八雲紫のスキマ内部。紫はスキマを開いて紅魔館の外観を眺めていた。ここにはウルトラマンビクトリーことショウが滞在している。そして紅魔館にウルトラマンギンガこと礼堂ヒカルと博麗霊夢、霧雨魔理沙が向かっている事も把握している。二人のウルトラマンが合流する前に、紫はちょっとした遊びをしようと考えていた。紫が振り向くと、そこに赤い目を持った黒スーツを着た者が立っている。その者は頭部がカラスに酷似しており、さながらカラス人間とでもいうべき風貌をしていた。
そのカラス人間がスキマを覗き込み、何かを見定める様に頷く。
『カッカッカ。要はここを制圧すればいいんだな、八雲紫?』
「ええ、その通りよ。そうすれば貴方、いえ貴方達に幻想郷の半分をあげるわ。レイビーク星人エテジア」
紫の言葉に、エテジアは瞼を下からパチパチと動かして頷く。
『その約束、忘れる事のないようにな? カッカッカ』
「もちろん。成功すればきちんと守りますわ」
『よし、ならお前達行くぞ。紅魔館侵略作戦の開始だ!』
エテジアが号令を発すると、何処からともなく黄色い目を持ったレイビーク星人が多数現れた。三十人はいるだろうか、その手には黒いフォルムの大型銃が握られている。
エテジアは部下から銃を受け取ると、そのままスキマから紅魔館に向けて飛び降りる。部下達もそれに続いて一斉に飛び降りていく。その様子を見つめながら、紫はボソリと呟いた。
「私の暇つぶしなんかにやられたりなんかしないわよね? ショウ……」
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博麗神社での戦いの後、ヒカルは紅魔館に向かう道中の森の中で霊夢達と互いの事を色々と話した。ヒカルはギンガとの出会いやこれまでの戦いの事、霊夢と魔理沙は幻想郷の事を説明した。
「色々な種族がいる場所か、すっげぇな」
「これから行く紅魔館は吸血鬼が住んでいる場所よ。それに仕える人間や妖怪、魔法使いがいたりするけど」
「私はついでに本を借りに行くけどな!」
魔理沙のその言葉に、霊夢がジトっとした目を向ける。何故そんな目をするのか分からなかったが、その考えは直後遠方から聞こえてきた鈍い爆発音と共に霧散する。
「な、なんだ今の音!?」
魔理沙が背伸びしながら辺りを見渡す。爆音はちょうどヒカル達が向かう方角から聞こえた様に思える。
「……間違いない、紅魔館の方角よ」
霊夢の真剣な声に、ヒカルも表情を引き締める。
「まさかとは思うけど、怪獣か?」
「そこまでは分からないけど……急ぎましょ」
霊夢と魔理沙についていく形で、ヒカルは森を走り抜ける。
(ショウ、そこにいるのなら無事でいてくれよ)
彼なら大丈夫だと信じているが、そう思わずにはいられなかった。
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時間は少し遡り、紅魔館の門前。門番である美鈴は門にもたれかかって寝ていた。いつもなら咲夜が確認に来るまでもう少し寝ていられるのだが、今日は少し違った。まだ朝早くにも関わらず、複数の気を感じた。それも二人や三人という話ではなく何十人という多さだ。流石に無視する訳にはいかない。
美鈴はそっと目を開いて身構える。相手は何処から来るか分からないので、周囲に視線を配って警戒する。
すると、そいつは突然空から降ってきた。黄色い目に黒のスーツを着込んだカラス頭の妖怪が三体、一斉に美鈴の前にやって来た。
「な、なんなんですか貴方達は!?」
予想外の招かれざる客に美鈴はたじろぐが、カラス頭のそれは容赦なく飛び掛かってくる。
「くっ!」
カラス頭の妖怪が繰り出した拳を捌き、掌底で吹き飛ばす。するとあっさり沈黙したので、美鈴は手ごたえを感じた。
(行ける!)
