「よっ、ほっ…… はっ!」
生まれてこの方17年、武道の類の心得がまるでからっきしな俺は、適当にかけ声らしきものを発声しながら右手の『盗人の短刀』をぶんぶん振り回す。
右から左に水平打ち、返す刀で左から右の斬り払い。大振りのサバイバルナイフよりもさらに大きめな短刀を、見たこともないし当然やったこともない武芸の修練よろしく無心に振り続ける。
そのまま何度か素振りを繰り返し、短刀の重さと長さになんとなく慣れを感じたところで、そろそろ頃合いと判断して皆のところに戻ることにした。
墓所の一角の小さな広場を後にして急勾配な岨道を登りながら、俺は右手に見える崖側の景観をちらと横眼にする。遠く見晴かす先に広がるのは、雲をも突かんとそびえ立つ、冠雪した大連山が織り成す雄大な銀世界だ。『百里の一を有無渺茫の間に望む様だ』などと、平常運転なら権藤あたりがそんな気障ったらしい台詞のひとつも知った風に言い出しそうな壮観ぶりである。
「平常運転なら、な……」
そして、坂道を登りきった先には俺がおよそ10分前に出て行った時とすっかり同じ風景がそのまま広がっていた。
ざっと30人弱、ちろちろと燻る小さな篝火に身を寄せ合い、誰ひとり口を利くことなくじっとうずくまっているクラスメイトたち。
凍えたように身を震わせる彼ら彼女らが、頼りなくゆらめく篝火に手をかざしている様には、率直に言って正視に堪えかねるレベルの痛々しさがある。少し前までの喧騒がすっかり嘘のような不気味な静けさの中、生気乏しいのっぺりとした顔のクラスメイトたちと一緒に居ることに、どうしても耐えられそうもなかった。武器の素振りなどという殊勝な行動に俺が及んだのも、白状すればそんなみっともない理由が大部分だった。
「ん、もういいのか? 急かすつもりはないから、気が済むまで練習しておけよ」
「もう十分やった。それにしょせんは素人の付け焼刃だし、気休めにしかならなそうだ」
うずくまる一団から少し離れた場所にいた樋浦が、戻ってきた俺に気づいて声をかけてきた。既にかっちりと騎士鎧を全身に着込み兜を小脇に抱えて立っている。どうやら、すっかり準備万端のようだ。
「お前、その格好似合ってるな。まるで何度か世界を救ってるような貫禄だ」
「見た目だけ立派でも意味は無いけどな。そういうお前もなかなか様になってるじゃないか」
「よせよ。盗賊の衣装なんてどんだけ似合ってようが嬉しくない」
実際、全身をファンタジックな中世の騎士鎧で固めているにも関わらず、樋浦の立ち姿は妙にこなれているように映った。クールで精悍なルックスと、鍛えられたガタイの良さがそうさせているのか。あるいは、いつ如何なる状況にあってもブレることのない――少なくとも、俺はこれまで一度だって目にしたことはないし、今この瞬間にしてもそうだ――強固にして絶対の自信が根底にあるからか。どんな理由があるにせよ、ここで重要なのはこいつがつくづく頼もしい奴だという事実だけだ。
「どっちみち、あまり悠長なことも言ってられないだろ。みんな限界だ、これ以上このままこうしていてもなんにもならない」
「言われなくても分かってる。だから言ったんだよ、気が済むまで練習しとけって。オレたちがしくじったが最後……」
樋浦はその先を言わなかった。それこそまさしく言われなくても、だ。
篝火に頼りなく身を寄せ合う皆。彼らが小さく震えるのは、遮る物が無い高原のからっ風が骨身に染みるからだけではない。熱を失った灰の身体とこれからの行く末を思えば、そうせずにはおられないのだ。
だからこそ、これはまだ余裕がある人間がやらなければいけないことだ。
俺の余裕が、果たしていつまで続くかどうか。そもそも本当は余裕なんて無くて、これはただの空元気かもしれない。正直、自分でもよくは分かっていない。
