「行くぞランサー。今日はここの"元"
マスターである信秀は、今回の聖杯戦争で勝つためにあらゆる手を尽くすことにしていた。
全ては一族の悲願、一族の理想のために。
それを為すためなら、どんな手段を使ってでも勝つと心に決めていた。
「主、具体的には?」
ランサーが訊く。
「もちろん、同盟関係を築くのさ。ランサーだけでは不安、というわけじゃない。ただ、生存確率を上げるために利用する。今の笹林の当主は魔術に疎いほぼ一般人だからな。使い勝手がいいってわけ。」
彼は饒舌に語る。
「なるほど。主の考えは筋が通っています。ですが、相手の戦力を充分に見極めなければ、ただの足手まといになるのでは?」
ランサーは頷きながらも、しかし常にその先を見据えていた。
「問題ない。先ほど使い魔を送った。その際アイツのサーヴァントを確認したが、キャスターのクラスではないことは確かだ。おそらくはセイバーかアサシン辺りじゃないか、と俺は予想してるが。」
信秀の発言に少し驚いたランサー。
「セイバーですか。それなら、私よりも強い可能性があります。勝率は非常に高くなりますが、その一方、サーヴァントがマスターの命令を無視するようなタイプだと、こちらが不利になるのでは?」
首を振って信秀が答える。
「いいや、それはない。いくらセイバーと言えど、三流魔術師がマスターなんだ。魔力供給的にこちらに勝ち目があるだろう。なんなら、一戦交えるといい。」
再度ランサーは驚き、そして曖昧な表情になった。
「…そうですか。では、楽しみにしています。」
そして信秀は言う。
「じゃ、行くか。」
「マスター、橋場なる者からの手紙みたいだが?」
セイバーが言う。
「橋場君から?なになに…、協力関係を築きたいからこっちに来る?え?来るの?」
継子は驚いていた。
橋場信秀。京都三家の一つ。
長年の付き合いこそあれ、しかし一対一で話をするのは初めてである。
「ああ、どうしよう…。私、どうすればいいの⁉︎」
慌てる継子をセイバーがなだめる。
「案ずるな、マスター。ただ待てばいい。相手も殺しに来るわけじゃない、話し合いをしに来るのだ。まあ、いざという時には俺がいるからな。」
「そうだねセイバー…。」
「着いたぞ、ここだ。」
笹地の奥に見える武家屋敷。それが笹林の家なのだ。
「主、サーヴァント反応が。私はここで待機しています。」
「任せたランサー。俺は話をつけてくる。」
そして家に入っていく信秀。それを見送るランサー。
「はあ…、大丈夫でしょうか…。」
「サーヴァント反応だ。ちょっと外に出てくる。」
一方のセイバーも存在を感知した模様。
「大丈夫、セイバー?」
「ああ、問題ないさ。何せ俺は最優のサーヴァントだからな。」
「そこにいるのはサーヴァント、ですね。姿を現してください。」
そう告げる赤備えの武将。
「おうとも、俺はサーヴァントだ。見た所、お前はランサーらしいな。」
返すのは鉢巻を締めた浪人。
「セイバー、ですか。木刀とは、私も舐められたものですね。」
ランサーが煽る。
「いやいや、これでも加減してんだ。じゃないと、マスターが干からびちまうんでな。」
セイバーが答える。
「そうですか、それは失礼を。では、手合わせをお願いできますか?」
ランサーは予定通り返す。
「いいぜ、こっちも退屈してたんだ。俺を飽きさせるなよ、槍兵。」
セイバーがさらに煽る。
「いいでしょう。こちらも退屈は嫌いなので。」
そして、周囲の空気が濃くなるとともに、その時は近づいて。
「「いざ、勝負!!」」
こうして、開戦の狼煙は上がった。