オバロ世界を生きぬきたい   作:モーリン

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6話 ワーカー

「うし、一通り狩り尽したか」

 

あたり一面霧深く、見渡す限り「白」の世界が広がっている平野。死者が生者を自分たちの世界に招こうと襲ってくる恐ろしい場所である。

そんなカッツェ平野で死者……アンデット狩りに勤しんでいる四人一組のワーカー。

 

ワーカーというのはいわば請負人で、冒険者のドロップアウト組と言われている。

冒険者は守りの仕事でワーカーは攻め仕事とも言われているが、ワーカーは冒険者では依頼出来ない案件をこなす事も多い。

汚れ仕事は勿論だが、危険なモンスター等の退治も仕事内容に入っているのだ。

 

ワーカーは実力があればだれがどんな仕事をしても差し支えない。冒険者組合のように精査し適格なランクの者達に仕事が実力ごとに振られる訳ではない。

故に実力が無ければ依頼が舞い込んでこないのだ。だが、それだけだと頻繁に依頼が舞い込んでくるはずがない。

 

ワーカーも多数存在しており、その全てに潤沢に依頼が舞い込む事はあり得るわけがないからだ。

 

であれば日銭はどうやって稼ぐのか。一番単純なのがモンスター討伐である。

しかしモンスター討伐の際に部位を持っていき「冒険者組合」へ提示しなければ報酬金が貰えない。それは常識だ。

だが、それでもワーカー達がモンスター討伐するのはそういった需要があるからだ。

 

仲介人を通して冒険者組合へ物を流し報酬金を貰い手数料を差し引かれてワーカー達の手に渡る仕組みになっている。

仲介人から冒険者組合の間には色々な人や思惑が絡み合っているが単純に言えばそうであろう。

冒険者組合もそれらを黙認している。冒険者が倒さなければならない。そんな決まりは一切ないからだ。

 

そんなワーカーの日銭稼ぎに適しているのがこのカッツェ平野である。

無数に沸くアンデットは中心部に行けば行くほど強力なアンデットが発生しやすいが、外周や中心部に近づかなければ並みのワーカーであれば大したことは無い。

なので殆ど無限に沸いて出ているのではないかと思われるほど、無数に居るアンデットを一通り狩り尽せば日銭にしては大きな金額を得る事が可能だ。

 

ただし油断はしてはならない。数が多い為足元を掬われたら一瞬でアンデットの仲間に成り下がる。

さらに運が悪ければエルダーリッチ等の強力なアンデットも外周へ姿を現し猛威を振るい、少しのミスで死に繋がるのだ。

 

そんな場所でワーカーの【フォーサイト】が日銭稼ぎの為アンデットを相手にしていた。

丁度スケルトンを倒したところだろう。砕けている骨とエルフ耳の女性が周囲を警戒しパーティーの男性2人、少女1人に頷き、全員が警戒を解く。

 

この【フォーサイト】はパーティーで珍しく男女比が2:2というパーティーである。

基本的に集団での行動は男女分かれて居る方が長続きするのが通説だ。

 

まず男女というのは恋仲になり得る、そしてそれは冒険の中が一番機会がある。

吊り橋効果や一緒の危機を乗り越えるとやはり「仲」という物が深まるのは人間種なら大多数が当てはまるだろう。

それが進むと恋仲になり冷静な判断が下せなくなる。

 

それはつまり状況に応じて「助ける」仲間を見誤りやすいという事と状況の判断に余計なファクターを加えてしまう可能性が高いからだ。

 

すなわち、チームプレイの欠如。パーティーとして自分の実力以上のモンスターを倒す際に欠かせない力だ。それの欠如は死を齎す。

それが分かっているから基本的に冒険者やワーカーは男女どちらかに固まってパーティーを作成するのだ。

 

「ったく。何時来ても辛気臭せぇ所だぜ」

 

ナックルガードがついているショートソードをあまり飾りっ気のない鞘へ納刀し、そう零すフォーサイトのリーダーヘッケラン。

金髪碧眼の男性。しかし歳は若く20歳になるかならないかの男だ。だが、その若さにも関わらず修羅場を超えた者が出せる風格という物が漂っていた。そのヘッケランがため息と共にそう呟く。

 

「あなたの辛気臭いため息のせいでこっちは更に辛気臭くなっちゃうよ」

 

やれやれと頭を振るくすんだ黒髪の女性。しかし人間では無い事が一目でわかるような長い特徴的な耳……彼女はハーフエルフのイミーナ。

歳はヘッケランと同世代に見えるがエルフは基本的に若い肉体で長くいるので本当の年齢は不明である。

得物は弓で矢筒に矢を戻しながらヘッケランが吐露した弱音をセンターへ打ち返した。

 

「はは、相変わらずイミーナさんは元気ですね」

 

腰にメイスを戻した頭部以外がっしりとしたプレートメイルを着込んだ30代の人の良さそうな男が、微笑みを浮かべながらそのやり取りの感想を口にした。

彼の名はロバーデイク。聖印が描かれたサーコートを着ている神官である。

 