ただ、この場だけは思いたいのだ。
ありがたい、と。
「さて、佐渡。そろそろ”ゆこう”か」
「……はぁ、そうだな。”ゆく”か、樋浦」
ここで尻をまくるような臆病者にならずに済む程度の勇気らしきなにかが、俺にもどうやらあったようだということに。
勇気ある友人の隣で、こうして肩を並べられていられることに。
そんな気恥ずかしいことを考えていられるような余裕があることを、この場はありがたいと思いたい。
人柱になるつもりは毛頭ないが、「危険を冒す者だけが勝利する」というのなら、今がまさにその時だ。
いざゆかん、はじめてのボス戦へ。
――――――――――――――――――――――――――――
「しかし、意外だったな」
目的の場所へと向かう道すがら、先頭を歩く樋浦が肩越しにちらと振り返り、すぐ後ろに続いている俺のさらにその後方を見遣りながらそんなことを言った。
いったい誰を指しての言葉だろうか。人ひとり通るのが限界の細い道幅の崖道、足元に気をつけながら俺は首だけ動かして後ろを振り返った。
「えー、なにそれ心外なんだけど。ふたりが行くんなら私もついてくに決まってるじゃん。抜けがけとかずーるーいー」
はたして、樋浦の言葉に真っ先に反応したのは那須川だった。
見れば俺のすぐ後ろに居た彼女は、手に持って弄っていた『魔術師の杖』を指示棒よろしく樋浦に向かってびしっと突きつけている。いや、持っているのは正真正銘魔法のステッキなのだから、指示棒というのはこの場合は正確な喩えとは言えないか。
なんでもいいが、俺は地味にあることに驚いていた。
(「ずーるーいー」って……。スイパラに行くとかそういうんじゃないんだけどな、これ)
先ほどの台詞といい今のよく分からない行動といい、那須川の立ち振る舞いにはまるでいつもの様子と変わったところが無い。これは大いに驚きだ。あの樋浦でさえ普段とは幾分違った緊張感を帯びているというのに、こいつときたら「今からゲーセンにでも寄っていこう」みたいないつもの放課後テンションとなんら変わりない。いったいどんな神経をしているのだろう。常々思っていたが、こいつはこいつでやはり一味違う大物なのかもしれない。
それにしても、だ。
「いや、だって、なぁ?」
「うん、まぁ、だよな」
「なーにー? もごもごしてないで、はっきり言ったら?」
参ったなと視線でこちらへと同意を求めてきた樋浦に、俺も首肯しつつ言葉を濁して那須川の方を窺った。彼女の方はと言えば、煮え切らない男ふたりの態度に目に見えてご立腹のようだ。リスのようにぷくぅと頬を膨れさせ、いつもはくりくりとよく動く大粒の両目を細め、眉は広めの八の字を描いている。元が幼めで愛嬌のある顔立ちであるだけにすごんでみても大した迫力はないが、アイアム不機嫌ということだけはありありと伝わってくる形相ではある。
そのまましかめっ面を続けていた那須川だったが、やがてにらめっこに飽きたのか、すっとこちらから視線を外して露骨に聞えよがしでボソリと呟いた。
「……男女差別」
「んなっ!?」
樋浦は目をくわっと見開いてなにか言いたげに口をもごもごさせていたが、結局諦めたのかため息を吐きながら一言言うだけに留まった。
「お前のことじゃない」
それはまあ、その通りかもしれない。我がクラス、ひいては同学年のみならず全校の男子の中でも屈指の運動能力を持つ樋浦ほどではないが、那須川も女子基準で考えれば十二分に身体を動かせるタイプの人間だ。下手をしたら、万年帰宅部の俺よりも那須川の方が今からの局面で役に立つという可能性だって有り得るほどだ。いや、もうこの際だから言ってしまおう。運動能力だけでなく頭も切れる彼女のことだ、俺のような凡俗では足手纏いになる公算の方が大きいに違いない。ああ、なんだか言っていて悲しくなってきた。自分の不甲斐なさに涙したくなってきた。