残りの二体も飛び掛かってくるが、美鈴は落ち着いて攻撃を防御して回し蹴りをそれぞれに浴びせる。
「はああああっ!」
二体は綺麗に吹き飛んでいき、沈黙する。そして別の気配が無いか後ろを振り返ってみると――。
『キキッ!』
「っ!?」
いつの間にいたのか、銃を構えたカラス頭妖怪が美鈴の目の前に映り込む。動揺していると、カラス頭の妖怪が銃の引き金を引く。
「くっ!? うあああああ!?」
銃から水色の光線が放たれ、それを浴びた美鈴は体が小さくなって銃の中へと吸収されてしまった。
『キキィ! キキっ!』
カラス頭のそれ――レイビーク星人は満足そうに飛び上がると、意気揚々と紅魔館の内部へ改めて侵入を果たす。その後に続いてぞろぞろと別のレイビーク星人もやってくるのだった。
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紅魔館館内のリビング。レミリアとフランは朝食を食べた後就寝したが、ショウ達人間はここからが一日の始まりだ。ショウは咲夜が淹れた紅茶を飲みながら、幻想郷に現れた怪獣の事を考える。
(紫は何処から現れたのか分からないと言っていたが、本当に元からここには怪獣がいたのか? なら、何故このタイミングで目覚める? 偶然かそれとも意図的なのか)
そしてショウはどうしても、初戦のメルバの奇襲に関して疑念を拭えないでいた。しかし、紫が仕向けたとして何故彼女がそれをやる必要があるのか、分からないのもまた事実であった。
そんな事を考えていると、パチュリーと小悪魔がリビングに入ってきた。
「あ、ショウさん。パチュリー様がお聞きになりたいことがあるそうで……」
小悪魔がそう言いかけた時、ショウの目に二人の背後にいる不気味なカラス人間が映った。それは大きな銃を構えて今にも撃ちそうだった。
「二人とも伏せろ!」
「!? パチュリー様!」
ショウが叫ぶが遅かった。パチュリーは反応出来なかったが、小悪魔が咄嗟にパチュリーを庇う様に前に出た。そこで銃の引き金が引かれ、水色の光線を浴びた小悪魔は銃の中へ吸収されてしまった。
「きゃあああ!?」
「こあ!?」
パチュリーが驚愕の表情を浮かべて動揺する中、ショウは飲み干した紅茶のティーカップを手に立ち上がり、それをカラス人間に投げつけた。
『キキイ!?』
カップはカラス人間の頭部に直撃し、怯ませた。その隙にショウはカラス人間に飛び掛かり鳩尾に拳を浴びせて沈黙させる。
「大丈夫か?」
「ええ、何とか。けどこあが……」
ショウは沈黙したカラス人間を観察し、ある存在を思い浮かべる。
「こいつはレイビーク星人か……。恐らく、敵は複数いるぞ」
「……それってつまり、美鈴もやられたってことかしら?」
「多分な。とにかく俺についてこい。レミリアとフランを起こすぞ」
ショウとパチュリーはリビングを出てまずはレミリアとフランの寝室に向かう。咲夜の事も考えたが、彼女ならこの事態を察知し、対処できる気がしていた。そのため、まずは寝ていて無防備なレミリアとフランを起こす事を先にした。周囲を警戒しながら、パチュリーの案内でまずはレミリアの部屋に辿り着く。が、既にレイビーク星人が五体扉の前に居て、扉を蹴破ろうとしていた。
「ちっ!」
舌打ちしながらショウが走りだそうとしたその時。
「――神槍『スピア・ザ・グングニル』!」
扉の奥からレミリアの声が聞こえたかと思うと、赤い槍が扉とレイビーク星人五体を丸ごとぶち抜いた。
『キイイイイイ!?』
五体はあっという間に吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。少しして眠そうに目をこするレミリアが赤い寝巻姿で出てきた。
「もう、何なのよこいつら……うるさくて起きちゃったじゃない」
「レミィ、起きていたのね」
「パチェ? それにショウも。これ、侵入者よね?」
