ウルトラマンギンガX~幻想絆伝~   作:yun1

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第5話 闇巨人異変の章

 冥界にある白玉楼。満開に咲き誇る美しい桜を望める場所だが、その桜の花弁が黒い光弾によって散っていく。桜の木から見下ろす場所で、その戦いは繰り広げられていた。

 一人は鮮やかなピンクの髪と水色の服が印象的な美しい女性。しかし、その美貌は焦燥感によって崩れている。息も切れており、窮地に陥っているのが分かる。

 そしてもう一人は、異形な姿をしていた。

 禍々しい色合いの黒を基調として、所々に赤いラインが入った人でも妖怪でも無い、数メートルの大きさの巨人が女性の前に立ち塞がっていた。巨人はゆっくりと歩を進めて女性に迫る。

「本当に何なのかしら、こいつ。私の能力が効かないのが蓬莱人以外にもいたなんて、ちょっと信じられないわ」

 女性はじりじりと追い詰められる様に後ろに下がっていく。すると、女性の背後から一つの影が飛び出してきた。

「はああああ!」

 白髪のボブカットに黒いリボンを着け、青緑のベストを着た少女が刀を振りかざして巨人に斬りかかる。

『…………』

 しかしその巨人はあっさりと少女の太刀を二本の指で挟んで受け止め、軽々と少女ごと投げ飛ばした。

「うああああ!?」

妖夢(ようむ)!」

 女性が吹き飛ばされた少女――魂魄妖夢の名を叫ぶが、妖夢は桜の木に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。巨人は女性を改めて見下ろすと、口元を動かした。

西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)……お前には私の道具になってもらう』

「なんですって……う、あ、あ……」

 幽々子が頭を押さえて苦しむ。巨人のかざした手のひらから闇の波動が当てられているのだ。それによって幽々子は全身を闇に蝕まれていく感覚に襲われていた。

「そん、な、なん、なの、これ……?」

『闇の前には全てが無意味。さあ、我が手駒になれ……!』

「あ、あ……」

 幽々子の目から光が消え、濁っていく。がくりと俯いた幽々子に巨人が語り掛ける。

『さあ、動き出せ我が人形。幻想郷に混沌と絶望をもたらすのだ』

「……はい」

 幽々子の手にはいつの間にか黒い棒状のアイテムが握られていた。それを手に幽々子は下界へと降りていく。巨人はそれを見届けると、その姿をくらませた。

 残された妖夢はふらつきながらも立ち上がり、先程まで幽々子がいた地点に向かう。

「幽々子様……知らせ、ないと……霊夢に……」

 右の肩口を押さえながら、妖夢は幽々子と同じ様に現世へと向かう。己の主を救うために。

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 ショウと紅魔館メンバーがレイビーク星人達と交戦した直後、ヒカルと霊夢、魔理沙の三人はようやく霧の湖に到着していた。微かにだが、真っ赤な館も見える。

「あそこが紅魔館ってとこか?」

 ヒカルが尋ねると、霊夢が頷く。

「ええ、そうよ。やっぱりあそこで何かあったわね。勘が告げている」

「相変わらず便利だな巫女の勘……そういやヒカル。さっきから気になってたんだけどよ」

「どうしたんだ?」

 魔理沙がヒカルの左手首をまじまじと見つめる。

「その変な腕輪みたいなの、何なんだ? 邪魔じゃないか?」

 ヒカルの左手首に装着されている青と金色の腕輪が気になっていたようだ。ヒカルは苦笑しながら腕を掲げて見せる。

「いや、こいつはオレとショウの絆の証だ。ジャマなんかじゃないぜ」

「へー、そうなのか。悪りぃな、珍しい形だったからつい」

「気にすんなって」

「それより二人とも、もうすぐ紅魔館に着くわよ」

 霊夢に言われて視線を戻すと、赤い館が近づいてきて、その全景がはっきりと見えてきた。大きさとしてはかなり大きいのが分かる。門の前に到着すると、霊夢は首を傾げる仕草を見せる。