「いつもの事」

 

言葉少なくロバーデイクにそう返す女性……いや、少女と形容も出来る金髪の美少女。リブ生地のようなタートルネックの服に下は動きやすい灰色のジーンズを着込み手足は茶色の厚手の生地で作られた手袋と靴を装備している。そして、その手には杖がある。

他の三人と比べると少し格が劣る格好である少女の名前はアルシェ。チームの火力も担っている。

第三位階魔法を10代で使用できる事実は驚愕であると同時に、何故そのような人物がワーカーに居るのか。

 

理由は簡単である。両親のツケが回ってきたためである。

 

元々貴族であったがバハルス帝国の皇帝が変わり、その煽りを受けて没落してしまったのだが、過去の栄光というのを忘れる事が出来ない両親が未だに貴族の様な贅沢を尽くしている。

そのお陰でアルシェは元々帝国の魔法学院に通っていたがお金に困り、ワーカーという職業に就いたという経緯がある。

そんな両親なら捨てればいい。そう思うだろうがアルシェにはそれが出来ない理由があった。

 

それは二人の妹。

 

彼女達がお金が欲しいという理由でどこかに売り飛ばされる危険性がある。

アルシェ自身は長女の為、跡継ぎの関係で人身売買に掛けられる心配は少ないが、妹である彼女たちはそれに全く当てはまらない。

いつ両親がとち狂って妹を売るか分からない状況で、収入が途絶えたら何をするか分からないからだ。

 

フォーサイトのメンバーに事情を話し助力は得られるだろうが、他人に迷惑は掛けられない思いとそもそも暗黙のルールでそういうことはご法度だ。

 

故にアルシェ自身が稼ぎ頭にならなければいけなかったのだ。そして稼いだお金の大半を家へと入れている。その為他の3人より装備が心もとないのだ。

だがそこは持ち前の才能と魔法、そしてタレントでカバーしパーティー最大火力に貢献している。

 

そしてそのタレントは看破の魔眼とも言うべきもので、相手の魔力をオーラで量り知る事が出来、さらに相手が何位階の魔法まで使用できるかも把握できるという物。

簡単に言えば強さを調べる事が出来るタレントで、フォーサイトは何度もこのタレントによって窮地を逃れてきたのだ。

 

「それで、どれ位のアンデットを狩ったの?」

 

一息ついたからであろう、アルシェがヘッケランに向かってそう問いかける。

 

「ん? ああ、そうだな。……ざっと見て金貨2枚に銀貨10枚ちょいって所か」

「……もう少し欲しい所」

「だな」

 

金貨3枚以上は欲しい。1日の収入でこの数値はかなり稼いでいる方だが、装備の手入れ、使用したポーション、飲食代。

更に馬車の手配等をすれば手元に残るお金は微々たるものだ。とはいえ金貨3枚あれば普通に生活して一人1年は暮らせる程の大金なのだが……

だが、さきに上げたポーションはいい物になれば金貨数枚というレベルで必要なのだ。いくらあっても足りない。

 

道具袋から水筒を取りだし、喉を潤しながら一行の意見が合致した所でイミーナが何かに感づいたらしく、弓を構えながら目を閉じる。

その剣呑とした雰囲気を察知し、それぞれの武器を抜刀しながらどこから来てもいいように彼らは陣形を組んでいく。

 

「……そこ!」

 

その耳でアンデットの行進を察知し一瞬で弓を引いて矢を放つ腕前は流石と言わざるを得ない程流麗で無駄がない。

空を切り裂いてまだ見えない敵へと飛来するが、それが何かに遮られそしてフォーサイトに強襲してくる敵が霧の中より姿を現した。

 

「エルダーリッチ!!」

 

このカッツェ平野では最上位に位置するモンスターで、滅多に会う事が無いモンスターである。

豪華爛漫なローブをはためかせて彼らへと接近するエルダーリッチはユグドラシルでいうとレベル20位のモンスターである。

しかし、この世界の冒険者含め、ワーカーもレベル20以下の者が大半以上を占める現状、エルダーリッチは難易度60後半の強さで、ミスリル冒険者級が適正討伐難易度となっている。

 

「ちぃ! イミーナ下がれ!」

 

前衛であるヘッケランがそのショートソードを構えエルダーリッチと正面に事を構えるが

 

「……様子がおかしい」

 

後衛のアルシェが冷静に状況を分析してそう呟く。

エルダーリッチが手にしているねじくれた杖はマジックキャスターの証だ。つまり距離を詰められるのは通常であれば悪手だ。

故に適度な距離を保ちつつ敵を焼殺する事がエルダーリッチの得意な戦術のはずなのだ。

 

だが今は距離をグングンと詰めてきている。そして正面のヘッケランに気にせずただ、正面に来ない様に方向を少し変えるだけで進行方向はほぼ変わらず。

まるで何かから逃げているような。

 