「ああ。多分だが、かなりの数が侵入したはずだ」
そしてレイビーク星人の縮小光線に気を付けるようレミリアに伝え、今度はフランを連れ出すため彼女の寝室に向かう。レミリアは時間を止められる咲夜に任せればいいと言ったが、咲夜の許にも敵が来るかもしれない事を考えるとこちらで動くべきだ。三人は急いで地下にあるフランの部屋に向かうのだった。
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「――幻象『ルナクロック』」
『――キキイイイッ!?』
ショウの予測通り、咲夜もキッチン内でレイビーク星人の襲撃を受けていた。
咲夜が時間を止め、無数のナイフを四体のレイビーク星人に向け投げつけた後、時間止めを解除する。ナイフは寸分狂わず、四体のレイビーク星人の頭部と四肢を滅多刺しにして沈黙させる。咲夜は息を大きく吐いてばら撒いたナイフを回収する。
「……これも怪獣とやらの類なのかしら。とにかくまずはお嬢様と妹様を――はっ!?」
『キキキッ』
気配に感づいた咲夜がキッチンの入り口を見ると、もう一体のレイビーク星人が銃口を咲夜に向けて引き金を引いていた。
「くっ!」
咲夜は咄嗟に時間を止め、光線の軌道から離れて回避する。時間が動き出すと、咲夜の背後にあった林檎が縮小され、銃の中に吸い込まれる。それを見て、咲夜はあの銃の特性を理解する。
『キイッ!?』
「あれは、物質を縮小させる効果を持っている訳ね……それでも」
仕留めたと思った獲物が無事な事にレイビーク星人が驚く中、咲夜はナイフを手に持つと、それをレイビーク星人の持つ銃に向け投げつける。ナイフは銃口へ正確に刺さった。
『キキ!?』
「撃たせなければ、怖くないわ」
狼狽したレイビーク星人は銃の引き金を引くが、故障したのか縮小光線は発射されない。
その隙を突いて咲夜は無数のナイフを展開する。
「幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』」
多量のナイフがレイビーク星人に殺到し、レイビーク星人は躱す間も無くハチの巣にされた。
『キイィィィ……!?』
床に転がるレイビーク星人を尻目に、咲夜は再びナイフを回収して今度こそレミリアの許に向かう。しかし、レミリアの部屋に来てみると当の本人は不在だった。
「お嬢様自ら異変を察知したか、あるいはショウが連れ出してくれたのかしら? なら」
今度はフランの所に向かおうとしたのだが、そこで廊下の奥からまたもや複数のレイビーク星人の姿が見えた。
「いちいち相手にしていたらキリが無いわね。こうなったら」
咲夜は腰から懐中時計を取り出して時間を止める。そしてそのままフランの許へ急ぐのだった。もちろん、ナイフの置き土産は忘れずに。レイビーク星人達の断末魔が聞こえる頃には既に咲夜はフランの部屋に到着していた。
********
道中、襲い来るレイビーク星人達を蹴散らしつつ地下にあるフランの部屋に着いたショウとレミリア、パチュリーの三人。入口のドアは固く閉ざされており、ここにはまだレイビーク星人の魔の手が伸びていない事を示していた。その事に安堵しつつ、レミリアがドアを強く叩いてフランを起こしにかかる。
「フラン! 起きてここを開けて!」
すると少ししてからドアが開き、寝ぼけ眼のフランが出てきた。
「……おねえさま、なに~?」
「カラス妖怪がここを襲ってきたわ。迎撃するわよ」
「……ん?」
ショウはてっきり逃げると言うと思っていたので、レミリアの言葉に思わず戸惑いを覚えた。レミリアはそんなショウの顔を見て、不思議そうな表情を見せる。
「何変な顔してるのよ? ここは私達の家よ。我が家を守るのは当然じゃない」
「お嬢様、妹様! 無事ですか!?」
神出鬼没に咲夜がやってきた。どうやら、上手く敵を撒けたようだ。ショウは自分の予測が外れていなかった事に思わず口元が緩んだ。
