わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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おちゃかいなのである

 吾輩はお屋敷にお呼ばれしたのである。

 おりんの横や後ろを吾輩はとことこついていくのである。みつあみが揺れているのである、吾輩とても気になるのである。ちょっと後ろ足で立って、前足を伸ばしてみたのであるが全く届かぬ。

 

「どうしたんだい?」

 

 おりんが振り向くとみつあみもくるりと揺れているのである。こう、吾輩のこころをくすぐるものがあるのである。こうパンチしてみたいのである。いやいや、いかぬいかぬ。吾輩は紳士であるからしてそれをしていかぬ。

 おりんは吾輩を見てこくびをかしげているのである。吾輩もなんとなくそれに合わせて首を動かした。

 

 ?

「?」

 

 吾輩達は目を合わせたまま小首をかしげているのである。後ろ足で立っているのは結構疲れるのである。それにしても妖怪も人間も両足でしっかりと立っているのである。これは見ならわねばならぬ。

 だから頑張ってみるのである。このまま一歩歩いてみるのだ! あ、ダメである。前足を地面につけてしまったのである。難しいことであるな。きっとふともいっぱい練習にしたに違いないのである。

 しかし、失敗したままではおれぬ、今度練習をいっぱいするのである。

 吾輩はきりりとした顔でおりんに決意を「にゃあ」と伝えるのである。おりんはにっこり笑って「にゃあ」といい返事をしたのである。

 

「それじゃあいこうか」

 

 おりんはみつあみを揺らしながら言うのである。吾輩それが気になって仕方ないのである。それにしてもいつの間にか吾輩は空を飛んでいるの……な、なんで飛んでいるのであろうか。地面がちょっとだけ下にあるのである。

 

「猫さん、お久しぶり」

 

 おお、こいしが吾輩の両脇をつかんでいるのである。いつもどこからやってくるかわからぬ。しかし、吾輩は挨拶はかかさぬ。こいしよいきなり現れて吾輩をつかむのはびっくりするから、抱っこする前に一言いうのである。

 

 みゃーみゃー。

「にゃあ?」

 

 こいしも小首をかしげているのである。ところで路地裏に連れていくのをやめるのである。おりんが別の道を行っているのである。

 

「あ、あれ!? ど、どこにいったんだい!」

 

 おりんの声がするのである。吾輩が声を出そうとしたらこいしがわがはいの口をつかんできたのである。これでは声が出せぬ。みればこいしも自分の唇にひとさしゆびをあてて、片目をつぶっているのである。

 

「しー」

 

 ぱちぱちこいしは瞬きするのである。瞳が綺麗であるな。

 吾輩をだっこしたままこいしはふわりと空を飛んでいくのである。このまえはお空の上でお月様の前でだんすを始めてしたのである。こんどは地底で踊るのであろうか、なかなかおつなものである。

 吾輩をだっこしたままこいしが飛んでいくのである、下を見ればがやがやとした地底の街の灯が綺麗なのである。のんびりそれを見学しながら飛んでいくのである。おお、けむりが目の前に。

 

「とつげき!」

 

 むむむ、こいしがけむりに突撃したのである。うむ? なんかいい匂いがしてからすぐに抜けたのである。

 

「あははは」

 

 くるくると空を飛びながらこいしが笑っているのであるである。吾輩はもう空を飛ぶべてらんなのであるからして、楽しくて仕方ないのである。む、なすびのような傘を指したものがいるのである。こがさであるな、目立つのである。

 すぐに飛び去ってしまう。にゃあと言ってみても間に合わぬ。空を飛ぶのは忙しいのである。鳥もこんな気持ちなのであろうか。

 こいしが吾輩をもったまま、くるりくるりと回るのである。めがまわる。さらにこいしは吾輩の抱き寄せて顔をすりすりしてくるのである。

 

「おひげ~」

 