「どけ! 人間!」

「は! どかしたいならこの俺を」

「ちょっと待って! 何か聞こえるわ!」

 

イミーナがかなりの声量でヘッケランにそう呼びかける。油断ならない相手を目の前にして誰もがそのイミーナの発言に疑問を持ったが、一人だけ……

いや、一匹だけイミーナの言葉を理解した。

 

「く、来る! あいつが!」

「な、なんだぁ?」

 

エルダーリッチの様子が可笑しい事に全員が気づき、エルダーリッチが振り返り杖を逃げてきた場所へ向かって構えた所を全員が注目した。

 

「……ぁ……ぃ、…ぇ」

「……讃美歌?」

 

綺麗な音であった。途切れ途切れだがその声はまさしく美しく、嫋やかな音色でまるで讃美歌のように聞こえるのは無理なかった。

 

「たーだこのせーかいを~~」

「歌……なのか?」

 

遠くからは途切れ途切れで判別出来なかったが、声の音色は感嘆の息が出る程美しく、劇場では主役級のレベルだ。

だがだんだん近づくにつれその接続にかなり疑問を持つ。何というか乗せられていない音色は讃美歌ではなく、不協和音にしか聞こえなくなってくる。

 

「おや? 聞こえなくなりましたね」

 

しばらく不協和音が何処からともなく彼らの耳に入っていたが、それが聞こえなくなり静寂が、カッツェ平野のあるべき姿が戻ってくる。

その事実にエルダーリッチは杖の構えを解き、まるで人間のようにため息ついた。

 

「よし。逃げ切っ「うぃざりーわーる、どおおおん!!!」」

 

そしてフラグを立てた瞬間、エルダーリッチの上空に一瞬で移動してきた何かに彼は押しつぶされ、そこからまるで壁など無いように地面へと激突した。

そこから本当に地面が揺れているのではないかという程の激震。周囲の霧がその声の主から逃げるようにぶわりと震源地を中心に引いていく。

そして発生した風圧が砂埃と共にフォーサイトに襲い掛かった。

 

「ぐうっ」

「くっ」

 

発生した砂埃が辺り一面に舞い、一同は腕で顔を庇うように出しながら何とか相手を見ようと視線を元凶へ向け、アルシェの脳が全力で拒否反応を起こした。

 

「!? うっおええええ! げぇええええぇ!」

「アルシェ!?」

 

杖を投げ出し地面に倒れるのを両手と膝で何とか踏ん張りながら、アルシェはその場で吐瀉物を胃が空になる勢いで吐き出す。

その瞳は恐怖に飲まれ視線が定まっていない。全身も細かく痙攣させ、危険な状況だと一目でわかる。

その異変にいち早く察知したイミーナに、ヘッケランはその場で剣を構えながらパーティーを庇うように仁王立ちし、ロバーテイクはイミーナとアルシェを庇うように前へと出る。

 

立ち込めた砂埃が一部晴れてくると、そこには美しいロングソードを地面へと突き刺している、漆黒の髪を揺蕩わせているエルフを見た。

 

「うっし、3匹目」

 

完全に骨の残骸になったエルダーリッチの成れの果てから、ずぼりとその剣を引き抜き、エルダーリッチの証であるその豪華爛漫なローブをはぎ取り両手で裏と表を見ながら、少し不機嫌な様な声色が彼らの耳に入る。

 

「あーあ、穴空いてるよ」

 

ぱんぱんと土を払う音を立てながら、漸く晴れてきた砂埃の間に彼らは見た。

そのどこまでも深い紅い瞳、まるでルージュを塗ったかのように艶やかな唇、運動していたからか、やや上気したその顔は美しく、艶やかだ。

 

「お前……何者だ」

 

アルシェの異常をロバーテイクに任せ、ヘッケランは剣先をその美しいエルフに向けながらそう問う。

美人だ、美しすぎるとも言っていい。どこかの姫騎士のような蒼と金のエレガントなデザインが施された白い衣装は彼女の美しさをより引き立てていた。その衣服には若干土汚れが見受けられるが、それでも綻び一つない見事な状態であった。

そんな漆黒のエルフは声がする方にようやく気づき、その視線を向ける。

 

「ん? あ、どうも。こんにち「逃げて! ヘッケラン!!」は?」

 

納刀して近づく漆黒の髪のエルフに、ヘッケランは何だ? という疑念が沸き起こるが、相手はあのエルダーリッチをゴミ屑のように倒した相手なのだ。

いくら相手が納刀してもこちらは警戒心を解けるはずがない。そんな気構えでいた所、そのエルフが心地いい声で話しかけようとした瞬間に

ロバーテイクが【獅子ごとき心】を使用し、気を取り直したアルシェがヘッケランへ向けて、アルシェの人生最大の声量で叫ぶ。

 

それを鼓膜で受け止めた瞬間に、右足へと力を伝達させ一瞬で距離を空ける。だが退却はしない。何故なら守るべき者たちが居るからだ。

 

