「凍結中」織斑さん家の奇妙な共同生活。   作:よし

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箸休め的な話です。
気軽な気持ちでお読みください。


第24話

今回の話は二人の女子高生の日常の一コマを淡々と、本当に淡々と書いたものです。過度な期待はしないでください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある休日。

 

「あれは似非天然巨乳よ!」

 

食堂で鈴が唐突に言い放った。

ラウラは食事を終え、口をナプキンで拭きながら、驚いた様子もない。

 

「鈴よ、突然どうしたのだ」

 

「山田真耶は性格詐欺巨乳だっていう話よ」

 

「……極めて信憑性が低い話ではあるが、聞くだけは聞いてやろうではないか」

 

「何か、癪に障る言い方ね……」

 

「早く話してみろ」

 

「まず……」

 

「おぉ!?」

 

いきなり鈴の言葉を突然ラウラが遮った。

ラウラは透明なティーカップの中身を驚愕の眼差して見ている。

 

「何よ!」

 

「何よ、じゃない! 何だこの茶は! 歯磨き粉の味がするぞ!?」

 

「ミントティーだからでしょ……。あんたが自分で頼んだんじゃないの」

 

「ミントのティーだからって、これはどうなんだ? 恐ろしいまでに歯磨き粉の味を再現しているぞ。……こんな物を頼むんじゃなかった。大失敗だ」

 

ラウラは眉間にシワを寄せてミントティーが注がれたカップを遠ざけた。

 

「残さず飲みなさいよ?」

 

「断わる! 私は不味いと思ったものは二度と口にしない主義だ」

 

「……はぁ」

 

諦めた鈴は咳払いを一つした。

 

「話を戻すわよ」

 

「うむ」

 

「まずこの間の実習よ。国家代表生二人を打ち倒すだけの実力があって、何で初っ端の操縦で生徒に突っ込んで来たのか……。それは」

 

「それは?」

 

「一夏が受け止めてくれることを計算しての行動なのよ」

 

「しかし、あれは織斑教官の気分次第だろう? 篠ノ之やお前だったという可能性もあるぞ」

 

「ちっちっ、甘いわ。あまちゃんよ、あんたは」

 

「人を連続ドラマ小説みたいに言うんじゃない」

 

「いい、織斑先生だって人間なの。突然の事態ともなれば、身近な人間に声をかけてしまうのは世の摂理! 事はまんまと山田真耶の思惑通りに進んだのよ。一夏に抱かれるために織斑先生をも利用するとは、なんて策士……。あの幼女のような見た目で、あたしたちは欺かれていたのよ! あの童顔に! 一夏に限っては、あの巨乳に!」

 

「策士、もとい錯視に惑わされたわけだな」

 

「そのとおりよ!」

 

「ふむ……」

 

柄にもなく興奮ぎみな鈴を相手にラウラはやはり平然としている。

 

「……偽天然か……いや、似非天然……あ、似寒天?」

 

「何よそれは……」

 

「似ていないか?」

 

「どこが、似てんねん……。それに、そんな不味そうな寒天、食べたくないわ」

 

「お前の煮天然も食べたくないな。不味そうな煮物だ」

 

「いやいや、これは突っ込みの定番、関西弁だから!」

 

「まぁ、そう怒るな。無い乳がさらに無くなるぞ」

 

「よし殺す。あんたにだけは言われたくないことなのに……。何か言い残すことはあるかしら?」

 

右眉をひくつかせ殺意をむき出しにする鈴を見て、ラウラはなぜか笑っている。

 

「やはりな」

 

「何よ……」

 

「お前が不機嫌なのは、山田真耶が性格を偽って、一夏に抱きついたという嫉妬ではなく、巨乳の山田真耶が一夏に抱きついたという嫉妬なのだろう? お前は山田真耶の性格が気に入らないのではなく、山田真耶の肉体が気に入らない。まぁどちらも勝手な我儘ではあるが、後者の方はなおレベルが低い」

 

「……何気取ってるのよ」

 

「ん?」

 

「あんただって、削ぎ落としてやるとか物騒なこと言ってたじゃない。ちゃんと知ってるわよ?」

 

「……記憶に無いな」

 

「そうは問屋が卸さないわ」

 

「卸さない問屋に意味はない、とっとと店を畳んで暖簾を降ろせ」

 

「屁理屈を言うんじゃないわよ」

 

「しかし、悔しいものは悔しいだろう……」

 

