「凍結中」織斑さん家の奇妙な共同生活。   作:よし

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第26話

 

小鳥のさえずりが聞こえる、清々しく晴れ渡った休日の朝。

現在、午前5時。

 

「はっ……はっ……はっ……」

 

「頑張ってるわねぇ。走りこみ?」

 

「む、鈴か。早いじゃないか。どうしたのだ?」

 

「別に。理由がないと早起きしちゃダメなの?」

 

「そんなことはないが」

 

「ただの散歩よ、散歩。ほらっ」

 

「むっ」

 

足を止めたラウラに鈴がスポーツドリンクを投げ渡した。

 

ラウラは汗を拭いながら、それを一気に飲み干す。

 

「ぷはっ。やはりアクエリアスは最高だな」

 

「あたしはポカリ派だけどね。ちょうど自販機に売ってなかったのよ。てか、あんたは何で朝っぱらから走ってるのよ。マラソンにでも出場するの?」

 

「そんなものに出なくても、軍の訓練では42.195キロを走破したぞ」

 

「何やってんのよ、あんたんとこの軍は……」

 

「最近、身体がなまってしまっていたからな。お前もどうだ? 適度な運動はバストアップにもいいらしいぞ」

 

「余計なお世話よ。……あんた、あたしの胸をいじるのが趣味なわけぇ?」

 

「趣味とまではいかないが、面白いと感じているのは事実だ」

 

「否定しなさいよ!」

 

青筋を浮かべた鈴は、近くにかけられていたタオルをラウラ目掛けて投げつけた。

 

「そういえば、今日、嫁は出かけるらしいな」

 

「らしいわね。あいつに会いくって言ってたし」

 

「あいつ? なんだお前も知り合いなのか」

 

「まぁね」

 

「なら、お前は行かなくていいのか?」

 

「生憎、提出する書類が溜まってるのよ。だから今回はパスしたわ」

 

「日頃から処理しないお前が悪いな。自業自得だ」

 

「んなことは分かってるわよ」

 

「夏休みの宿題も最終日までやらないだろ?」

 

「そーですよ。やりませんよ」

 

「ふっ、だろうな。……しかたがない、手伝ってやろう」

 

「マジで?」

 

「あぁ。それで、どれくらい溜まっているんだ?」

 

「20枚ほど……」

 

「…………」

 

「やめて無言で見つめないで。痛い、痛いから」

 

「まったく。行くぞ」

 

「はーい。本当に助かるわ」

 

「次は溜めるなよ? 手伝わないからな?」

 

「はいはい」

 

呆れながらタオルを肩にかけて寮へと戻るラウラの後ろを、鈴は笑顔でついて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

 

ギラリと光る刃物。

 

「では、参る!」

 

ガシャン!

 

ドゴッ!

 

ザンッ!

 

ドシュッ!

 

バキッ!

 

メキョッ!

 

グチャッ!

 

ゴキリッ!

 

「はぁぁぁ!!」

 

バンッ!

 

「せやぁぁ!」

 

ボキッ!

 

 

 

 

寮の一室では死闘が繰り広げられているようだった。

 

「うるさぁーい! 朝っぱらから騒ぐな! 何だその物騒な音のオンパレードは!」

 

しばらくは布団に潜って堪えていた三夏だったが、ついに耐えきれなくなりベッドから飛び起きて怒鳴った。

 

「ん? どうした兄さん」

 

キッチンにはジャージにエプロン姿の千冬が、包丁を手に立っていた。

 

「……ちっとも、そそられないエプロン姿だ」

 

毒づいた三夏はキッチンへと向かう。そこには様々な食材が並べられていた。

 

「悪い、起こしてしまったか」

 

「悪いと思うのなら今すぐ騒音を止めろ」

 

「いや、まだ途中なんだ。……料理というのは中々難しいな」

 

「料理!? だったら、さっきの音は!?」

 

「あぁ、サンドイッチを作っていた」

 

「どぉーやったらあんな殺人的な騒音を響かせてサンドイッチが作れるのだお前は!?」

 

「小清水さんに教わったとおりに調理しているはずなんだが……?」

 

「絶対に違うと思うのだが?」

 

「文句は食べてからだ。見た目はともかく味は保証する」

 

もちろん、小清水さんにはかなわないと言う意味でである。

 

