「凍結中」織斑さん家の奇妙な共同生活。   作:よし

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第8話

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜだ……」

 

三夏がそうつぶやいた。

 

家の電話がなり響き、インターホンが連打され、家の表からはシャッター音やニュースを読み上げるキャスターの声がする。

杉山と小清水はその対応に追われていた。

三夏は椅子に腰掛けテーブルに肘をついて頭を抱えている。

髪はかきむしられてボサボサになっていた。

 

「なぁぜぇこんなことになってるんだ!!」

 

「しょうがないじゃないですか! 一夏君がISを起動させちゃったんですから。世界で初めてならなおさらですよ」

 

そう、一夏が受験会場を間違え、ISを起動させるという大騒動を引き起こしたのだ。

現在、一夏は身の安全を確保するためインペリアル・コーポレーションに保護されている。

本人を捕まえることができないと判断したマスコミの餌食になったのは織斑家の面々だった。

主に三夏と小清水であるが。

 

「私の平穏は!? どこだ! いったいどこへ飛んで行ってしまったんだ!! なぁんでぇIS学園と藍越学園を間違えるんだ、どうやったら間違えられるんだ。もはやマヌケとしか言えん! 今世紀最大の大マヌケだ、文字もまともに読めないで高校受験とは笑わせるぅー! だいたい試験官も試験官だ、女子校に男子が受験に来るはずないないだろ、それ以前に見た目で分かるだろ! 男と女の区別もつかない眼球ビー玉ポンコツが教師で、しぃかぁもぉ試験官になることが信じられん! 採用した国と教育委員会に抗議申し立てをしてやる。そぉしぃてぇ何で男がISを動かせるんだぁー、これは策略だ! あの不思議の国のウサギ耳アリスの策略だ、私を過労死させるつもりなんだ!! ここしばらく私は清々しい朝の目覚めを経験したことがないぞ! あのカシャカシャうるさい耳障りなクソ記者どものシャッター音は、お前の朝ドラ臭以上に私を不快にする!!」

 

「知りませんよ! 人を指ささないでください!!」

 

不満を一気にぶちまける三夏。

 

「博士」

 

「今度は何ですか小清水さん!?」

 

受話器を手にした小清水が三夏に話しかけた。

 

「本社からのお電話です」

 

「電話?」

 

三夏は受話器を小清水から受け取った。

本社が何か対策を練ったのだろうと三夏は考えていた。

 

「お電話代わりました織斑です」

 

その考えは間違ってはいなかったが、三夏にとっては最悪のモノとなってしまうのだった。

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杉山と三夏は社長室のソファーに座っていた。

 

「珍しいですね。社長室に呼び出しなんて」

 

「あのヒッキーがどういう風の吹きまわしかねぇー。直接話すなんて……」

 

「あの、博士は社長とは会ったことあるんですか?」

 

「当たり前だろ。何だ君は会ったことすらないのか?」

 

「……一度も」

 

「なら何も期待されていないということだ。次の就職先を探すことをオススメする」

 

「本当ぉに嫌な人ですね!!」

 

「んふふふふーー」

 

テーブルに足をかけてくつろぐ三夏が、杉山の疑問に答え、ついでにバカにしている。

 

「それにしても話っていったい……」

 

「どーせまたくだらない仕事を押し付ける気だ。やっぱり帰る、私の代わりに話を聞いておきたまえ、そして断っておくのだ」

 

「ダメです。いい加減怒られますよ」

 

「誰が私を怒れるモノか。いいか私はこの会社のナンバーワン科学者だぞ? 私がどれだけインペリアル・コーポレーションに貢献してると思ってるんだー。誰がどう説教してきても逆に論破してくれるわぁ」

 

「博士に苦手な人はいないんですか……」

 

「愚問だねぇ、いるはずないだろー。私にめげずに食い下がってきた史上最大の愚か者は今までにたった一人……」

 

社長室の扉が開き一人の女性が入って来た。

得意げに語っていた三夏の口と動きが止まる。

 

「はじめまして、社長代理を務めることになりました。西野です」

 

しばらくの沈黙。

 

「杉山君訂正しよう、今までに私に食い下がった史上最大の愚か者は二人だ」

 

「へ?」

 

それはフランスで三夏の足を踏みつけたあの美人だった。

 

もう一人は誰なのであろうか。それはまたの機会に語られることになるだろう。また近いうちに必ず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、本題に入りたいと思います。織斑博士、あなたのお子さんの「お子さんでぇはぁなぁくぅ居候の一夏君でーす。お間違えにならないようにー」……」

 

「博士!!」

 

「ふん!」

 

三夏はふてくされたようにテーブルから組んだ足を降ろさないでいる。

 

「……そこで一夏君は我が社の企業代表としてIS学園へ入学することが最良の手だと考えています」

 

「そうですか電話で済む話をわざわざ呼びつけて聞かせてくださってありがとうございます感謝で怒りが湧いてきます話は以上ですか?私は帰ります」

 

