「凍結中」織斑さん家の奇妙な共同生活。   作:よし

27 / 36
第27話

「…………」

 

「ここ、いいかしら?」

 

「……あぁ」

 

「どうも」

 

食堂で、一人もくもくと食事を続けていた箒の前方の席に鈴が腰を下ろした。

鈴は飲み物が注がれたグラスを一つ手にしているだけだ。

 

「何か用か?」

 

「そうよ」

 

「ならば、早く用件を言え」

 

「まぁまぁ、そんなに急かすんじゃないわよ。その前に、少し話があるのよ。本題とは別にね」

 

「…………」

 

「ラウラのことよ」

 

箒の目がラウラの名を聞いた途端に険しくなった。彼女もあれから何も考えていなかった訳ではないのだ。

 

「鳳、お前も」

 

「鈴でいいわ。あたしも箒って呼ぶから」

 

「分かった。では鈴、お前も私に不満があるのか?」

 

「別に無いわよ。この話はただの雑談として聞いてくれてかまわないわ」

 

「なら聞くが、私は間違っているか?」

 

「…………」

 

鈴は答えなかったが、かまわずに箒は話し続けた。

 

「相手を打ち倒すことがすべてなのか? 卑怯な手を使っても勝つことができれば、それでいいのか? 殺すことができればそれで……。いや、そんなはずはない。あいつの考えは歪んでいる」

 

「話をする前に聞いておきたいんだけど。あんた、反戦主義者じゃないわよね? 戦争は仕方のないことだと思う?」

 

「……あぁ。対話が無理ならば戦わなくてはならないと思う。残念ながら私は反戦主義者でも理想主義者でもないからな」

 

「そう、そこからじゃなくて安心したわ。じゃ、質問よ。あんたの立場はどこなの?」

 

「何?」

 

「やっぱり分かってないのね」

 

「どういうことだ?」

 

「……あんは、ラウラの言葉に反論したわよね。卑怯な手段で命を奪うべきじゃない、で合ってるかしら?」

 

「当たり前だ。あいつの考えは間違っている」

 

鈴は心底飽きれてしまった。

 

「だから何で、あんたがISを使って、命を奪うことを前提に話をしてるかってことよ一般人。ラウラとあんたじゃ立場が違うのよ」

 

箒の目が大きく見開かれた。

 

「ISは絶対に戦争に使われるわ。最強の兵器を出し惜しむ馬鹿はいないからね。あたしたち軍属の操縦者は命令があれば人を殺すわ。真っ先に戦争にだって投入される。それが仕事で、それを理解して割り切ってるから。……それでも、どんなことをしてでも生き残りたい、死にたくない。それが人間よ。そのことを、あんたにとやかく言われる筋合いは無いわ。ただの詭弁にしか聞こえない」

 

「…………」

 

「ねぇ。あんたは家にある刃物で何をしてた?」

 

「……家族が調理をするときに主に使った」

 

「でしょうね。それが普通だわ。でもね、軍ていうのは不思議な世界なのよ。刃物も人を殺すための道具なの」

 

「しかし、刃物は人を殺せるぞ」

 

「意味がまるで違うのよ。親が子供に刃物は人を殺す道具だって教える? それは結果的に殺せることが分かってるだけ、結果的に殺せてしまっただけ。自然と身につく知識と教育される知識は違うわ」

 

「…………」

 

「刃物も銃も車も航空機もロケットも衛星も……ISも人間すらも、軍が使えばみんな兵器なのよ。敵を殺して仲間を救うことを、ずっと教育される世界。それが力だと言われる世界を、あんたに想像できる?」

 

「……無理だな」

 

「あいつは、ラウラは、そんな世界でずっと生きてきたから、外の世界を知らないのよ」

 

「…………」

 

「あたしは外の世界を知っているから、あんたの言うことも間違いではないと思う。軍人じゃないあたしはね。平和な世界でISを兵器として見ないなら、あんたが正しいのかもしれない。だけど、軍人としてのあたしは、ラウラに賛成してる。あんたの意見は試合でしか通用しないから」

 

箒は何も言わずに鈴の言葉を聞き続ける。

 