「あの居眠り門番、いないわね」

「つまり、遠慮なく入れってことだろ? 邪魔するぜー!」

「い、いいのか?」

 遠慮の無い魔理沙の態度に戸惑うが、霊夢も同じ様に無遠慮に門を開け放ったので仕方なく着いていくことにする。中に入ると、丁寧に手入れされた庭園が見える。ところが、その庭園はすぐに爆風に包まれた。

「なんだ!?」

 やっぱり何かあったのか、そう身構えていると黒煙の中から見覚えのある人影が出てくる。

「ショウ!」

 見間違えるはずない、ショウの姿だった。ショウはこちらに気づくと目を見開く。

「ヒカル……!?」

 それもつかの間、ショウの元に弾幕と呼べる大量の光弾が降り注いだ。

「くっ!」

 ショウは軽い身のこなしでそれを躱していく。やはり敵襲があったのは間違いなさそうだ。そう思って腰に装着している武器、チャージガンを引き抜こうとするが。

「――ここまでだフラン。一度休むぞ」

「え、どうしたの?」

 空から幼い女の子の声が聞こえてきたので見上げると、綺麗に輝く宝石を付けた翼を持った女の子が日傘を持ちながら降りてきた。この子がショウを襲っていたのかと一瞬疑ったが。

「フラン、あんた何やってんの?」

「あ、霊夢に魔理沙! その人、誰?」

 どうやら霊夢達の知り合いらしい。まさか、ここの住人なのだろうか。霊夢がヒカルに耳打ちする。

「ヒカル、あいつがあんたの探してた奴?」

「ああ。ったく、心配かけやがって。で、何やってたんだ?」

「この世界の遊びだ」

「遊び……?」

 どう見てもショウがあの子に襲われていた様にしか見えなかったのだが、本人がそう言っているのだから信じるしかない。

「あー、まあ遊びっちゃ遊びだけど、この世界における私達の戦いだと思ってくれればいいんだぜ」

 魔理沙の補足で何となく理解できた。女の子も降りてきたので、互いに自己紹介することにした。

「オレは礼堂ヒカル。ショウの仲間だ」

「私はフランドール・スカーレット! フランって呼んでね!」

「そっか、よろしくなフラン」

「俺の名はショウ。ヒカルと同じくだ」

「博麗霊夢。神社の巫女をやっているわ」

「んで、霊夢の親友の霧雨魔理沙! 魔法使いやってるぜ!」

 互いの自己紹介が終わり、ショウを残してフランの案内で館内に入る。すると緑色の服を着た赤い髪の女性が走ってくる。

「妹様、まだ起きていたんですか? お嬢様はもうお休みになると」

「まだ起きているわよ、美鈴」

 その後ろから、ウェーブのかかった青い髪に真紅の瞳が印象的な少女がやってくる。彼女もフラン同様翼を生やしているので、恐らく彼女も吸血鬼なのだろう。

「お嬢様?」

「また随分と客人を連れ込んできたわねフラン。一人は泥棒猫だけど」

「おい待て、それって私のことか?」

「へぇ、自覚はあるのね。意外だわ」

「ま、私の場合は死ぬまで借りるだけだからな。問題ないぜ!」

「それ、借りるって言わないんじゃないか?」

 魔理沙の言っている事は時々吹っ飛んでいる事あると思いつつ、改めて吸血鬼の少女を見る。

「霊夢に魔理沙はともかく、もう一人は誰なの?」

「オレは礼堂ヒカル。ショウの仲間だ」

「ふーん、あんたがね。悪魔の館、紅魔館へようこそ。私は当主のレミリア・スカーレットよ」

「ショウさんの仲間って事は、貴方もウルトラマンなんですか? あ、私は紅魔館の門番を務めています紅美鈴と申します」

「ああ、そうだぜ」

「って言うか、なんで門番が中にいるのよ」

 霊夢が尋ねると、美鈴はやや答えにくそうに返答した。

「あー、咲夜さんがちょっと倒れているので。ショウさんに門番をやって貰って私が中の事をやっているんです」

 ヒカルはその名前に反応するが、考えてみればヒカル達の世界にいるサクヤの報告でショウがいないという事が発覚したので、その彼女がいるとは思えない。単に同じ名前というだけだろう。

