そのため、その本編を見ている事前提で書いている描写が幾つかあります。
そして本編に登場するキャラにも独自の設定を加えているのがいますので、その点を了承した上でお楽しみください。
ババルウ星人アカサギとアオサギの騒ぎから一週間が経過した。人里にある寺子屋では授業を終えた子供達が次々に帰っていく。
「先生、またねー!」
「気を付けて帰るんだぞー!」
その子供達を見送るのは、寺子屋を運営している
青のメッシュが入った長い銀髪を揺らし、特徴的な青い帽子を被っている。
胸元を大きく露出した服は彼女の女性としての魅力を存分に引き出し、長いスカートがその色香が過度にならない様に抑えている。
「慧音先生、さよならー!」
「ああ、気を付けてな!」
最後の一人を見送る途中、寺子屋の屋根の上からハーモニカの音色が聞こえてきた。それは聞く人の心を惹きつける、綺麗で美しい音色だ。
「先生、またあの人?」
「みたいだな」
「けど、本当に綺麗な音だよね。私も教えてもらいたいな」
そう、この音色は確かに澄んだ綺麗なものだ。しかし、それと同時に。
(なんでだろうな。何故か胸が凄く締め付けられる。それくらい悲しく儚い音にも聞こえる……)
慧音の脳裏にアカサギとアオサギの最期の瞬間が蘇る。当時、慧音も一連の流れは目撃していた。里の被害は大きくはならなかったが、後味の悪さだけが残った。あの一件からどうも人里全体の空気が重苦しくなっているのを感じていた。
何を信じたらいいのか分からない、そんな空気に。
(救世主だと思っていた者がそうではなかったり、逆に侵略者の烙印を押された方が里の人間を守った。けれど、あの巨人……ビクトリーが本当に味方なのか信用しきれていない人がいるのも事実。どうしたらいいのか、皆が迷っている……)
「……先生ってば!」
「はっ? ど、どうした?」
「もー、ぼーっとしちゃダメだよ先生! ちゃんと宿題やってくるからね!」
「当り前だ。忘れたら頭突きだぞ?」
「分かってるよ! それじゃあねー!」
ぶんぶんと手を振る教え子を見送りながら、慧音は未だハーモニカの音色が聞こえる屋根に向かって叫んだ。
「今日の授業は終わったぞ! 一緒に帰ろう、ガイ!」
するとハーモニカの音色が止まり、屋根から一人の男が慧音を見下ろしてきた。
「……ああ」
その男、クレナイ・ガイは革ジャンの裾を直しつつ屋根から飛び降り、慧音の隣に着地した。
********
話は一週間前まで遡り、クレナイ・ガイのいる世界。魔境と呼ばれる地、入らずの森にて超獣アリブンタとの戦いを終えた翌日。ガイは戦いの疲れを癒そうと行きつけの銭湯に行き一番風呂に入ろうとしていた。
銭湯の入り口に入ろうとした時、白い装束を着た儚げな雰囲気の女性、
玉響姫。入らずの森を彷徨う太古の姫君で、霊能力者として高名だった存在だ。
「……また何か起きたのか?」
ガイが玉響姫のいる方へ向かうと、玉響姫は黙ったまま移動する。ガイも無言で玉響姫に付いていく。
暫く歩くと、入らずの森に足を踏み入れていた。玉響姫が幹の太い樹を大事そうに撫でる。
「教えてくれ、今度は何が起きる?」
ガイの問いに玉響姫はようやくその口を開いた。じっとガイの瞳を覗き込むようにしながら。
『……この世界とは違う世界で、魔王獣の鼓動を感じます』
その言葉に、ガイは思わず目を細める。
魔王獣。世界を滅ぼす力を持つ六体の怪獣。ガイは光の巨人としてそれらを倒すためにこの地球へやってきた。
「魔王獣の? だが、魔王獣は俺が全部倒したはずだ」
『その通りです。ですが、貴方がこれまで倒した魔王獣とは少し感じが違う。魔王獣だけど魔王獣じゃない、そんな気がします』
「……どういう事だ?」
玉響姫は首をゆっくりと横に振る。つまり、彼女でも詳しい事は分からないのだろう。そうなると、やる事が出来てしまう。