「いつ私がまだ見てもいない料理の見た目を指摘した!? 私は静かにしろと言ったんだ!」

 

「まぁ待っていろ、あと二時間ちょっとで出来上がる」

 

「待つのはお前だ! 何だ二時間ちょっとって! 許さんぞ? 私は許さんぞー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三夏はテーブルに顔をつけ項垂れて白くなっていた。

 

「…………」

 

チーン。

そんな効果音が聞こえてきそうだ。

 

三夏の心からの抗議も虚しく、その死闘はきっちり二時間ちょっと続いたのだった。

 

「さぁ、出来たぞ。弁当が」

 

ガバリと起き上がる三夏。

 

「弁当が、じゃない! 二時間も待たされた挙句、朝食じゃないとはどういうことだ!」

 

「今日は本社に行くのだろ? ほら、持って行け。朝食は食堂で済ませればいいだろう」

 

「だから……」

 

三夏の言葉を遮るようにして、寮長室のドアが叩かれた。

 

「博士ー、迎えに来ましたよぉー?」

 

杉山の声が聞こえてきた。

 

「ちょうどお迎えが来たようだな」

 

「僕、今日は休む……」

 

「子供か。あ、今、開けますよ」

 

千冬がドアを開けて杉山を招き入れた。

 

「やっぱり着替えてないんですね。早めに来て良かった」

 

「今日は休むと駄々をこねてます」

 

「子供ですかあなたは! ほら着替えてください」

 

杉山に言われた三夏は仕方なくやおら立ち上がると着替えるに向かった。

 

「はい、お弁当です。こっちの水筒にはスープを入れておきました」

 

「わあっ! 千冬ちゃんが作ってくれたの?」

 

「えぇ」

 

「ありがとう。大事に食べるね」

 

「そう言ってもらえると、作ったかいがあります」

 

「でも何でいきなり?」

 

「何となくですよ。思い立ったが吉日と言うでしょう」

 

奥から着替えを終えた三夏が怒鳴にりながらやって来た。

 

「きぃみぃの吉日は私にとって凶日だ! これからは料理禁止だ! 特に朝!! そんなことより掃除の知識を身につけたらどうだ」

 

「兄さんに言われたくないな」

 

スーツに身を包んだ三夏が椅子に腰を下ろす。千冬は手慣れた様子で三夏のネクタイを締めた。

 

「とっとと私の髪をセットしたまえ」

 

「はいはい」

 

「博士。いい加減、ご自分でやるようにしたらどうですか?」

 

これでも幾分マシになった方だ。学園にくる前は、上着を羽織るところから靴を履くところまで、何から何まで、すべて小清水がやっていたのだ。

ちなみにスーツのアイロンも毎回、彼がしていた。

 

「うるさい! すべてにおいて人並みの凡人が私に意見する権利は無い」

 

「それは屁理屈ですよ!」

 

「屁理屈だって立派な理屈だ」

 

「はぁ……。千冬ちゃんも大変ね」

 

「はは、慣れましたから」

 

杉山の言葉に、千冬は苦笑いをしながら頬をかいた。

 

「ところで、今日はなぜ本社に?」

 

「ん、ISの第四世代の件でちょっとね」

 

「第四世代。もうそこまで進んでいるんですか」

 

「あ、これ内緒ね」

 

「分かってますよ」

 

別にバレたところで問題も無いのだが、形式的に口止めをしておくのだった。

 

杉山は会話の途中で、あることが気に止まった。

 

「あれ、一夏君の分のお弁当は?」

 

「……いつか作ってやりますよ」

 

そう言う千冬だったが、少し歯切れが悪い。杉山はいきなり確信を突いた。

 

「もしかして恥ずかしいの?」

 

「……いや、その。まだ、見栄えが」

 

「十分だと思うけどなぁ」

 

「さ、さぁ。早くしないと時間が」

 

「あ、本当だ。行きますよ、博士」

 

上手くかどうかは分からないが、話を逸らされ杉山は、玄関のドアを開けて三夏を呼んだ。

 

立ち上がった三夏は千冬の横で足を止めて顔を向けた。

 

「弟の方が上手いからな。見せられないのも当然だな、お姉ちゃん?」

 

ギクリ。千冬の肩が、若干であるが揺れた。

 

