ウルトラマンギンガX~幻想絆伝~   作:yun1

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第9話 混沌魔人異変の章

 ウルトラマンオーブとの共闘の翌日、ショウは博麗神社に出向いていた。

 魂魄妖夢から剣の稽古をつけてほしいと依頼されたためだ。彼女は主である西行寺幽々子を闇の巨人に囚われている。主を助けるために出来る事をしたいのだろう。

 ショウと妖夢は木刀を握りしめ、互いの動きと呼吸を観察する。緊迫した空気が二人の間に張りつめる中、それを破ったのは妖夢の方だった。

「はあああああ!」

 大きく気勢を上げ、木刀を振り上げながら飛び掛かってくる妖夢。対してショウは木刀を構えて妖夢の一撃を受け止め弾き飛ばす。

「くっ!」

 木刀が弾かれたその隙を突いて、ショウは横薙ぎに妖夢の腹部へ木刀を振りぬいた。

「ふっ!」

「かはっ……!? げほげほっ!」

 妖夢は木刀を手放しながら勢いよく転がると、腹部を押さえて呻く。そんな妖夢に対してショウは木刀を突き付けながら、厳しい表情で檄を飛ばす。

「立て妖夢! 休んでいる暇はないぞ、お前にも助けたい奴がいるんだろう!」

「……そう、だ。幽々子様……!」

 妖夢はよろめきながらも立ち上がり、再び木刀を手に取ってショウと向き合う。そして足を踏み出してショウに迫った。

「やあああ!」

「はっ!」

「くあっ!? ……く、まだまだ!」

 妖夢は何度もショウに挑みかかっていくが、力の差は明らかであった。何度妖夢が攻撃してもショウはそれを的確に捌き、速く正確な太刀筋を妖夢に叩き込む。まさにビクトリーナイトの戦い方そのものであった。

「あぐっ!?」

「……どうした、もう終わりか?」

「まだ……う……」

 そんな二人の様子を霊夢と魔理沙が少し離れた場所で見ているのを、ショウは見逃さなかった。だが二人の傍にはヒカルがいる。ショウは意識を妖夢に向けなおすが、妖夢は力尽きた様に倒れ込んでいた。ショウは妖夢を抱きかかえ三人の許へ向かう。

「休憩か?」

「コイツがこの様じゃそれしかないだろう」

 開口一番間抜けな事を聞いてくるヒカルにショウはため息交じりに返答し、妖夢を木陰に降ろした。

「にしても、結構なスパルタね」

 霊夢が呆れ気味にそう言うと、ショウはそれを鼻で笑った。

「当たり前だ。これから戦いに赴こうとしている奴に生ぬるい特訓をするバカがどこにいる」

「コイツ自身、ストイックだから余計にな。で、二人はどうだ?」

 ヒカルが霊夢と魔理沙の方に向くと、二人は顔を見合わせながら口を開いた。

「あれから二人で話したけど正直、巨大怪獣はあんた達に任せるしかない。でも幽々子なら……何とかなるかもしれない」

「三人で、幽々子を助けるんだな」

「そういう事だぜ。巨大化されたらどうしようもないけど、その前なら、ってなってな」

 しかし、それは幽々子の姿のままかケイオスが巨大化をしない前提での話になる。ケイオスが気まぐれを起こすか、何かしらの方法で巨大化を阻止しなければ意味がない。

「ま、その辺はオレに考えがあるから任せてくれないか?」

「? いいけど」

 ニヤリと笑っているヒカルを不思議な目で見ながら、霊夢が了承する。すると急にヒカルの目が真剣なものになった。

「具合はどうだ、藍……だっけか?」

「はい、もう大丈夫です。助けていただきありがとうございました」

 マガキュウビとなっていた一人、八雲藍がやって来ていた。彼女については昨日、レミリア達から聞いている。紫の使い魔、式である事を。彼女なら紫の行動を知っているはずだと思い、妖夢の特訓のついでに藍が目覚めるのを待っていた。

「一つ聞きたい事がある。お前をあんな姿にしたのは、誰だ?」

 ショウの問いかけに、藍はぐっと体に力を込める。そして、絞り出すようにしてその名を告げる。

「……紫様、です」

「紫が……!?」

「ど、どうしてなんだぜ!? だってあいつはヒカルとショウに!」

「…………」

 霊夢と魔理沙は狼狽していたが、薄々勘づいていたショウはやはりか、としか思わなかった。

「紫に何があった?」

「……あれは、二週間程前でしょうか。博麗大結界を突き破ってきた奴がいたんです」

「へっ? け、結界にそんな形跡無かったし、侵入者なんていなかったわよ?」

 霊夢が呆けた表情を見せているが、藍はゆっくりと首を横に振った。

「霊夢さんは気づいていなかったでしょうけど、いたんです。迷い込んだのではなく、自らの意思で結界を破って幻想郷に来たものが。紫様はそれを察知して私を連れて追い出そうとしたのですが……」

