サブタイトルは「必ずしも絶望ではない」
ⅠThere is still some hope
その日は久しぶりに凛ちゃんと真姫ちゃんといっしょにあって食事に行った日でした。
二人とも仕事が忙しいようで、ようやく出来た2人と会える機会。
つい、気分が上がって早く待ち合わせ場所に来てしまった。
二人とも元気にしてるかな?
なんかいいことあるかな?
そんなことを考えている時でした。
(まだ早いけど二人も早く来ちゃった。なんて、そんなことない…かな?)
ふと顔を上げる。
視界に入ったのは自分と同じように待ち合わせをする人。
友人と共に雑談をしている人。
そして、道路を挟んだ向こう側にいるスーツ姿の"彼"
………え?………………
ちらっと視界に入っただけで気のせいかもしれない。いや、きっと気のせいだ。
もう一度顔を上げる。
気のせいでは、なかった。
実際に道路の向こう側にいたのは仕事に出たはずの彼
その彼は紛れもなく私の最愛の人だった。
その最愛の人といっしょにいるのは、誰だろう。知らない、しかもかなり美人の女性だった。
そんな、浮気……?
いや、そんなわけない!
真面目な彼のことだ、仕事でなにか商談でもあるのかもしれない。
そんな思いも虚しく、砕かれた。
彼の腕が、彼女に抱きつかれたのだ。
いや、いやだ…そんな…!嘘だ!こんなのただの悪い夢。
ただ、夢を見ているだけなんだ!
でなきゃこんな……こんな心が締め付けられて、今にも叫びだして走り去って、こんな現実から逃げ出してしまいたいなんて思うことは………ないよ………。
嘘だよ、こんなの。絶対に違うよ…
「あ、かーよち~ん!!久しぶりにゃ!!」
「花陽、久しぶり。これでも予定より早く来たのに、それよりも早いなんていつからここにいるのよ。」
彼はそんなことしない。だって!ずっとそばにいてくれるって、私が好きでその気持ちに嘘はないんだって言ってくれたのに!
「……ち………かよちん!もー、そんなにボーッとして、どうかしたにゃ?」
「ちょっと花陽、聞いてるの?」
はっ、と現実に戻された。気付けば目の前にいた凛ちゃんと真姫ちゃん。
「あっ、ひ、久しぶり。凛ちゃん、真姫ちゃん。
ご、ごめんね。ちょっと考え事してて。
ほ、ほら!明日のご飯どうしようかな~なんて…」
我ながら苦し紛れにしてもわかりやすいごまかしだな、と思った。
さすがに2人もなにかあったであろうとは気付くだろう。
それでも、
「な~んだ、それなら安心したにゃ。でも考えすぎはよくないよ。」
「そういうことを考えるのもいいけど、なにかあるならちゃんと言うのよ。」
2人はなにも聞かずに"なにかがあった"ということだけ察してくれる。
優しい声をかけてくれる。
私が言いやすいようにしてくれた。
それでも、
「……うん。」
私は小さくうなずくことしか出来なかったが、2人は追及してきたりはしなかった。
無理矢理に気持ちを切り替え、私は2人と共に町へ繰り出した。
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その日の帰り道
あれは本当に彼だったのだろうか。
本当は似てる人だっただけなのかもしれない。
そう考えると気は少しだけ紛れる。
でも、
プルルルルル
電話がかかってきた。
誰からかを見ると、にこちゃんからだった。
どうしたんだろう…
疑問を抱きつつも電話に出た。
「もしもし!花陽。
あなた、浮気されてるわよ
詳しくは会って話したいんだけど今から会えないかしら。」
それはいとも容易く砕かれてしまった
いや、まだだ、私はこの目で見て確信したわけじゃない。
もちろん、にこちゃんが嘘なんてつくはず無い。そのはずなんだ。
でも今はにこちゃんが嘘をついている、そうじゃないなら悪い夢であってくれと願うしかなかった
~~~~~~~~~~
その夜
彼は『上司から飲みに誘われた』らしく家に帰ってくるのは日付の変わる頃だろうし、にこちゃんも空いているとのことだったので夜ご飯を一緒にどうかと誘った。
もちろんそんなの建前でしかない。
にこちゃんの言っていたことの真意を確かめるだけだ。
いっそのこと目を剃らしてしまっても良かったのかもしれない。