笑顔で固まるエルフを尻目に、フォーサイトは何時でも逃げられるように陣形を整え、アルシェに視線を向け、エルフへと視線を戻す。

 

「……化け物。私たちでは、絶対に……勝てない」

「……そんなにか?」

 

こくりと、目の端に涙を浮かべている漆黒のエルフを力強く見るアルシェ。

 

「今は一分一秒でも惜しい。……隙をみて逃走すべき」

「……けどよ、あいつは剣を納刀しているぜ?」

 

それに敵意も無い、ヘッケランに映ったのはただこちらに挨拶をしようとしていた所だ。

 

「あれは擬態。私が見て判別する限り……途方もない魔力。師匠ですら足元にも及ばない程の強さ……そして」

「…そして?」

 

その先を聞いてはいけない。そんな本能からの警告がヘッケランを襲う。だが、それを否定して欲しい。そういう思いで聞き返した。聞き返してしまった。

 

「恐らく……第10位階魔法を行使できる」

 

ぞくりと、彼らの背筋にまるで氷柱が突き刺さり、そこから途方もない冷気が体温を外へと弾きだすかのように、体の芯から凍てついていくのが分かる。

そしてぶわりと脂汗がにじみ出てくる。極度の緊張で息が詰まりそうになるのを彼らは自覚した。

衣服にその汗がべったりとくっ付き、普段であれば気にしてしまうが、今はそんな些細な事に気を配る余裕など、彼らにはなかった。

 

第10位階魔法

 

もはや神の領域である。人類最強のマジックキャスター、帝国のフールーダ・パラダイン。人類最高峰で英雄を超えた者に送る称号「逸脱者」

その彼でも扱える位階は6位階までだ。そしてフールーダ・パラダインと帝国の軍の戦力は同じである。

つまり、一国の軍と対等に戦える力が第6位階ですら存在しているのだ。

 

そして第7位階からは完全にお伽噺の世界である。一応存在は確認されているが、人生で一度目にすることも無く死んでいく生物の方が多い。

その位階魔法の最高位。第10位階魔法を扱えるとはつまり、どこまでの事が出来るのか。

 

想像を絶する強さ。そこまでしか、いつの間にか彼らを見て何か考え事をしている漆黒のエルフについては分からない。

 

そんなエルフが手に持っている武器を宙へと投げ、光に変わる様子にヘッケランは驚愕の表情を晒す。

驚きの声が出る寸前に、漆黒のエルフの品の良い口が開かれた。

 

 

「……よく私が使える魔法の位階が分かったね」

「!?」

 

目を見開く一同。そして声がした方へと後ろを振り返る。

 

瞬きはしていない。アルシェの言葉を聞きつつ警戒をしていたはずだ。相手に敵意が見えないから警戒を緩ませた。なんていうへまはしていない。そもそも剣とセットで見ていたはずで、目線を逸らすという行為をする筈もない。

更にロバーテイク、イミーナも間にいたはずだ。

では、何故あの漆黒のエルフは、今度こそ本当に全身が漆黒のドレスローブになり、いつの間にアルシェの顎を優しく掴み視線を合わせているのだろうか。

 

魔法も何も発動していない、その場で動いていない姿勢も変化していない、なのに何故一瞬で三人の視界から消えてアルシェを捕まえているのか。

 

「あなたは何故、それを知る事が出来たのかな?」

「う、あ…ああ……」

 

超至近距離で魔力のオーラに中てられて、もはやロバーテイクが施した魔法は決壊寸前であった。しかしここで倒れるわけにはいかない。

その思いが心の底にあり、何とか最後の一線を保っている。しかし、口から涎が垂れ、焦点が合わず、目からは涙がとめどなく流れてしまっている。

 

「て、てめぇ! アルシェから、離れろおおおおおお!」

 

【限界突破】【肉体向上】

 

仲間の危機を悟り、武技を二つも一気に使用し、残りの武器を抜刀。

大地に足跡が残る勢いでアルシェが掴まれた手に目掛けてまさに弾丸のように駆け出した。

 

ごうっ! という擬音が最も当てはまるだろう。オリハルコン級にも届きうる身体能力を以てして、仲間の救助に踏み出した。

 

「ヘッケラン!? このおおお!」

「はあああ!」

 

ヘッケランに呼応し、イミーナは矢をロバーテイクは鈍器を深淵を纏うエルフへと攻撃する。

恐らくこのまま攻撃が通れば時間にして一秒未満の間にイミーナの矢が深淵を纏うエルフに届きうるだろう。

通常の人であれば、この細い時間に反応出来るかどうかというレベルだ

 

その細い時間の間に、手を彼ら3人に向け翳した。それを見たアルシェは虚ろな意識ながらもその意味を読み取り、目を見開く。

 

やめて

 

そう言葉を口にするより早くエルフは口を開いた。

 

「【重力の檻プリズム・グラビティ】」

 

