女神異聞録デビルサバイバー2 with ペルソナ 作:時価ネットこみなと
「こい、ヤマトタケルッ!」
肩に掛かるくらいの少し長めの髪に、男性用スーツを着用した女性が一人、戦っていた。
彼女がカードを砕くと同時に白と黒の魔法陣を形成し、無数の敵を葬った。
彼女が相手にしているのは、一年前まで毎日のように戦っていたシャドウとは違う、明らかに異質なモノだった。
シャドウは負の感情しか持ち合わせていないのに対して、現在相手にしているモノは、人間に似た感情を持っていた。
人ならざるその風貌に喜怒哀楽の感情をそれぞれ持ち合わせている異形なモノ達。
人は、それを悪魔と呼んだ。
「ハァ、ハァ、ここは、これで、全部だ」
彼女は肩で息をしながら歩みを続ける。
ここは名古屋の中心街。先程の起きた大地震によってこの名古屋も見るも無惨な姿となっていた。
怒り、悲しみ、憎しみ、恐怖。
この町の溢れ出す負の感情が増幅する。それは詰まるところ、悪魔の餌を垂れ流しているに過ぎないことを、誰も気づいていない。
「くそ、何でこんなことに……」
彼女はとある猟奇的連続殺人事件の捜査協力のため、愛知県警察本部長の依頼のもと、この名古屋へと出向いた矢先だった。
名古屋警察署の栗木刑事に会うため、この名古屋駅前に着いた瞬間、あの地震が起きた。
地震発生してから数十分後には、既にあの悪魔が町中に沸き溢れ、人々を襲った。
正義感が強いためか、彼女は出会った悪魔を全て消滅させ続けたが、それも限界に近かった。
ふと、彼女の頭の中で、ある男性を思い起こした。
彼はどんな困難でも諦めず、誰かのために戦い、そしてどんな人をも受け入れる。その彼は、彼女が憧れている鳴上悠という少年だった。
「流石に、先輩のように巧く戦えませんね……今頃先輩も、戦っているのでしょうか
……諦めるには、まだ早い」
そう言って、彼女はまた悪魔に襲われている人を助けるために、またカードを砕いた。
時同じくして大阪。
崩壊した大阪城の瓦礫の山の上に、一人の人間がいた。
「まったく、まだ修行中だというのに、なんだったんだ、あの地震は? 東京にいる美鶴とは連絡も途絶えて、しかもシャドウモドキが町中を徘徊。修行には最高な状況だが、一般的に見れば最悪な状況だな」
赤いマントを身に纏い、赤のオープンフィンガーグローブを腕に装着し、服の上からも分かるその鍛え上げられた身体。
「大規模な災害に引き続いてシャドウモドキの出現……まさかまた、誰かがシャドウの実験を?」
彼の頭の中では、4年前に駆け巡った戦いの日々が思い起こされた。
タルタロスでの探索、仲間との出会い、満月の激闘、親友と後輩の死。沢山のことを経験し、それと共に大切なものを沢山失ったあの一年間。
その日々を送る発端となったのが、とある大財閥の実験の失敗、そして、あの男の狂った思想が原因だった。
自分たちの力を利用され、一時世界の終末を迎えそうになったが、巌戸台の心強い仲間達がいたお陰で、最悪の事態は避けられた。
それに続く人によるシャドウの実験が再び行われたのか、と彼は推測した。
突然、彼を狙ってか、何体もの悪魔が瓦礫の中から沸く。
「ふっ。だがこの感じ、影時間とそっくりだ」
不適な笑みを浮かべた彼は、悪魔との戦闘に集中した。
纏っていたマントを脱ぎ捨てる。彼の身体は幾つもの傷があり、その中でも胸元に、三つの牙に引き裂かれたような傷跡があった。
そして、右腰付近に銀色に輝く銃があった。
「俺を楽しませてくれよ? シャドウモドキ!!」