「じゃあ、やっぱりあれは僕のことを言ったということかな。樋浦くん」
俺のアイデンティティに対する懊悩を余所に、話はさっさと先へと進んでいく。次に口を開いたのは、列の殿で油断なく周囲に目を配りながら歩く我らが委員長、篠部だった。俺や樋浦が頭の防具を外していたり、さらに那須川は頭防具に加えて着込んでいる『魔術師のローブ』のフードまで被らずにいるなど、めいめい多少の気恥ずかしさにファンタジー装備を適当に着崩している中、彼だけは頭のてっぺんからつま先までかっちりと『伝令』の装備をフルで着込み、両手にはそれぞれ盾と槍まで携えている。こんな些細なところからも、やはり彼はどんな時でも委員長なんだなとこちらまで衿を正さずにはいられない気分にさせられるようだ。うん、させられるようだ。まだちょっと俺にはその勇気が足りないので、実践にまで至っていないのは勘弁して欲しい。
「いや、委員長のことでもないが……。まあ思うところがないでもないから、この際だからついでに聞いておこうか」
「どうして付いてきたか、だろう?」
樋浦が言い終えるより先に、先手を打つ形で委員長が答えた。たしかに、このボス攻略決死隊に委員長が同行しているという現状況は、いきなり前言を翻すことになるがいつもの委員長らしからぬ行動と言ってもいい。普段通りの彼なら、むしろここで俺たちを止めに動くのが自然であるように思える。少し前の委員長と安藤との言い合いを思い返しても、それは明らかだ。それがいったい、どういう風の吹き回しなのだろう。
「なに、僕なりにけじめを付けようと思った。ただそれだけのことさ。あの場で安藤くんを諌めきれなかったことへのね」
「それは少し見当違いじゃないのか。あれは委員長が責任を感じるようなことじゃあないだろう」
「そーだよ。それに安藤くんだって篝火のおかげで大事にならなかったんだし、たぶん気にしてないでしょ。安藤くんだし」
「誰が気にするとか、そういうことじゃないんだ。これは僕の気持ちの問題だ」
樋浦と那須川が口々にそれぞれの言い分で慰めようとしたが、それらすべてをきっぱりと否定して聞く耳持とうとしない委員長。ふたりに言いたいことを先取りされてしまった俺としては、ただ黙っているほかない。固い意志がそのまま表情筋にまで表出しているかのような決然とした面持ちで、委員長は静かに独りごちた。
「クラスメイトが傷つけられて、それで自分だけ安全圏に居ようなんて恥知らずな真似は僕には出来ない。委員長としての責任以前に、これは人として当然の行いだ」
「自己犠牲のつもりか? 尊い行いかもしれないが、ますます見当違いだぜそれは」
「そのへんにしとけよ樋浦。人手は多いに越したことないんだし、傍から見たらたぶんお前だって委員長と大して変わらないだろ」
委員長の精神は高潔で立派で、それを皮肉る樋浦にしても素直にそれを表に出すことを良しとしていないというだけで、その本質はきっと厚い義侠心にほかならないだろう。この極限の状況下にあって、どっちも見上げたものだと思う。
まったく、つくづく己の凡俗さが嫌になる。嫌になるから、ふたりほどカッコよくない俺は適当なタイミングで毒にも薬にもならないような適当なことを言うしかなかった。やや不完全燃焼気味のむっとした顔ながら樋浦はいちおうそれで矛を収めてくれたし、委員長も目線で、たぶんあれは「ありがとう」と言ってくれていると判断して良さそうだし、これでいいのだきっと。