「人の身の上話だから詳しくは言わないけど、あいつは特にその力に執着してるわ。自覚があるのかは知らないけどね。……結局、あんたたちがやってるのは着地点のない争いなのよ。言っちゃえば、お互いが気に入らないから、いがみ合ってるだけのガキの喧嘩ね」

 

「ならばどうすればいい?」

 

「勝ちたいの?」

 

「勝ち負けなどないのだろう?」

 

「本当は自分で考えさせたいけど、時間がないから教えてあげるわ。ラウラにあんたの言うISを教えてあげなさい」

 

「それは、どういう……」

 

「あいつは兵器としてのISしか知らないし、殺し合いの訓練しか知らない。だからあんたが、あんたの知るISを教えてやればいいのよ。勝負には勝っても負けてもいい。ラウラに理解させることができたなら、本当の意味であんたの勝ちよ。あたしが保証してあげるわ」

 

言葉にすれば簡単だが、兵器として産み出されたラウラがそれを理解することは容易なことではないだろう。

 

だからこそ、鈴はあえて箒に助言をしたのだ。

 

「なぜ、私にそんな助言をする?」

 

「言ったじゃない。ついで、よ。今からが本題」

 

鈴はまだ中身を飲み終えてもいないグラスを持って椅子から立ち上がった。

 

「あんたの顔を見て分かったわ」

 

「?」

 

「あたしは一夏のことが好き。だから、あんたには渡さない」

 

それは突然の宣言、いや宣戦布告だった。

 

「!?」

 

「それじゃあね。あいつと勝負がしたいなら同じ土俵に引きずりこみなさい」

 

予想外の事態に驚き言葉を失う箒に、背中を向けた鈴は片手を手を軽く振りながら去っていってしまった。

 

「ちゃんとお膳立てはしておいたわよ?」

 

そのつぶやきは誰の耳にも入ることはなく周囲の音に掻き消された。

 

「……というかあいつ、あたしとの約束は……まぁ触れないってことは忘れてるんでしょうねぇ。いいわ、きっちり思い出してもらうから。っと、シャルルが移動してるじゃないの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

IS学園の中庭で金髪の貴公子はため息を漏らした。

美しいい花々が植えられた花壇、それを見つめながら、物思いに沈む彼の姿はとても幻想的な雰囲気で周りの者を魅了する。

 

「はぁ……」

 

「何か、悩みごとかね?」

 

「え?」

 

そこには人の良さそうな老人の用務員が立っていた。土の付いた軍手に小さなスコップを持っている。どうやら花壇の手入れをしていたようだ。

 

「いえ、何でもないです」

 

「そうかい? 私には、すごく深刻に見えたが。よければ聞かせてもらえるかな?」

 

「本当に大丈夫です……から」

 

「少しは楽になるかも知れないよ?」

 

「…………」

 

「どうだろうか?」

 

用務員の男性は絶えず笑みを浮かべて優しく諭す。

 

「……友達に嘘をついてしまったんです」

 

答えるべきではないと考えていたシャルルだったが、彼には何とも言えない親しみやすさがあった。

 

「ほぉ。しかし、嘘は誰しもついてしまうものだよ」

 

「酷い嘘なんです」

 

「それなら謝ればどうだい?」

 

「……それができたら、どんにいいか」

 

「良心は痛んでいないのかい?」

 

「痛いですよ。……僕だってそうしたい。僕を友達と言ってくれる人たちを騙さないといけないのは……本当に辛い」

 

シャルルの手に力が入り、上着の裾にシワがよった。

 

「やってしまったことは仕方が無い。時間は戻ってはくれないのだからね。しかし、嘘をついたなら謝ればいい。罪を犯したならば償えばいい。許されない嘘も、償えない罪もこの世には無いよ?」

 

「……僕は」

 

その刹那、こちらへ走って来た少女によってシャルルの言葉は遮られてしまった。

 

「シャルル、ここにいたのね。ちょっと用事があるのよ」

 

「えっ、待って……」

 

「とにかく行くわよ。用務員さん、悪いけど連れて行かせてもらうわ」

 

鈴はシャルルの手を掴むと、そこから走り去った。

 

「ふむ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふふ〜。どのヘリがいいかなぁまったく迷ってしまうよ」

 

寮の一室。

ソファーの上に寝転んだ三夏が、分厚いプライベートヘリのカタログをペラペラとめくっていた。

 