いや、その方が確実に楽しく過ごしていけただろう。
でも、もう踏み出している。
進む勇気はない。戻る覚悟もない。
結局は中途半端にただ、足踏みをしているだけなんだ。
考えていると声をかけられた。
「久しぶりね、花陽」
「にこちゃん………」
「そんな怖い顔しないで、って言っても無理よね。まずはどこかでご飯を食べましょ、お腹すいちゃったのよ」
ひとまずご飯にするという提案をしてくれるにこちゃん
……本当に優しいね…みんな………
「うん、そうだね。」
一言、それだけ言って2人は歩き出した。
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結局、どこの店にも入る気になどなれず、にこちゃんが作ってくれた。
今いるのはにこちゃんの家
にこちゃんはテレビに出演するようになって人気が出始めている。お陰で金銭面で余裕が生まれ、家族で引っ越したらしい。
でも、今いるのはあのマンションの一室だ。どうしても手放せず当時のままになっており、時々にこちゃんが掃除をしているらしい。
話を戻そう
せっかくご飯をつくってもらったが今の状態で食べ物が喉を通るはずもなくほとんど残してしまった。
残った分は明日の朝にでも食べるから大丈夫なんていってくれたけど本当に申し訳ない
そうこう考えているうちににこちゃんが戻ってきた。
「それじゃあ本題に入るわね。あなたに見てもらいたいのはこれなのよ」
にこちゃんが見せてきた携帯の画面
写っているのは彼
そして、昼間に見たあの女性だった。
ああ……そうか
私はもう、用済みなのか……
私は、あの人から捨てられちゃったんだ……
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「………んん」
気がついた、というより目が覚めた。
今いるのはにこちゃんの部屋のベットの上
あのあとどうしたのかはよく思い出せない。
携帯で時間を確認する。
10時37分
最後に覚えがあるのがご飯を食べ終わった8時半ごろだから15時間近く飛んでるのか…
そんなことを思いながらメールを確認する。
来ていたのは2通
にこちゃんから1通と彼から1通
にこちゃんの方から見る
『私は仕事に行かないといけないけど、あんたは昨日のことで混乱してると思うから気が済むまでそこにいてくれて大丈夫よ。
帰るときは机の上に置いてある鍵で扉の鍵をかっておいて。鍵は持っていってもいいわ。
相談ならいつでも聞くから遠慮なくメールでも電話でもしてきなさい!』
「にこちゃん……ありがとう」
自然と声が出た。
もう一通、彼のも見る
『上司と飲んでたら終電逃しちゃった。上司の家が飲んでるところから近いみたいだから泊まらせて貰う。
帰れなくてごめんね。』
逆に絶句してしまった
どこまでが本当のことなんだろう。
いや、どこが嘘なんだろうという方がいいか。
帰れなくなったところ以外か?
上司のところに泊まるのも嘘か?
それとも、ここに本当のことはない?
もう、何を信じていいのかわからない。
ひとつの思いが生まれる。
それを実行に移す。
家に帰ろう。鍵は……持っていこう。にこちゃんにあとでメールしておけば大丈夫だろう。
ついに、動き出す
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その日の深夜
日付ももう変わろうとしているそんな時
じっと静かに彼を待つ。
どうなるかなんてことは自分でも簡単に想像できる。
それでも、その想像が裏切られることを望んでいた。
「ただいま~」
彼が帰って来た。
「ただいま、花陽。今日も遅くなってごめんね」
聞かなければ。次へ進むために。
私は、一歩踏み出した。
「浮気………して……ますよね。
どうして浮気なんてしちゃったんですか。
もう、私のこと好きじゃなくなっちゃったんですか……
私はあなたのことをこんなにも愛しているのに、どうして…………」
沈黙が走る
彼は黙り混んでしまった。
ねえ、嘘でしょ。嘘って…嘘って言ってよ!!
そんな事実はないんだって言ってよ。
『僕が浮気なんてするはずないだろ』って怒ってよ!
私は!私は………!あなたが大好きなの!
