女神異聞録デビルサバイバー2 with ペルソナ 作:時価ネットこみなと
狭かったリムジン型のベルベットルームとは違い、全面ガラス張りに幾何学的な模様をした金属が張り付いている不思議な部屋。
外の景色が下へと流れる所を見ると、これはエレベーターのようだ。
「初めましてお客様。今回お客様達の旅のお供を勤めさせて貰います、エリザベスと申します」
イゴールの付き人も、以前のマーガレットでは無い青い帽子をかぶった銀髪金眼の女の人だった。
どことなくマーガレットに雰囲気や容姿が似ている。
鳴上がエリザベスを見ていると、イゴールが咳払いをして話し始めた。
「本日ここへお呼びしたのは他でも無い。今貴方達の世界で起きている異変について、お話しがあります」
「異変…何か知っているのか?」
「勿論でございます。しかし、ここで私共が貴方へ異変について御伝えしても意味がありません…。貴方と私の世界の勝手が違いますゆえ、異変の真相は自分の力でお調べください。」
「…一つ聞きたい事がある。俺のペルソナが使えないのも、その異変に関係するのか?」
「少なからず関係あります。この異変で、貴方の絆が途切れてしまいました。理由は解りません」
「そう…もう一度初めから、てことか」
「いえ、誤解の無いよう申しますが、切れた絆は再び結ぶ事が可能です…。もう一度絆を修復さえすれば、以前のような力を取り戻せます。…ああそれと、もう一度絆を他の人と深める事も可能です。」
鳴上の意識が遠ざかる。いや覚醒しているんだ。現実と夢の狭間から、現実に戻ろうとしている。
「それでは鳴上様。良い旅を心より願っております……」
国会議事堂の地下に存在するジプス東京支局の本拠地。
その中にあるエントランスで、二人の人物が会話をしていた。
「……本気ですか? 彼等は民間人です」
「そうか。では何故、彼等が召喚アプリを悪用しないと言い切れる?不安の芽は、早めに摘んでおかねばならない」
「…事実、彼等は私に協力し、K座標の問題を処理しました。アプリを悪用する様子は…」
「迫、人間は力に慣れれば、やがて悪用を始める。…違うか?」
「…………」
「彼等を独房へ移せ。それと、鳴上と言ったか、そのペルソナ使い。彼には念の為手錠を掛けて置け。」
「手錠、ですか?」
「あぁ。ペルソナは使役する者の性格を映し出す。君の話を聞く限り、彼は悪人ではなさそうだ。しかし、もしもの場合に備え、彼には手錠を。」
「…わかり、ました」
話が終わると、迫と呼ばれた女性は納得のいかない様子だったが、渋々と彼等がいる部屋へ足を運んだ。
鳴上が目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。
体中が怠く、痛い。イザナギのフィードバックの影響がまだ残っているようだ。
鳴上は重い身体を起こして、現状を確認する。ガチャッと両手首に手錠がされており、鳴上は上手く身動きが出来ない状況となっていた。
左腕に巻いてある時計を確認すると、ハクジョウシと戦闘してから2時間ほど時間が経っていた。
鳴上は一つこの部屋に疑問を抱いた。この部屋には窓が無く、ここがどこなのかまったく分からないのだ。
一つだけある扉も、堅く鍵が掛けられており、開く様子が無い。部屋も薄暗く、ベッドも古くギシギシと五月蠅かった。
天上の片隅には監視目的と思われるカメラも設置されていた。鳴上は一般で言う監禁された状態だ。
数分後、何の前触れも無しに扉が開いた。扉の向こうには日本人に比べて、全てにおいて色素が薄い青年がいた。
灰色の瞳に灰色の髪、そして一見すれば血色の悪い青年の白い肌。
青年は扉を閉め、ベッドに座る鳴上に歩み寄る。
「お目覚めのようだな鳴上悠。」
