支えていない手でぽんぽんと腰をたたく。

その為視線を宙へと向ける中で、ふと「あれ? 今日の空はなんか黒い点があるぞ?」という疑念が浮かび、その黒点をじーっと見つめていると

ぐんぐんその黒点が大きくなり、ついには手足が確認され、そして顔を認識したとき

 

「……女神さまが降ってきたんさぁ……」

 

最後の語尾は感動に頭と口がリンクしない結果漏れたものであるが、それも仕方がないというもの。

傾国の美女がその男を見下しながら、されど冷たい微笑みを浮かべながら傍に着地した。

ふわりと男の鼻に……いや、脳髄にまで甘くけど若干生々しい匂いが刺激する。

 

「こんにちは、少しお聞きしたいのですが……」

 

傾国の美女……アセリアはそんな呟きをスルーし、口が半開きで顔が赤くなっている農民に問いかける。

 

「は、はい! なんでも聞いてくだされ!」

 

ちなみに彼は独身である。

 

「身分証明とは、どう取得するのでしょうか?」

 

上目遣いを意図せず使用するアセリアは天然の策士である。

16~8の初々しい女性と少女の間にいる揺れ動く美しさ。そしてその初々しさを倍増させる上目遣いの破壊力は計り知れない。

そんな衝撃をもろに食らった農民の男性は、それでも表面上は極めて冷静に努める。

 

「身分証明は持って無いのだすか?」

 

噛んだ。しかも質問に質問を返すという全く持って冷静ではないのが丸見えだが、そんな彼を見てアセリアはくすりと笑う

それにかわいいなーという思いと、はずかしー!という思いが沸きあがり顔に更に血液が溜まっていった。

 

「ええ、持っているという事はやはり何かあるのですね」

「そうです! ……ええとですね、その、通常であれば一家に一つ手形がありまして……」

 

ん? 手形? そんな疑念がアセリアの中に沸き、話している途中で悪いが質問をしようとした

 

「おおーい、モンドルさんや。って、どうしたんだい?」

 

その視線の先には恰幅の言い白髪交じりの50代だろうか、そのくらいの初老の男性が立っており

眉が濃く若干瞼に毛が侵食しているが、たぶん農村ではここまでお年を行くとそうなるのだろう。

 

「おお、これはこれは別嬪さんじゃないか。モンドルさんの……これかの?」

 

くいっと小指を立てる初老の男性

 

「い、いやいや違いますよ! ま、全く、村長はご冗談がいつもお上手で」

「なんじゃ、つまらん。だいたいモンドルさんは早く嫁をだな……」

「あ、そうだ村長! 身分証明を保証する物って何かありましたっけ?」

 

あ、これは長くなるぞ。そんな思いが彼とアセリアに宿り、強引に話題のレールを切り替える。

 

「む、もしかするとそこのお嬢さんが…?」

「ええ、身分証明をしたいそうなのですが」

 

じろじろとアセリアを見る村長。会話の流れからしてやはり身分証明書を持っていないのは普通あり得ないのだろうか。

いやしかし、電子化されていないのに、さらにこんな農村で一人ひとりが戸籍管理されているのはあり得るのか。

いや、限りなく低いとアセリアは思う。そもそも時代や世界がユグドラシルの剣と魔法のファンタジーに則している可能性が高いのだ。

 

その為時代的に中世の欧州文化に近いのだ。まぁ近いだけであり銃やオートマトン等は普通に存在していたがそれはゲームだからだ。

基本的にはその時代背景がある。都市や城下町等なら役所が住人を管理している可能性が高いが、上空からパッと見で役所らしき建物は見えなかった。

もしかすると普通の民家でその可能性があるのかもしれないが。

 

そんな思考をしながら村長がふーむとあごひげに手をやり

 

「なるほどの。まぁ立ち話も何だし、わが家へいらっしゃい。もう直ぐ日も暮れるしの」

「はい。ありがとうございます」

 

ぺこりと頭を下げるアセリア。その横のモンドルはその手があったかー……という念で空を仰ぎ見ていた。

 

「それではモンドルさん。ありがとうございました」

 

にこりと微笑みを浮かべるアセリアに眼を奪われたモンドルは夕方によく鳴く鳥類の声と共に正気に戻り、村長の何気ない自宅誘致の技に感心しながら家路へついた。

 

 

 

 

「なるほど、色々とありがとうございます」

「なに、困っている別嬪さんを助けるのは男として当たり前のもんだ」

 