「待ちなさい。誰が終わったと言いました?」

 

立ち上がった三夏を西野が呼び止めた。

 

「あなたにはIS学園へ出向し、彼のデータ採取を命じます」

 

「お断りします」

 

「聞き入れられません」

 

「あなたに何の権限が」

 

「私は社長代理です」

 

「社長はどこです? 私が直接抗議します」

 

「社長は南極で休暇中です」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なんだあの女は! いいかよく覚えておきたまえ、あれが女尊男卑に汚れた愚かな生物の姿だ!」

 

「…………」

 

会社の廊下を、盛大に不満を撒き散らしながら白衣を大きくはためかせ早歩きする三夏。杉山も急いでその後に続いている。

 

「だいたい何だ? 南極で休暇だと!? ペンギン観察でもしてるのかー! どっかの某アニメよろしくセカンドインパクトで真っ赤な海の生物が生息することのできない死の土地になってしまえ! 少しはマシになるだろう!」

 

「はぁ……」

 

「あー南極に研究しに行きたくなっちゃったなー、例の生物を卵まで還元したくなっちゃったなー、よし! しばらく私は留守にするからそのつもりで」

 

「バカなこと考えないでください!!」

 

「あーもう最悪だー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園校門前。

そこに三夏と杉山の姿はあった。

 

「帰りたくなってきちゃったなぁーー!!!!」

 

両腕を振り上げ叫ぶ三夏。

 

大声で生徒たちを指さして文句を言う三夏に杉山は呆れていた。

 

「ダメですよ」

 

「見てみろ、全員同じ安物のジャージを着せられ集団行動を強制されている、まるで強制収容所じゃないか。さっきスカートの下にジャージを着て、ヘルメットをかぶってる娘がいたぞ、いったい何がしたいんだぁぁ!!」

 

「学校は収容所なんかじゃありません! 学生のみんなが青春という人生において貴重な時間を謳歌するところです!」

 

「青春など糞だ! そしてここは多額の無駄金がかけられた最高級の肥溜めだ!! 税金泥棒め逮捕されてしまえ」

 

「一生懸命に勉学や部活に精を出すことのどこが糞なんですか!」

 

「勉強は自力か通信教育でもしてれば身につく、部活なんぞ汗臭いだけだ、何の得があるのか理解不能だねぇ」

 

「プロになった子だっているはずです!」

 

「ほぉーなら君の知り合いにいるんだな?」

 

「い、いませんけど……」

 

「それ見ろぶぁーか。プロになるような連中は親が自分の欲を満たすためだけに幼少期から好きでもないスポーツを子どもにやらせ、まるで自分が望んでやっているかのような幻覚を植え付けた上で、大金はたいて教育したマインドコントロールチルドレンだ」

 

「と、友達作りなんかもあります! 豊かな人間性や社交性を養うんです!!」

 

「高校の人間関係が将来役に立つことはありましぇーん。せいぜい困ったときの金をたかる資金源の一つにしかなりましぇーん。豊かな人間性や社交性を養うー? そのくだらない仲間意識がいじめ問題を引き起こすのだ、このアッパラパーの朝ドラめぇ」

 

「どうしてそんに偏屈にしか捉えられないんですかあなたは!!」

 

「それが現実だからだ。ー光と闇は表裏一体なのだ。お前の言う御伽の国のような理想も、確かに現実に存在するのかもしれない。だがそれと同時に真逆の現実も存在するということを忘れるな朝ドラぁ」

 

「うぅー!バカー!!」

 

結局いつものごとく口論になってしまう二人。

そこへ黒いスーツを見にまとった女性がやってきた。千冬である。彼女はドイツから帰国した後に、現役を引退してIS学園へと正式に就職したのだった。

 

「待ってたよ、兄さんに杉山さん。ついて来てくれ、理事長のところへ案内する」

 

二人は千冬に続いて学園内へと足を踏み入れた。

 

「わーでっかい食堂!! 博士、見てくださいよ」

 

「嫌でも目に入ってくる。あースタ◯バックスまで往復2時間もかかるなんて悪夢だー帰りたいーー」

 

「それぐらい我慢してください!!」

 

「こんな人工島沈んでしまえばいいんだー。B級映画の撮影ぐらいには使えるだろう」

 

IS学園は海を一部埋め立てて造られた人工島である。通称、学園島と呼ばれていて本土との行き来はモノレールか東側に一つだけ造られた連絡橋でしか不可能なのである。なぜこのような設計なっているのか、理由は簡単で防犯対策である。

 

「相変わらずだな兄さんは……」

 

苦笑いを浮かべる千冬であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理事長室。

千冬がドアを開けるとそこには白髪の女性の姿があった。まるで貴婦人のような優雅な雰囲気を漂わせている。

 

「ようこそ。どうぞお掛けになってくださいな」

 