「咲夜が? つまり、やっぱり何かあったって事ね」

「ええ。ついさっきまで皆でカラス人間と戦っていたわ」

 やはり、怪人が出現していた様だ。紫の言う通り、幻想郷で怪獣らが頻出しているのは間違いない様だ。

「その、咲夜さんならさっきお目覚めになりましたよ」

「さっそく働こうとするから、無理矢理休ませたわ」

 更に今度は悪魔の様な格好をした少女と紫の髪を揺らした少女がやってくる。

「そっちの人間は見ない顔ね。私はパチュリー・ノーレッジ」

「パチュリー様のお手伝いをしている小悪魔と申します。こあと呼んでください」

 ヒカルは自分の名を告げると、先程まで起こっていたという戦いの詳細をレミリア達から聞いた。

「そんな訳だから、ショウは暫くここに居てもらうわ」

「それなら、しょうがないな。どの道オレも紫から幻想郷を救って欲しいって頼まれているし」

 ショウが紅魔館にいる事を了承し、ヒカルは霊夢と魔理沙と共に館内から出ていく。門前で門番をしているショウの肩をポンと叩くと、ショウはグッと拳を突き出してきた。ヒカルも拳を突き出してぶつけ合い、一旦別れた。

「それで、あんたはどうするつもり? 言っておくけど野宿なんて以ての外よ。夜は妖怪がうろついているんだから。あんたなら退治しちゃいそうだけど、落ち着いて休めないわよ」

「そうだな……」

 霊夢に言われて悩んでいると、何故か本を二冊抱えている魔理沙が口を挟んでくる。

「それなら、霊夢のとこで世話になればいいだろ?」

「はあ? なんで私が面倒を見ないと」

「それもそうだな。霊夢、お願いできるか?」

「ちょっ、あんたまで!?」

 霊夢は暫く考え込むが、やがて諦めた様にため息を吐いて頭を掻く仕草を見せる。

「……どうせ魔理沙は面倒見る気ないだろうし、分かったわよ。ただし、レミリアみたいに豪勢なもてなしは期待しないでよ?」

「別にいいって。ありがとな、霊夢」

 霊夢が気恥ずかしそうに顔を背けるのに苦笑しながら霧の湖の湖畔を歩いていると、正面から誰かが歩いてくるのが見えた。その姿はボロボロになっており、肩を押さえて苦しそうにしていた。

「妖夢!?」

 その人物を見た霊夢と魔理沙が血相を変えて駆け寄る。

「どうしたんだぜ!?」

 白髪の少女は息を切らしながら、霊夢達に告げた。

「れ、霊夢……幽々子様が……」

 少女が言いかけた時、三人の傍に黒い光弾が着弾した。

「危ねえっ!」

 ヒカルが叫ぶが、霊夢達は直撃を免れていた様で辺りを見回している。ヒカルも同じ様に見渡す。すると、湖に浮いている一人の人物がいた。その姿を見た魔理沙が安堵の表情を浮かべた。

「幽々子じゃねーか。なんだ無事じゃないのか」

 しかし、その幽々子と呼ばれた女性は手にしていた黒い棒のアイテムを突き付けると、黒い光弾を放った。

「うわっ!? 何すんだ!?」

 間一髪で魔理沙は体を捻るようにして躱したが、幽々子は口元にニヤリと笑みを浮かべると黒いアイテムを天に掲げた。すると彼女の体を黒い光が覆ってどんどん巨大化していく。

「は……?」

「ゆ、幽々子様……?」

 霊夢と妖夢は信じられないものを見るような目になる。

「く、黒い、ウルトラマン……?」

 魔理沙もまた唖然とした表情でそれを見上げる。

 幽々子の姿は黒を基調とし、所々に赤いラインが入った巨人の姿になっていた。目つきは鋭く、肩には鎧の様なパーツが付いている。そして胸には黒のカラータイマーもある。黒い巨人はじっとこちらを見下ろしている。ヒカルは三人の前に出る。