モンドルと別れた後、村長宅へ誘致され村長の奥さんに紹介されぺこりと挨拶するとどこか嬉しいらしく

夕食を食べながらの質問会となった。その際料理があまりにも美味しく、アセリアが感動したのは言うまでもない。

その事に気をよくしたのか、村長の奥さんはお代わりもよそいアセリアを歓迎した。

 

食事の後も質問などが続き、アセリアが把握した情報によれば身分証明で一番手っ取り早いのは冒険者になる事であった。

農村はアセリアの予想通り一人一人の戸籍管理は行っておらず、モンドルが伝えようとしていた手形が一応の身分証明にはなるらしい。

そして確実に管理されるのは都民や大きな都市の住民権を買い取れば身分証明が発行されそれを管理される。

 

しかし、多額のお金などが必要なうえ、この世界の常識も把握していない。そんな状況で都市に移住をしたくないし、何よりこのリ・エスティーゼ王国だけでなくバハルス帝国、スレイン法国、竜王国などがあり、人間種族が主に住んでいるようだ。それら各国も見て回りたい。

他に亜人種等の国があるらしいが、それがどこにあるかは分からなかった。

 

現在リ・エスティーゼ王国領内の村にいるという事は分かっている。ここから東へ行けばエ・ランテルという昼過ぎに門前払いされた街がある。

 

そこに冒険者組合があり、冒険者登録を行うと身分……冒険者のランクを証明するプレートが身分を保証する証になるそうだ。

 

その後色々と話を聞き、部屋が空いているからという事で、泊まらせてくれるらしい。案内された部屋は質素だがゆっくり考え事をするには十分すぎた。

その好意に甘え、一応対価になるかわからないが、ユグドラシル金貨を気持ちという事でお礼に渡した。その際に質屋で金銭に代える事も可能だろう。というより、本当にいいのか? というニュアンスで相手は困惑していたが、気持ちだという事でアセリアは押し通した。

 

そして部屋で一人、アセリアは考える。

 

冒険者という者の話を聞くとやはり危険な橋を渡るらしい。オーク、ゴブリンは当たり前でアンデッドやオーガ、ウルフ系のモンスターの討伐や

未開の地の探索、薬草の採取。行商人の護衛、村の防衛等々依頼によって多岐に渡るがどれもこれも危険が隣り合わせであり

現に死亡数も多い。また冒険者通しのやっかみ事もある可能性が大きく、現在のアセリアは鏡で見せてもらったがもの凄く美人だ。

 

鏡で自分で自分を惚れ直したといっても過言ではない程「俺の嫁」は美しかった。

いきすぎた美貌は必ず何かよろしく無い事を手繰り寄せる。また、貴族や王族等もうフラグ装置なのかどうか分からないが

ぜひとも知らないで暮らしたいような人種がいるのは間違いがない。

 

そも、冒険者になるにあたって強さがどれくらい必要なのか。最初の銅ランクでちまちま日銭を稼ぎながら自分に向いた職を探した方がいいのでは。

何よりこのキャラはユグドラシル全盛期でも上位1千人位の実力で主たる職業は錬金術だ。つまりはポーション作成に向いているキャラなのだ。

一応錬金術系統は全て収めている。wikiに載っていた大錬金術師の次の「生み出す者」というとりわけ優遇されてる職も収めている。

 

一応下位の職業からクラスを開放していき様々な職をとりつつ気に入らないのがあればPK募集し、課金アイテムで特定のレベルを下げながらプレイをし、装備品に不満が出てきたので生産職で一儲けしようと思い、鍛冶系統は結構人気があったので、比較的需要が高いポーションとか消費アイテムを作り、定点で商売を始めれば高い装備とか買えるんじゃね? という思考の元、錬金術系を収めたが存外面白くそのまま生産系のギルドに所属し若干有名人にもなってほくそえんでいたが、それがこんなことになるとは露にも思っていなかった。

 

さらに困る事は、ぶっちゃけるとゲームではポーション作成する施設にターゲットをし、魔法を発動し材料を選択することでポーションを作成していたが

一応材料は持っているが、その施設が無い。いや、無い可能性が高いのだ。

そこらへんの話を聞くと一応薬師が存在しているしポーションも作成されているからあるのかもしれないが、あのゲームならではのなんでも対応した大釜があるのか

と聞かれたら、絶対に現実ではありえないだろうというのが正直な感想である。

 

ただし、アセリアはスキル使用制限があるが一応スキルで設備なしでポーション作成は可能である。これは生み出す者レベル1で取得できる「古の錬金術」というスキルの効果中に魔法を使用し作成が可能になるのだ。