「その世界には、どうやって行けばいい?」
『私がこの世界とその世界の境界線を繋ぎます。貴方はそこに入ればその世界――幻想郷に行ける』
「幻想郷……」
玉響姫は頷く。そして撫でていた樹に向けて自らの力を集中させると、樹がぱっくりと開いた。そうとしか言いようのない現象が起きた。
『さあ、ここから入って。ただし、何処に着くかは私にも分からない。危険を感じたらすぐに逃げてください』
「お気遣いありがとう。けど、無用な心配だ」
それだけ言うと、ガイは被っている帽子を抑えながら境界線の中に入り込んだ。
『ガイ、後は任せましたよ』
それだけ呟くと、玉響姫はその姿を消した。
********
八雲紫のスキマ内部。紫はだらしなく寝転がりながら、スキマを介してあるものを見ていた。
それは赤と紫、黒を基調としたウルトラマンが街中で青い巨大怪鳥と戦っている姿だった。紫の視線はウルトラマンではなく怪鳥の方に向けられており、じっと観察している。そこに幽々子がやってくる。
「あら、何を見ているの?」
「別世界の怪獣の事を調べていたら、こんなのが見つかったのよ」
そう言って紫はある巻物を幽々子に見せる。そこには『日本太平風土記』とタイトルが書かれていた。
「それ、何かしら?」
「この映像を見ている世界から拝借してきたものよ。そこに書かれているのよ、世界を滅ぼす魔王獣の存在が」
「魔王獣……」
「面白いから、これを造ってみようかなって」
その言葉に幽々子は眉を顰める。
「どうやって?」
「媒体を使えば、今の私なら訳無いわ。ほら」
そう言って紫が指を鳴らすと、何かがどさりと落ちてきた。その正体に幽々子は目を見開く。
「貴女、その子は」
「私の大事な式よ。可愛い可愛い、私のど・う・ぐ」
そこにいたのは鮮やかな金髪のショートボブと九本の尾が印象的な少女、
「……ゆか、り、さま……」
絞る様に藍が呻き声を漏らす。その姿を見て、幽々子は信じられないような物を見ている様な気分になる。
何だかんだ言いつつ、自らの式は信頼している様子だった紫がそれを道具と言い放つ。それが幽々子には信じられなかった。いや、こうして自らも紫の道具になっている事を考えれば、そうなってもおかしくないのだろうか。
「さあ、藍? 私のために、働きなさい」
紫が藍に向けて手をかざすと、突然藍が苦しみ始める。
「う、あ、あああああ!」
紫から藍へ、闇の波動が流れ込んでいく。それを浴びる藍はやがて目の輝きが異常な程強くなり、その体が闇に包まれる。
『……アアアアアア!』
直後、闇はどんどん大きくなってその姿を現していく。
藍を彷彿とさせる金の体毛に九本の尻尾。目は血走ったかの様に強い輝きを放ち、口元には鋭い牙が幾つも見える。額の辺りには赤く輝く結晶体が見える。それを見て紫は満足そうな笑みを浮かべた。
「これが私の魔王獣……そうね。偽ノ魔王獣、マガキュウビといったところかしら」
『……コオオオオン!』
甲高い声を上げるマガキュウビに、紫は命令を下す。
「さあ、行きなさい!」
『コオオオオン!』
紫が開いたスキマに飛び込むマガキュウビ。幽々子は思わず紫の肩を掴む。
「正気なの、紫?」
「? 何を言っているのよ幽々子。私はいつでも正気よ?」
「そもそも、今の貴女は本当に八雲紫なの?」
それを聞いた紫の口の端が異様に吊り上がった。幽々子は紫から距離を取る。紫は体から闇のエネルギーを漏らしながら幽々子に少しずつ迫る。
「そう、今の私は八雲紫であって、八雲紫でない。幽々子、貴女と同類なの」
その答えに、幽々子は背筋が凍りそうな感覚を覚える。
「貴女にも当然働いてもらうわよ、幽々子? 私のもう一つの道具なんだから」
その言葉がねっとりと纏わりつくように、幽々子の全身を蝕んでいくのだった。
********
人里では、先の騒ぎで破壊された部分の修繕作業が行われていた。その様子をヒカルとショウは霊夢と咲夜を伴って観ていた。
