女神異聞録デビルサバイバー2 with ペルソナ 作:時価ネットこみなと
「いやー感動の再会シーンってところ悪いけど、これ、どういう状況?」
久慈川が泣きやんでそれなりに冷静を取り戻した時、久慈川に助けられた高級そうなスーツに帽子、眼鏡を掛けた二十代前半ほどの男性が鳴上に話しかけてきた。
「そういや自己紹介遅れちゃったね。俺は秋江讓《アキエユタカ》。周りからはジョーって愛称で呼ばれてるよん」
「俺は鳴上悠。こっちは久慈川りせだ」
「おお! あの有名なアイドルのかなみんでしょ。いやーモノホンのアイドルに会えるなんて光栄だなぁ」
「かなみはうちの事務所の後輩! 私はりせちー!!」
「そうなの? ま、どっちもアイドルだし、気にしない気にしない」
「気にするわよぉ……。先輩、私この人苦手……」
飄々と気の抜けた雰囲気のジョー。この状況にも関わらず、不思議に冷静な態度を取るジョーに不信感を覚える鳴上だが、それはジョーの性格なのだろうと結論づけた。
「君たちのお陰で、あの悪魔?と契約できたみたいだし、これで僕も君たちみたいに一緒に戦えるね」
「一緒にって、アンタ私たちに着いてくるの?!」
明らかに嫌そうな表情を見せる久慈川に対して、着いてくる気満々のジョー。
「そりゃ、この状況で離れ離れになる理由もないし、仲間は多い方が心強いでしょ?」
「それは、そうだけど……ねえ先輩、どうする? この人超テキトーだよ?」
「あーらら。残念だなぁ……ま、どうしてもっていうなら、ここでお別れするけど」
全然残念そうに見えないジョーだが、鳴上には特に断る理由もなかったので
「……良いですよ。一緒に行動しましょう」
とあっさり仲間入りを決定した。
「良かったー。俺は君たちと会えて本当に運が良かったよ、ホント。
ま、これから先よろしくね」
右に鳴上の左手を、左に久慈川の右手を掴んで上下にブンブンと握手をするジョー。
そんなことをしていると、不意に鳴上の携帯の着信音が鳴った。
画面には《迫真琴》という文字が浮かんでいた。
「はい、もしもし」
『鳴上、今どこにいる?』
「霞ヶ関にあるライブ会場です」
『敵が現れたっ。目標は今、新橋のSL広場の方へ向かった。可能なら、そちらからも応援に向かってくれ!』
「わかりました。俺もすぐに向かいます」
『頼んだぞ』
と迫は少々強引に電話を切った。
「りせ、ジョーさん、これから新橋に向かいますが、良いですか?」
「俺は構わないよ」
「私も問題ないけど、あれ? なんで先輩のケータイが繋がってるの?」
「そういやそうだね。俺もこの地震の後、全く繋がんないんだよね」
「詳しい説明は移動しながら説明します。さあ、行きましょう」
「ここは、まさか……」
少女は、思わぬ光景に自身の目を疑う。
数年前に訪れたことのある現実世界とは懸け離れた精神と肉体の狭間の空間。
幾つもの時計が壁に飾られており、広いエレベーターをモチーフにした部屋だ。しかし、そこは以前と違い、エレベーターはまるで落下しているかのように景色が下へ、下へと流れて行く。
少女はその部屋を、ベルベットルームと呼んでいた。
「ようこそ、我がベルベットルームへ……」
不自然なほど長い鼻に、ギョロリと見開かれた目、ファンタジーの世界に登場するエルフのような尖った耳。
この部屋の主にして人形に過ぎない彼と出会ったのは、少女がワイルドの能力に目覚めてからだった。
2010年3月31日の繰り返す一日を脱出してからは、今の今まで願っても訪れることが出来なかったはずのこの部屋に、どうして来れたのかと少女は疑問に思った。
「お久しぶりでございます、 様」
銀色のショートカットに金色の瞳、白雪のように白い肌が特徴であるエリザベスだった。
「ようやく、全ての準備が整いました」
「なんの、準備、がですか?」
当たり前の疑問を、少女はエリザベスに投げかける。
エリザベスは嬉しそうに微笑を浮かべ、こう言った。
「囚われたあの人の心であり、精神であり、魂であるものでございます」
「あの人……」
「はい。私と、あなた様の大事な人である、 様の囚われた魂の行方です。
その魂を解放するための準備は、もう整っております」
エリザベスの言うことが少し理解できなかった少女に対して、エリザベスはこう言葉を続けた。
「彼の肉体は既に、私の手中にございます。残る魂を取り戻せば、」
「あの人と、もう一度会えるのでありますか?」
はい。とエリザベスは首を縦に振った。
「今晩0時前に、東京タワーまでお越しください。そこに来れば、あとはなにをすべきなのか、あなた様には分かるはずです」
不意に、少女の視界がボヤける。
夢から覚めるように、意識が現実世界へと引っ張られる。
「あなた様の旅は、まだ途中です。行き着く先は天国か、あるいは地獄か……それとも無か。
その答えは、あなたの選択次第でございます」