「……うん」

 

ラウラの言葉に鈴は反射的に納得してしまった。

 

「安心しろ、お前はちゃんと虚乳だぞ」

 

「慰めになってねぇよ! 字が違う!!」

 

「もしくは微乳だな」

 

「美乳よ! あんた絶対に喧嘩を売ってるでしょ!! いよいよ買ってあげてもいいわよ! というか買い占めさせろ殴らせろ!!」

 

「……なぁ、この乳繰り合は不毛だと今更、気づいたんだが」

 

「あんたが煽ったんじゃない……」

 

先ほどまでの勢いは消え、二人はがっくりと肩を落とした。

自分たちのせいなのだが。

 

「……謝罪も兼ねて、何か飲み物を持ってこよう。鈴、何がいい?」

 

ラウラは立ち上がるとテーブルに置かれている二つのグラスを手にとった。

 

「悪いわね」

 

「気にするな」

 

「じゃあ、アイスティー。あ、ガムシロップは容器の半分だけ入れてね。丸々一つ入れると甘すぎるから」

 

「……少し、めんどくさいな」

 

「お願いねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、仕切り直しだ。乳トークから、ガールズトークに変更しよう」

 

アイスティーが注がれたグラスを鈴に渡し、席についたラウラがキメ顔でそんなことを言った。

 

「……ガールズトークぅ?」

 

なぜラウラがそんなことを言い出したかというのは、彼女が優秀だと信じている副官からの影響だ。

 

「そう邪険な顔をするな。ガールズトーク、つまりは乙女の話題を語り合うのだ。決められた話題を話さなければならないと言うのは以外に大変だ。それが出来る奴はトーク力がある。思い人と二人きりになったときに役立つぞ。そして、有意義な情報も共有できる。一石二鳥じゃないか。女子力ゲットだぜ」

 

「あんたはどこのサトシか。……いろいろと飾ってるけど、それって敵情視察よね?」

 

「…………」

 

「はい図星」

 

口を尖らせるラウラを見ながら鈴はテーブルに頬杖をついて呆れた。

 

「知っているか? ピカチュウは体重が6キロもあるんだぞ」

 

「……ごまかすな。そして、ポケモンから離れなさい」

 

「お前は私とガールズトークをするぞ! 異論は認めん!」

 

「そこに落ち着いたのね……」

 

なぜか誇らしげに親指を突き立てるポーズをとるラウラ。

 

「さて、鈴。一番手は君に決めた」

 

「そもそも二人しかいないし。それに言い出したあんたから話すのが筋でしょうが」

 

「何だそれは、知らん」

 

「…………」

 

「そうだ。どうして惚れたのかと言う話題をしよう。まさか、話すほどのことが無いなんてことはないよな?」

 

「……昔、いろいろと助けてもらったのよ」

 

「そして惚れたと?」

 

顔を赤らめた鈴はコクリと頷いた。

 

「何とも平凡で平坦な話だ。つまらん!」

 

そして、バッサリと切り捨てられた。

 

「人の青春が酷い扱いだ!?」

 

「とはいえ、一言で言い表せることでも個々に中身は違うし、内容も濃いはずだ。……つまりお前の国語力が低いのだな。今ならこのラウラ先生が丁寧に教えてやるぞ」

 

「ガールズトークを続けましょう!」

 

ラウラの得意気な態度もあって、同年代に勉強を教えてもらうことにプライドが許さなかった鈴は、続きを促した。

 

「私は一夏が日本人で良かったと思っている」

 

「は?」

 

「ああ、勘違いするな。私は日本人が好きなのではなくて、ちゃんと織斑一夏が好きだ」

 

「…………?」

 

「私は織斑一夏が好きだ。好意を持っている。だが、それをさらに問われれば、LIKEとしての好きなのか、LOVEとしての好きなのかを、今の私は答えられないだろう」

 

「結局は好きなのね……」

 

「そう、結局なのだ。物事の根本を突き詰めていけば、結局、にいきつく。理由、感情は、どうでもよく結局は好きなのだ。ラブコメ風に言えば、好きになっちゃったんだからしょうがないじゃないの、責任持って私を幸せにしなさいよねー、だ」

 

「とっても棒読みのラブコメ変換するんじゃないわよ」

 