「もともと家事する機能など我々に備わってはいない。君はこちら側の人間だぞぉ?」

 

「う、うるさい!」

 

「ははははははーー! さぁ行こうか、杉山君」

 

三夏の細やかな仕返しだった。

そのことで後悔するとも知らずに。

 

「兄さんめ。……よしよし、なら毎日やってやろうじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

一夏は朝食の乗ったトレーを抱えて、生徒で賑わう食堂で席を探していた。珍しく一人だったために席を確保するのが遅れてしまったようだ。

 

しばらく食堂を歩き、辺りを見渡すが空いている場所が無い。

諦めて自室に戻りかけたとき、一つだけ空席を見つけることができた。

急いでそこまで足を運びトレーをテーブルに置こうとしたのだが、横に腰掛けて食事をしている生徒を見て動きを止めた。

 

金髪に特徴的なカールのかかった髪型。

セシリア・オルコットだった。

 

彼女も一夏の存在に気づいたようで一瞬だけ目を向けたが、すぐに向き直り食事を再開した。

 

「……部屋で食べよう」

 

「お待ちなさい。横が空いていましてよ」

 

「いや、お構いなく」

 

「お座りなさい。このままでは私が追い返したようで、気分が悪いですわ」

 

「…………」

 

一夏は仕方なく、セシリアの右隣に腰を下ろした。

 

「クラス対抗戦は散々だったな」

 

「えぇ、織斑先生に助けられましたわ」

 

「そうか……。織斑博士にも礼を言っておけよ」

 

「なぜですの?」

 

「織斑先生に的確な指示を出したのは織斑博士だから」

 

「そうだったんですの。教えていただき感謝しますわ」

 

「あぁ。……怪我は無かったか?」

 

「……さっきから何ですの?」

 

「社交辞令だ」

 

「……擦り傷一つありません」

 

そこでぎこちなく続いていた会話は途絶えた。

何とも言えない沈黙が続く。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「しりとりでもしますか、お嬢様?」

 

「お食事中に、はしたないですわ」

 

「そりゃ失礼」

 

断られたと思った一夏はパンを千切った。

 

「………りんご」

 

「やるのぉ!?」

 

すでに、パンの一切れを口に含んでいた一夏は、どもりながら突っ込みを入れたのだった。

 

「たった今、食事は終わりました」

 

セシリアはナフキンで優雅に口を拭いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから俺は負けてない。香港はスペルにするとHong Kong、最後はGだ。つまり正しくはホングコング! キングコングをキンコンて言う人いますかぁ? 英国人だろ! ホングコング、Repeat after me ?」

 

さすが、織斑三夏チルドレン一号である。ちなみに鈴とラウラが二号と三号だ。

本人たちに自覚があるかは分からないが。

 

「往生際が悪いですわよ。私の勝ちですわ」

 

「だから負けてない! この勝負はドローだ」

 

しりとりの勝敗は置いておくとしよう。どうでもいいことである。

 

「それにしても、そこまで勝ち負けに拘るあなたが、どうしてあのような負け方をしたのか、甚だ疑問ですわ」

 

からかうように言うセシリア。やはり一夏はこれにも食らいついた。

 

「だから、あの試合も俺は負けてない。棄権だ! 権利を放棄しただけだ。負けとは違うぅ。あのまま行けば俺が勝っていた。棄権した理由は、クラス代表がめんどくさくて嫌だった、それだけだ」

 

「……そうですわね。あの試合はあなたを見下し侮っていた、私の負けですわ。それは認めましょう。訂正しますわ」

 

セシリアは先ほどからの一夏とのやり取りに疑問を覚えた。

 

「あなた、なぜ勝つことに拘るんですの?」

 

「言わなぁーい」

 

「言いなさい。言うまで逃がしませんわよ?」

 

セシリアは一夏の上着の裾を力強くつかんだ。

 

「放してくれませんかね、お嬢様」

 

「ならば、そちらは話しなさい」

 

諦めた一夏はため息をついて口を開いた。

 

「……憧れだ」

 

「憧れ?」

 

「俺は必ず織斑千冬と同じ高みに立つ。公式戦、無敗。モンド・グロッソ総合優勝。ゆえに俺に負けは許されない。その心構えを今からしておく」

 

「ご立派な夢をお持ちですこと」

 

