気楽に読んで下さい。
彼女達、エヴァと雪姫さんと知り合いになってから数日が経った。
平日は特に変わらなく、いつも通り私は学校に行く。だが、あの時の話を聞いてからは、私の心はなんとなく軽くなったような気がする。
登校時に信じられないほどのスピードで走って私の横を駆け抜けて行く人や、忍者のように建物の間を飛び上がって行く人を見ても、ああ、ああいう奴らもこの街の影響を受けているんだな、と思えば、いちいち深く考えたりする必要がなくなる。
そんな彼らを見て毎回驚いたり周りはどう思ってるのかという反応を気にしなくて良くなったというのは、私の精神的にとてもよかった。
そして休日は、よくあきほさんに誘われてエヴァの家に遊びに行くようになった。
エヴァは毎回怠そうな顔をして私達を追い返そうとするが、雪姫さんが私のお客様だからいいでしょ、と言って中に入れてくれる。
あきほさんと雪姫さんは特に仲が良いように見えて、よく二人で紅茶の話やハーブのことについて語ったりするのが、とてもお上品でお淑やかで、見ているだけで素敵に思えた。
反対に、私とエヴァは顔を合わせればすぐに言い争いをしたりゲームでマジ喧嘩をしたりして、女子らしくもなく精神的に酷いほど子供であったと自覚はするが、そんな時間も嫌いではないと思ってる自分もいた。
あきほさんと雪姫さんはそんな私達をいつも呆れつつも大人びた目で見守ってくれていて、決して見下したりした目ではないことが嬉しかった。
自分を変に偽ったりせず、ありのままでいても何も気兼ねしなくていい場所は、心地よかった。
たまにエヴァのことを観察すると、ちゃんと本気で怒ったり騒いだりしてるので、そんな彼女に応戦しつつも、私は心の何処かで安心するのだ。
接していると分かるが、エヴァは人と何も変わらない。些細なことでキレて、褒められると少し調子に乗って、打ちのめされると凹む。そんな人と同じ一面を見るだけで、私は少し穏やかな気持ちになれる。
そうあきほさんに話すと、あきほさんは同意してくれた。
「私もね、同じことを思うの。エヴァンジェリンさんの家に行って遊んでいると、時々、彼女のことがどうしようもなく気になるの。ちゃんと楽しんでくれてるかな。彼女は、私達より遠いところにいないかなって。そうしてエヴァンジェリンさんの顔を見るんだけど、千雨ちゃんと遊んでる時は本当に楽しそう。だから私、嬉しいの」
あきほさんがあまりに幸せそうに語るので、訊いている私が何故か少し恥ずかしく思ってしまう。
「でも、私もエヴァを見てますけど、あきほさんと話すときも、エヴァは自然に楽しんでると思いますよ。だって、私の前ではあいつあんな風に穏やかな顔はしないですもん」
「そ、そうかな。ほ、ほんとに?」
「はい。ほんとです」
「……なら、嬉しいなあ」
あきほさんは、照れたように頬を赤くして可愛く笑った。指で髪をいじる姿が愛らしく見えた。
エヴァとあきほさんの会話は、私達と違ってずっと大人しい。
「エヴァンジェリンさん、今日の紅茶も美味しいね」
「お前はいつもそう言っているな」
「あのね、この前洋服を買って、今日着てきたのだけれどどうかなぁ」
「……まぁ、悪くないセンスだが、大人しいな。……一つワンポイントを入れてやろうか? 」
「え? ほんと? 」
「ああ、少しの間貸せ。その間はこれでも着てろ」
「わー、ありがとう。楽しみにしてるね」
「ふん、こういうのは私の趣味だから私が勝手にやるんだ。……あまり期待するなよ」
「うん。でも、ふふふ。待ってる」
こんな会話が多い彼女達は、私と話す時とは真逆で、急に女の子らしくなる。
でもそれは無理して言っているものではなく、自然体であることは側から見ても分かった。
