わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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わがはいにまかせるのである!

「この星熊勇儀に喧嘩を売るとはいい度胸だ。気に入った!」

 

 ゆうぎが楽しそうににこにこしているのである。しかしけんかはいかぬ、ちゃんと仲良くせねばならぬ

吾輩はそう思ってにゃあにゃあと鳴いてみると、ゆうぎも吾輩をみて笑っているのである。それを見ていると吾輩はとても楽しくなってしまったのである。きっとけんかはせぬようにわかってくれたのであるな!

 吾輩はそのまま振り向いてみると、こがさが固まっているのである。なんだか困ったような顔であるな、どうしたのであろう。心配事があれば吾輩にちゃんと言ってほしいところなのである。吾輩にも何かできるやもしれぬ。

 

「あ、あの~その」

 

 こがさが口を開いたのである! 吾輩は悩んでいるこがさを見捨てたりはせぬ。ちゃんと耳をそばだてて聞くのである。ちゃんと人の話を聞くときはしせいを正しくして聞くのだとけいねも言っていたのである。

 ぴんと胸を張って聞くのが紳士であるな。吾輩はその点はちゃんとしているのである。

 

「ん? なんだ?」

 

 ゆうぎも胸を張って聞いているのである。吾輩も負けてはおれぬ、さらに背筋を伸ばすのである。……うむ。思わず立ち上がってしまったのである。うむむ。後ろ足だけで立つのは難しいのである、うむ、むむむ。

 ころころ。

 いかぬ、ばらんすを崩してしまったのである。恥ずかしいのである。吾輩は思わずにゃあお、と言い訳をしてしまったのである。もみじよ、助け起こしてほしいのである。

 

「…………ゆ、勇儀様」

「?」

 

 もみじはゆうぎとお話し中であるな。ではこがさは……なんだか青ざめているのである。おなかが痛いのでろうか、

 

「い、勢いで言ってしまった……」

 

 いきおいは大切なのである、それはそうと吾輩を助けて起こしてくれぬものがおらぬ。前足をばたつかせてころりと回転するのだ。ちゃんと一人で起きられたのである。

近くでくろだにがぱちぱちと拍手をしているのであるが、それなら起こしてくれてもよかったのである。まあ、吾輩の心は海のように広いからして、そんなことで怒ったりはせぬ。

 それにしてももみじが一生懸命にゆうぎに何か説明しているのである。もみじはがんばりやさんであるな、吾輩は話をよく聞いていなかったのである。恥ずかしいのである。

 くろだにはちゃんと聞いていたのであろうか。吾輩はみゃーおと聞いてみるのである。

 

「なあなあ。お手ってできる?」

 

 やらぬ。これはダメである。くろだには頼りにならぬ。ヤマメもくれぬ。

 もみじの話をしっかりと聞くために足元に近寄って見上げてみるのである。

 

「で、ですから。この唐傘は地上で迷惑にもいきなり人を驚かせて来る妖怪でして……。たぶん勇儀様を驚かせることができればなんて思いあがった上に口が滑って勝負などと言っているのです」

 

 なんだかもみじがとてもがんばっているのである。あせを流しながらがんばっているので吾輩は応援するのである。

 

「……おどろかせに? なるほど大道芸人というやつか。しかし、勝負と一度口にしたからには筋を通してもらわないとな」

 

 ゆうぎが何かを考え込んでいるのであるな、きっともみじのがんばりが通じたのである。吾輩はとてもうれしいのである。ゆうぎは急に吾輩の前にしゃがみ込んで言うのである。

 

「お前はどう思う?」

 

 ううむ。よくわからぬが、きっとみんな仲良くするのがいいかもしれぬ。そう思ってゆうぎに吾輩は伝えてみたのである。

 

 みゃーみゃー

 

「ふむ……そうだ! こうしよう」

 

 ゆうぎが突然立ち上がってこがさともみじを振り返ったのである。屋根の上を下駄を鳴らしながら歩いていくのである。屋根の下はもうおまつりみたいになっているのである。吾輩はそこに行ってみたいのである。そう思って屋根から下を覗いてみると、もみじにだっこされたのである。

