蟲を扱う少女。素手でモンスターを殴り付ける青年。
二人はコンビ。凸凹コンビ。
モンスターを狩る。人を狩る。
―――じゃあ、お仕事始めましょうか。
その少女は雪山を歩いていた。小柄な体躯を雪に潜ませ、気配を極限まで殺し、ソロリソロリと、標的に近付く。少女の着ている白く染めたルドロス装備は、少女を雪と同化させている。
そっと自らの武器を取り出す。それは、操虫棍のようで操虫棍でなかった。
まず、棍と呼ぶにはあまりにも短い。マラカスを二つ繋げたような長さだ。
そして、両側に蟲笛が付いている。……つまりモンスターを攻撃するための刃が無いというということだ。
「イケ」
少女は小さく呟き、武器を振る。人間には聞こえない音が鳴り、少女の左手に張り付いていた一匹の蟲が飛び立つ。
ケーニヒゴアビートルと名付けられているその蟲はかなりのパワーを誇っており、少女の蟲笛の指示に従い標的へ突き進む。
そして、標的へと手痛いダメージを与える。
パヲォォォオォッ!
標的……
約15分後、そこにガムートの死体が落ちていた。
「フゥ~。流石に二つ名ガムートは疲れたなぁ」
手を合わせ、銀嶺ガムートに一礼。自然への感謝と人間の勝手な都合で殺す事への謝罪をこめる。
「ありがとう、アナタは強かったよ。相手がワタシじゃなかったら……アナタは負けなかっただろうね」
そうして、剥ぎ取りを始める。その小さい体に似つかわしくない武骨なナイフで、足元の硬い雪を削り取り、頭の甲殻を全身を使い全力で切り、ガムートの腹に生えている赤色の剛毛を抜き、それに覆われた柔らかい肉を切り出す。
「はいケニー、お疲れ。オーシもどうぞ」
二匹の蟲に切り出したばかりの肉を与える。二匹の蟲はキャリキャリと鳴き声を上げ、上質な肉に食らい付く。
「つまーり。これで今回は終わりってことだな!?」
「そーユーことだね」
隣のエリアから青年が現れる。……声と体格から、恐らく青年であろう。白疾風―――二つ名ナルガクルガの装備のみを身に付けた青年は、少女に近付く。
「はえぇ……ほんっとーにその蟲たちで倒したんか」
「うん。っていうか見てたデショ?」
「まーなっ!」
にひひと青年は笑うが、忍者のような見た目の白疾風装備ゆえに口元が見えない。……そして、青年の目は全く笑っていないのだった。
「じゃあ『銀嶺』ガムートの観察任務終了」
「ただいまより、帰還しまーすっと!」
―――ポッケ村
それは雪山の麓にある村。小さくも温泉があり、最近観光名所となった洞窟もある。
また、雪山の麓という場所にあるが故にモンスターの襲撃が後を絶えない。その為常にハンターが雇われており、ハンターへの支援も充実している。
「やっほ、おバちゃん。カリナが帰っタよ」
少女は、焚き火に当たる老齢の女性に声をかける。
「まあまあお帰り。怪我はなぁい?」
「大丈夫ダよ?……バンキの大声で雪崩が起きないか心配ダッタけど」
「あらあらまあまあ。大変だったでしょう?」
「そこらへん、俺っちは調整してあるからだーいじょーぶっつったんだけどなぁ」
先にアイテムポーチの整理をしていた青年―――バンキが、話に入ってくる。
「え~ほんト~?」
「おうとも。んでオババ様、今日は服に火が付いてるみたいだけど」
「おや? そりゃ大変。ちょいと場所を変えようかい」
勿論、村長であるオババ様の藁を束ねた服に火は付いていない。
それでも村長はひょこひょこと自らの家へ移動する。
村長と同じほどの身長の少女―――カリナはオババ様の横に並んで、バンキはその後ろから着いていった。
「それで?」
家に入って開口一番がこれだ。オババ様の雰囲気は一転している。ふわふわした外での態度と、俺っちたちみたいなハンターへの態度は全然違う。―――と、バンキは考える。
ただ、バンキはそれに反対するつもりは一切無い。むしろ清々しく思う。
……横に立つ少女がどうだかは分からないが。
「どーにも違法な阿呆が居るみてぇでしてね。さっきのクエストの帰り、俺っちたちが狩った訳でもねぇポポの死骸が残ってた」
「今なら、スグにでもヤれるけど? 大体の場所は分カッてるから」
「ならば、次に違法狩猟をした瞬間からマークしてください。その者が戻り、確かな違法と確認出来たら」
「ん、違法狩猟確認ダヨ」
少女は確かにここに……ポッケ村の村長の家に居るし、いかなスキルであろうと遠く離れたハンターの動向をリアルタイムでの観察は不可能だ。
しかし。
「では、クエストを受注しているかどうかの確認をお願いします」
少女はそれが可能だ。ここに居る者たちはそれを知っている。
「ダッテさ」
「あ、俺っちの出番もあるのね。へいへい、そーゆー書類仕事は任せんしゃい。……まぁ、俺っちたちの特別許可狩猟クエストと被ってる時点で黒なんやけどね」
普通クエストが被る事は無い。
例えば、下位のハンターが雪山へ採集に行くのと同時に上位のハンターがドドブランゴの狩猟に行く……というのはほぼ有り得ない。
何故なら、ギルド(或いは村長たち)がクエスト間である程度の時間調整をしているからだ。方法は簡単。アイルーたちに適度にマタタビを与えるだけ。
また、下位のハンターが狩り場へ行くとき、あらかじめ上位のモンスターたちが狩り場へ出ていく事を封じるハンターたちが居る。
ギルドナイトと呼ばれる者たちだ。
「それではお願いしますよ」
「……処分はこっちで決めてイイのかな?」
「出来る限り、平和かつ穏便に」
「ハーイ」
ここからは、ギルドナイトの仕事だ。
舞台はモンハンクロスの世界で。