大気がヘッケラン、イミーナ、ロバーテイクへと伸し掛かる。飛来している矢ですら、地面へと叩き付けられた。

地面が彼らを縫い付けるように、そして偉大なる魔法使いの前にひれ伏せさせるように、彼らを重力の檻で捉え離さない。

 

「ぐぅう!?」

「な、なにこれ!?」

 

後一歩。その位置まで来て途方もない重みで3人が四肢を投げ出しひれ伏す。

その姿にアルシェは自分が、自分が何とかしなければ。そう思い、その手から逃れ杖を構え

 

「【雷撃】ライトニング!」

 

バチッ! と、エルフに直撃した。エルフの全身にのたうつ様に青白い紫電が広がっていくが、それを全く意に返さずにエルフは、驚愕に染められたアルシェの表情を優しく、悲しそうに見た。

 

「申し訳ないけど、私にダメージを通したいなら最低でも第7位階魔法を【最強化マキシマイズ】させた魔法じゃないと無理だよ」

「……え?」

 

全身が恐怖に覆われるのがアルシェには分かる。

 

「まず、私のこの「深淵」シリーズには魔法ダメージ50%カットが付与されており、装備を加味した私のステータスで魔法のレジスト計算。私の魔法抵抗値なら第3次レジストまでされ、その半分になった威力はそこから約4分の1となる」

 

このエルフが、何を言っているか理解できない。

 

「更にHP10分の1までのダメージをカットする効果も付与されているから、単純に魔法無効化レベルⅤより効率良くダメージをカットできる。つまり、あなたの攻撃で私に傷を負わすことは」

「う、うああああああああ!! ライトニング! ライトニング! ライトニング!」

 

何度も何度も深淵を纏ってるエルフに自身の最高の魔法を顔、目、胸、腹、股間。目につく所全てに叩き込む。

だが、すでに電気が走ってない所が無い筈の、普通なら生きているはずがない程の攻撃を浴びつつ、紫電に染まった手を杖へ優しく伸ばし、掴む

 

「ら、らいと……う、うう」

 

もうほとんど魔力が無いがそれでも杖を振りながら魔法を無意識的に出そうとする。

 

生きたい

 

掴まれた杖から電流が流れ、手に火傷を負うが、アルシェにはもうそんな事、意識内に無かった。

 

生き残りたい

 

だが、その思いも願いもその全てを引き込む紅い目に打ち砕かれた事をアルシェに悟らせた。

 

「不可能だよ」

 

恐怖と一気に魔力を使った事と、そして聞こえる綺麗な深い絶望により、意識を闇へと落とした。

どこか遠くから仲間の声と、脳裏に残る妹たちの声がアルシェの感じた最後の言葉であった。

 

 

 

 

(……やばい、どうしよぅ)

 

崩れ落ちるアルシェの体をその手で支える深淵を纏ったエルフ……アセリアは、内心やりすぎたと後悔している。

だが、アセリアにしてみればいきなり冷水をぶっ掛けられたも同然であった。

何の情報も無しに更に分析系統の魔法使用も発動形跡がないのに、なぜアセリアの隠し通したい真実を知れたのか。

見た所、蒼の薔薇より全員が弱い事を見て取れる。つまり強さを超えた何かが彼女にはあったのだ。

 

それが何かが不明な以上は手加減をする必要は無かった。しかし、殺す必要も無い、というより殺すつもりはこれっぽっちも無かった。

そもそも友好的に接し情報交換でも出来るかなーという事と、そろそろ飽きてきたからいい気分転換になるだろうと当初は思っていたほどなのだ。

 

だが、大きな男の影から金髪の美少女が大声で警告を発し、自分が危険者扱いされるとアセリアは思っていなかった。

更に攻撃までされる始末。しかし、アセリアはこの一連の出来事に対し全く動じていない。そもそも戦闘だと思ってもいないからだ。

ただ、危険視をされていた状況を省みて、普通に交渉しても、今自分が腕に抱いている少女の言葉で彼らは聞く耳を持たないだろう。

 

ならばこの金髪の少女の秘密を知る為に、実力差を思い知らせるべきだと結論に至った。それはつまり、反論の余地をなくすことだ。

嘘偽りを吐くことを許さない状況を作り出さなければならない。単純に実力差だけならもしかしたらアセリアが知らない能力で逃走される可能性もあった。

また、いくらアセリアでもスクロールで【次元の移動】でもされたら逃がしてしまう。

 

その可能性も潰すために一人を捕まえる必要がある、その中で彼らはこの少女の言葉に重きを置いていたのをアセリアは感じ取っていた。

装備は普通ではないし、登場の仕方も派手だったが、友好的に接するような人物を何の根拠もなく危険視し、そしてそれを肯定する。

つまりこの少女の言葉にはそれほどの何かがあったという事。そして結びつくのが自分の真実を見破った何か。

 

……と、この状況でアセリアはそう考えているがぶっちゃけ「何かあったら嫌だし、とりあえず先制しとこ」的な考えで動いたのは言うまでもない。

 