「お前は何者だ!?」

 ヒカルが尋ねると、黒い巨人は静かに告げた。

『……ケイオス。ダークケイオス。混沌の中で生まれし深き闇……それが私だ』

 このままではまずい。ヒカルは懐からギンガスパークを取り出した。

「三人共、ここから離れろ」

「わ、分かったぜ!」

「ほら、妖夢も早く!」

「幽々子様、幽々子様!」

 魔理沙は箒に跨っていち早く空中に逃れ、霊夢も狼狽している妖夢を無理矢理引っ張って空へ飛びあがる。そしてヒカルはギンガスパークからギンガのスパークドールズを取り出してリードする。

【ウルトラーイブ! ウルトラマンギンガ!】

「ギンガーーー!」

 ヒカルの体が光に包まれると、先程の幽々子と同じ様に段々光が大きくなっていく。そして光の中からギンガが姿を現した。

『ショウラッ』

『現れたな、ウルトラマンギンガ。お前を深き闇に叩き落としてやろう!』

 お互いに身構える光と闇の巨人。その姿を見て、妖夢は呆然とそれを見ていた。

「あ、あれは……」

「ウルトラマンギンガ。幽々子が変身したのとは違って味方だから、信じていいわよ。あいつが幽々子を救ってくれる」

 霊夢と魔理沙も二人の様子を空から見守る。暫く動きは無かったが、沈黙を破ったのはケイオスの方だった。

『ハアアア!』

 地を強く蹴って駆けだすと、そのままギンガに掴みかかる。

『くっ!』

 ギンガも投げられまいとケイオスの肩を掴んで堪え、互いに回り込むような形になる。しかしケイオスはギンガの右腕を右手で払いのけると、そのまま胸部に肘打ちを叩き込んだ。

『くあっ!』

 ギンガがよろめくが、負けじとギンガもミドルキックを放つ。ケイオスはそれを両腕でガードすると同じ様にミドルキックを繰り出すが、ギンガも足でガードする。

『くそっ!』

『ハハハハ……もっと私を楽しませてみろ!』

 この戦いを愉しむかの様に笑いながら、ケイオスはギンガに接近する。ギンガは咄嗟に右拳を繰り出すが、ケイオスは冷静にそれを躱してローリングソバットをギンガの腹部に命中させた。