「……なんだか、皆の様子が暗いな」
「無理もない。アイツの死を間近で見たのが堪えているんだろう」
ババルウ星人アカサギとアオサギ。信じていた者の喪失は人里に暗い影を落としていた。霊夢は悔しそうに唇を噛む。
「そもそもアイツが来なければ、穏便に解決できたかもしれないのに……」
それがダークケイオスの事を指しているのはすぐに分かった。しかし、同時に奴は西行寺幽々子でもあるのだ。何故そんな事をするのか、分からないままだった。
「幽々子は操られているだけ、と仮定するならその背後に黒幕がいるはずよ。そいつを見つけられるといいんだけど」
咲夜の言葉に三人は頷く。すると、空が突然裂けた。それを見た霊夢は目を見開く。
「あれは、紫のスキマ!?」
そしてそこから何かが降ってきて、里の民家を幾つか破壊した。そこにいたのは九本の尾を持つ巨大な化け狐だった。
『コオオオオン!』
「ば、化け物だー!」
「逃げろー!」
化け物の出現に恐怖し、逃げ惑う人々。ヒカルとショウは共に変身アイテムを取り出すが、それを民家の影から発射された闇の光弾が妨害した。
「くっ!?」
「ぐあっ!?」
「っ!」
直撃を受けたヒカルとショウは思わずアイテムを手放してしまう。アイテムが宙に放り出されるのを見て、咲夜は時間を止めた。そしてギンガスパークとビクトリーランサーを回収して二人の傍まで行く。
「二人とも、大丈夫!?」
「あ、ああ。助かった、咲夜」
「話には聞いていたけど、便利だなその能力……ぐっ」
「ふふ、ありがと……って今はそれどころじゃないわね」
この能力のせいで元いた世界の人間から恐れられていた咲夜からすれば、ヒカルやショウの言葉はとても嬉しいものだった。自然と笑みが零れたが、二人がダメージを受けたのを見てすぐにその様子を確認する。
「ヒカル!」
霊夢も駆け寄ってヒカルを支えるが、そこに飛び出してきた黒い影がヒカルの腹部を蹴りつけた。
『ハッ!』
「っ、かはっ!?」
「きゃあ!?」
霊夢共々ヒカルは吹き飛ばされ、民家に衝突する。二人はそのまま気を失ったのか、動かなくなった。
「ヒカル!」
「ショウ、危ない!」
ヒカルの許に駆け寄ろうとしたショウにも黒い影が飛び込んできた。それを見た咲夜が時間を止めて相手の位置を確認してナイフを投擲するが、ナイフはあっさりと弾かれてしまう。
「くっ!」
ショウは何とか咲夜が作った隙のおかげで相手の攻撃を捌けたが、黒い影の正体を見て目つきを変える。
「……ダークケイオス!」
『フハハハハ。お前達に光を纏わせはしない。ここで息絶えるがいい!』
そのまま格闘戦に持ち込んだダークケイオス。ショウも応戦するが、生身の体では渡り合うのがやっとだ。段々とジリ貧になっていき、ショウは攻撃を防御するのがやっとだった。
「くっ!」
ビクトリーランサーは咲夜が持っている。それを何とか受け取る事が出来れば対抗できるのだが。
「……!」
咲夜は何かを思いついたのか、ショウにアイコンタクトを送る。そしてそのままナイフを一本ショウへ迫るダークケイオスに投げつけた。
『小賢しい』
当然、ダークケイオスは体を反らして躱すが、その隙を突いて咲夜はビクトリーランサーをショウの頭上に向けて投げた。
『何!?』
ダークケイオスは体重を後ろに掛けたままだった。そこをショウが蹴りつける。
『がはっ!』
呻くダークケイオス。そのままショウはジャンプして咲夜が投げたビクトリーランサーを受け取ってエレキングのスパークドールズを取り出し、ビクトリーランサーにリードさせた。
【ウルトライブ! ゴー、エレキング!】
エレキングの形をした光弾はダークケイオスに直撃し、爆炎を上げる。
『グオオオオ!?』