「まぁ、私の知る限り、これは日本語に限ったことだがな。感情は万人ともにあまり変わらないが、言語は違う。英語ではYesかNoの二つしか選択肢が無いのに対し、日本語はハイとイイエ、ドチラデモナイ、ドウナンデショウ。良く言えば、日本語は包容力と許容力のレベルがとても高い。悪く言ってしまえば、とても曖昧なのだ。日本語とは答えが無限に出来てしまう言語だ」

 

「……それって、つまり」

 

「私は一夏、本人から言われた。まずは自分のことを知れ、と。そして気がついたのだ。私の一夏に向けている好意は、LOVEなのかLIKEなのか、どちらなのか分からないことに」

 

「LIKE……お気に入り、似たもの同士の同族愛、か」

 

「そうだな。どちらだったとしても、ありがたいことにLOVEもLIKEも日本語では総じて 好き だ。今の私には、とても都合がいい。だから、一夏と私の関係はキープしておかねばならん」

 

「都合よすぎるでしょ……」

 

「人間とは我儘の塊だぞ」

 

「はぁ……」

 

「日本語を使う日本人ならば、多少曖昧だったとしても気にはしないだろう」

 

鈴は頬杖をつき、アイスティーをストローで飲みながら質問をする。

 

「LIKEだったら?」

 

「今と変わらん。私は一夏に好意を持ち、教官や管理官を尊敬する。……家族とは違うが、人との触れ合いは良いものだからな」

 

「じゃあ、その感情がもしLOVEだったらどうするのよ」

 

「愚問だな。一晩で既成事実! 一年以内に入籍だ!」

 

「絶対に認めネェ!!」

 

「ことわざで、善は急げと言うだろう」

 

「急がば回れって、ことわざを教えてあげるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は移動して、廊下。

 

「暇だなぁ……。おい、鈴。私は暇だぞ」

 

「あたしだって暇よ。だから、あんたと食堂で駄弁ってたんじゃない。おかげで、あたしの突っ込みスキルのレベルが上がったわ」

 

「……嫁は、本社に行ってしまって明日まで帰ってこない。……何もすることが無いじゃないか。鈴、芸でもやって私を楽しませろ。お国芸の雑技を見せろ」

 

「あんたは何? 王様か?」

 

「私はラウラだ」

 

「いや、知ってるけどね……。というか日常的に何か起きてたら身が持たないわよ。暇な日があるくらいがちょうどいいのよ」

 

「おばさんかお前は」

 

「あんたの眼帯、むしり取って引きちぎってあげようか?」

 

ふと外を見れば、休日だというのに武道場から威勢のいい掛け声が聞こえてきた。おそらく剣道部だろう。

 

「やってるわねぇ……」

 

「剣道か、くだらんな」

 

「あら、意外ね。あんた体を鍛えるの好きそうなのに」

 

「体を鍛えるのは好きだ。私が気に入らないのは、武士道における戦いの精神だ」

 

あぁそう言うことかと、鈴はラウラの言葉の真意を理解することができた。

 

「源流曰く武士道とは戦闘においてのフェアプレーだそうだ。……本当にくだらん。勝たなければ意味が無い。叩けるときに叩き、倒せるときに倒し、殺せるときに殺す。相手の隙をつくのが現代の戦法だ。奇襲は勝つための立派な戦術だ。いちいち相手に合わせるなど馬鹿馬鹿しい」

 

「まぁ確かにねぇ……」

 

「ところで、デュノアはどうした」

 

「部屋で大人してるわ〜」

 

鈴はポケットから取り出した端末をラウラに見せた。

 

「ならいいが」

 

「心配しなくてもデュノアの行動は筒抜けよ。電波傍受に発信機、不審な行動を見せれば一発よ」

 

「大したものだ」

 

「軍の情報を売ってたのよ? このくらい嫌でも身につくわ」

 

「命がけか……」

 

「そうでもないわ。相手が相手だから。ばれたところで、軍法会議の後に軍からの永久追放」

 

「気楽なものだな」

 

「気楽が一番よ。楽観主義万歳」

 

開け放たれた窓から風が吹き込み二人の髪を撫でた。外は日が傾き、夕焼けの色に染まっている。

何気無い日常にはとても美しく、幻想的な瞬間が潜んでいる。

本当に何気無い瞬間に。

 

「……腹が減ったな」

 

「あんたは……。他に言うことあるんじゃないの……?」

 

鈴は眉を軽く上げてラウラを見た。

 

「もう夕方だぞ。腹も空くだろう」

 