『ぐはっ!』

 カウンターで決まったためか、ギンガが苦しそうに膝を着く。ケイオスはそれを見下ろしながら再度ミドルキックでギンガの頭部を蹴り飛ばした。

『ぐああああっ!?』

 吹き飛ばされるギンガ。その劣勢に霊夢達の表情に焦りの色が浮かぶ。

「おいおい、アイツ強いぞ。大丈夫なのか?」

「っ……ヒカル……」

「幽々子様……!」

 ギンガはよろよろと立ち上がると、クリスタルの部分を赤色に発光させる。

『オオオオ……!』

 すると、ギンガの周りに燃え盛る隕石が幾つも生み出されてケイオスに狙いを定める。

『ギンガファイヤーボール!』

 隕石がケイオスを襲い、その全てが命中した。瞬間、凄まじい爆音と爆風がケイオスを中心として周囲を駆け抜けた。

「やったぜ!」

「幽々子様!」

 ギンガの勝利を確信して握り拳を作る魔理沙。妖夢は幽々子が変身しているのもあり不安そうな表情を見せる。そして、霊夢はまだ気の抜けない表情を見せていた。

「……まだよ。まだ終わってない」

 霊夢の言葉通り、爆炎の奥から黒いシルエットが現れる。その姿にギンガが身構える。

『……カオスファイヤーボール!』

 その言葉が発せられた直後、ギンガに紫色の火炎弾が襲い掛かった。

『グアアアアッ!?』

 こんな形での反撃を予期していなかったギンガは火炎弾の直撃を受けて吹き飛ばされる。

『グアッ……! グウッ……!』

 苦しみ悶えるギンガ。胸のカラータイマーが青から赤へ点滅して音を鳴らして、危機を知らせる。

「ヒカル!」

「ちっくしょう、これでも喰らいやがれ! マスタースパーク!」

「バカ、それを撃ったら……!」

 霊夢が制止するのを振り切って魔理沙はミニ八卦炉を取り出す。そして虹色の閃光をケイオスに放った。

 閃光はケイオスに直撃したが、無傷だった。

「や、やっぱ化け物過ぎるぜこいつら!?」

 そしてケイオスが立ち上がろうとするギンガに掌を向けると。

『……カオススパーク』

 紫色の閃光を迸らせ、ギンガを追撃した。その威力はマスタースパークとは比べ物にならなかった。

『があっ……ああああ!?』

 閃光の巨大な爆風に巻き込まれるギンガ。その巨体が遂に限界を迎えたのか、倒れ伏した。

「ひ、ヒカル! マジで何なんだよアイツ!」

「あいつは恐らく、自分が受けた相手の光線とかを模倣して自分の物に出来る能力を持っているわ。何処まで範囲内なのか知らないけど」

「そ、そんな……幽々子様が……」

『ぐ、くぁ……!』

 何とか立ち上がろうとするギンガ。しかし、体に力が入らないのか立ち上がれない。それを嘲笑うかのようにケイオスはギンガの傍にまで歩み寄り、無理矢理ギンガを引き起こす。そしてギンガの鳩尾に強烈な拳を見舞う。

『ぐはぁっ!? あ、が……』

『弱い、弱すぎるぞギンガ……その程度だったとはな、失望したぞ!』

 うずくまるギンガを何度も蹴りつけるケイオス。ギンガは抵抗できずにやられていくだけだった。

『ふん……これで止めだ!』

 ケイオスが斜め下に両腕を振り下ろして紫のエネルギーを集める。集まったエネルギーを放つため構えを取ろうとした時だった。

『――ギンガサンシャイン!』

 ギンガのクリスタル部分がピンク色に発光し、両手を合わせるとその手先から光線が放たれてケイオスを直撃した。

『グオオオオっ!?』

 隙を突かれたケイオスは大きく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。ケイオスは立ち上がろうとしても体から力が抜けて立ち上がれない。

『グウ……! 何だこれはぁ!?』

『ようやく反撃のチャンスを掴めたぜ。闇の力にはこれが有効だからな。次は浄化してやる!』

 その言葉と同時にクリスタルが緑色に発光する。すると、それを見たケイオスは急に地を蹴って飛び上がる。

『グッ、アッ……ふ、フハハ……こうでなくては面白くない。なら、これはどうだ?』

 息を切らしているケイオスがパチンと指を鳴らすと、黒い空間が開いて中から海老とも蟹とも区別が付かない怪獣が現れる。目は赤く発光し、両手の鋏は左右非対称の大きさとなっている。

『あいつは、レイキュバス……!』

「今、怪獣を呼び出したぜ!? まさかあいつがこの異変の原因なのか!?」

『フハハ……やれ、レイキュバス!』

 ケイオスの言葉に従い、レイキュバスがギンガではなく、霊夢達の方に向かう。

『……!? まずい!』

『お前の相手は、この私だっ!』

 レイキュバスの許に向かおうとしたギンガを足止めする様に、ケイオスが左手から放った黒い光弾がギンガに直撃した。それによってギンガはレイキュバスの進行を許してしまう。

『うわああ!?』

『フハハ……グッ……!?』

 突如、ケイオスが胸を押さえて苦しみ始める。よく見ると、黒いカラータイマーがギンガと同じ様に赤色に点滅していた。胸の点滅を見たケイオスは何かを悟った様に後ずさりする。