直撃を受けたダークケイオスは最初こそ吹き飛んだものの、そこまで有効なダメージは与えられなかったのか、立ち上がってくる。そして再びショウに光弾を放とうとするが。
「霊符『夢想封印』!」
意識を回復させた霊夢の弾幕がダークケイオスを襲った。ケイオスはうっとうしそうにそれを弾く中、ショウはビクトリーランサーをランサーモードに変形させる。そしてビクトリーのスパークドールズを取り出し、そのまま変身した。
【ウルトライブ! ウルトラマンビクトリー!】
「咲夜! ヒカルの所に!」
霊夢がケイオスに攻撃する中、咲夜にそう呼びかけた。咲夜は一瞬でヒカルの許に移動し、その体を揺する。
「ヒカル、ヒカル!」
「う、咲夜……」
「大丈夫?」
「あ、ああ」
まだ朦朧としているようだが、ヒカルは意識を取り戻した。咲夜はギンガスパークをヒカルに手渡す。その直後。
「きゃあ!?」
『邪魔だ、博麗の巫女!』
霊夢の攻撃を受けきったダークケイオスが霊夢を闇の光弾で吹き飛ばした。咲夜はそれを見てナイフを抜き取る。
「こいつは私達で何とかするわ。だから貴方はショウと一緒にあの怪獣を!」
「……任せたぜ霊夢、咲夜!」
「いっつつ……あんた達ばっかに頼っていられないのよこっちは! 博麗の巫女を舐めてもらっちゃ困るわ!」
その言葉にヒカルは頷き、ギンガのスパークドールズを取り出してギンガスパークを掲げた。
【ウルトラーイブ! ウルトラマンギンガ!】
「ギンガーーーー!」
ヒカルもギンガへと変身し、ビクトリーの後を追う。残った霊夢と咲夜はじっとダークケイオスと対峙するのだった。
********
『コオオオオン!』
マガキュウビが人里を蹂躙していく中、慧音はガイと共に寺子屋にいた子供達やその他の人の避難誘導をしていた。しかしその度に視界へ映り込む、里が壊れていく様。それを見て慧音は思わず唇を噛んだ。
「皆、こっちだ! 里からなるべく離れるんだ!」
それでもまずは人命が優先だ。慧音は人々を誘導していく。そんな中、ガイが慧音に叫んだ。
「慧音、お前も逃げろ! あいつが近づいている!」
マガキュウビは確実に慧音達の許に迫っていた。しかし慧音はそれに首を振った。
「馬鹿言うな! 皆の避難が終わるまで、ここを離れる気は無いぞ!」
「いいから早くしろ!」
聞いたことの無いガイの怒声に、慧音は思わず肩をびくりと震わせる。ガイの目は真剣そのものだった。
「もう、誰も失いたくないんだ……」
「ガイ?」
その言葉に慧音は疑問を抱く。しかしそこにマガキュウビの黄色い閃光が襲った。
「まずい!?」
寺子屋の子供達は全員逃げる事ができたが、まだ逃げている人が大勢いるのでこのままでは直撃は避けられない。ガイが何かを決意した様に懐に手を掛けたその時。
『ビクトリウムシュート!』
空中から降ってきたV字型の光線が黄色い閃光を相殺した。直後、ビクトリーが慧音達を守る様に降り立った。
「あっ、ウルトラマンビクトリーだ!」
「び、ビクトリー……」
あるものは希望を抱き、あるものは複雑な表情を浮かべた。慧音は彼が助けてくれたことに安堵したが、ガイの様子がおかしいことに気づいた。
「ガイ? どうし」
「ビクトリーさんじゃないですか! ここにいたんですね!」
「が、ガイ? ……あいつを、知っているのか?」
「…………」
ガイは気まずそうに慧音を見る。そして観念した様に頷いた。
「ま、まあ何故知っているのか今は問わない。ビクトリーが来た以上、とにかく逃げるぞ」
その直後、もう一人の巨人が降り立った。強い輝きを放つウルトラマンが。
「この前出てきたウルトラマンだ!」
「あいつもビクトリーの仲間なんだろ?」
人々がざわつく中、ガイがまたも目を輝かせた。
「ギンガさん! ギンガさんもいたんですね!」
「あいつはギンガというのか……そうか」
慧音が頷き、身を乗り出しているガイを引っ張り、そのまま寺子屋前から離れる。