「それ以上はいけないわよ? 藍?」

 突然聞こえてきた声に、その場にいた皆が、倒れていた妖夢も飛び起きた。藍の背後に紫がゆらりゆらりと体を揺らしながら立っていた。

 

 

 

********

 

 

 

 

 十数分前、八雲紫は西行寺幽々子を連れて地底にやって来ていた。そこは地底にある街である旧都とは離れた場所で、何も無い場所である。そこに一体の怪獣が眠っていた。岩の様にゴツゴツした体つきが特徴的な怪獣、ゴルザだった。

 幻想郷に呼び寄せた最初の怪獣で、ウルトラマンビクトリーとの戦闘でダメージを受け撤退していたのだが、傷の回復と更なる強化のためにここに眠らせておいたのだ。

「……起きなさい、出番よ」

 紫が手をかざして紫色のエネルギーを流し込むと、閉じていたゴルザの目がゆっくりと開く。そしてもどかしそうにその巨体を起こす。その体躯には以前は無かった赤い筋が幾つも入っており、熱を放出していた。そして筋から何かが流れている様はまるでマグマが駆け巡っているかの様だった。

「ふふ、思ったよりいい出来ね。少しばかり地霊殿の地獄鴉の力を奪っておいた甲斐があったわ」

「いつの間にそんな事を?」

「ふふ、いつでしょうね。さ、幽々子。これと一緒にギンガとビクトリーを抹殺してくるのよ」

「……分かったわ」

 渋々といった感じに応じると、幽々子はゴルザと共に地上へ昇っていく。それを見ながら紫は口元に笑みを浮かべる。

「さ、私も向かわないといけないかしら……」

 そう呟いた後、紫の姿が透けていくように消えていった。

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 そして時は戻り博麗神社。紫は藍に黒い棒状のアイテムを突き付けていた。それは幽々子が持っているものと同じである。それを見たショウは瞬時に察した。

「お前、まさか」

「ふふ、私の事より今はこれをどうにかする方が先じゃない?」

 紫がそう言うと、地面がせり上がってくるような轟音が辺りに響き渡る。そして地表を突き破る様にして、赤い筋の入ったゴルザが現れた。そして幽々子も紫の隣に降り立った。

「ゆ、幽々子様!」

「妖夢……ごめんなさい」

 幽々子は悲し気な目で妖夢を見つめる。紫は視線で幽々子に何かを語り掛ける。幽々子はそれに頷くと、黒いアイテムを突き出した。すると幽々子の体が紫の光に包まれていき、ダークケイオスへ等身大変身をする。

『我が名はケイオス。ダークケイオス。混沌の魔人……さあ、私と戦えウルトラマン!』

 それを見たヒカルはケイオスの前に出てギンガスパークを懐から取り出した。

「ショウ、こいつはオレに任せろ。お前はあの怪獣を神社から引き離してくれ」

「任せたぞ」

「ああ、今度はみんなもいるからな!」

「……え?」

「は?」

「ええっ?」

 霊夢、魔理沙、妖夢の三人がポカンとした顔を見せる。ヒカルは笑いながら三人に語り掛ける。

「今こそ、みんなに出来る事をやるべき時だろ。オレとショウだけじゃない、みんなで幽々子を助けるんだよ」

 ヒカルのその言葉に三人は顔を見合わせ、頷いた。

「ふふ、面白い見世物が見れそうね。私は高みの見物をさせてもらうわ」

 そう言うと紫は藍を捕まえたまま、空中に浮遊する。藍は逃れようと抵抗するが、紫の力が強いのか身動きが取れない。

「く、紫様、何を……!」

「あら、貴女は私の式でしょ? 式は主の傍に常にいるもの、違う?」

「く……!」

 藍を人質にでもするつもりなのだろうか。それでも、今はやるべき事をやるしかない。ショウもビクトリーランサーを取り出した。

【ウルトライブ! ウルトラマンビクトリー!】

 ビクトリーへ変身すると、赤いゴルザに向かって飛び掛かり、転がりながら神社との距離を離す。

【ウルトラーイブ! ウルトラマンギンガ!】

「ギンガーーーーー!」

 そしてヒカルも、ギンガに等身大で変身する。二つの戦いの幕が、今開いたのだ。

『ツェリャ!』

 ビクトリーはゴルザに連続で蹴りを叩き込んでいくが、ゴルザは怯む様子が無い。前回の戦いと違って、強化されているのは明白だった。ならばとビクトリウムスラッシュを纏った蹴りを放つが、ゴルザはそれを受け止めるどころか、ビクトリウムスラッシュを体内に吸収してしまった。