『グウ、ここまでか……お楽しみは次にとっておこう、ウルトラマンギンガ。いや、楽しむ前にここで終わるかもしれないな。フハハハハ……!』

 それだけ言い残すと、ケイオスは上空に出現した黒い渦の中に入っていった。ギンガも追いかけようとするが、相手の方が早かった。ならばとギンガは霊夢達の方に振り向く。

『ギャァオオウ!』

「ああもう! 海老か蟹か知らないけど、丸焼きにするわよ!?」

「マズそうだから私は却下だな!」

「くっ……!」

 レイキュバスの鋏を振り回す攻撃を、霊夢達は空を飛び回る事で回避していた。弾幕も撃ってはいたが、レイキュバスの巨体にはまるで意味が無い。ギンガはダメージの大きい体に鞭を打ってレイキュバスに殴りかかるが。

『ギャオウ!』

『グアアア!?』

 逆に巨大な鋏で殴られ返り討ちに遭う。ウルトライブ出来る時間の限界も迫っており、まさに窮地だった。

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 紅魔館で霧の湖の異変を察知していたショウは門に飛び上がってギンガの戦いを見ていた。その隣には同じく異変を感じ取ったレミリアとパチュリー、小悪魔の姿もあった。

「ねえ、あれ……やばいんじゃないの?」

 レミリアがショウに告げると、ショウは懐からビクトリーランサーを取り出した。

「あの黒い巨人だけならヒカルだけで充分だと思っていたが……予想以上に強かった。そこにあの追い打ちは幾らヒカルでも厳しい」

「なら、行ってきなさい。紅魔館の主として命令するわ」

「いつお前に従うと言った?」

「ここの手伝いをしている以上、貴方には私の命令を聞いてもらうわ」

「……いいから早くしなさいよ」

 呆れた様なパチュリーの声に押され、ショウはビクトリーランサーをランサーモードへ変形してビクトリーのスパークドールズをリードする。

【ウルトライブ! ウルトラマンビクトリー!】

 ショウの体が光に包まれ、その光を突き破る様にしてビクトリーは巨大化していく。その姿を初めて見たパチュリーと小悪魔は呆然と飛んでいくビクトリーを見上げるのだった。

「あれがウルトラマンビクトリー……」

「ショウさんなんですね」

 パチュリーと小悪魔の言葉に、レミリアは何処か誇らしげに頷いた。

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 霊夢達とレイキュバスの小競り合いはまだ続いていた。火炎弾も躱していく三人にいらついたかの様に、レイキュバスの目が赤から青に変わる。

『!?』

 それに気づいたギンガが光線技を撃とうとするが。

『ぐあっ……!』

 体に限界が訪れているのか、膝を着いてしまう。このままでは霊夢達が危ないと思ったその時。

『ビクトリウムバーン!』

『ギャアオウ!?』

 突如、V字型の閃光がレイキュバスを吹き飛ばした。閃光を放った者の姿を見たギンガ、ヒカルは安堵の表情を浮かべた。

『ショウ!』

『待たせたな』

 その言葉と共にビクトリーが勢いよく湖畔に降り立つと、土煙が勢いよく舞い上がる。そしてレイキュバスの前に立ち塞がり対峙する。

『ったく、おせーよ。もうちょっと早く来い』

『フッ、お前はあの黒い巨人に負ける程柔な奴だったか? お前を信じていただけだ』

『ちぇっ、こっちはマジで危なかったってのによ……くっ……!』

『後は俺に任せろ』

『……ああ!』

 ビクトリー、ショウにそう告げると、ギンガの体が光となって消滅していく。そしてギンガがいた場所にヒカルが着地するが、戦いのダメージで両膝を着いてしまう。

「ぐっ……! やっぱ、かなりキテるな……頼んだぜ、ショウ」

「ヒカル! 大丈夫なの!?」

 そこに霊夢達がやってくる。霊夢と魔理沙に肩を貸してもらいながらヒカルは立ち上がり、ビクトリーの戦いを見守る。

「なあ、文の新聞にも載ってたぜアイツ」

「ああ、ウルトラマンビクトリー。オレとギンガの頼もしい仲間だ」

【ウルトランス! キングジョーランチャー!】

 目が青になっているレイキュバスは冷凍ガスを発射する。そのため接近戦は危険だ。ビクトリーの右腕がランチャーに変化し、銃撃戦に持ち込む。

『ウオラアッ!』

 小さい弾丸をレイキュバスに浴びせていくが、少しよろめくぐらいで大きな効果が無い。それならばとビクトリーがエネルギーをチャージしようとした時、レイキュバスの目が青から赤になり、火炎弾を浴びせていく。