そこから圧倒的な実力差を感じさせ、終始有利に事が運べるぜふひひ。という目論見が気絶してしまったことにより外れてしまっているが。本人的には俺tueeee!のテンプレである「ば、馬鹿な……この力は!?」とか「ありえない……あり得ない!?」とかそんな事を期待していたのは言うまでもない。

 

とはいえ、そもそも登場の仕方で普通は危険視される程、異様であった事に本人は全く気付いていないのが何ともあれだが。

 

「ち! アルシェに何をした!」

 

未だに重力の檻に囚われている3人に視線を向け、さてどうしようかなと頭を悩ませている。

 

「まさか、殺したのですか!?」

「いえ、気絶しただけです」

 

その声と共に魔法の効果を終了させるように片手をふわりと、まるで砂埃を払うかの如く動かす。

 

「か、体が」

 

押し付けられていた途方もない重力が、ふわりとその動かした片手と共に霧散し彼らに自由が戻ってきた。

素早く立ち上がり、ヘッケランはどうアルシェを救出しようかと頭をフル回転させる。

 

(何か、何かないか!?)

 

まずアルシェを含めていたとしても逃げる事はおろか、勝負にすらならなく自分たちは殺される事だろうという結論は既に出ている。

しかし今はアルシェがアセリアの手中にある。つまり、下手な行動をすれば間違いなく見せしめとしてアルシェが殺される。

それだけは避けたい。彼女にはまだ幼い二人の大切な妹がいるのだ。

 

アルシェは隠しているが、長年付き合ってきた仲間なのだ。依頼をこなしつつ、一年以上も変わらない装備はおかしいと思った。調べてみると案の定であった。

だが言い出せないじゃないか。同じ仲間でアルシェは隠し通している、隠そうとしている。ならば踏み込めないじゃないか。仲間なのだから、待つしかないじゃないか。

 

ぎりっと歯を軋ませその顔には焦りが浮かんでいる。流れる汗が頬を伝い顎から地面へと零れていった。

 

(いや、まだだ。まだ、諦めてたまるかよ)

「……何が、目的、なんだ?」

 

重い。自分の言動一つで仲間全員の命が掛かっている。その伸し掛かる重さは尋常ではない。

だがヘッケランはやらねばならない。この【フォーサイト】のリーダーで、後ろには恋人がいるのだ。

 

やらねばならない

 

「……目的、という程でもないんだけど…少し聞かせてくれないかな?」

「…何だ?」

 

「何故この子は私が10位階魔法を使える事が分かったのか」

 

何? というのがヘッケランらの共通する思いだった。これほどまでの実力を有しているのであれば世界で10指に入る程「魔法使い」にとって有利なタレントを持っているはずだ。

事実、第3位階を収めている殆どの者は大小有れど、タレントを有していた。そしてこれほどまでの実力者でそれらを「知らない」という事はあり得ないと言ってもいい。

 

何故なら魔法は独学での取得は困難を極めるからだ。

 

通常魔法というのは魔法の才能を師匠に見出された子供などが弟子になり、身につけて行くものだ。

また、帝国では魔法使い、マジックキャスターの立場が王国より高く、帝都には魔法学院が設置されているほどで、そこでも魔法を学べる。

つまり師事無くして魔法を学ぶという事は、確実に魔法に関するタレントが無いとほぼ不可能であり、通常そのタレントを有してたとしても2位階がやっとで3位階はほんの一握りだ。

 

教わらなかった。

 

それはない。古代から生きてきたエルフだったとしても最初は誰でも初心者時代がある。その中でタレントを教えられたり自覚させられたりするだろう。

 

そこで漸くふと気づく、首についているチョーカー。良く見るとチョーカーではなく、冒険者の証の「銅」のプレートだ。

 

(なんの冗談だよ……!)

 

銅、カッパー、最下級、新人、初心者、駆け出し。そんな言葉が当てはまる称号。

だがこれ程不釣り合いな人物は居ない。第10位階魔法が使えるカッパー冒険者。

 

(いや、待て)

 

だが、ヘッケランはふと気付く。そのアンバランスさ。そして見識の狭さ。しかし、良識は持ち合わせている。

現にアルシェに直接危害を加えていないし、相手に手を出そうとしたのはフォーサイトが先だ。

そして邂逅の際、普通に納刀して挨拶をしてきたという事実。そして、冒険者としてカッツェ平野にいる事。

 

(……もしかして、とんでもない思い違いをしていたのか?)

 

アルシェが危険視したのは事実。そしてその言葉に従ったのも事実だ。だが、相手の意思を確認しなかったのも事実であった。明らかに異様な出現の仕方だから警戒心を抱いてしまったが、そもそも敵対するような行動を相手がしたのか。

 

(だが、確信がない)

 

良識は持ち合わせているが、アルシェの言うとおりそれすらも擬態なのかもしれない。フォーサイトのリーダーとして選択を間違えるわけにはいかない。仮に謝罪をした際に対価を求められたら、第10位階魔法を行使できる神話上の人物に御眼鏡に適うものなぞ、ヘッケランは勿論のことフォーサイトの面々も持ち合わせていないのだ。

であれば、金銭や物品ではなく、フォーサイトの誰かか全員にデメリットになる対価を求められる可能性があるのだ。

 

それだけは避けたい

 

そしてその対価を求められ、一番被害を被る可能性が高いのは

 

「……タレントです」

(!? ロバーテイク!)