「…おはよう。良い目覚めだったよ。」
鳴上はベッドから立ち上がり、青年と視線を合わせた。
「ふふふ、この状況を理解してないのか?」
「理解している。監禁されているんだろ?それぐらい子供でも分かる事だ」
「ほう。そこまで理解して何故冷静でいられる。」
「抗っても、ここから出られる保証はない。何で監禁されているか理由を知りたいだけだ」
「賢明だな。お前は他の奴とは違うようだ。流石はペルソナ使いと言った所か」
青年は腕を組み、少し嬉しそうに微笑んだ。
「単刀直入に言おう。鳴上、ジプスに協力する気はあるか?」
ジプス?と鳴上は頭にクエスチョンマークを出す。
青年は事細かに内容を伝えた。ここはジプスと言う日本の極秘機関の一室で、大災害に見舞われた際に姿を見せ、活動を開始する組織らしい。現在、この震災の原因を解明している最中で、それには悪魔が関係していると。
「君は世界でも珍しいペルソナ使いだ。…協力をしてくれれば悪いようにはしない。ここに居れば地上のように食料に困らないぞ…」
「そのお誘いは光栄だが、なんだこの手錠は?」
「あぁ。それは保険だよ。…君がもしも我々にとって不利益な存在だったら、ここから居なくなってもらう…。」
「…それは遠回しに、ジプスに入らないと殺す、と言っているのか?」
「どうかな…想像に任せる…。さあ、どちらを選ぶ?」
鳴上はスッと目を閉じて、冷静に判断をする。条件も悪くない、聞くだけならジプスは正義の味方みたいな存在だ。しかしこの強引で乱暴な交渉を見る限り、ジプスやこの青年の裏には何か隠されている気がする。
だがこの交渉に応じなければ、自分の命も危うい。
「…協力する、しかないだろ。」
鳴上の言葉を聞いた青年はフッと笑った。
「分かれば良い。今日から君は我々ジプスの仲間だ。私の名前は峰津院大和《ミネツインヤマト》。ジプスの局長を務めている」
「よろしく。」
「その手錠はすぐに外そう。そして今後の君の仕事を伝える。」
そう言い残して大和は部屋から出て、入れ違いに先程共闘した背が高い美人な女性が来た。
その手には手錠の鍵を持っており、鳴上の手錠を手際良く外した。
「どうも。えーっと…」
「迫真琴《サコマコト》だ。君の事は一緒に居た少年達から聞かせて貰ったぞ、鳴上。」
「だから局長は俺の名とペルソナを…」
「ああ。私も疑問に思っていてな。悪魔を召喚したにしては、君は召喚する媒体を君は持っていなかった。」
「…少し質問良いですか?」
「勿論良いぞ。」と真琴は外した手錠を仕舞いこんで、鳴上に目を合わせる。
「その悪魔ってなんですか? シャドウとは違うものですか?」
「シャドウ…すまん、質問を返すようで悪いが、シャドウとはなんだ?」
「はい。シャドウとは支配権を失ったペルソナを差します。つまり、俺のペルソナが自分の意志とは無関係に暴れたり、行動をしたら、そのペルソナはシャドウとなります。」
「なるほど…。ペルソナの裏の姿、というわけか。」
「そうですね。簡単に言えばそういう事です。で、悪魔とは何ですか?」
「悪魔とは、か…君のペルソナが精神の具現化の存在としたら、悪魔は我々と同じ物質で出来ている存在だ。」
「なら悪魔を呼ぶ為の何か条件は?」
「悪魔を召喚するには召喚気を使う」と迫はケータイを取り出して見せる。
ケータイの画面上には悪魔召喚アプリと言う文字が浮かんでいた。
「このアプリを使用する事により、悪魔を使役することが可能だ。君にもできるぞ。」
「誰でも使える…それを乱用する人も出る可能性は…。」
「ないとは言い切れない。だから君にはそのケータイを破壊して欲しい。」
「それが局長の言っていた仕事の内容か。」
「そうだ。君には悪魔の駆除とアプリ悪用者の弾圧をしてもらう。」