わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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なかよくなるしゅんかんはきがつけぬ

 吾輩はこがさに抱かれて地底に落ちていくのである。

 最初はもみじが吾輩をのせてくれるはずであったが、今はこがさが飛んでくれているのである。吾輩は自分では飛べぬ。これがよくない。今度練習をしてみようと思うのであるが……そらをとぶ練習とはどうすればいいのであろう? ううむ。

 

「ながいなぁ」

 

 たしかにどこまで行っても暗闇が終わらぬ。吾輩はうむうむとうなづいてみたのだ。

 

「にゃあにゃあって、まるで相槌を打ってくれているみたい」

 

 くすくすとこがさが笑っているのであるが吾輩は相槌を打っているのである。ちゃんとわかってほしいのである。

 吾輩は真っ暗なやみのそこを見たのだ。この下はこころが読めるという妖怪がいるらしいのである。吾輩はこみゅにけーしょんが取れるかもしれぬと思うと、むねが踊るのである。ところでむねが踊るとはどうやって踊るのであろうか。

 吾輩、踊ったことはないのであるが、盆踊りのまねを今度してみるのもいいかもしれぬ。

 それにしてもいい風である。吾輩のけなみがさらさらゆれるのである。

 そんなことをおもっているとまわりがぱぁと明るくなったのだ。まるで花火のようである。

きらきらの光の塊がそこらじゅうを飛んでいく。吾輩はそれをつかもうと前足を伸ばしても届かぬ。地底に向かってきらきら落ちていくのだ。

 

「おお、さすがに天狗はやるね」

 

 くろだにが吾輩とこがさの目の前を通ったのである。その時吾輩に対してくろだにが片目をぱちんと閉じて、サインを送ったことを吾輩はちゃんと見ていたのである。

 次の瞬間吾輩とこがさの真上から光が落ちてきたのである。吾輩、にゃあと鳴くことしかできぬ。こがさよたのむだ。

 

「わぁあああ」

 

 おお。おお。

 こがさがくるくると空中を飛んでいくのである。吾輩目が回る。

 吾輩たちの周りを白い光のたまがすごいはやさで落ちていくのである。あれがだんまくというやつであろう。このまえお寺に行ったときにふとといちりんが喧嘩しているのを見たのである。

 

「ながれ弾幕に注意ってね」

 

 くろだにがまた吾輩たちの前にやってきてけらけら笑っているのだ。それから光を発するとぶわっと泡のように消えたのである! これは手品であるな。吾輩は初めて見たのだ。

 

「まて! 土蜘蛛……にげたか」

 

 いれかわりにもみじがやってきたのだ。盾と剣を抜いているのである。もみじよ、地底に落ちていくときくらいは喧嘩を辞めるのである。こがさからもいってやるのだ。

 

「あのー。弾幕ごっこは遠くでやってくれませんか……? スカートが焦げた……」

 

 うむ、確かにこがさのスカートの端がこげこげである。もみじよこれはいかぬ。さっきの光の玉を撃ったのはたぶんもみじである。あんずるではない、あやまってもじょーじょーしゃくりょうのよちはあるのだ。べんごしを呼んでもかまわぬ。みんなで仲良くするのである。

 

「……ふん」

 

 鼻を鳴らしてもみじが盾と剣を収めたのである! 

 もみじはいじっぱりである。吾輩がちゃんと教えてやらなければならぬ。悪いことをしたらちゃんと謝らねばならぬ。吾輩はみゃあみゃあと訴えたのである。

 もみじが吾輩を見たのである、そして、なんで吾輩の鼻を押すのだ。

 

「こいつ、怖かったのか。もう大丈夫だ」

「え、こわかったの? 猫さん」

 

 もみじとこがさよ。そういう話はしておらぬ。

 

「神社でもいきなり飛びついてきたり、妙になつかれているからな」

 

 ううむ。なんでふとももみじも吾輩がなついているや慕っていることにしたいのであろうか。吾輩には永遠の謎である。おおう、もみじよ吾輩の頭をなでるではな……やぶさかではない。

 

「ふふふ」

「あはは」

 