「何をなさっているんですか……?」

 

「何だいたのか、ポンコツ」

 

「私はポンコツでありませんし、ここは私の部屋です。どっから持ち込んだんですか、そのソファーとテーブル! 何かテレビもでっかくなってるし!」

 

「二人部屋を一人で独占しているのだから、使っていないスペースがもったいないじゃないか。このソファーとテーブルは、この間、本社に行っているときに業者に運んでもらった」

 

「だからさっきも言いましたけど、ここは私の部屋です! 主が留守のときに何してるんですか」

 

「何とでも言うがいいわぁ〜ふははははは!!」

 

そこへ千冬がお茶を運んできた。今は昼休みだ。

 

「兄さん、小清水さんからクッキーが届いたぞ」

 

「よし、早く出したまえ!」

 

「言われなくても」

 

千冬が紅茶の注がれたティーカップとクッキーをテーブルに並べる。

 

「いつか罰が当たりますからね」

 

「そんなもの私の鉄腕バットで弾き飛ばしてやるわ。千冬君、君はどれがいい?」

 

「右のやつだな」

 

「これか? ん〜、どうだろう。地味じゃないか?」

 

「なら左下のオレンジはどうだ?」

 

「ほぉオレンジねぇ」

 

「いいんじゃないですかぁオレンジ博士」

 

「誰がオレンジ博士だ朝ドラァ、私は悪逆皇帝にご執心の辺境伯ではない!」

 

「はぁ……」

 

「私にギアスの力があれば真っ先にお前にかけてそのアッパラパーの脳回線を正しく繋ぎ直してやろう」

 

「けっこうです! そもそもプライベートヘリを購入したところで、高所恐怖症じゃないですか! まだ潜水艦の方がいいんじゃないですかぁ?」

 

皮肉を込めて杉山が言う。

 

「杉山さん、この人は閉所恐怖症だぞ」

 

「忘れてた。……何にもできないんですね、博士って」

 

「うるさぁーい! ヘリは高所恐怖症を克服したら乗るのだ! 潜水艦を買ったら閉所恐怖症も克服して操縦者するんだぁぁぁー!!」

 

「二つとも買う意味ないでしょ。どうせ克服できないんだから……」

 

「できる! できると言ったらできるのだー! 小清水さんに治してもらうもん!」

 

「あなたは小清水さんを何だと思ってるんですか!?」

 

「素晴らしい万能型使用人だ。どこぞの青狸のような猫型ロボットとはワケが違う」

 

「ドラえもんを馬鹿にしないでください!」

 

「やかましいアンパンマン!」

 

「子供達のヒローをアンポンタンみたいに言わないでください!」

 

杉山の言うとおり、ドラえもんもアンパンマンも子供達に夢を与える素晴らしい存在であることは確かだ。これは断言できるだろう。

 

携帯が音を出した。

三夏は右手で携帯を取り出し通話ボタンを押して耳に当てた。

 

「鈴君か、どうした? ……なぁにぃ? ……そぉかご苦労」

 

三夏は携帯を着ると、指についていたクッキーのカスを素早くはたき落として立ち上がった。

 

杉山が驚くが千冬はただティーカップを片手にテレビを眺めているだけだった。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「老後の趣味と勘違いして影に隠れてドンを気取っているクソジジイに一喝をいれに行く」

 

「だからどこに!?」

 

「突撃隣の用務員室だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たのもー!!」

 

「ちょっ!? 博士!」

 

大きな音を立てて用務員室のドアが開け放たれた。犯人は三夏である。

 

玄関で靴を脱ぐことは見れば分かるはずなのだが、杉山が止めるのも聞かずに、三夏は和風の室内に土足でドカドカと上がり込んだ。

 

年代物の湯飲みで緑茶をすすっていた用務員服の老人の前で足を止めた。

 

「勝手な行動はやめていただけますかねぇ轡木十蔵さん」

 

「やれやれ、騒がしいな」

 

「騒がしくさせているのはそちらでしょうぅ」

 

あまりに老人に失礼な態度に杉山が口を開いた。

 

「失礼ですよ!」

 

「シャーラップ!」

 

三夏は杉山を一蹴した。

 