ちなみに個数制限は無いので手持ちのアイテムを一気にポーションへ錬金することは可能だが、何が起こるかわからないので未だに放置のままだ。

というより、個数に制限がある時点で限定的な商売しか出来ない時点でもはやアウト。さすがに銀行などに預けたアイテムや金銭はこの世界に確実に無いのでどうしようもない。

 

ともすればやはり冒険者である程度この世界の情勢や状況、各国の格差や外交、さらに規模等の把握が必要である。

 

では、自身の戦闘能力はどれくらいあるのか、一応超位魔法も使用可能で、超位魔法使用短縮のための課金アイテムも存在している。というより

死んでも復活できる課金アイテムが無数にあるのはソロプレイを基軸にした活動を行っていたアセリアにとって必需品である。事故死というのはどのゲームでも起きてしまう事で、それらの対策の為に様々な課金アイテムを持っている。

 

戦闘職は黒魔術師レベル5、ナイト・インヴェルズレベル15、ナイト・ロード(夜の支配者)レベル10、隠し職レベル5そして「ワールド・ガーディアン」レベル15がある。あと一応「生み出す者」がレベル5

 

取得条件はかのワールド・チャンピオンよりぬるいがそれでも就けているのは全ワールドで500人程度のレア職業だ。

そして初代バランスブレイカーと言われた職業でもある。オンラインゲームなくせして、課金者でも容赦なく届かない職業を作る運営は糞と神、両極端に評価が分かれたものだ。

一応レベル100の状態でイベント、サービス開始ご1年記念だったか、そのイベントでのワールド・エネミークラスの「ドロップの取得権」の取得。

つまり、そのワールドエネミークラスのモンスター討伐に参加キャラ中一番ダメージを与えた者に付与されるものである。

 

勿論、その頃はガチビルドで更にレベル100で課金しまくりでとりあえずイベントが発生するという告知を把握した瞬間に、課金し火力武器を作成して何回か挑み取得した権限だ。

そのままPKや、PKKにPKされたりして必要と思った職業レベルを課金アイテムで固定し、下がった職業の後釜に「ワールド・ガーディアン」をぶち込んだのだ。

その為、さきに上げた通り全盛期時代は上位千人ラインに入り込めてたのである。

 

そしてその後装備をすべて神話級で揃える為に、金銭取得先となるポーション精製出来る錬金術系の職業を取っているが。

……まぁ若干弱くなっているが、それでもソロでレイドボスをごり押し(課金アイテム)で倒せるほどだ。

ただし、ユグドラシルでも切った事が無い切り札を使用すれば、全盛期以上の殲滅力を誇るが。

 

それらを踏まえても、本当に通用するか分からない。とりあえず自身の状況はゲーム時代に取得したスキルと魔法は使用可能という事が「本能」で分かる。

また戦闘では冷静に事が構えられるが、想定外の事態が発生した場合に対処できるかどうか、という点だがそれについては何とかして切り抜けなければならない。

 

「うーん、こんな事になるならレンジャー系のスキルでも取っておけばよかった」

 

そのレンジャー系のスキルで相手の強さが分かる「分析」というスキルがあるが、それにより自分との比較が出来て直ぐに冒険者になるか否かを判断できたのだが、無い物ねだりをしても始まらない。兎にも角にもある程度の常識や情報は手に入れた。

 

それに、冒険者は基本的に国が不介入という決まりがある為、何かあっても自己責任というある意味かなり身軽な立場も約束されているのでそこは魅力的である。

杞憂した貴族や王族の厄介ごとが降りかかる可能性は出来るだけ低くしたいのが本音である。

上手くコネクションを作ればこれほど良い相手はいないが、村長の話しぶりから見るにこの国の貴族たちは基本的に評判が良くないというのだ。

 

そんな相手にコネクションを築き、裏から操作され後の祭りでした。なんていう事態になりかねない。それだけはご免である。

 

兎にも角にも考えれば考えるほど、冒険者になった方が一番手っ取り早いという気がしてならないのがアセリアの本音である。

そもそもオークを片手間に倒せたという事実がアセリアの中に残っている。それを省みるにそこそこ行けるのでは?と思うが、それに待ったをかける自分もいる。

あれはたまたまオークが油断をし、じりじりと距離を詰めてくれたからであり、さらに庇われた際に彼らはほぼ一撃のもと死亡している。そこを考えると自分も一撃のもと殺されていた可能性がある。

 

アイテムの目利きは一応商人レベル5を取っているのでぼんやりと分かる程度だが、彼らは粗末な防具で身を纏めていた。

ランクでいうと低位級でチュートリアルで最初に説明してくれる人が「装備してみろ」という言葉と共にアイテムボックスに突っ込まれる。そんな程度の鎧だ。

 