『ッ!?』

 驚くビクトリーを尻目に、ゴルザは掴んだ足を思い切り放り投げた。それによってビクトリーは空中に投げ出され、地面に叩きつけられる。

『ウアッ!?』

 立ち上がろうとするが、そこをゴルザが容赦なく何度も踏みつけてくる。

『グルアアアア!』

『グウッ! ウアッ!』

 やがてゴルザが脚に力を込めてビクトリーを踏み潰そうとする。ギリギリと腹部が軋み、悲鳴をあげていく。

『グアアアア!? ……ウウッ!』

 ショウは苦しみつつも、何とかEXレッドキングのスパークドールズをリードする。

【ウルトランス! EXレッドキングナックル!】

 ビクトリーの右腕が岩石の如く巨大なものに変化し、力任せに振り回してゴルザを殴り飛ばす。

『グルアアア!?』

 ゴルザはよろめいて、脚をビクトリーから離す。その隙にビクトリーはウルトランスを解いて前転して立ち上がる。そして今度はエレキングのスパークドールズをリードする。

【ウルトランス! エレキングテイル!】

『オオオ! ドオリャ!』

 何度も何度も雷を纏った尻尾をゴルザに打ち付けていくが、ゴルザは怯まない。逆に振り下ろされた尻尾を掴み、ビクトリーを放り投げた。

『ウア!?』

『ゴルアアア!』

 そしてズンズンと激しく地面を揺らしながらビクトリーに迫る。ビクトリーは蹴りで応戦しようとするが、それをガードされ両腕の爪で体を引き裂かれてしまう。

『ウアアア!?』

 大きくよろめいたビクトリーの隙を逃さず、ゴルザは体当たりしてビクトリーを吹き飛ばした。

『グアアア! ウウッ……! グッ……!』

『ゴアアアア!』

 立ち上がろうとしたビクトリーだが、そこにゴルザの頭部から放たれた紫色の光線がビクトリーを直撃し、更に吹き飛ばした。

『ウワアアア!?』

 地面に叩きつけられるビクトリー。立ち上がろうとするも、体に力が入らない。カラータイマーも点滅を始めていた。

『グウッ……! アアッ……!』

 ゴルザが再び光線を放とうとするが、ビクトリーはまだ立ち上がれない。このままでは危険だと思ったその時だった。

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

「禁忌『レーヴァテイン』!」

 上空から飛来した赤い槍と剣がゴルザに直撃した。有効なダメージこそ与えられなかったが、ゴルザは気が逸れたのか光線を解いて空を見上げた。そこにいたのは。

「ショウ!」

「ショウお兄ちゃん!」

 レミリアとフランだった。その傍らには咲夜と美鈴が日傘を差して二人が日光に当たらない様にしている。ビクトリーは思わずグッと顔を突き出して確認してしまった。

『お前達、何でここに来た!?』

「あんたがいつの間にかいなくなってたから探してたのよ。それより、さっさと立ち上がりなさい! 紅魔館の人間として負ける事は許さないわよ!」

「いっけー、ショウお兄ちゃん!」

「ショウ!」

「ショウさん!」

 咲夜と美鈴もビクトリーをじっと見つめる。ビクトリーはぐっと体に力を込めて立ち上がる。

『……俺は紅魔館の人間になった覚えはないぞ。だが、負けが許されないのは確かだ!』

 その言葉と共にショウはウルトラマンヒカリの青いスパークドールズをリードしてナイトティンバーを呼び出す。空中に浮遊する魔笛をビクトリーは手に取り、澄んだ旋律を奏でる。

 そしてカバーをスライドさせて剣部分を露わにして突き上げると、ビクトリウムのエネルギーがビクトリーのカラータイマーに集まっていき、ビクトリーナイトへとその姿を変化させた。