 すまぬのである。しかし、紳士はおひげは大事だとけいねも言っていたのである。こいしはすべすべであるな。

 吾輩とこいしは空を見上げてみるのである。暗いのである。くるりと回ってしらを見てみるのである。おれんじ色の光を発するお店がいっぱいあるのである。まるで祭りのときみたいであるな。

 ときどきいい匂いがするのである。ぐうとお腹が鳴っているのである。

 吾輩のことではないのである! こいしのお腹である。

 

「えへへ」

 

 なんか恥ずかしそうにしているのである。頭を掻くのはいいのであるが、吾輩が落ちそうになっているのである。恥ずかしがることはないのである、おなかが減るのはいいことである。なぜなら、おなかが減ったときの方がごはんがおいしいのである。

 

 

「おなか減ったし。それじゃあ帰ろっと」

 

 お、おおお。風が吾輩をたたくのである。こいしが加速したのであるな、吾輩が本気で走ったときとどっちが速いであろうか。いい勝負かもしれぬ。

 遠くに大きなお屋敷が見えてくるのである。ぐんぐん近づいてくるとさらに大きくなってくるのである。もしや、あれがおりんの言っていたお屋敷なのやもしれぬ。ということは、きっとおりんもあそこにいるはずである。

 

 お屋敷はせいよーふうというやつであな。吾輩はちゃんと知っているのである。

 こいしは塀をらくらくと飛んで超えていくのである。吾輩はちょっとうらやましいのであるが……いやいや、違うのである。ちゃんと玄関から入らねばならぬ。吾輩はこいしににゃあと言ってみるのである。

 

「にゃあにゃあ」

 

 ううむ。話が通じぬ。

 こいしが吾輩を抱いたまま、大きなお屋敷の大きなお庭に下り立ったのである。きれいな花壇の真ん中に降りたものであるから、こいしの周りに花びらが舞うのである。

 

 ひらひら、ひらひら。赤、むらさき、黄色、桃色の花びらが舞うのである。こいしは吾輩を抱いて、その場で軽く踊ってみるのである。吾輩はお花と踊るのは初めてである。

 お花の花びらが吾輩の目を奪うのである。それにしてもなぜこいしはこんなにも楽しげなのであろうか、いつも突然やってきて突然吾輩をどこかに連れて行ってくれるのである。

 

 そういえば地底に来るように言ってくれたのもこいしであったのである。吾輩は楽しい思いをしたのもこいしのおかげかもしれぬ。

 

「こいし。なにをしているのかしら」

「あ、おねえちゃん。ただいま!」

 

 うむ。こいしが止まったのである。見ればお屋敷の方から誰かが歩いてくるではないか、こいしと同じような目玉の飾りをつけているのである。しかし、髪は桃色であるな。そういえば桃を吾輩はほとんど食べたことがないのである。

 

「おかえりなさいこいし。なんで猫をだいているのかしら?」

「おなか減ったなぁ。クッキーを食べに帰ってきたの」

「…………猫は?」

「クッキー。クッキー」

 

 こいしは吾輩を抱いたままステップしながらお屋敷に行こうとするのである。するとその後ろ首を「おねえちゃん」が捕まえたのである。

 

「お、おお」

 

 こいしが驚いているのである。大きく上げた前足が前に進まぬ。

 

「はあ、ちょうどお茶にしようと思っていたから」

 

 おねえちゃんが吾輩達に言うのである。見ればお庭に丸い小さなテーブルとイスがあるではないか。テーブルの上にあのお茶を入れる、あのあれが置いてあるのである。

 

「ティーポット」

 

 おお、おねえちゃんが教えてくれたのである。うむ? なんか変な感じがするのである。

 

「お菓子をもって来るから座っていなさい」

 

 こいしは「はーい」と言いながらそれに走り寄って、どすんと椅子に座ったのである。吾輩を抱いたまま、足をぶらぶらさせているのである。

 

「猫さんいい匂いがする。温泉に入ったの?」

 

 照れるのである。吾輩は綺麗好きである。

 こいしとおねえちゃんも入ればいいのである。吾輩がしゃんぷーを教えてあげるのである。

 


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