「ええ、貴女こそ無事で良かったわ咲夜。流石は私の自慢のメイドね」
「ありがとうございます、お嬢様」
「とりあえず、今のところ恐らく美鈴とこあがあいつらにやられているわ。どのくらい敵が残っているかも分からないし」
「え、美鈴やられちゃったの……?」
パチュリーの言葉にフランが目を見開いて俯く。フランと美鈴はよく一緒に遊んでいるそうなので、その相手がやられたとあってはショックなのだろう。すると、不意にフランがくぐもった笑い声を漏らす。
「……あは、あはは。美鈴をやった奴ら、許さない……」
顔を上げたフランの目には狂気が孕んでいた。その事に思わず身構えるショウだったが、レミリアがそっとフランに近づき、フランを優しく抱きしめた。
「落ち着きなさい、フラン。ここで暴走しても何もならないわよ? 大丈夫、美鈴を一緒に助けてあげましょう?」
レミリアの言葉に、フランの目が元に戻っていく。そしてフランもぎゅっとレミリアの背中に手を回した。
「うん……お姉さま」
一先ず落ち着いた様でショウは構えを解いて一息吐く。
「今のはなんだったんだ咲夜。……咲夜?」
咲夜に話を聞こうと思ったのだが、咲夜は何故か鼻骨を摘まみながら上を向いていた。そのおかしな様子にショウは目を白黒させる。
「おい、咲夜?」
「はっ!? な、何かしら!?」
「何をしているんだ?」
「こ、これはその……決して目の保養になるとか刺激が強すぎるとかそういうのじゃなくて……!」
「……もういい」
何を言っているのか訳が分からなかったので、詳細を訊くのは諦めた。パチュリーは咲夜の様子に何か察している様で、ジトッとした目を向けていた。
その時、パチュリーの背後から光線が浴びせられ、パチュリーはあっという間に小さくなって消えてしまう。
「パチェ!?」
振り返ると、そこには十人のレイビーク星人が立っていた。ショウ達四人は身構え、レイビーク星人達と対峙する。すると奥からコツコツと靴音が聞こえてきた。その音の主は赤い目をしたレイビーク星人だった。恐らく、奴が今回の騒動の主犯だろう。
『カッカッカ。初めまして紅魔館の諸君、そしてウルトラマンビクトリー。私はP413星雲からやって来たこの一団のリーダー、エテジアだ。私の部下達が随分世話になったようだな』
「……この紅魔館に土足で踏み入った罪、軽くないわよ?」
「美鈴の敵!」
レミリアとフランがそれぞれグングニルとレーヴァテインを取り出すが、その二人を制する様にショウと咲夜が前に出る。
「咲夜?」
「ショウお兄ちゃん……」
「お嬢様方は下がっていてください。ここは私達が」
「お前達が出るまでもない。……行けるな、咲夜?」
「勿論。規格外の奴らじゃ無ければ私達でも通用するって分かったし」
咲夜はナイフを抜き取り、構える。ショウも拳を構えて体を揺さぶる様に動かす。
『……こしゃくな。やれお前達! レイビーク十戦士の力を思い知らせろ!』
『キキイイイイ!』
「――貴方達は何も理解出来ないまま死ぬ。それが『私の世界』」
飛び掛かる十人のレイビーク星人。それに対して咲夜が懐中時計を構えると不意にショウの意識が途切れた。気づくと周囲に無数のナイフが展開されていて、レイビーク星人達を襲った。
『キキイ!?』
『ふん!』
二体のレイビーク星人がナイフの餌食になったが、その他は辛うじて躱した。エテジアに至ってはナイフを軽々と弾き飛ばしており、やはりリーダーを自称するのは伊達ではないということを見せつけた。
『キキッ!』
「ふっ! はっ!」
『キキイッ!?』
二体のレイビーク星人がショウに掴みかかるが、ショウは落ち着いてトラースキックを一体の顔面に叩き込む。
「うらっ!」
『キイ!? キ……』