【放て、聖なる力!】

 ビクトリーナイトはナイトティンバーを構えてゴルザに向き直る。レミリア達はその姿に目を奪われていた。

『行くぞ! ドオリャ!』

 ビクトリーナイトは疾風の如く連続攻撃をゴルザに浴びせていく。青い剣閃がゴルザの体躯を駆け巡り、ダメージとなって蓄積していく。

『ゴアアアア!?』

『フッ、ハッ! ツェリャ!』

 先程までとは完全に形勢が逆転し、ゴルザはよろめいていく。そして頭部にエネルギーを集め、再び光線を放とうとするが。

「させないわよ、『スピア・ザ・グングニル』!」

「禁忌『フォーオブアカインド』!」

 レミリアは再び神槍を投擲し、ゴルザに直撃させる。そしてフランは四人に分身し、一斉にレーヴァテインを取り出した。

「『レーヴァテイン』! いっけー!」

 四つのレーヴァテインがゴルザに直撃し、ゴルザは大きくよろめいた。身体からも煙が立ち昇り、皮膚が所々焼け焦げている。その隙にビクトリーナイトはナイトティンバーのポンプアクションを二回行う。

【ツー! ナイトビクトリウムブレイク!】

『これで決める! ナイトビクトリウムブレイク!』

 逆手で持ったナイトティンバーをゴルザの腹部に斬りつける。柄に付いているボタンを押し込むと、刃の部分からエネルギーが流れ込んでいく。そして思い切り振りぬくと、ゴルザは呻き声を上げながら倒れ込み、爆発四散した。

「やりましたよ妹様!」

「やったー! ショウお兄ちゃん!」

「全く、主の手を煩わせるなんて困った従者ね」

「お嬢様……完全にショウはご自分のものなんですね」

 ビクトリーナイトは喜ぶ四人を見下ろしていたが、やがて博麗神社の方へ視線を向け駆けだすのだった。

 

 

 

 

********

 

 

 

 