そうやって私とあきほさんはエヴァと遊んだ日の帰り道は、彼女について話したりすることがあった。
エヴァが本当にそう感じていたかは、分からない。私達の思い込みかもしれない。
きっとこんな話をしてると聞いたら彼女は怒るだろう。
それでも、エヴァの10歳の見た目らしい姿を見て、あきほさんが嬉しく思う気持ちは私にも分かった。だから、嬉しそうなあきほさんが見れるのが私も嬉しくて、ついついそんなことを話してしまうのだ。
私達がこんなに彼女と気軽にいれるのも、雪姫さんの存在が大きい。
雪姫さんは、ちょうどいい感じに私達の橋渡しのように話をしてくれるし、見守ってくれている。エヴァのことを誰よりも気にかけて、大事にしているというのが見れば分かる。
「……でもどうして雪姫さんは、エヴァンジェリンさんを気にかけるのかな」
「本人は、エヴァを通じて色んな世界が見たいからって言ってましたけど」
「うーん。私には、それだけには見えないな」
あきほさんは悩むように考えていたけど、私には見当もつかなかった。大して考えもせず、エヴァのこと気に入ってるからじゃねえのかな、としか思ってなかった。勿論、それは今でも間違って無いと思う。
○
ある日、また休日にあきほさんとエヴァの家に向かうと、いつも通り雪姫さんが迎え入れた。
エヴァはまだ寝てるの、ごめんね、と言われ、毎回座るリビングの机に腰を降ろさせてもらう。
雪姫さんが、庭にハーブを植えたのだけれど見る、とあきほさんに訪ねたので、見たいです、と頷いた彼女と共に二人は庭へと歩いていった。私はあまり興味が湧かなかったため、遠慮させてもらった。
一人で所在なくなったので、私はケータイを取り出して横にする。
最近ハマってるゲームでもしてエヴァを待っていよう、と思ったところで、ちょうどパジャマ姿のエヴァが降りてきた。
「なんだ、暇人達がまた来てたのか……って、あいつらはどうした」
「なんか庭にハーブを見に行くってよ」
「ああ、あいつが最近植えてたな」
まったく勝手に人の庭に何でも植えよって、と愚痴りながら、エヴァは私の前に座った。
「なんだお前。スマホゲームしてるのか」
「ああ、すまん。すぐにやめる」
「いや構わん。どんなゲームだ」
「カードゲームだよ」
ほぉ、と眠たげにしていた目をエヴァは光らせた。
「
「お、分かんのか」
「私もやってる」
そう言って、エヴァは自分のスマホをひらひらとさせて私に見せつけてきた。それから彼女はスマホを横にしてゲームを起動させたようだ。
「やり込み系のゲームもいいが、カードゲームもいいよな」
「分かるぞ。資産の差はあれど、やり込み度ではなく発想と知恵だけで戦うPvPは面白い」
「運も絡むけどな」
「それもいいんじゃないか」
そう言って、ふふ、と私達は笑い合った。
「まさか千雨と意見が合うとはな」
「珍しいよな。エヴァはどのデッキ使うんだ?」
「ふふん。全部に決まってるだろう。せっかく多くのカードがあるんだ。全部触らなきゃ損だ」
「わかるぅ……!」
ここまで意見が合うの本当に珍しかった。
「よし、やるか?」
「いいのか? 朝飯食わなくて」
「ふん、貴様など文字通り朝飯前だ」
「言ったな」
私達はにやりと不敵な笑みを浮かべ合う。こんな風にゲームの話を堂々と出来るんだから、やはりここは居心地がいい。
私はスマホを操作して、部屋を作りエヴァに伝える。
「おい、ルーム作ったぞ」
「は? ルーム? 」
「ああ。ルームナンバーはな……」
「まて、まてまてまて」
エヴァが急に頭に手を抑えて、不安そうに私を見た。
「なんだよ、まさか怖気付いたのか?」
「……違う。なんだルームって。フレコを送り合って対戦申し込めばいいだろう」
「はぁ?それでもいいけどよ、とりあえず今はルームからでいいだろ」