 

一番最初に彼女の問いに答えた人物だ。

 

ロバーテイクもヘッケランと殆ど同じ結論に達していた。ここを切り抜けるには問われた事を正直に話し、謝罪するべきと確信している。それも、なるべく相手の機嫌を損なわないで。

そこで一番適任はロバーテイクであった。温和な性格で、口調も柔らかい。

 

(……いいのです。ヘッケラン)

 

そう思いを込めて、僅かに向けられた視線に、頷いて返す。

勿論、全員に同じ対価を。という事も十分可能性があるがそれでも矢面に立つというのはそれだけで危険なのだ。

 

「タレント?」

 

ユグドラシル時代では聞き慣れない単語である。思わず素で問い返すアセリア。

スキルや魔法であれば一応、情報の防御魔法は掛けてある。これはユグドラシル時代の癖だ。

攻勢防壁では無いが、その代わり防御の幅が広いのが特徴だ。魔法だけではなくスキルも範囲に含まれているからだ。

 

それに引っかからないという事で魔法でもスキルでも無いというのは確定していたが

 

(もしや、この世界の特殊能力か?)

 

そんな疑問が沸いてくる。

 

「それで、タレントというのは何が出来るかな?」

 

一応、まだ上位者という形で演技を続けるアセリア。

 

「タレントとは生まれ持った異能で人によって持っている能力は違い、宿っている者と宿っていない者がおります。そして、今あなた様が腕で抱いているそのアルシェという者が、そのタレントを持っております」

 

なるほどね、つまりパッシブスキルに近い能力という訳か。であれば防壁に意味がないのは理解できる。

そうアセリアは考える。実際アクティブスキルや魔法でなければ防壁は意味がないのだ。

 

そして「様」と使われるのはアセリアにとって少しむず痒い。が、それを表に出さずに口を開く。

 

「なるほど。それで、このアルシェが持っているタレントとは?」

 

そうしてアルシェを示すように胸元へと動かす。

 

「それは「それは、目視した相手の魔力と使用可能な魔法位階を、探知することが出来る、タレント」なっ!?」

「アルシェ!? 何でそのまま気絶した振りを!?」

 

イミーナが声を張り上げる。既に呼吸のリズムが違うという事をその耳で拾い、起きている事に気づいていた。

だからこそ、何故そのまま寝ていなかったのだと、ロバーテイクの意志を何故尊重しなかったのか。

 

「このタレントにより私はあなたに対して危機感を抱き、そして彼らに警告をしたのは私。だから殺すなら私を」

 

そうアルシェは起きていた。タレントの説明をする前から起きていたのだ。

そしてヘッケラン、ロバーテイク、イミーナと同様の考えを持った。そもそもの発端は自分にあると。

自分の責任でこの人の良い彼らを死なせる訳にはいかない。妹も大事だ。けど、彼らだって大切なのだ。

 

「アルシェ!? 馬鹿野郎!! 殺すなら俺だ! なんでもする! 頼むからアルシェには手を出さないでくれ!」

「そうよ! 殺すなら私たちを!」

「私達の命でよければ! どうか!」

 

そしてそれはアルシェ以外のメンバーも同じことであり、そして背景を知っているからこそアルシェを助けたい。その一心でアセリアへアルシェの助命の嘆願をする。

 

その嘆願がアセリアにとっては余りにも予想外すぎて、そして暖かすぎて。されど、少し滑稽で。

 

「ふふ……あははは」

「へ?」

 

それが、羨ましくて、眩しくて。

アセリアは進んでソロプレイしていた。であればオンラインでのプレイは必要ない筈だ。

だがアセリアはオンラインプレイをしていた。それはつまり、心の何処かで人と繋がりを持ちたかった他ならない。

 

「……良いチームだ」

 

腕で抱いていたアルシェを彼らへと解放する。すこしおぼつかない足取りであったが、しっかりと地に足を付けて驚きを隠せないまま戻っていく。

それを見届け、全員がアセリアへと注目する最中、ズブリと虚空に手を沈め、指輪を一つ取り出した。

 

そして何も付けていない人差し指にその指輪を装着した。

 

「っ!? どうして」

「どうして魔力を感じなくなったのか。か? それはこの【リング・オブ・マジックベイン】の効果によるもの」

「嘘……」

 

アルシェはアセリアから発せられる魔力の力強さが一切感じる事が出来なくなった。

本当に嘘のような効果だ。タレントを一つ潰せ、戦士の真似をする価値も出てくる。

 