そう言われ、杉山は恐縮したように三夏はふてくされたように椅子へ腰を下ろした。

 

「では、これからのあなた方の教員生活についていくつかお話をしたいのですが……」

 

「まぁってください。私はただ連れて来られただけで、まだ引き受けたわけではありませんよ」

 

「博士、まだそんなこと言ってるんですか……」

 

ため息をつく杉山。

 

「いいか教職なんてのは汚物だ!! 私は学校とガキが嫌いだ。そしてここは女尊男卑を子供たちに刷り込ますための洗脳機関だ!!」

 

「失礼ですよ博士!!」

 

理事長は三夏の言葉を聞いてもいたって平静だった。

そして三夏に尋ねた。

 

「それではどうしたらいいのです?」

 

「三回回って僕と契約してIS学園教員になってよ! と言ったら考えなくもありませんがー?」

 

「あらあら、面白い方ね。ふふふ」

 

「私は割と本気ですが?」

 

しばらくの沈黙。

二人のそんな空気に耐えかねた杉山は勢いよく立ち上がり、頭を下げて謝罪した。

 

「すいません!決して悪い人ではないんですが! 性格にちょっとだけ問題が……」

 

「どういう意味だ?」

 

「そのまんまの意味です。ほら博士も早く謝ってくださいよ」

 

「いーやぁだぁねぇー、いーやぁだぁねぇー、あんで私が謝らないといけないんだぁー、絶対にいーやぁだぁねー、謝らないよぉーだ」

 

「子どもですがあなたは!!」

 

テーブルに投げ出した足をバタつかせる三夏。

 

理事長は笑みを絶やさない。

 

「何も謝ることはないですよ。ユーモアあふれるとっても素敵な方ですね」

 

「す、すみません!」

 

すると理事長は立ち上がり三夏に近づくと静かに耳打ちした。

内容は杉山には聞こえない。

 

「もちろんお礼はします。あなたとの個人契約として1000万ではいかが?」

 

ピクリと三夏が震えた。

 

「3000万です」

 

「1500万では?」

 

「2500万」

 

「あらあら、じゃあ2000万」

 

「理事長さん! これからよろしくお願いします!!」

 

「はい。こちらこそ」

 

三夏はすぐさま理事長の両手を掴み取って頭を下げた。

理事長も微笑んで頷いた。

 

「え?」

 

いきなりのできごとに杉山は唖然とすることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理事長室のドアが開き三夏と杉山が出てきた。

 

「あ、兄さん」

 

表で待っていた千冬が声をかける。

 

「行くぞ!」

 

「は?」

 

「私の研究室へ案内したまえ。久々に金になる仕事だ!」

 

三夏はそのまますたすたと歩いていってしまった。

 

「杉山さん。どうしたんだ兄さん……さっきとはえらく態度が違うんだが?」

 

「千冬ちゃん!!」

 

「は、はい」

 

「千冬は絶対にあの人みたいに汚れちゃダメだよ!」

 

大方の予想がついた杉山は千冬に懇願するような眼差しで言った。

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

「帰してくれー、頼むーやっぱり無理だー、床がフローリングじゃなぁーい、畳は嫌だぁー、ベッドがなぁーい、布団じゃ寝れなぁーい、トイレにウォシュレットがついてなぁーい、いつも使ってる抱き枕がなぁーい、小清水さんの手料理が食べれなぁーい。頼むー、帰してくれ、お願いだー、あの部屋は悪夢だー、ゴミ溜めだー」

 

「もうわがまま言わないでくださいよ」

 

食堂に三夏たちの姿があった。

 

現在IS学園では、教員用、生徒用ともに部屋が不足していた。

用意された部屋は一つで、しかもそれは杉山のものだっだ。よって三夏は家族である千冬のところへ住むことになったのだが、千冬の部屋は、教員用の部屋の中で一番質素に造られていたのだ。

そして、部屋のいたるところに転がるビールの空き缶やゴミ袋を見て、三夏はさらに絶望した。

 

「本当にすまない兄さん……」

 

申し訳ないように謝る千冬。

ゴミはともかく、部屋の造りに関しては千冬が望んだものだった。住めればどんな部屋でもかまわない、まさに男らしい考え方だ。

 

「あのババアにはめられたんだ!!」

 

「人聞きの悪いこと言わないでください!! 失礼ですよ!!」

 

「うるさぁーい!! 断固抗議してやる! すぐに部屋を増設しなければ私はここを辞める」

 

「もう……」

 

しかし、そうは言ったものの、杉山にも若干の不安があった。

食事は食堂で摂れるとして、掃除洗濯も、まともにできない二人が、果たして共同生活などできるのだろうか。

 

織斑さん家の共同生活は早くも佳境に入ろうとしていた。

 

「最悪だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




僕は友達が少ない が実写化されるらしいですなぁ……。
ひぐらしの二の舞にならないことを祈りましょう(汗)

普通にアニメ映画にすればいいのに…orz
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