そして水面蹴りの要領でもう一体を転倒させると、馬乗りになって顔面に拳を打ち込み沈黙させた。しかしその隙を突かれショウは背後からレイビーク星人に掴まれる。
「くっ!?」
「ショウ、躱して!」
咲夜の言葉と同時にナイフが飛んできた。ショウは慌てて頭を横に振って躱すと、ナイフはショウを掴んでいた星人の額に突き刺さった。
『キイイイ!?』
ナイフに怯んだ隙にショウは拘束から脱出して回し蹴りを叩き込んだ。二人は背中合わせに星人から距離を取った。
「随分手荒だな」
「貴方なら躱せると思ったからよ」
半分まで数が減って近接戦では歯が立たないと判断したのか、残った星人は光線銃を構えた。その内の一体が咲夜目がけて光線を撃つ。
「無駄よ」
しかし次の瞬間には咲夜の姿はその場から消え、空中に飛び上がっていた。そして再びショウの意識が一瞬途切れたかと思うと、またもやナイフが大量にばら撒かれていた。
『ふん、もうその手品は見飽きた! やれ!』
エテジアが叫ぶと、星人達は縮小光線をナイフに向けて放っていた。ナイフは小さくなって銃口に吸い込まれていき、全て消えた。
「……!?」
着地した咲夜が目を見開くと、星人の一体が再び咲夜に光線を放つ。
「しまっ……」
「ちい!」
反応が遅れた咲夜にショウが飛びついて咲夜もろとも倒れ込み、光線を間一髪で躱す。
「無事か?」
「え、ええ……」
咲夜が僅かに頬を赤らめながら俯く。ショウは咲夜の手を取って引き起こし、五体のレイビーク星人と対峙する。
「うらっ!」
ショウから仕掛けていき、一体に蹴りを浴びせる。しかしもう一体が横からショウの顔を殴りつける。
「ぐっ!?」
よろめいた所を更にもう一体から拘束され、突き飛ばされる。ショウは咲夜の目の前に転がる事になる。
「うあ!?」
「ショウ!」
咲夜が心配そうにショウを覗き込むが、ショウは懐からビクトリーランサーを取り出して立ち上がり、ガンモードからランサーモードに変形させる。
「咲夜。レミリアとフランを守ってろ」
「……分かったわ」
それで察したのか、咲夜はレミリアとフランの傍に行く。ショウはビクトリーのスパークドールズを取り出してライブサインをリードする。
【ウルトライブ! ウルトラマンビクトリー!】
ショウの体が光に包まれる。その眩しさにその場にいた全員が顔を覆う。光が収まると、ショウはビクトリーへ等身大の変身を遂げていた。
「わあ、ビクトリーが小さい!」
「ウルトラマンってそのままの大きさでも変身できるものなのね……」
フランとレミリアが興味津々といった感じでビクトリーを見る。ビクトリーはそのまま駆けだす。
『ようやくお出ましか。やれ!』
エテジアの合図に五体のレイビーク星人がビクトリーに飛び掛かる。
『ビクトリウムスラッシュ!』
ビクトリーは黄色い光を足に纏わせ、レイビーク星人を文字通り一蹴していく。五体全てが沈黙すると、残るはエテジアのみだ。
『貴様ぁ……よくも部下達を』
『ツェアッ』
ビクトリーとエテジアがじりじりと動きながらお互いの様子を窺う。するとエテジアが徐に光線銃を構え、咲夜達に向けて放つ。
「え!?」
突然の事に咲夜は咄嗟にレミリア達を庇うが、それを更にビクトリーが庇う。
『ウアアア!?』
ビクトリーの体に光線が浴びせられ、ビクトリーの体はみるみるうちに縮小して銃口へと吸い込まれてしまった。
「ショウ!」
「ショウお兄ちゃん!」
咲夜とフランの悲鳴が響くが、エテジアは銃を見つめながら勝ち誇った様に笑う。
『カッカッカ! いくらウルトラマンといえど、こうなってしまっては無力だな! さあ、今度こそお前達だ!』
「そうはさせない……! 幻象『ルナクロック』!」
咲夜が時間を止めてナイフを投げつけ、再び時を動かす。しかしエテジアは最初から読んでいたかのようにナイフを全て躱していく。
「くっ!?」
『何度も言わせるなぁ! その手品は、飽きた!』
「うあっ!? あ、ぅ……」