それなのに………
ううん、だからこそ………なの…かな………
「私の愛はもう届かないんですね。
しょ、しょうがないんですよね、だって私よりかわいい人はたくさんいますもんね。
いいんです。もうわかりましたから。気にしないでください。」
だめだ、ここにはいられない。
彼の前には、いられない。
私は立ち上がり、自分の部屋を目指す
ようやく、彼も口を開いた。
「花陽……僕は確かに他の女の子の事も好きだ。だけど僕には君にしか言えないし、言わない言葉があるんだ。
僕は君を"愛している"」
……今更、何を言っているの…
そんなの嘘だってわかるよ……
「待ってくれ!話を聞い……」
バタンッ カチャッ
自分の部屋に入りすぐさま鍵を閉めた。
扉を挟んだ向こう側から彼の声が、彼が扉をたたく音が聞こえる。
私はしゃがみこみ耳を塞ぐ
嫌だ
やめて
ここに
今の、私の中に
「入って……来ないで………!…」
すぐに声も、扉をノックする音もやんだ。
足音が遠退いていくのがわかる。
もう、耐えきれなかった
「……う……うっ………あっ……ああぁ……」
誰に聞かれることのない、少女の心からの叫びが静かに、部屋の中だけでこだましていた。
~~~~~~~~~~
涙もとまり、少しだけ他のことを考えられるようになってきた。
時計は5時17分を指していた。
これからどうするのか考えなければいけない。
私は彼と、どんな関係でありたいのか考える。
浮かんでくるのは
「大好き」
「離れたくない」
「ひとりじめしたい」
「失いたくない」
そんなことばかりだった。
でも、今の彼は私を必要としていない。
私はもう、彼の不要品でしかないんだ。
そう、物と変わらない。
要らなくなったから次に乗り換えてぽいっと捨てる。
いやだ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌なら、どうする
思い付かない……でも、思い付かなくちゃいけない
そして、たどり着いた。
「私に残った時間を私のために使えばいいんだ。」
私に残された時間………もう、数えるばかりだろう。
彼はどうだ………とっくに私への愛なんて冷めきっているだろう。
でもまだ消えてないなら。
(彼の邪魔にならないように、禍根を残さないように。彼から、彼の前からも中からも、私は消えていなくなろう。
でも、消える前に少しだけ。
1か月だけ私に奪わせて下さい。)
まずは普段通りの生活に戻らなきゃ。
今は6時4分
普段通りなら彼が起きてくるまで時間が迫っている。
「いつも通り朝ご飯用意しなくっちゃ……♪」
終わりへの扉は、静かに開いた。
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そして、あれから30日
私は最後の仕上げに取りかかっていた。
まずは立つ鳥跡を濁さず。
掃除にとりかかった。
私の部屋、彼の部屋、風呂場…
隅まで掃除をする
冷蔵庫の付近を掃除しているときだった。
つい、よろけてしまい冷蔵庫にぶつかる。
「あいたっ。」
その拍子に上から小さな箱が落ちてきて頭に当たった。
いてて、なにがおちてき………
落ちてきたのは指輪の箱だった。
私たちは結婚式をあげていない。
お金もなかったために籍は入れたが指輪も、式も開かなかった。
なんでこれがうちに………
恐る恐る開ける。
中にはもちろん指輪が。それも一対の指輪。
これは……あの女の人にあげるんだろうか…
箱を戻そう、そう思ったとき。
箱の蓋に手紙が張り付けてあるのに気がついた。
あの女に渡すものなのなら……
剥がして読んでみることにした。
「…………!」
浮かんだのは、憎しみのような感情ではなかった。
あの日流しきったはずの涙が、つうっと頬を伝った。
~~~~~~~~~~
「ただいまー」
………
あれ?花陽ちゃんは寝ちゃったのかな…
彼はいつも通り、定時で帰って来たのだ。
でも今日は、いつもは聞こえるはずの花陽の声が聞こえない。
嫌な予感がして一瞬リビングの扉を開くのをためらう。
ためらってもしかたない…!
「ただいま…………」
あれ?いない…?
To be continued…?
一応これ、花陽誕なんです。
え?今日は3月4日だって?
知ってます。花丸誕ですね()
次回もまた遅くなりますが、読んで頂けたら幸いです。
感想等もお待ちしています