Fate/Sunrise Nation   作:亜美

1 / 10
英霊召喚
ライダー


日本、京都。

伝統的な造りをした建物が今も残る古の都。

この地には未だ手付かずの零脈が数多と残っている。

—であれば、神(・)の(・)子(・)の(・)血(・)を(・)収(・)め(・)た(・)器(・)が降臨するのもまた当然の事である。

 

そんな情緒溢れる街中に、一際異彩を放つ洋館があった。

三日月に照らされ白く輝くその建物は、辺りをほんのりと照らしていた。

その洋館の地下にある小さな物置。

そんな薄暗く埃っぽい場所に、余りにも似つかわしくない風貌の少女がいた。

齢にして16歳ほど。

白磁のようなきめ細かい肌に絹のように滑らかな金髪、そして宝石のような碧眼。

そして蒼いワンピースを靡かせている。

とても日本人とは思えない風貌の少女—中條ルナがいた。

一目見て分かる通り、彼女はた(・)だ(・)の(・)日本人ではない。

日本とスペインとのハーフ、

しかも多くの傘下グループを率いる中條財閥のトップと、南欧でその名を知らぬ者は居ないとされている名家、グラシアス家の当主との間に産まれた生粋のお嬢様である。

そんな彼女の右手の甲には、赤い三画の紋様—令呪が刻まれている。

優れた魔術師にして聖杯戦争の参加者であることを示す証。

魔術の特許により一代で富豪になった中條家と、古より水の魔術を用いるグラシアス家の血を受け継いだルナは、それを持つに相応しい人間だ。

 

魔術師。

—"根源"へ至ることを渇望し、そのための手段として"魔術"を用いる者。

人でありながら人の道を外れ、神に等しき力を手にしようとする者。

そんな魔術師達が"根源"へと続く道の一つとして選ぶのが"聖杯戦争"。

偉人や英雄の魂である"英霊"を使い魔—サーヴァントとして使役し、その七組で万能の願望器"聖杯"を奪い合う儀式。

参加するだけで名誉であり、勝利すれば"根源"に届くとされるもの。

そんな儀式に、ルナは参加しようとしていた。

「えっと、これが触媒で…。よし、後は聖水だけね。」

手にしているのは一振りの日本刀。

名のある刀匠が作ったらしい年代物。

「天におわします我らが母よ、(Mi madre, que está en el cielo )

この聖水に尊き力を。(Una fuerza en el agua )」

物置の中央に刻まれたのは召喚用の魔法陣。

彼女はそこに、自身の魔力を注いだ水を流し込んでいく。

祭壇に刀を置き、準備を完了させる。

 

時は満ちた。

全身を魔力が駆け回るのを感じながら、ルナは静かに、しかしはっきりと唱えた。

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

閉じよ。(みたせ)閉じよ。(みたせ)閉じよ。(みたせ)閉じよ。(みたせ)閉じよ。(みたせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する。

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

直後、魔法陣から膨大な魔力の渦が発生する。

それは風となって部屋を廻り、全てを薙ぎ払う。

「くっ…、これが英霊の力…!」

さすがのルナも、自身を凌駕するものとの出会いは初めてのため、少したじろぐ。

やがて、魔力が収束すると、そこには一人の男が立っていた。

武人然とした風格、それを確固たるものにする黒い兜鎧、そして跨っている逞しい馬。

見たところ、騎兵(ライダー)であることには間違いないことが分かる。

しかし、兜を目深に被っている所為で顔はよく見えない。

「召喚に応じ参上した。わしはライダー。お主がわしのマスターか?」

ライダーが問う。

「…待って。あなた、本当にあの…」

ルナが言おうとしていたことを手で制すと、ライダーは諭すように言った。

「わしがお主の望んだ英霊(もん)かどうかはステータスとやらを見ればすぐ分かることであろう?」

慌てて確認すると、そこにはしっかりとその真名(な)が書かれていた。

「確かにそう書いてあるわね…。って、ちょっと待って…、スキルが五つに宝具が四つ⁉︎しかもステータス平均はBランク以上…。あなた、本当ににラ(・)イ(・)ダ(・)ー(・)⁉︎」

「うむ、いかにも。しかし、マスターは中々に運が良い御仁と見える。本来わしを呼ぶなら狂戦士(バーサーカー)が妥当であろう。何せわしは裏切りで名を馳せたことがあるからなあ。しかし、それではわしの味が死んでしまう。剣士(セイバー)や弓兵(アーチャー)の適性もあるにはあるが、宝具が少なくなる故全力では戦えん。しかも精神性があっちの方が若いためにう(・)っ(・)か(・)り(・)マスターを斬り殺してしまう可能性がある。

よって、このわしを従えるにはライダーのクラスが適しているということである。分かったか、マスター?」

あまりの破格さに驚きを隠せないルナと自画自賛するライダー。

「ところでマスター、この、机上にある黒い眼鏡はなんだ?」

そう言ってサングラスを取り上げるライダー。

「それはサングラスと言って…、そうね、光を遮る伊達眼鏡よ。」

「ほう…、伊達、とな。…面白い、わしは気に入ったぞ!掛けてもいいか、マスター?」

よほど気に入ったらしく、兜をわざわざ脱いでサングラスを掛けた。

やはり素顔を直に見ることは出来なかったが、印象は"好青年"で固定された。

「マスター。この戦いはまず、この現代に適応することが必要なのだろう?であれば、わしは一つ、所望するものがある!」

サングラスを掛けたままのライダーが言う。

「え…?」

「それはだな…、ズバリ、着物と騎乗物だ‼︎」

「それ、二つね…。」

こうして、三条に最初の参加者が登場したのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。