『ショウラっ』
まずはギンガが機先を制してマガキュウビに殴りかかる。しかしマガキュウビは気にすることなく九本の尾を振り回してギンガに攻撃する。
『グアッ!?』
『ツェアッ』
今度はビクトリーが光を纏った蹴りを連発していくが、これにもマガキュウビは動じない。それどころか足に噛みついてみせた。
『ウアアア!?』
ビクトリーはもがき離そうとするが、マガキュウビは離さない。そこにギンガがビクトリーの頭上を越えて飛び蹴りを放った。
『コオン!?』
ようやく解放されたビクトリーは足を押さえながらも、右腕を岩石の様な大きな腕に変化させた。
『オウラ!』
その腕で殴りつけると、マガキュウビがよろめく。これは効果ありと判断したビクトリーが畳みかけようとする。しかし、マガキュウビの口が開き、そこから黄色い閃光が放たれビクトリーに直撃した。
『ウアアアア!?』
吹き飛ばされるビクトリー。それを見たギンガは光の槍を取り出し、マガキュウビに向かっていく。
『オオオオ!』
槍でマガキュウビを突いていくが、マガキュウビは九本の尾を伸縮させてその攻撃を受けきり、逆に尻尾で槍を弾き飛ばしつつ、ギンガを叩きつけた。
『ウアッ!?』
よろめくギンガ。そこに黄色い閃光が放たれギンガを呑み込んでいった。
『ウワアアアア!?』
今度はギンガも吹き飛ばされる。そして九本の尾が二人のウルトラマンに向けられたかと思うと、口からの閃光に加えて尾の先端からも閃光が放たれてギンガとビクトリーを襲った。
『グアアアア!?』
『ウオアアア!?』
凄まじいまでの火力に呑まれていく二人のウルトラマン。その攻撃がようやく収まった頃には二人は膝をついて、胸のランプを赤く点滅させていた。
「あ、あいつとんでもなく強いぞ……」
慧音が顔を青ざめさせる。するとガイが何かを決意した様に走り始めた。
「お、おい何処へ行くんだガイ!」
「慧音は先に逃げろ! 俺は、戦いに行く!」
「な、何を言っているんだ馬鹿者! ガイ!」
慧音はガイを追いかける。しかし、彼の走る速度は人間のそれでは無かった。慧音はどんどん離されていく。
「ど、どういうことだ?」
それでもガイが路地裏に入ったのは見えたので、慧音は自らも速度を上げてそれを追う。そして路地裏に入ろうとしたが、急にガイがいる場所が強い光に包まれた。
「な、なんだ!?」
慧音は顔を覆いながら巨大化していく光を見上げる。そこにいたのは。
『俺の名はオーブ。闇を照らして、悪を討つ!』
赤と紫、黒を基調としたカラーリングの巨人の姿だった。額のランプは紫、胸の丸型のランプは青く光り、肩から背中にはプロテクターが存在する。その姿を見上げながら、慧音は呟いた。
「……ガイ、なのか……あいつも、ウルトラマンだったのか?」
しかし自らをオーブと名乗ったウルトラマンは慧音に振り返る事もなく、そのままマガキュウビに向かっていった。
********
『オオリャッ!』
オーブは倒れているギンガとビクトリーに迫るマガキュウビに向かってチョップを叩き込む。その姿にギンガとビクトリーは視線を奪われる。
『あ、あんたは?』
ギンガの中にいるヒカルが尋ねると、オーブは静かに答えた。
『俺の名はオーブ。ウルトラマンオーブ。ギンガさん、ビクトリーさん、一緒にこいつを倒しましょう!』
『!? 何故、俺達の名を……くっ!?』
ショウが尋ねるが、マガキュウビが再度迫るのを見て、何とか立ち上がる。
『グウッ!?』
マガキュウビの進撃をオーブが食い止めるが、マガキュウビの勢いを止めることが出来ずに引きずられていく。オーブは体の赤い部分を発光させると、強烈なパンチを叩き込むことでマガキュウビの動きを止めた。
『コオオオオン!』
怒ったように見えるマガキュウビが尻尾でオーブを攻撃するも、オーブは体の紫色の部分を発光させ、スピーディーな動きでそれを回避する。