「だいたい皆さんを殺したってこっちのメリットが少ないし、色々勘違いしすぎだよ」

「だが、俺たちは」

「一つ言っておくけど……あの程度で謝罪は不要だよ。それぞれ行き違いがあったのも事実だしね」

「……感謝する」

 

アセリアにとって彼らを殺して何がメリットか考えれば10位階魔法が使用できるという情報の漏えいを防ぐことが出来る。実は大きな事だ。魔法の位階が露見すればこの世界から危険視される可能性が高い。が、魔力の隠蔽をして知らぬ存ぜぬを貫き通せば何とかなる。今の状態で魔法、スキル、タレントから自身の情報を悟らせることが出来なくなっている筈だ。

 

そしてアセリアは彼らを殺したくないし、それで気分が良くなるはずもない。

また、彼らが言わんとしたアセリアに対して攻勢に出て、剣が振り下ろされたとしてもどうせダメージは無いのだ。故に謝罪は不要。もともとアセリアにとっては「戦闘」ですらないのだ。

 

ヘッケランが代表で頭を下げ、そして全員が頭を下げた。それに苦笑し頬を掻くアセリア。

その仕草で彼らの緊張が解かれ、周りにも霧が吹っ飛んだせいでアンデットはおらず、互いに顔を見合わせ笑いあった。

 

「しっかし、10位階魔法かー……ちょっと見てみたい気も」

「こら、ヘッケラン!」

「あははー。では、実際に見てみますか?」

 

アセリアも演技を完全に解き、ニコニコと彼らにまるで見る? 見る? というような声色で声を掛けた。

 

「マジで?」

「ええ……それでは超広範囲になりますので、皆さんの後ろの恐らくアンデットがうようよ居る所にぶちかましますよ!」

「おお! 楽しみだ!」

 

すっかり神の所業を見れると思い込んで全員がワクワクしながら後ろを向いた。

 

「それでは……【集団標的マス・ターゲティング】【支配ドミネート】」

 

ピンク色の霧が彼らに覆いかぶさり、そして先ほどまでのワクワク感が完全に消え、ただ虚ろな目で虚空を見ている。

 

「ごめんね。念には念を入れて、10位階の記憶を消させてもらうよ」

 

そう、そもそも殺す必要が無いのはこの為なのだ。記憶操作の魔法。ユグドラシルではスキルや魔法を発動できなくさせる強力な魔法だが、状態異常の一種なので対策したり、特定の異業種等には無効であった。これも上位では必須の対策である。

 

その魔法を覚えているアセリアは、ちらりと流れ星を象った指輪を見て頷く。

 

(もし、失敗した時はこれで……)

 

そして意を決したかのように、彼らに手を向け

 

「【記憶操作コントロール・アムネジア】」

 

魔法を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あれ? ここは……」

「あ、気が付きました?」

「おまえは……?」

 

いつの間にか気絶してしまっていたフォーサイトの面々は頭を振るように起き上がった。

そして声がする方へ視線を向けると、白を基調とした太ももと胸元が輝かしい衣装で「剣士」の恰好をした漆黒の髪を揺蕩わせているエルフが彼らを守るように立っていた。

 

「私はアセリアと申します。すみません。私がエルダーリッチを倒した時にあなた方が勘違いして攻撃してきたので、つい反撃してしまいました」

 

ぺこりと頭を下げるアセリア。その言葉を咀嚼していき、確かにアセリアに対して攻撃を仕掛けている記憶があるヘッケラン。そして、警告したことを覚えているアルシェ。二人はすぐにぺこりと頭を下げ

 

「あ、ああ! そうだったな! 申し訳ない」

「ごめんなさい」

 

謝罪を口にした。それにつられイミーナとロバーテイクも心当たりがありチーム全員の責任だからと、同様にアセリアに対して謝罪をした。

 

「いえいえ、一応【ポーション】で回復させましたが、調子はどうでしょうか?」

「ええ、調子いいわ」

「そうだな。ばっちりだ。本当にすまなかったな」

「こちらこそ、変な歌を歌わない様に注意します」

「そう言って頂けて感謝の言葉もありません」

 

実際、異様に思えたし、頭を冷やしてアセリアも彼らの立場になって考えたら確かに怖いと感じたのだ。

が、注意はするが直すとは言っていない。誰だって気分が乗れば歌位歌いたくなる。

 

「そうだ! お詫びに何かできないか?」

 

このままではフォーサイトの名が泣く。

そう思ったヘッケランはアセリアに対してそう聞いてきた。

その言葉ににこりと微笑みを返し

 

「では、タレントというのを教えてもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

何処か黒い笑みに見えなくはなかったが、自分たちが知っている限りであれば。

と思い、アルシェのタレント以外で見聞きした情報をアセリアへお詫びとして伝えていった。

 

そしてその情報にアセリアはただただ微笑みながら頷きを返していた。

 




誤字脱字等ございましたらご指摘いただければ幸いです。
うーむ、難産……
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