エテジアは素早い動きで咲夜の背後に回り込み、銃で咲夜の首を殴りつける。咲夜は崩れ落ちる様にその場に倒れ込み、意識を失った。
「咲夜!」
レミリアがグングニルを振りかざすが、エテジアは倒れている咲夜に銃口を向けた。
『カカカ。いいのか、こいつも奴らと同じ目に遭うぞ?』
「こ、この……!」
レミリアの動きが止まったのを見て、エテジアは銃口を咲夜からレミリアに向ける。その時、銃が突然爆発を起こして大破した。
『グオオオオ!? な、なんだ!?』
エテジアがたじろぐ。その目の前には咲夜を抱きかかえたビクトリーが立っていた。
「ショウ!」
「すごーいショウお兄ちゃん! 抜け出せるなんて!」
ビクトリーは咲夜をレミリアとフランに預けると、振り返り様に右腕を発光させた。
【ウルトランス! ハイパーゼットンシザース!】
ビクトリーの右腕が黒と黄色を基調とした尖った腕へと変化する。そのままビクトリーはエテジアに急接近する。
『貴様は絶対に許さん!』
ビクトリーが右腕をエテジアの胸に突き刺す。
『ギャアアアア!?』
『ウオリャア!』
そして間髪入れずに零距離で火球をエテジアの体内に叩き込んだ。エテジアの体は瞬時に爆散し、最期の悲鳴すら上げさせなかった。そのあまりの破壊力にレミリアは呆然とし、フランは楽しそうな笑みを浮かべていた。
ビクトリーは変身を解除してショウの姿に戻る。そして咲夜の顔を覗き込む。
「大丈夫よ、気絶してるだけ。それにしてもあの攻撃、化け物染みた破壊力ね」
「……まあな」
ショウはバツが悪そうに呟く。本当はあれを使うつもりなど無かったのだが、気づいたら使っていたのだ。その様子を見たレミリアが愉し気な笑みを浮かべる。
「ふふっ、貴方随分と咲夜の事を気にかけてくれている様ね?」
「……あれは咲夜を盾にするやり方が気に入らなかっただけだ」
「そうかしら? それならそれで構わないけど。とりあえず、咲夜を運ぶのを手伝ってちょうだい。あ、フラン?」
「なにー?」
「そこに転がっている奴らが一体でも目を覚ましたら小さくなった皆の戻し方を聞いておいてちょうだい。喋らないのなら、キュッとしてドカーンでいいわ」
姉の言葉に、フランの目の輝きが一層強くなる。それは子供心を全開にした好奇心の塊の様な光を放っていた。
「ほんとう!?」
「ええ。でも、それはあくまでどうしても喋らなかったら、よ。そこを間違えないでちょうだい」
「分かった!」
ショウは何故か不安になりながら咲夜をもう一度抱きかかえ、彼女の部屋まで運んでいく。
その後、フランとのお話しによって生き残ったレイビーク星人に美鈴とパチュリー、小悪魔を元に戻してもらった。レイビーク星人は恐怖に震えながら紅魔館を去っていく。こうして彼らの作戦は失敗に終わったのだった。
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スキマ内部で一部始終を観察していた紫は満足そうな笑みを浮かべていた。
「くすくす。やっぱりこうじゃないと面白くないわ」
そしてもう一個スキマを開くと、生き残ったレイビーク星人が紫の前に落ちてきた。
『キキイッ!?』
レイビーク星人は辺りをキョロキョロと見渡す。しかし次の瞬間には。
「お疲れさま。そして、さよなら」
『ギイイイイ……!?』
レイビーク星人の悲鳴が、スキマの中に響き渡るのだった。
「ふう……。さて、もうすぐヒカル達も紅魔館に到着するわね」
紫はヒカル達を覗いているスキマに視線を移す。そして口元に不気味な笑みを浮かべた。
「お遊びはもうお終い。ここからが本番なんだから……」
紫の声がスキマの中で響き、そして消えていった。
次回予告
遂に再会したヒカルとショウ。しかしそれもつかの間、深き闇が二人に迫る。それは光と対をなす、闇の巨人だった。ヒカルはギンガに変身して立ち向かうが……。
次回、闇巨人異変の章