ラウラの言う通り時刻は6時になろうかとしている。夏が近くなり、ずいぶんと日が長くなっていたようだ。

鈴は言われて、そのことに気づいた。

 

「何か食べにでも行くか」

 

「学園外に?」

 

「たまにはいいだろう」

 

「あはは、そうね」

 

「では、車を出せ」

 

「あたしが運転なわけ?」

 

「ふ、またにはいいだろう?」

 

「はいはい。仰せのままにー」

 

おどけたように皮肉る鈴にラウラは笑った。

 

「あ」

 

「どうした?」

 

「門限……」

 

「大丈夫だろう」

 

「何でよ?」

 

「インペリアルコーポレーション権限だ」

 

「……あんたも悪い奴よね」

 

「何とでも言うがいいー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ、お前たち。外出するのか?」

 

一応、職員室へ外出届を提出しにきた二人は千冬に捕まったのだった。これは予想外だった。

 

「えぇ、まぁ……」

 

「ほぉ……。なになに、外出理由は本社からの呼び出しか……」

 

千冬は鈴から受け取った書類をジト目でまじまじと眺める。

 

「本当の理由は何だ? ん?」

 

念のためI.S.S.の制服に身を包んでいたラウラと鈴だったが、あっさりと見破られてしまった。

 

「兄さんに聞けばすぐに分かるのだぞ?」

 

「……食事に行きます」

 

観念した二人は、そう千冬に告げた。

 

「食事か……」

 

「は、はい」

 

何やら考え込んだ千冬にラウラがどもりながら返事をした。

 

「ふむ。まぁ、いいだろう。許可してやる」

 

「「へ?」」

 

予想外の返事に二人はぽかんとしてしまった。

 

「いや、兄さんに伝えたところで、私の部下なのだからそれぐらいの治外法権は認められてしかるべしだ、と言われ終わりだろうからな。その制服を着ていれば大丈夫だろう」

 

ため息混じりの千冬に二人は納得した。特別、という言葉を好む三夏のことだ、それもあり得る。

織斑三夏が認めた身内はいろいろと便利だ。

 

「そう言うことだ、羽目を外さずに楽しんで来い」

 

「「はい!」」

 

「と言ってやりたいところだが」

 

「「えっ」」

 

「流石に、未成年に夜の外出を許可して何かあったら、私の責任が問われるからな」

 

「「た、確かに……」」

 

「というわけで私も同行しよう。不満か?」

 

「で、ですが教官。書類には何と?」

 

「これで問題あるまい」

 

千冬が見せた書類にはラウラたちが書き込んだ文章に大きくバツ印がうたれ横に私用と書かれていた。

 

「今日はみんな用事でな。私、一人だけ暇なんだ。……足が出来て好都合だしな」

 

最後の言葉は二人には聞こえなかった。

 

「織斑先生、いいんですか!?」

 

慌てる二人に千冬はイタズラっぽく笑った。

 

「治外法権だ。それに一夏の昔話……聞きたくないか?」

 

「「聞きたいです!!」」

 

願ってもない話に二人は目を輝かせて飛びついた。

 

「では行くか。あ、ここからは個人の付き合いだ。余計な気遣いは無用だぞ」

 

「はい、千冬さん」

 

「了解です、教官」

 

「うむ」

 

昔、さんざん織斑邸に入り浸っていた鈴は、久々に素の千冬を見て懐かしさを感じた。

また、ラウラもドイツ時代に三夏と千冬、クラリッサを交えて食事をしていたため素の千冬を知っていた。

 

「千冬さんは何が食べたいんですか?」

 

「イタリアンだな。ワインが飲みたい」

 

「相変わらずお酒が好きなんですね」

 

「お前も大人になれば分かるさ」

 

「よし、鈴よ。美味いイタリアンだ。さっさと探して我々を連れていけ。ピザだ! パスタだ!」

 

「あたしは、あんたの召使じゃないっての!」

 

「召使じゃない、飯使いだ!」

 

「意味分かんないから!」

 

「ふふっ。まったくお前たちは……」

 

「あんたのせいで千冬さんに笑われたじゃない!」

 

「お前のせいだろう!」

 

取り留めのない休日。

平和な日常の一コマ。

 

三人は街へと繰り出すのだった。

この女子会は、また別のときにでも語ろう。そう、機会があればまたいずれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の後書きは……特に書くこともないですね(^^;;


追伸、ラウラの武士道に対する発言は今後の展開の伏線なので、こう言った極論になっています(^^;;

ではでは〜
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