その代わり、今回から登場するウルトラマンに頑張ってもらいました。個人的にティガの次に好きなウルトラマンです。
ウルトラマンギンガとビクトリー、そしてダークディスペアの戦いに決着が着いた頃、別の次元に存在する地球においてある戦いが行われていた。
『ジョアッ!』
一人は青色の体を持つ巨人。彼は黒い炎に包まれた魔人を思い切り殴りつける。しかし魔人はそれを腕で捌くと逆に肘打ちを巨人の顎へと振りぬいた。
『ウアッ!?』
その一撃によって巨人の脳が揺さぶられ、足元が大きくふらつくも巨人は腰を入れて踏ん張って魔人に掴みかかると、そのまま勢いよく投げ飛ばした。
『オアアア……オイッ!』
『グハッ!?』
想定外の攻撃だったのか、成す術なく地を転がる魔人。よろよろと立ち上がると巨人を睨む。
『ち、流石根源的破滅招来体から地球を救った英雄の一人だ。だが、俺はお前を引き入れるのを諦めた訳ではない。もし俺との決着を望むのなら、幻想郷に来るがいい』
『フッ!?』
巨人は魔人を追いかけようとしたが、魔人が左手をかざすと上空に時空の歪みが出現して魔人はその中に逃げ込んだ。歪みが閉じた後、巨人は青い光に包まれて変身を解除する。
そこにいたのは黒いシャツとズボンを着た青年。長めの髪が風に揺らされ、その表情には敵を取り逃がした悔しさが滲み出ていた。
「くそ、逃がしたか……それに」
男性は辺りを見渡す。彼の周囲には集落が広がっているが、至る場所に人が倒れていた。そしてその顔は力なく、まるで生気を吸い取られたかのようだった。男性は手近に倒れていた男性の胸元に耳を当てる。
「呼吸は僅かにある。だが起きない。何故こんな事を……!」
ギュッと男性は握り拳に力を込める。そして何かを決意した様に立ち上がる。
「幻想郷……一体何処にある。必ず探して今度こそ奴を倒す」
その時、青年の目の前の景色が歪んだ。それを不思議に思った青年は無意識に手を伸ばした。すると歪みはどんどん大きくなり、青年はその中に飲み込まれていった――。
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紫によって雫が丘に戻ってきたヒカルとショウは到着するとすぐ別行動を取る事にした。
ヒカルはUPG本部へ赴き今回の件について隊長の陣野に報告、ショウは地底世界に戻って弁解をしなくてはならなかった。
地底世界に戻ると、サクヤとレピの姉弟がいた。二人はショウの存在に気づくとすぐに駆け寄ってくる。
「アニキ!」
「ショウ! 何処へ行ってたのよ! 心配したんだから!」
レピは喜色満面の笑顔を見せているが、サクヤの方は明らかに怒りの色が顔に浮かんでいた。ショウは小さく息を吐くと今回の事を全て話した。
「……それじゃあ、その幻想郷って所で怪獣が暴れているって訳?」
「ああ。そしてそれはまだ終わっていない。いずれ戻る事になるだろうな」
ショウの話を聞いたサクヤは何か思案を巡らせる。そして決意を込めた表情でショウに告げた。
「それならショウ。次は私も連れて行って」
「何?」
「ショウの話を聞いている限り、幻想郷にはUPGみたいな組織は無いみたいだし、ショウやヒカルさんがカバーしきれないところを私がカバーする。陣野隊長やキサラ女王には私が直接話すから、お願い」
「……分かった。それなら地上に戻るぞ」
紫のせいとはいえ勝手にいなくなった手前、ショウは断りづらかった。UPGの面々に対してはヒカルがいるものの、顔くらいは出しておいたほうがいいだろうと考えたショウはサクヤを伴って地上に向かうのだった。
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その頃、UPG本部の作戦指令室ではヒカルが隊長の陣野を前に今回の件に関しての報告を行っていた。ヒカルの報告を聞いた陣野はハーブティーを飲みながらヒカルに視線を向けた。
「別世界だが別世界では無い場所、幻想郷か……エタルガーの時に現れたウルトラマン達も別次元からやってきた存在だから不思議ではないが、まさか君達が行くとは」
「オレもびっくりしてますけど、こっちとは全然景色が違ってて貴重な体験でした」
ヒカルの好奇心旺盛な笑顔に、陣野は柔和な笑みを浮かべた後、それをすぐ引き締める。
「だが、君達を呼んだ人物の話ではまだ事件が解決していないようだが?」
「ええ。今は羽休めって奴です。何かあったらすぐ呼ぶそうで」
「そうか。それならショウにも伝えておいて欲しい。今度は心置きなく向かうといいと」
陣野の言葉にヒカルは不安そうに尋ねる。
「けど、いいんですか隊長? いつまたエタルガーの様な奴が来るか分からないのにオレとショウが一緒に抜けても」
「私はUPGをひ弱なチームに育てたつもりはない。そういう事だ」
「……ありがとうございます!」
陣野に一礼してヒカルが指令室から出るのを見送ると、陣野は再びハーブティーを口にするのだった。