『ウオアッ!?』

 エネルギーチャージのため身動きが取れなかったビクトリーは火炎弾の直撃を受け、吹き飛ばされる。そしてレイキュバスが素早い動きで急接近し、巨大な鋏がビクトリーの胴体を挟み込んだ。

『ウアアア!?』

 ギリギリとビクトリーの体を締め上げ、更には両断しようとする鋏。そして更に小さい鋏でビクトリーの首を挟む。

『ウウ……! アア!』

「ショウ!」

 ヒカルは思わずビクトリーの加勢に乗り出そうとするが、ビクトリーが振り向いてヒカルを手で制した。

「なっ……」

 ヒカルは目を見開くが、ビクトリーはレイキュバスに向き直ると。

『調子に……乗るな!』

【ウルトランス! EXレッドキングナックル!】

 ビクトリーの右腕が岩の様に巨大なものに変化し、腕を振り回してラリアットの様な形でレイキュバスを吹き飛ばす。

『ギュアオウ!?』

「怪獣の腕に変化した!?」

「大丈夫。あいつらは悪い奴らじゃない。ショウに力を貸してくれる味方だぜ!」

 自分たちが煮え湯を飲まされている怪獣の力をビクトリーが使う事に霊夢達は目を見開くが、ヒカルは安心させる様にそう告げた。

 派手に吹っ飛んでいくレイキュバス。ビクトリーは挟まれた胴回りを押さえながら続けて右腕を変化させる。

【ウルトランス! サドラシザース!】

 今度はビクトリーの右腕が鋏となり、レイキュバスに向かっていく。

 レイキュバスが巨大な鋏を振り下ろすが、ビクトリーは冷静に躱す。続けて小さい鋏がまたビクトリーの首を狙うが。

『オリャ!』

 ビクトリーは逆に自身の鋏で相手の鋏を受け止める形で防いで、勢いよく投げ飛ばす。

『ウラアッ!』

『ギャオオウ!?』

 転がるレイキュバス。ビクトリーはウルトランスを解除すると、右手を横にかざす。

【ウルトランス! シェパードンセイバー!】

 地底から透き通るような輝きを放つ絆の聖剣が呼び出される。ビクトリーはそれを手に取ると、レイキュバスに向けて走る。すると、レイキュバスの目がまた赤から青に変わり、冷凍ガスを吐き出す。

『ツェアッ!』

 しかしビクトリーはそれをジャンプして躱すと、レイキュバスに向けて急降下する。

『これで決める!』

 そして刃を七色に輝かせながら、レイキュバスの身体をVの形に切り裂く。着地したビクトリーが聖剣を地面に突き刺すと、切り裂いた部分が強い輝きを放ってレイキュバスの身体がゆっくりと倒れた後、大きな爆発を起こして消滅した。

「よしっ!」

「あいつも強いわね……」

「ヒカルが信頼する訳だぜ」

「あの剣……凄い切れ味」

 ヒカル達がビクトリーを見上げる。ビクトリーはそれを見下ろすと静かに頷き、飛び去っていく。向かう場所は勿論紅魔館だった。

 こうして闇の巨人との戦いは終わった。しかし、妖夢の主である幽々子はまだ助けられた訳ではなく、あの巨人が今回の異変を引き起こしている可能性もある事を考えると、ヒカルは何とも言えない複雑な気持ちに駆られる。

「ダーク、ケイオス……」

 その名をもう一度呟くヒカル。そして霊夢達と共に、博麗神社へ戻るのだった。




次回予告

傷を癒したヒカルは霊夢や魔理沙と共に闇の巨人、ダークケイオスの謎に迫る。
その頃ショウは紫の足取りを調べようとするが、そんな彼の耳にビクトリーが人里に現れたという情報が入る。人里に向かったショウが見たものは……?

次回、暗黒星人異変の章
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