そしてここに来て、今まで沈黙を保ち続けていた最後の一人がようやく口を開いた。
「お、お前ら、熱くなってるとこ悪いけど、もう目的地だぜ。おしゃべりはそこまでに、し、しろし」
どもり気味な甲高い声でそう言った菰田が指さす先には、いつの間にたどり着いたものか目的ポイントである開け放たれた門扉があった。道中の敵は、戦闘訓練も兼ねた俺と樋浦との働きで露払いが既に済んでいたのもあって、すっかり散歩気分でここまで歩いてきてしまったようだ。
来訪者を歓迎するかのように全開になった砦門の向こうは、地面の大部分が水溜まりに浸った円形の大きな広場になっている。そして、石畳敷きになっているその広場の中央部に、目当ての”ソレ”は鎮座していた。
”ソレ”は、少し前に偵察に来た時とまったく同じ格好のまま、跪いて頭を垂れて、誰かをじっと待ち続けている。
遠目から窺ってその姿を眺めただけで、確定的なことについてはまだなにひとつ分かっていない。分かってはいないが、理性ではなく本能が、いやさ、これまでの短い人生で未だ機能したことのない「畏れ」のような感情が、アレについて致命的に断定を下している。
アレはきっと、俺たちがこれから挑まなければならない、最初の審判。俺たちのこれから、この世界での明暗を決める、いちばん最初の試験官なのだ。
「事前の様子見ではここまででしか来れていないから、ここから先はなにが起こるかまったくの予想外だ。だから……、言いたいことは分かるな?」
それまで小脇に抱えていたヘルムを被りながら、樋浦は全員の顔をひとりひとり見回してそう言った。さっきまでの雑談の時とは比べ物にならないほど厳しい声音と顔つきに気圧されたのか、菰田が「ひっ」と小さく呻く声が隣から聞こえてきた。
(おい、本当に良いのか? いっちょ、冷静になって考え直すべきじゃないのか?)
そして、おや、これはどうしたことだろうか。どうやらいよいよ引き返すことの出来ない瀬戸際らしいと、俺の中の防衛本能がここに来てようやく遅刻気味の警鐘を鳴らし始めているようだ。気のせいか動悸も急速にエイトビートを刻み始めているようだし、熱を失ったはずの頬もカーッとむず痒さを訴え始めている。これはいったい、どうしたというのだろう?
(お前、もしかしたらここで――――)
「冗談。最初から言ってるでしょ、ふたりが行くなら私も行くって。これ以上つまんないこと言ったら蹴っ飛ばすかんね」
「覚悟ならとっくに出来てるよ。お荷物にだけはならないように努力するさ」
「お、俺も、まあ、それなりに……。うん、俺なりに」
那須川は両手を腰にで自信満々だし、委員長もまるで揺らいだところがない凪いだ面持ちだ。菰田は、ちょっとよく分からないがたぶん奴なりに頑張るつもりなんだろう。三者三様、なんとガッツにあふれた(若干一名違う気がするが)顔つきではないか。
なんだ、怖気づいたのは俺ひとりだけなのか? ああ、なんだか急に恥ずかしくなってきた。さっきまでとは違う意味であっつくなってきた。穴があったらを通り越して、今すぐ右手の無間奈落に飛び込みを決めたい気分だ。
「行こうぜ、樋浦。このままこうしてたら、一目散にみんなのところまで戻りたくなりそうだ」
結局、俺のいまいち締まらない台詞でトリを飾ることになってしまった。
いいさ、どうせ俺は凡俗だ。そのことに負い目をこれっぽっちも感じちゃいない。そんな風に虚勢を張るのがささやかな俺なりのプライドだ。笑いたくば笑え。
「お前なあ」と苦笑を隠せない様子の樋浦は、最後に一同の顔を見渡してから、ヘルムのバイザーをがしゃりと下ろした。
「では、命知らずの勇敢な諸君に感謝を。そしてせいぜい、互いの生還と勝利を祈ろうぜ」
――――――――――――――――――――――――――――
