ライダー
日本、京都。
伝統的な造りをした建物が今も残る古の都。
この地には未だ手付かずの零脈が数多と残っている。
—であれば、
そんな情緒溢れる街中に、一際異彩を放つ洋館があった。
三日月に照らされ白く輝くその建物は、辺りをほんのりと照らしていた。
その洋館の地下にある小さな物置。
そんな薄暗く埃っぽい場所に、余りにも似つかわしくない風貌の少女がいた。
齢にして16歳ほど。
白磁のようなきめ細かい肌に絹のように滑らかな金髪、そして宝石のような碧眼。
そして蒼いワンピースを靡かせている。
とても日本人とは思えない風貌の少女—中條ルナがいた。
一目見て分かる通り、彼女は
日本とスペインとのハーフ、
しかも多くの傘下グループを率いる中條財閥のトップと、南欧でその名を知らぬ者は居ないとされている名家、グラシアス家の当主との間に産まれた生粋のお嬢様である。
そんな彼女の右手の甲には、赤い三画の紋様—令呪が刻まれている。
優れた魔術師にして聖杯戦争の参加者であることを示す証。
魔術の特許により一代で富豪になった中條家と、古より水の魔術を用いるグラシアス家の血を受け継いだルナは、それを持つに相応しい人間だ。
魔術師。
—"根源"へ至ることを渇望し、そのための手段として"魔術"を用いる者。
人でありながら人の道を外れ、神に等しき力を手にしようとする者。
そんな魔術師達が"根源"へと続く道の一つとして選ぶのが"聖杯戦争"。
偉人や英雄の魂である"英霊"を使い魔—サーヴァントとして使役し、その七組で万能の願望器"聖杯"を奪い合う儀式。
参加するだけで名誉であり、勝利すれば"根源"に届くとされるもの。
そんな儀式に、ルナは参加しようとしていた。
「えっと、これが触媒で…。よし、後は聖水だけね。」
手にしているのは一振りの日本刀。
名のある刀匠が作ったらしい年代物。
「
物置の中央に刻まれたのは召喚用の魔法陣。
彼女はそこに、自身の魔力を注いだ水を流し込んでいく。
祭壇に刀を置き、準備を完了させる。
時は満ちた。
全身を魔力が駆け回るのを感じながら、ルナは静かに、しかしはっきりと唱えた。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する。
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
直後、魔法陣から膨大な魔力の渦が発生する。
それは風となって部屋を廻り、全てを薙ぎ払う。
「くっ…、これが英霊の力…!」
さすがのルナも、自身を凌駕するものとの出会いは初めてのため、少したじろぐ。
やがて、魔力が収束すると、そこには一人の男が立っていた。
武人然とした風格、それを確固たるものにする黒い兜鎧、そして跨っている逞しい馬。
見たところ、
しかし、兜を目深に被っている所為で顔はよく見えない。
「召喚に応じ参上した。わしはライダー。お主がわしのマスターか?」
ライダーが問う。
「…待って。あなた、本当にあの…」
ルナが言おうとしていたことを手で制すと、ライダーは諭すように言った。
「わしがお主の望んだ
慌てて確認すると、そこにはしっかりとその
「確かにそう書いてあるわね…。って、ちょっと待って…、スキルが五つに宝具が四つ⁉︎しかもステータス平均はBランク以上…。あなた、本当にに
「うむ、いかにも。しかし、マスターは中々に運が良い御仁と見える。本来わしを呼ぶなら
よって、このわしを従えるにはライダーのクラスが適しているということである。分かったか、マスター?」
あまりの破格さに驚きを隠せないルナと自画自賛するライダー。
「ところでマスター、この、机上にある黒い眼鏡はなんだ?」
そう言ってサングラスを取り上げるライダー。
「それはサングラスと言って…、そうね、光を遮る伊達眼鏡よ。」
「ほう…、伊達、とな。…面白い、わしは気に入ったぞ!掛けてもいいか、マスター?」
よほど気に入ったらしく、兜をわざわざ脱いでサングラスを掛けた。
やはり素顔を直に見ることは出来なかったが、印象は"好青年"で固定された。
「マスター。この戦いはまず、この現代に適応することが必要なのだろう?であれば、わしは一つ、所望するものがある!」
サングラスを掛けたままのライダーが言う。
「え…?」
「それはだな…、ズバリ、着物と騎乗物だ‼︎」
「それ、二つね…。」
こうして、三条に最初の参加者が登場したのだった。