「やかましい。……でも、やってみせるさ」

 

「私が目を覚まして差し上げますわ」

 

「やってみろ。今度は手加減しないぞ。コテンパンに叩きのめしてやる」

 

「私も負けませんわ」

 

そんな二人だったが、険悪な雰囲気ではない。自然と笑っていた。

 

良きライバルになるだろう。

 

「さぁ、俺の質問にも答えてもらうぞ」

 

「嫌ですわ」

 

「答えないとお前と同じ行動をとるぞ」

 

「やってみなさい。痴漢がいると、叫んで差し上げますから。さぁ」

 

「くっ! 性格の悪いお嬢様め」

 

「まぁ、私は寛大ですから。あなたのような痴漢まがいの男性の質問に、仕方なく答えてあげてもよろしいですわよ。さぁ、お言いなさい」

 

「へいへい。あー、ごっほん。お前は何で俺に突っかかってきた?」

 

「今更ですわね。決まっているじゃありませんか。男性である、あなたが気に入らなかっただけです」

 

「本当に?」

 

「……何が言いたいんですの?」

 

「これはただの勘だが。あれは、そうだな、恨み?」

 

「っ」

 

「どんぴしゃり、かな? 勘はいいんだよ俺は」

 

セシリアの反応を見て、ようやく話の主導権を握ることの出来た一夏は得意げに、意地悪な笑を浮かべている。

 

「……英国企業連合を知っていますか?」

 

「あぁ。名前ぐらいは……。確か、崩壊したんだよな?」

 

「えぇ、そこの長であった私の母が事故死して、あっけなく消えてしまいましたわ。そして、英国企業連合とイギリス国内外の市場をめぐって睨み合っていたのが、インペリアル・コーポレーション。両親の不審死、巨大組織との対立、この二つが揃えば私の考えたことは、お分かりでしょう」

 

「……父親もか?」

 

「えぇ、お母様に頭の上がらない情けない人でしたわ。お母様もあまり相手にしていませんでした。よりにもよって何であの時だけ二人は一緒にいたんでしょうね」

 

たんたんと語っているセシリアだったが、悲しそうだった。

 

「もしかしたら無意識にインペリアル・コーポレーションの企業代表である、あなたに恨みをぶつけつけていたのかも知れません。悪かったと思いますわ」

 

「まったくだ。とばっちりもいいところだな」

 

「冷たい人は嫌われましてよ?」

 

「正直者は好かれるんだよ。……さてと」

 

「行きますの?」

 

「ああ」

 

一夏はトレーを持つとその場から去っていった。

 

「ふん、いけすかない男ですわ。あら?」

 

ふと見れば、テーブルにプリンが一つ置かれていた。食堂の人気の高い限定商品だ。

 

「……どう言うつもりなんでしょう。施しのつもりかしら。……本当に、いけすかない男ですわ」

 

言葉とは裏腹にセシリアの表情は嬉しそうだった。

 

「しまったー! プリン食べ忘れてしまったぁぁぁぁ!!」

 

廊下で頭を抱えて叫んだ一夏に、その場いた生徒の視線が集まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ、お前も大変だな」

 

目立つ赤髪にロン毛の青年がつぶやくように言った。

 

「分かったか? お前の憧れてるような場所じゃないぞ」

 

「いや、それとこれとは話が別だ。やっぱり羨ましい」

 

「理解できないな」

 

午後、一夏は友人である弾の家でゲームに興じていた。

 

「はぁ〜、行きてぇなぁIS学園」

 

「無理だろうな」

 

「くそぉ。女にでもなれればなぁ〜」

 

「それじゃ本末転倒だろ。そして男が女に変身できるのはケンプファーの世界ぐらいだ。主人公限定だしな」

 

「はぁ、駄目か」

 

「諦めろ」

 

「でも鈴もいるんだろ? また四人でつるみたいって思ってさ。今、何やってるんだ? あいつも来れば良かったのに」

 

「書類作りで遊びどころじゃないって言ってたぞ」

 

「は?」

 

「言葉のとおりだ」

 

「よく分からんが、あいつも大変なんだなぁ。よろしく伝えといてくれ」

 

「了解」

 

テレビ画面に赤くKOの文字が表示された。一夏の操作するキャラが弾のキャラに必殺技を叩き込んだのだ。

 