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幻想郷、魔法の森内部。夜になって周囲が殆ど見渡せない環境の中、二つの人影が立っていた。二人とも黒い服装に身を包んでおり、辺りと同化している様にも見える。
『俺様は呼んだからには、何か重要な任務があるんだろ? エンドロス』
『そうだ、マグマ星人。俺が使っていたダークケイオスとダークディスペアが使い物にならなくなった。奴らに代わってお前にこの幻想郷を壊滅させ、更にギンガとビクトリーを抹殺する任務を与える』
『ハッ、それならお安い御用だ。うってつけのペットが俺様にはいるからな。だが、なんでここを壊滅させる必要があんだ?』
マグマ星人の言葉に、エンドロスはギロリと射殺す様な視線をマグマ星人に向けた。
『っ!? わ、わーったよ。俺はあんたの指示に従えばいいって言いたいんだろ?』
『そういう事だ。まずは人里へ向かえ。あそこは住んでいる人間も多いから狙いやすい』
その言葉を聞きマグマ星人は宵闇に消えていく。エンドロスは星空を見上げる。
『忘れ去られし者達の理想郷……そんなものは必要無い。忘れ去られた者は永遠に忘れられるべきだ』
エンドロスの呟きは夜の闇に溶けて消えていく。そして邪悪な笑みをエンドロスは浮かべるのだった。
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一方、マグマ星人は人里の前で準備を行っていた。自らの武器であるサーベルの手入れを行い、球体の様なものを二つ用意する。それを見ながらマグマ星人は口元に気味の悪い笑みを浮かべる。
『さあ、始めようじゃねえか』
マグマ星人が二つの球体を投げつけるとどんどん膨張して破裂し、中から二体の怪獣が姿を見せる。一体は体表が黒く、額には角があり更に背中には大きな突起物が見える。
もう一体も体色が赤である以外は全く同じ特徴を持ち、兄弟といえる怪獣たちだ。
『行けブラックギラス、レッドギラス! 幻想郷を滅茶苦茶にしろ!』
『グガアアアア!』
『ウガアアアア!』
ブラックギラスが雄叫びを上げ、それに続く形でレッドギラスも雄叫びを上げつつ人里へ侵攻を開始する。夜という事もあり、それに気づいた人々は皆寝間着姿で家から飛び出してきた。
「か、怪獣だああああ!」
「逃げろおおおお!?」
逃げ惑う人々には目もくれず、ギラス兄弟は人里を歩いて蹂躙していく。二体の怪獣に踏み潰されていく家や施設。マガキュウビ襲来のダメージから完全に回復していない現在、更なる追い討ちをかけられている様なものだ。それを眺めるマグマ星人は満足そうな笑みを浮かべた。
『さあて、これでギンガとビクトリーがのこのこ出てくるはずだ。ギラス兄弟と戦って消耗したところに俺様が入れば確実に抹殺できる』
しかし、待てど暮らせどギンガとビクトリーは一向に現れない。その事にマグマ星人は違和感を覚えたが、それなら人里を蹂躙するまでだと切り替え、ギラス兄弟の破壊活動を見届ける。
『……ん?』
不意にマグマ星人は離れた場所に気配を感じ、そちらに視線を向ける。そこには黒尽くめの恰好をした男がギラス兄弟の破壊を見つめていた。
『なんだあいつは、この里の人間か? にしては妙に落ち着いている気が……』
不意に男は右腕を垂直に伸ばす。すると手首に装着されていた青いブレスレットが翼の様に開き、肘を曲げて胸の前に腕を持っていき、青年が叫ぶ。
「アグルーーーー!」
すると青年の体が青い光に包まれる。光は巨大化しギラス兄弟の前に立ち塞がる様に降り立った。その衝撃で大地が唸る様に揺れ動き、大量の土煙が舞い上がる。
『あ、あれは……ウルトラマン!?』
そこにいたのは、鮮やかな青色と銀色の体を持つ巨人。胸の黒いプロテクターの淵を彩る金色が太陽に反射して輝く。
『ギンガとビクトリー以外のウルトラマンがいたのか。逆に好都合だ、やってしまえギラス兄弟!』
『ガアアアア!』
『グオオオオ!』
レッドギラスとブラックギラスが青いウルトラマンに顔を向け、同時に肉薄する。しかし青い巨人はそれに動じる事なく身構えたかと思うと、音も無くギラス兄弟の背後に回っていた。
『!?』
マグマ星人とギラス兄弟が驚愕しているとギラス兄弟の体が突然火花を散らし、二体がバッタリと倒れた。少しして起き上がったのを見ると致命傷にはなっていない様だが、何が起きたのか理解できなかった。
『グガアアア!』
『グオオオオ!』
ギラス兄弟が威嚇する様に青い巨人に吼えるが、巨人は悠然と身構えて逆に手招きをして兄弟を挑発している。その動きからは明らかに余裕が感じられた。
『ガアアアア!』
怒ったようにレッドギラスが巨人に迫るが。
『オイッ!』