だからこそ、あの被害になったという見方もできる。

だが、実際に攻撃を受けていないので、やはり神話級で固めた自分も殺されていたのかもしれない。という見方もできる。

つまりは、あの場で攻撃を受けていればこのわだかまりが解消できていたのは間違いないが、さすがにそんな勇気はなかった。

 

ただ、その時は「取るに足らない相手」という認識を抱いていたのは真実であるが、あの時はまだ状況などが整理されていなかったので

判断ミスであった場合もある。つまりは

 

「……とりあえず冒険者になる前に、モンスターの強さを把握せねば」

 

なってから把握するのと、なる前に把握するのとでは訳が違う。

前者は既に責任を負った後でもし、出来ません、倒せませんでした。なんていうのは信用問題にかかわる。

命からがら逃げてきたとしても、今後の生活に支障を来す場合があるし、転移等で逃げて自分だけ生還したら恐らく、罪悪感が物凄い。

また、依頼失敗という事で「銅クラスの依頼も出来ない雑魚」という認識が広がり、今後もし成長したとしてもそのレッテルを取り払うのは容易ではない。

つまりは冒険者の活動をする上でかなり支障を来す可能性が高いのだ。

 

後者はそのリスクが無いが単純に死亡するリスクがあるのみで、逃げ帰っても何とかなる。

故に冒険者になる前に自分がこの世界でどこまで通用するレベルなのか。それを把握するのが明日の課題である。

幸いなことに、北東へ行くと「トブの大森林」というモンスターがいる場が比較的近いという事なので明日はそこで実験するのがベストだと考えた。

 

「……はぁー。正直こんなこと考えるの苦手なんだよなー」

 

現実世界では社会人で、それなりにコミュニケーション能力は培われたが、こういう今後の行動を事細かに立てて実行するのは未だに不慣れであった。

簡単に言えばリスクマネジメントやリスクヘッジがかなり不得意なのだ。ゲームでは方向性がはっきりしており、戦闘もモーションやディレイなどはっきりした数値で表せてあり嘘をつかない。

 

だが現実では今アセリアが握っている情報が「どこまで正しいのか」という判断が出来ない状況だ。つまり今の所詳しく親切に情報を提供してくれた村長の話をほぼ鵜呑みにする他なく、これが嘘であった場合どう転がるかが全く把握できていないのだ。

故にもう少し多くの人に同じような話を聞いて信憑性を高めたい所だ。幸い現役の冒険者が多く利用している村だという。

 

つまりは、冒険者からモンスターや戦闘等の情報を提供してもらい、それを自ら検証すれば答えは必ず出る。

その為の「金貨」なら手元にある。何とか情報を得たい所だが、どう転がるか。明日は重要な一日になりそうだ。

 

ちなみに村長は魔法がつかえないので【蘇生】に関しては質問をしなかった。これは魔法詠唱者に質問した方がいいと判断した為である。

 

「さて、服を綺麗に……って、あれ? 土とか泥とか血も付いてたのに…」

 

何故か脱ぎ方が分かるドレスローブなどを脱いで、下着姿になる。そして土を窓から落とそうかなと思ったのに、ドレスローブは夜より深く暗い漆黒を放ちながら

その存在感を出している。その存在感を邪魔する土などは付着しておらず、いつの間にかとれていたのだ。

 

「こんな機能何てあったかな? …まぁいいか」

 

そんなものだろう、何せ神話級の防具なのだ。そういう事が起こってもおかしくは無い。そう結論を出した。

 

「って、下着とかどうしよう……これ買わないといけないよな……はは、笑えて来る」

 

そしてアセリアの胸と股間を覆っている布、まぁ下着だがそれについては早急にそろえなければならないと確信し、兎にも角にも生活基盤の構築を急がなければならない

 

そのことを再認識しながら、とりあえず汚すと嫌だし。という理由ですべて取り払い、絹一枚も纏わない状態になり、渡された濡れた布で体を拭き、ベッドに横になった。

仄かな期待と、一日が漸く終わるという安堵と感謝と共に、アセリアは夢の中へと旅立った。

 

 




誤字脱字等ございましたらご指摘をお願いします。

主人公は強いです。結構強いです。この世界だと(モモンガさん含め)最強格です。
ただしワールドチャンピオンよりは流石に弱いです。
また、今後オリジナルの魔法やスキル等が出てきますのでご理解をお願いします。

最後に、設定的に大きな誤りがあればお知らせいただければ幸いです。
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