「『マスタースパーク』!」

「『夢想封印』!」

 魔理沙と霊夢の攻撃がケイオスを襲うが、ケイオスは煩わしそうにそれを片手で弾いてみせた。それと同時に爆発が起こり、辺りは煙に包まれる。

『くどい、貴様らの攻撃は通用しないと教えたはずだ』

「そんなの、分かってるぜ!」

「狙いは、こっちよ!」

『ショウラッ!』

 煙の中でケイオスの背後からギンガがチョップを打ち込む。それによってケイオスは一瞬怯む。

『グッ……!?』

 続けざまにギンガは拳をケイオスの顔面に入れる。それによってケイオスがよろめいた所を右足で蹴り上げる。

『ウリャ!』

『グアアッ!?』

 その場に蹲るケイオス。しかし、その双眸が怪しく光る。

『図に乗るなァ! 『混沌封印』!』

 ケイオスが手をかざすと闇の光弾が一斉に放たれてギンガや霊夢達を襲う。

『グワアアア!?』

「きゃああああ!?」

「うあああああ!?」

 吹っ飛ばされる三人。しかし、倒れながら霊夢が再び叫んだ。

「今よ妖夢!」

「はあああ!」

 木陰から飛び出してきた妖夢がケイオスの背後を取って斬りかかる。

『無駄なあがきを!』

 ケイオスは妖夢の手首を自身の腕で弾き飛ばす。しかし。

「この刀に斬れぬものなど……あんまり無い!」

 ショウがやっていたのと同じ要領で、妖夢はがら空きになったケイオスの胴体に斬撃を見舞った。

「グッ!?」

 ケイオスが妖夢に掴みかかろうとするが、それより早くギンガが飛び掛かってケイオスを蹴り飛ばした。

『グハアッ!?』

『ナイスアシスト妖夢!』

「ありがとうございます。それより、幽々子様を……!」

『分かってる! 幽々子、聞こえるか! 闇に負けちゃダメだ! お前を待っている人の為にも、負けるな!』

『……ふ、戯言を。そんな事を言っても奴にはとどか……!? グッ!? ば、バカな……!?』

 突然、ケイオスが苦しみ始めた。のたうち回る様に動き回るのを見て、ヒカルは確信した。

『幽々子の意識がケイオスに抵抗している……取り戻すなら今だ!』

 ギンガはクリスタル部分を緑色に発光させ、優しい光をケイオスに浴びせる。

『ギンガコンフォート』

『や、やめろおおおおお!』

 ケイオスが苦しむ中、光に包まれた何かがケイオスと分離して妖夢の目の前に降りてきた。光の中には、幽々子がいた。

「ゆ、幽々子様!」

「……妖夢、いい一撃だったわ。それでこそ、私の自慢の庭師よ」

「……はいっ!」

 妖夢の腕の中で、幽々子が笑った。それにつられて妖夢も涙目になりつつ笑って見せた。

『グッ……おのれぇ……!』

 ケイオスはよろめきつつ、腕を交差させると巨大化していく。ギンガ達を見下ろし、今にも踏み潰そうとしていた。

『みんな、サンキューな! こっからはオレに任せろ!』

 それだけ言い、ギンガも巨大化していく。しかし、巨大化し終わった直後にケイオスの蹴りがギンガを襲った。

『グワッ!?』

 吹き飛ばされるギンガ。倒れ込んだところにケイオスが迫り、ギンガの首を掴んで締め上げていく。

『がああ……!』

『フハハハ……! 幽々子を切り離せば倒せると思ったか? 甘い、甘すぎるぞギンガ! ハッ!』

 そして零距離で闇の光弾をギンガの腹部に打ち込んだ。

『グアアアア!?』

 しかしケイオスの手は離れない。ケイオスは何度も光弾をギンガの腹部に放っていく。その度にギンガの体が大きく跳ね、苦しむ声が響き渡る。やがてギンガのカラータイマーが明滅を始めた。

『グッ、クッ……! このままじゃ……!』

 中にいるヒカルにも限界の色が見えてきた。そこに。

「いい加減にしやがれ! 魔砲『ファイナルスパーク』!」

 魔理沙の渾身の一撃がケイオスに直撃した。

『グオッ!?』

 これによってケイオスはよろめき、ギンガを手放す。ギンガは着地して呼吸を整え、立ち上がる。

『ハァ、ハァ……助かったぜ魔理沙!』

 魔理沙がグッとサムズアップポーズを見せる。しかしその直後、力尽きる様に倒れ込んでしまう。その魔理沙の横を霊夢が飛んで横切った。

「魔理沙のくせにいい所取りなんて生意気なのよ! 『夢想天生』!」

 霊夢の体が光に包まれ、彼女の周囲に陰陽玉が八つ展開されるとそこから無数の弾幕が放たれる。それは凄まじい速度でケイオスに直撃していき、よろけさせていく。

『鬱陶しい……! 『カオススパーク』!』

 ケイオスが黒い閃光を放ち、それが霊夢に直撃した。

『!? 霊夢!』

 ギンガは霊夢に向けて手を伸ばすが、霊夢は傷一つ付いていない。空を飛び回りながら弾幕を放ち続け、ケイオスの足を止めている。

「早く! 今のうちに止めを! もう時間が無い!」

 発動時間に制限があるのだろう。霊夢の言葉に頷いたギンガはクリスタルを青色に発光させると両腕を前で交差させてから回すように左右に広げ、L字に組んで青色の光線を放つ。

『ギンガクロスシュート!』

 光線はケイオスに直撃し、抵抗も無く吞み込んでいった。

『バカなああああああ!?』

 断末魔を響かせながら、ケイオスは爆散していった。技の発動を終え、力が抜けた様に落下していく霊夢をギンガは掌に乗せて助ける。

「……やったわね」

 まともに動けない様子ではあったが、霊夢が笑うのに合わせてギンガも頷く。魔理沙も笑っているし、妖夢と幽々子も安堵の表情を浮かべている。そこにビクトリーが戻ってきた。その後ろには紅魔館メンバーが追いかける様に付いてきていた。

『どうやら、俺が加勢するまでも無かったみたいだな』

『ああ、みんなのおかげだぜ』

 ビクトリーはビクトリーナイトから元に戻り、ギンガもビクトリーと共に幻想郷の住人達を見下ろし、頷いた。そこに。

「ふふふ……やっぱり私の見込みは間違いではなかったようね」

 ゆっくりとした動きで紫が降りてくるのが見えた。藍の話が確かならば、紫こそがこの異変の元凶。ギンガとビクトリー、そして住人達は身構えた。

『もうよせ紫! お前は幻想郷の賢者なんだろ! それなのに幻想郷を壊す真似をしてどうすんだよ!』

『ケイオスも倒れた。お前に打つ手は無いはずだ』

 ヒカルとショウの言葉に、紫は嘲る様な笑い声をあげる。

「……あっはははは! おめでたい人達ね。じゃあ聞くわ。幽々子にケイオスの力をあげたのは私よ? それがどういう事か……分かっているのかしら?」

 そう言いながら、紫は手にしていた黒い棒のアイテムを掲げた。それを見た全員に嫌な予感がよぎる。霊夢がそれを言葉として漏らす。

「まさか……」

「そのまさかよ」

 そしてそれを肯定する幽々子の声が、残酷なまでに耳に届いた。そして紫は笑みを浮かべながら手にしているアイテムを掲げた。すると次の瞬間、紫の体が黒と紫が混じった邪悪な輝きに包まれた――。




遂に明らかになった紫に潜む闇の存在。ギンガとビクトリーは少ないエネルギーの中、挑んでいくが……。
次回、絶望魔人異変の章
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