 

「こら、あぶないだろ」

 

 あぶないのであるか? 吾輩にはよくわからぬが、心配してくれたので助かったのである。やはりもみじはいいやつであるな。吾輩はすきである。

 

「あっはっは。その猫も下のどんちゃん騒ぎに混ざりたいんだろうねぇ」

 

 ゆうぎの笑い声は大きいのである。

吾輩も真似してみたいのである。ゆうぎを見ればなんだか髪がきらきらさせながらほほえんでいるのである。おお、下で集まっているようかいたちが提灯を出したりして明るくなっているからして、ゆうぎが綺麗に見えるのである。

 

「まがりなりにも一度勝負を口に出したからには最後まで付き合ってもらおうか。下の奴らも喧嘩を見に集まったんだから、このままじゃあ収まりがつかない。天邪鬼もまだ寝ているしな」

 

 がやがや、わいわい、どんちゃん。

 下からたのしげな音がきこえてくるのである。ううむ、そういえばさっきからせいじゃが動かぬ。みればくうくう寝ているのであるな、なかなかかわいいのである。頭にこぶがあるのはしんぱいである。

 

「なーにどうせ私を驚かせに来たくらいなんだ、ここにいるやつらを驚かせるくらい訳はないだろう? あのど真ん中で私たちを驚かせて見せることができればあんたの勝ちでいいよ」

 

 ゆうぎが片手をあげてそれから、ゆっくりと周りを見回したのである。なんとなくこがさをみてみると両手で傘を持って、ふるえているのである。なんだか目も泳いでいるきもするのであるが、こがさは言ったのである。

 

「も、ももちろん。や、やってやるわ! こ、これくらいら、らくしょーですよ!!」

 

 もみじが「お、おい。それお前の驚かせることとは違うだろ」と言っているのである。それよりも先にゆうぎが「よしっ!」といったから吾輩はとても驚いたのである。こがさよなにかよくわからぬが頑張るのである。

 

「そうときまったら早速やってもらおう」

 

 ゆうぎがこがさをひょいと持ち上げたのである! 吾輩と同じような格好であるな。

 

「ちょ、ちょっとまって」

 

 ゆうぎは笑顔のままなんだか楽し気である!

 

「野郎ども!! 今からこの地上から来たやつが驚かせてくれるそうだっ!!!」

 

 わーーー!!

 おお、なんだか盛り上がっているのである。吾輩もにゃあにゃあ言ってみるのである。こがさよ……がんばる……うむ。ちらりとこがさが吾輩を見たのである。なんだか不安げであるな……もしやこれはぴんちではないのであろうか?

 もみじよ離すのである。体をひねるのである。

 

「お、おいなんだお前まで」

 

 いや、離すのであるそんなに頑張って抱っこしなくてもいいのである。

 

「うなぎみたい」

 

 くろだにが何か言っているのであるが付き合っているひまはないのである。

吾輩はもみじの手から離れるためにひねりひねりするのである。やっと地面に降りられたのである。吾輩は走り出したのである。

 

 ゆうぎもこがさを降ろして、屋根の上に腰を下ろしているのである。

 屋根の下の広場はおおぜいのようかいでいっぱいである。

 吾輩の耳には大きな声が聞こえてくるのであるが、それよりも吾輩はなんだかしょんぼり立っているこがさの足元に行ったのである。

 

 にゃあ。

 こがさが振り向いたのである。何も言わぬな。こがさよ吾輩が来たからにはもう安心である。安心しておおぶねに乗った気持ちでいるのである。まあ吾輩はおおぶねを知らぬ。

 こがさはぐっと顔を引き締めてきりりとした顔を吾輩に向けたのである。

 

「手伝ってくれるの?」

 

 もちろんである。こがさは吾輩を抱き上げていっかいおなかに顔をうずめたのである。

 それからおおぜいの、とてもおおぜいのかんきゃくがいる広場を吾輩と一緒に見たのである! きらきら綺麗である!

 

 

 




ちていよこれがだいどーげーだ

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