「げっ、負けた」

 

「相変わらず弱いな」

 

「お前が強すぎるんだっての」

 

コントローラーを放すと一夏はごろりと寝転んで大きく伸びをした。

 

「くつろぎ過ぎじゃねぇか? まぁ、いいんだけどよ」

 

「俺は疲れてるんだよ。俺に疲れを癒す場所を提供していることを誇りに思って、お茶でも持って来たまえ」

 

「今すぐ追い出していいか?」

 

「駄目だー。ん〜」

 

「転がるな。ゲームも飽きたし、飯食わせてやるから下に行こうぜ」

 

弾の家は、五反田食堂という飲食店を経営している。

弾の祖父である五反田厳の作る料理は近所でも評判が良く、昼時や夜はかなり繁盛している。

 

「待ってました!」

 

一夏が勢い良く飛び起きた、そのときだった。

 

「お兄ぃ。ご飯できたってさ」

 

ガラリと襖が開き、赤色の髪を雑にまとめたラフな格好の少女が現れた。

 

「二人分あったけど誰か来て……る、の?」

 

赤髮の少女の視線が一夏を捉えた。

 

「いいいい一夏さん!?」

 

「よぉ、蘭」

 

蘭と呼ばれた少女は顔を真っ赤にして慌てふためく。

 

「ちょっとお兄! 何で言わないのよ!」

 

弾の腹にパンチを決める。

 

「ぐほっ!? ち、ちょっと待て、俺は……ぐえ……」

 

「い、一夏さん。ゆっくりしていってくださいね。それじゃあ、私はこれで!あ、下にご飯できてますからー!」

 

胸ぐらを掴んでいた弾を捨て、蘭はすぐに部屋から出ていった。

 

「相変わらずデスパレードなご関係だな」

 

「見てないで、助けてくれ……」

 

「大丈夫だ。傷は浅いぞ。さて飯だ、飯だ」

 

「お前は本当に俺の友達か?」

 

「もちろんだ。親友と言ってもいいな」

 

「…………」

 

「もしくは飯友だな」

 

「俺の感動を返せ、おい!!」

 

弾の嘆きをスルーして一夏は下へと下りていった。

 

テーブルには美味しそうな中華の定食が置かれていた。

 

「おじさん、ご馳走になります」

 

「おう! 腹一杯食っていけ」

 

「はい」

 

一夏は厳の昔と変わらない様子に微笑んだ。

 

復活した弾も合流し、和定食を平らげると、二人は昔話に花を咲かせた。会うのが久々だったこともあり、話が尽きることはなかった。

 

楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。

 

「じゃあな。今日は楽しかった」

 

「おう、また来いよ。一夏」

 

「分かった。あ、そうだ。弾、IS学園に来たいなら文化祭なんてどうだ?」

 

「文化祭?」

 

「チケットさえあれば誰でも来れるからな。嫌ならいいんだけど」

 

「一夏君! ぜひ、ぜひお願いします!」

 

弾は一夏の手を固く握り締めた。

 

「くっ、あははははは。了解」

 

そうして一夏は学園へと帰って行ったのだった。

 

しばらくして……

 

「よし! これなら完璧。お兄、一夏さんは!?」

 

「お前は今まで準備してたのかよ……」

 

「うるさいわね。そんなことより、一夏さんはどこ!?」

 

「帰ったよ。当たり前だろ」

 

「え?」

 

「いや、意外そうな顔されても困るんだが。ま、今回は自業自得だな」

 

弾はそこまで言って、蘭がワナワナと震えていることに気がついた。

 

「何で?」

 

「は、はい?」

 

「何でもっと早く教えてくれないのよぉー! この馬鹿兄貴ーー!!!」

 

「待て! 俺は悪くなっぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!」

 

「もう! いろいろ話したいことがあったのに、馬鹿ーー!!」

 

「ふ、不条理だぁぁぁ」

 

こうして、また一日が終わろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで、これからは毎日、料理するからな」

 

「え?」

 

「さて、目覚ましを5時にセットして……。お休み、兄さん」

 

「いやぁぁぁぁぁーー!!」

 

 

 

 

 

 




初登場、千冬さんの料理風景でした。

さて、そろそろ小清水さんも学園に来る頃ですね。


ではでは〜。
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