「お分かりにならないのなら教えて差し上げましょう。シャルル・デュノアに接触しましたね」

 

「あぁ、そのことか……。少し会話をしただけだよ」

 

「その少しが問題なんですよぉぉ。この件はすでにあなたには無関係なことだ。我々に任せていただければ穏便に解決できます」

 

「……何のことかな。私は彼の悩みを聞いてあげただけだ」

 

「聞き出したの間違いではぁぁ?」

 

「さぁね。しかし、利益のために人を救うというのは、いかがなものかな。大切なのは心から相手のことを考える気持ちだ」

 

「ははははっ! その反吐が出るような高説は先日、馬鹿部下から聞いたばかりですし、ご指定いただいた点はノープロブレムです」

 

「…………」

 

「今後はやめていただきますよ。さもなくば……」

 

「なんだい?」

 

「高等教育だけでなく、大学教育までできることは素晴らしいことだとは思いませんかぁ? 雇用も一新して老人が震える体にムチを打って働かなくてもいいようにして差し上げましょう。あのチンケな中庭も豪勢になることでしょうね! あなたは残りわずかな老後を謳歌すればよろしい、ただの老人としてね」

 

「ほぉ」

 

「我々の力はご存知のはずだ。時代は変わった死に損ないにできることは残っていませんよ」

 

「……君たちはどうして力を求める? 過ぎた力をどう使う?」

 

「意味など無い、ただ欲があるだけだ。使い道などその瞬間に考えればいいし用途はいくらでもある。それでは!」

 

「あ、あの……何だかよく分かりませんけど、本当にごめんなさい!」

 

白衣を翻して去る三夏。

杉山は目の前の老人にとにかく頭を下げて三夏を追っていった。

 

廊下。

杉山は三夏から先ほどの老人の正体を聞き目を丸くした。

 

「あの人が……」

 

「あぁ。あんな冴えないしみったれ用務員ジジイだが、この学園の実質的な最高権力者だ。通り名はなんだと思う? 学園の良心、だ。世も末だねぇ」

 

「博士、さっきの話は本気なんですか?」

 

「さっきの話ぃ?」

 

「ほら、大学教育がどうとか……」

 

「そんなもの出任せに決まっているだろう。……いや、改めて考えると我ながら素晴らしい名案じゃないか? ……IS学院大学。一度、買収計画を議会に提案してみよっかなぁ〜」

 

「無茶苦茶ですよ」

 

「無茶が通れば道理など引っ込む。いや、無茶を道理にしてしまえばいいのだよ!」

 

「だいたい博士はISがお嫌いなんでしょ!?」

 

「利用できるモノを利用して何が悪い。私は女尊男卑がクズだと言っているだけだ。女尊男卑を崇拝している女どもなどクズだぁぁ。ぶははははははーー!!」

 

「…………」

 

上機嫌に廊下をスキップする三夏を、杉山は軽蔑に近い眼差しで見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方。

 

「あ〜、クッソぉ。あの横分け小僧ぉぉ……ふざけんじゃねぇぞぉぉ……」

 

本日も上司にさんざん振り回された杉山は疲れのあまり職員室のデスクでうな垂れていた。

 

「ゔぁ〜」

 

「はい」

 

コーヒーが差し出された。

 

「あっ。すいません……」

 

「お礼なんていいよ。そうとう疲れてるみたいね。大丈夫?」

 

コーヒーを差し入れた相手。榊原菜月は椅子を引いて杉山の隣に座った。

彼女は部活棟の管理を任されている教師だ。

優しく品行方正、気配りもできて容姿も悪くない。

 

「まぁ、いつものことですから。あの上司に振り回されるのは」

 

「ふーん。……ねぇ、織斑三夏博士ってどんな人?」

 

「……なぜそんなことを聞くんですか?」

 

「いいから、いいから」

 

杉山は三夏の心象を包み隠さず言って聞かせた。

日頃の恨みもあってか、その口調は徐々に強いものになっていった。

 

「とにかく夢も希望も無い人なんですよ!」

 

「へぇ、現実主義者なんだ」

 

「お金に目がなくて、とにかく稼いでるんですよ。あの人はお金がすべてなんです」

 

「つまりお金持ち」

 