 まあ、なんだかもみじもこがさも笑っているからよしとするのである。吾輩はなされるがままである。ここは吾輩が大人にならねばならぬ。

今気が付いたのである。吾輩は見知らぬ地底で二人が迷わぬようにほごしゃとしてしっかりせねばならぬのだ。こころとお祭りを歩いた時のようにはぐれてしまうともみじが泣くやもしれぬ。

 これは顔を引き締めねばならぬ。きりり。

 

「なに、見ているんだ。さあ、行こうか」

 

 もみじが吾輩から手を離したのだ。少し名残惜しいのである。

 吾輩をこがさがのぞき込んできたから、吾輩は「にゃあ?」となんでのぞき込んできたのか聞いてみたのだ。するとこがさは大きなめをぱちぱちさせて、にっこり笑ったではないか。

 

「にゃあにゃあ」

 

 ふむふむ。わからぬ。

 吾輩のことばを真似してくれるのはうれしいのであるが、吾輩にはとんとわからぬ。まあ、いいのである。もみじとこいしと吾輩達は地下に降りていくのである。もみじが先頭であるな。

 それにしても深い穴である。まだ底が見えぬ。

 うむ? なんか変なのである。いわかんがあるのだ。

 

「おい……こがさ」

 

 きようである。もみじはこっちを向いて飛んでいるのだ。

 

「な、なんですか?」

 

 こがさがなんとなく情けない声を出しているのである。安心するのである。もみじはがんばりさんでいじっぱりなのは知っているのだ。吾輩はちゃんと叱れるからして、こがさもあんしんするのである。

 

「なんか変じゃないか?」

「え?」

「なにが変かはわからないけど……おかしいような気がする」

 

 吾輩とこがさは目を合わせてみるのだ。何がおかしいのであろうか、ちゃんと吾輩合わせても4人そろっているのだ。どこもおかしいことはないのである。

 いや……よく考えたら吾輩もさっきおかしいと思ったのだ。うむ。こいしよ何か知らぬか。

 

「別におかしいところはないかなぁ? 気にしすぎじゃないですか」

 

 こがさもこう言っているのだ。

 

「気のせい、なのかな? 弾幕ごっこをして疲れたのかも」

 

 もみじが大きくため息をついたのである。お疲れ様なのである。

 こがさよ何か元気になることを言ってあげるのである。こがさは吾輩のほっぺたつつきながら言うのだ。

 

「地底には温泉もあるんですよね! きっと椛の疲れも取れるわ! ね、猫さん」

「温泉もって、私はそれが目的なんだけど。ああそういえば、写真撮らないといけないな」

「地底によーこそー。ぱちぱち! ねこさんこっちおいで」

「温泉かー。猫さんも入るのかしら。……でも地底では鬼を驚かせてみせるわ」

「小傘には、むりなきがする……」

「む」

 

 こがさよ膨らむではない。手でつつきたくなるのである。それでももみじとこがさはお互いにほほえんで、くすくすと笑っているのである。なんだか仲良くなったようであるな。吾輩は満足である。

 

 吾輩はこいしに抱かれながら満足げに二人を見ているのである。

 ? ??????? なんで吾輩はここにいるのであろうか?

 

「おひさしぶり!」

 

 こいしである。いつの間にいたのであろう。それにしてもまつ毛が長いのである、いやどうでもいいのである。それよりもあれである「にゃあ」と挨拶をしたのだ。

 

「あ、いつのまに」

 

 こがさが気が付いたのである。たすけて……いや別に助けは必要ない気がするのである。こがさがにやりとしているのである。もみじも剣を抜いているのであるが、いらぬ。しまってほしい。

 

「よーし。さっきは椛にしてもらったから今度は私が……」

 

 こがさが大きく傘を振りかぶったのだ。

 

「っひゃあ!?」

 

 もみじの背中にちょくげきしたのである。

 

「あ、ごめんなさい!?」

 

 などと言っているうちに勢いのついたもみじが背中からっ込んでくるのである。こいしよ、どうすればいいのであろう。

うむ。もうおらぬ。吾輩は空中で一人である。

 

 むぎゅ。吾輩にもみじのおしりがげきとつした!

 


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