「ルームなんて概念はない!!」
突然エヴァは私のスマホ画面をガバリと覗き込んできた。
「き、貴様! やはりか……っ! 」
エヴァは手を震わせ、キッと私を睨みつけてきて、大きな声で言った。
「ハー○ストーンではなく、シャドウ○ースだとぅ!?」
ドン、と力強く机を叩き、まるで親の仇を見るような表情で私に怒鳴り散らしてきた。
「やはり貴様とは趣味が合わんっ! まさかとは思ったが、そんな紛い物をやっているとはな!」
「紛い物だと!」
好きなゲームを非難されたので、思わず私も熱くなる。
「お前こそ!そんな古臭いゲームやりやがって! 今の時代みんなシャド○やってんだろうが! 」
「はぁ? 古臭いだと? お前どっちが人口多いのか知らんのか? 圧倒的にハー○だぞ?!」
「あーあー。ハー○民はすぐにそれだよ。世界的に多いからってすぐそこを持ち出す。日本じゃどっちが流行ってるかなんか一目瞭然なのになぁ!?」
「貴様らシャド○勢は恥ずかしげもなくよくパクリゲーを出来るなあ! ほとんどシステムを丸パクリして自分たちが日本のカードゲーム背負ってるみたいな顔しよって!」
「パクリじゃねぇ参考にしただけだ! 大体絵が受付ねぇんだよハー○は! シャド○のが綺麗だしかっこいいだろうが!」
「はー。オタク共はすぐ絵がどうとか言い出す。システムパクって環境はいつも無茶苦茶なくせになぁ!? なんだバハムー○って! なんだイー○スって!小学生の考えたカードかぁ?! ニュートラルやヴァンプが暴れた不思議の国はさぞ生きにくかっただろうなぁ可哀想に! 」
「はいはいお前らはすぐこっちの環境終わってるとかいうがそっちも大概だからな?! アグロシャー○ンや海賊が支配してた時代忘れたかぁ?! 面舵いっぱーい!で出てくる1コストは見飽きたろう!? それに究極も動員も充分クソカードだろうが! 」
「なんでこっちの環境詳しいんだ! きもいんだよ! 」
「その台詞そのまま返してやるわ!」
いつものように胸倉を掴みながら言い合っていると、雪姫さんとあきほさんが、またぁ? と溜息をつきながら部屋に戻ってきた。
「今度は何で喧嘩してるのよ」
大して心配もしてなさそうに尋ねる雪姫さんに、私達は同時に大声で状況を伝える。こいつが私のゲームをバカにしたと。
あきほさんもいつも通りオロオロとしながらも、私達の仲裁をしようとしてくれた。
「あ、あの。お互いに、好きなゲームは人それぞれってことじゃ駄目かな? 」
「あきほ。それはないんだ」
「あきほさん、そうじゃないんすよ」
「え、と。どういうこと?」
「人それぞれなんてな。言われなくても分かってる。当たり前なんだよ。だがな、それを言ったら議論は終わってしまう」
「私達はそれを大前提に置いた上で、相手を言い負かしたいんだ。屈服させたいんだ。私の意見を聞いて、たしかに私の負けだ、と言わせたいんだ……! 」
「……な、なんか、すごいね。やっぱり仲良いね二人共」
「よくない!」「よくないです!」
心地よいなどと言っていたが、対立している時はやはりムカつく。圧倒的にストレスの方が多い。
私達が更に言い争いをしようとした時に、ついに雪姫さんが私達の間に入った。
「まぁまぁ、落ち着きなさい、二人共。……ここはね、間をとって、二人仲良く」
そう言って、彼女はどこからか、何故持っているのか分からない自分のケータイを取り出した。
「ウォー○レしましょ? 」
「そ、それは……」
私達は同時に視線を下げて、や、やりません。と小さな声で言った。
ボツ理由
この時代にスマホはない。
趣味の話で本当に申し訳ないと思っています。
どうでもいいでしょうが私はシャドウ○ースもハー○ストーンもウォー○レもライ○ルズも全部好きです。