【ウルトランス! シェパードンセイバー!】
『オリャ!』
オーブがマガキュウビを食い止めている隙にビクトリーは絆の聖剣を取り出して、マガキュウビに斬りかかる。そしてギンガも負けじとギンガスパークランスをもう一度手に取り、槍をその身体に突き立てた。
『コオオオン!?』
二人の反撃を受けたマガキュウビは僅かによろめく。その隙にオーブは空中へ飛び宙返りを見せる。
『二人が武器を使うなら、俺も行くぜ!』
ガイは再び変身アイテム、オーブリングと二枚のカードを手に取った。
『ジャックさん!』
【ウルトラマンジャック!】
『ジェア!』
『ゼロさん!』
【ウルトラマンゼロ!】
『シェエエア!』
『キレのいい奴、頼みます!』
【フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ、ハリケーンスラッシュ!】
着地したオーブは、その姿を大きく変えていた。メインカラーは赤、黒、そして青に変わっており、頭部にはギンガとビクトリーの師匠、ウルトラマンゼロのゼロスラッガーに似た刃が装着されていた。胸や肩もゼロのプロテクターと似たものがあった。
『光を超えて、闇を斬る!』
マガキュウビを指差しながら口上を述べたオーブに、ヒカルとショウは目を見開く。
『姿が変わった!?』
『何処となく、ゼロに似ている……』
オーブは頭部から光の刃を二つ取り出し、そこから武器を作り上げる。
『オーブスラッガーランス!』
オーブが手に取ったのは、三叉の槍だった。そしてそれをマガキュウビに向けて突き刺した。
『コオオオオン!?』
呻くマガキュウビ。オーブはそのまま柄にあるレバーを二回引いた。
『ビッグバンスラスト!』
高密度のエネルギーがマガキュウビの内部に送り込まれ、そのまま爆発を起こす
『コオオオン!?』
マガキュウビは大きくよろめいたが、倒すまでには至らない。それならばとギンガ、ビクトリーが飛び上がり、オーブもレバーを今度は三回引いた。しかし。
『コオオオオン!』
マガキュウビが大きく鳴いたかと思うと、その傍にスキマが出現してマガキュウビを呑み込んだ。
『!?』
三人の攻撃は空振りに終わり、呆然とマガキュウビが消えたその場所を見つめる。特にショウはある種の確信を持った顔になっていた。
(やはり、紫が関わっているのか?)
三人のウルトラマンは辺りを見渡す。そこにはマガキュウビによって破壊し尽くされた人里の無残な姿があった。
(クソ……)
ヒカルは悔しそうに歯噛みする。そして三人のウルトラマンは変身を解除し、人間の姿に戻る。
「ギンガさん、ビクトリーさん、実際にお会いできて光栄です。この姿ではクレナイ・ガイと呼んでください」
「ああ。オレはヒカル。礼堂ヒカルだ」
ガイが差し出した手をヒカルが取り、握手する。しかしショウはそれを無視して走り出していた。
「お、おい、ショウ!」
「咲夜と霊夢を放っておく気か?」
その言葉に、ヒカルも弾かれたように走り出す。
「悪い、ガイ! また後で会おうぜ!」
そう言ってその場から去っていくヒカル。二人が去った後、ガイは辺りを見渡す。そして先程まで浮かれていた自分を戒めるかのように拳を強く握りしめた。
********
ヒカルとショウは先程までいた場所に戻ってきた。しかし、そこにダークケイオスの姿は無かった。そこにあったのは地面に刺さった無数のナイフと散らばった札。そして。
「霊夢!」
「咲夜!」
ボロボロになって倒れ伏した、霊夢と咲夜の姿だった。
壊滅した人里の姿に、霊夢は己の無力さを呪う。
そしてマガキュウビは紫によって強化を施され、ダークケイオスと共に魔法の森蹂躙を目論む。
ヒカル、ショウ、そしてガイはマガキュウビとダークケイオスを止めるために再び変身する――。
次回、偽ノ魔王獣異変の章(後編)