「無茶苦茶やってるけど天才だからという理由で許されてるから、すっごいムカつくし!」

 

「頭脳明晰で地位もある。今の時代には珍しい男性ね」

 

「顔なんて女の子みたいで、すっごく女々しくて!」

 

「むさ苦しくなくて、かっこいいと言うより可愛いわよね」

 

「節操が無くて、いろんな女の人と遊んでるんですよ! 信じられますか!?」

 

「モテるんだ。まぁ美形だし仕方ないか」

 

「そして、デリカシーのかけらもない!」

 

「言いたいことは、はっきりというタイプなのね」

 

だんだんと、おかしなことに気がついた杉山は榊原の顔を見た。

 

「…………」

 

「…………?」

 

一瞬の沈黙を経て、杉山は戸惑いながらも口を開いた。

その間も榊原はキョトンとしているだけだ。

 

「あの?」

 

「続けて、続けて」

 

「いや、その……私の言いたいことは伝わってますか?」

 

「十分に伝わってるわよ」

 

本当にそうなのか怪しすぎる。

 

「なんだか美化されてませんか?」

 

「まっさか〜」

 

「なら、一緒に博士の印象を言いましょうか」

 

「いいわよ?」

 

「「せーの」」

 

「最低人間!」

 

「理想の男!」

 

「まるで伝わってなかったー!?」

 

杉山は勢いよく立ち上がると頭を抱えながら天へと叫んだ。大声に周囲の視線は彼女へと一点に集中してしまった。

 

「いやいやあの人はやめた方がいいです!」

 

確かに顔はかっこいい。女顔であることもあの独特な髪型も個性と言えばいいが、彼の性格を良く知っている杉山は猛反対した。

 

「え〜」

 

「断言できますって!」

 

「ん〜。でもぉ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

「鈴君、あのジジイを徹底的にマークしろ! 老いぼれが出る幕などない。これ以上の老害はごめんだ」

 

三夏はどこから持ち込んだのか、セグウェイに乗って同じ場所で、行ったり来たりを繰り返していた。いつものように暴言を発している。

 

「あたしの体は分裂しないんだけど……」

 

「もちろん報酬はデュノアとは別に出す。これは前金だ」

 

「……毎度!」

 

「頼んだぞ」

 

「任せておいて、博士」

 

始めは渋っていた鈴だったが手渡された封筒の中身を片目を閉じて確認すると、途端に笑顔になり、それをポケットに押し込んだ。

 

「千冬姉、飲み物は?」

 

「あぁ。すまんな、一夏。ビールをもらおう」

 

「はいよ」

 

「嫁よ! オレンジジュースをくれ!」

 

「ほら」

 

「ありがとう!」

 

「どういたしまして」

 

「一夏に鈴君、ジジイの妄言がデュノアに少しばかり影響を及ぼしている可能性があるが、柔軟に対応してくれたまえ」

 

「了解」

 

「おう。あ、三夏兄は何飲む? ビール? ワイン?」

 

「ワインだ」

 

食卓はワイワイと賑やかだ。

彼らはあまり夕食を食堂でとることがない。仕事の話やプライベートの話をするのには、こちらの方が、周りに気を使わなくてすむし楽だ。自然とこういう形になった。

 

いつもの食事風景だ。

すべて普段どおりだ。

 

「……ここ私の部屋なんですけど」

 

杉山の小さなつぶやきも、ため息も、誰も気づくことはない。

これも、いつものことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日。

 

「なんだこれは?」

 

「見てのとおり、人が入れるサイズのロッカーだ」

 

「だから、なぜ?」

 

「閉所恐怖症の克服に協力しようと思ってな、親孝行だ」

 

「……ならば高所恐怖症は?」

 

「私がISで兄さんを抱いて飛ぶんだ。簡単だろ?」

 

「…………」

 

「さぁ、どちらからやる? 決めてくれ、兄さん」

 

「どちらもやるわけがないだろぉぉ! とっとと片付けろ、この親不孝者めぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




近いうちにISの試合ですね。
学年別トーナメント、ですか……。戦いを書くのは苦手です(汗)

うん、頑張って書こう!



榊原先生は一発ネタにするのか継続していくのかは、今のところ未定です(^^;;

ではでは〜。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。