巨人は腹部へのパンチ一発でレッドギラスをよろよろと後退させた。動揺しているレッドギラスを尻目に巨人はブラックギラスへターゲットを変更し、地を蹴って飛び上がると、胸へ連続キックを叩き込んでブラックギラスを吹き飛ばした。
『オアアアッ!』
『グオオオオン!?』
レッドギラスがブラックギラスを助け起こし、再び巨人と相対するがどちらが優勢かは明白であった。
『ぐ……こうなったらギラススピンをお見舞いしてやれ!』
『ガアアアア!』
マグマ星人の命令にブラックギラスが応えると、兄弟はがっちりと抱き合う。
『……ンッ?』
巨人が目を見張る様に顔を突き出す。その間にギラス兄弟は互いに回転して独楽の様な動きを見せる。これがギラス兄弟必殺のギラススピンだ。
『ハアッ!』
それを見た巨人が回転を止めようと飛び掛かるが、それを軽々と弾き飛ばして巨人を吹き飛ばした。
『ウオアッ!?』
もんどりうって倒れる巨人。ようやくまともなダメージが通った事に安堵しつつ、マグマ星人は更なる指令を兄弟に送る。
『そのまま光線でウルトラマンを攻撃しろ!』
その指令通り、ギラス兄弟は互いの角からビームを出して巨人を攻撃する。
『ウアアッ!?』
直撃を受け、少し体を縮こませる巨人。ギラス兄弟は先程までの仕返しとばかりにビームを放ち続け、巨人の周囲に爆炎が躍る。
『よし、これで少しは……ん!?』
もくもくと立ち昇っていた黒煙が晴れていく。そこにいた巨人はまるでダメージを受けていない様子で佇んでいた。
『バ、バカな!? あれだけの攻撃を体一つで受けきったのか!?』
これにはギラス兄弟も驚いた様子でたじろぐ。すると巨人は額の前で両腕を交差し、少しずつ上下に腕を開いていく。すると額にエネルギーが溜まっていき、青い光の刃が伸びていくのが見えた。
『ま、マズい! ギラススピンで防御だ!』
しかしマグマ星人の指令は一歩遅かった。
『ジョアアアア!』
光の刃がレッドギラスに向けて放たれ、命中する。
『グオオオン……!』
断末魔を上げながらレッドギラスの体躯は粉々に吹き飛ばされ、跡形も無くなった。
『な……ウグアアアア!?』
目の前で下僕をバラバラに粉砕されたマグマ星人は辺りに響く唸り声を上げ、地団太を踏む。
『クソッ! せめてブラックギラスだけでも……!』
そう思い見上げると、既にブラックギラスは怖気づいて地中に逃げていた。巨人はそれを追いかける事無く見下ろしていた。完全に見下す様な視線で。
『……覚えていろっ……! お前は必ずこのマグマ星人が倒す!』
その姿に怒りを覚えながら、マグマ星人はその場から消え去る。残った青い巨人は静かに変身を解除すると、その場から忽然と姿を消した。
圧倒的な強さで人里を救った青いウルトラマンの話が幻想郷中に広まるのに、そう時間は掛からなかった――。
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「あの青い巨人、一体何者なのかしら」
スキマからその様子を窺っていた八雲紫は、訝し気な顔を見せる。寝ていたところを怪獣が再び人里を襲っていると式の八雲藍に叩き起こされ、渋々ヒカルとショウを呼び戻そうとした所にあの青い巨人が現れて怪獣を追い払った。助かったのは事実だが、あの巨人は当然紫が呼び寄せた訳ではない。たまにある事だが、事故の様な形で幻想入りしたとしか思えない。紫は暫し逡巡する仕草を見せた後、隣で待機している藍に伝える。
「藍。貴女はあの巨人に変身している者を見つけて。まだ人里の近くにいるはずよ」
「はい。紫様はどうなさるのですか?」
「ヒカルとショウを呼び戻すわ。あの二人なら何か知っているかもしれないし」
藍が頷いてスキマから人里に飛び込んだのを確認すると、紫も雫が丘にスキマを開く。そしてヒカルとショウ、そして付いていくと言って聞かなかったもう一人を連れてくるのだった。
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双子怪獣との戦いが終わった後、青年は人里から少し離れた場所まで来ていた。辺りを見渡しながら、右手首に付けたブレスレットに目をやる。
「ここは一体何処なんだ。教えてくれ、アグル……」
しかし、ブレスレットは青い光を発するだけだ。青年が僅かに表情を歪めると、不意に声を掛けられた。
「あややや? 見慣れないお人ですね。もしかしなくても外来人ですか?」
「……お前は誰だ?」
そこにいたのは、鴉天狗の様な翼を持つ奇怪な姿をした少女だった。青年は鋭い目つきでその少女を睨む。
「そんな怖い顔しないでくださいよ。私は射命丸文。清く正しい新聞屋です。貴方は?」
「……
これが青年――、藤宮博也と幻想郷の少女、射命丸文の最初の出会いであった――。
幻想郷に戻ってきたヒカルとショウはそれぞれの拠点に戻る。その頃、マグマ星人はエンドロスより新たな怪獣を授かり、ギンガとビクトリー、そしてアグル抹殺を目論む。
次回、サーベル暴君異変の章(後編)