「ところで菰田。さっきは言いそびれたんだがな」
「あ? な、なんだよ樋浦」
門を抜け内部に踏み込み、慎重に一歩ずつを踏みしめながら中央の巨躯の鎧へと向かって近づいていく、その最中。
思い出したかのように先の質問の続きを始めた樋浦に、「このタイミングでいったいなんだ」と言わんばかりに食い気味で菰田が答えた。
「オレが意外と言ったのは他の誰でもない、お前のことだ。お前、いったいなにを考えてる?」
「なんだよそれ。お、俺が付いて来ちゃ悪いのかよ。なんか文句でもあんのかよ?」
「文句はない。ただ、どうにも解せないんだ。オレはてっきり、お前はこんな状況に陥った場合に真っ先に逃げ出すタイプの人間だとばかり思っていた。オレはお前を見誤っていたのか?」
お前こんなタイミングでなんてこと言い出すんだと樋浦に突っ込みかけて、いや待てよと俺は俺で口から出かかった言葉を途中で飲み込んだ。
そう言われれば、菰田はこの場に居るのが俺以上に不釣合いな人種であるように思える。成績も並、運動能力は平均以下。そしてなにより、言ってしまってはなんだが、彼はなんというか、あまり強い人間ではない。安藤やその取り巻きたちにいつもちょっかいをかけられている菰田は、クラスの中ですっかり「イジられ」担当になっている。この極めて微妙なニュアンスは、学び舎で過ごした経験のある人間になら、おそらくなんとなくだが伝わってくれるのではないかと思う。癒し担当のマスコットにはやや遠く、ムードメーカーと呼ぶにはかなり微笑ましさが足りない。時たま過激さを帯びるイジリ、クラスの誰もが無意識に彼を軽んじている風潮。彼はいつも、卑屈そうな引き笑いを浮かべていた。
「ふ、ふへっ。そ、それはお前の思い違いだぜ樋浦。俺はやる時はやる、そういう男だぜ常考」
「それは心強いが。その気概があるなら、せめて装備くらい身に着けたらどうだ。戦闘が始まった直後に即死されたんではこっちも寝覚めが悪い」
「即死? ふへっ、甘えよ。そんなんじゃ甘いよ、樋浦。なんせ俺の見立てが正しけりゃ、俺らはこれから両手じゃ数え切れない回数は死ななきゃならねぇんだからな」
そう言った菰田の顔は、たまに彼が教室で見せたことのあった、ひどく優越感に満ちた表情をしていた。
俺はお前らの知らないことをこんなに知っている、どうだ、すげえだろ。
そんな、無知を嘲る類の暗い笑みを浮かべていた。
「菰田くん、それってどういう意味? もしかして、この世界についてなにか知ってることでもあるの?」
訝しげに尋ねた那須川に、下ろしたバイザーのせいで感情が窺えない樋浦。固い表情の委員長に、そしてきっと間抜け面を晒している俺。
注目を集めたことにすっかり気を良くした風の菰田は芝居がかった仕草で大仰に腕を広げ、しかしおっかなびっくりとした足取りでもって、頭を垂れる巨躯の鎧の傍らまで移動した。
しばらくその外見をしげしげと観察してみてから、やがて震える両手で鎧の胸元に突き刺さった剣を掴むと、体重をかけて思い切りそれを引き抜いた。
「菰田くん! あまり考えなしに行動しない方が……!」
委員長が慌てて止めに入ろうとしたが、時既に遅し。
剣はすっかり鎧から抜き取られてしまい、菰田は踏ん張りきれずに勢いで地面に尻餅を突く羽目になった。
菰田が立てた『ばちゃり』という水音が、いやに耳につく響きを奏で、
――――ぎしり。
楔から放たれた鎧が、油の切れた鉄どうしが軋る異音と共に小さく身じろぎをした。
「教えてやるよ。こ、この世界はなぁ……! ”死に覚えゲー”ってやつなんだよ……!」
俺は知っている、知っているぞ。
笑う菰田の声が耳障りな余韻をとどめに残し、審判の開始を告げる合図となった。