吾輩が下を覗き込むと大きなかんせいが聞こえてくるのである。みんな楽しそうであるな、よくわからぬがこがさは人気ものなのである。にゃあと声をかけるとこがさもにゃあとにっこり笑ってくれたのである。
「おいで、猫さん」
しゃがみ込んだこがさが手を吾輩に差し伸べてきたのである。おおあくしゅであるな。吾輩はこがさの手の上に前足を載せてみるのである。
「おて?」
お手ではないのである! 吾輩はそこには厳重な抗議をせねばならぬ! ふとといい、こがさといいくろだにといい、吾輩がお手をするとなぜ思うのであろうか、それは犬にでも頼めばいいのである。
こがさはくるくると傘の取っ手を回しているのである。また吾輩と遊んでくれるのであろうか、こがさはにこにこして答えぬ。それにしても首がかゆいのである。
「おい。小傘」
もみじである。こがさと吾輩はにゃあと答えたのである。もみじは手に何かつつみをもっているのである。
「あ」
こがさが両手を口に開けて恥ずかし気にしているのである。
「おもわずいっちゃった」
「……いや、いいけど」
なんだかもみじも恥ずかしそうにしているのであるが、なぜそうなのかわからぬ。ちゃんとにゃあと反応するのはれいぎである! なにも恥ずかしいことはないのである。
そう思っているともみじがしゃがんで吾輩を撫でてくれたのである。ううむ、やはりなかなかやるのである。吾輩は気持ちがいいのである。
「……ふふ……」
もみじが笑ったのである。いやそれよりももう少し首のあたりがいいのである。
「あ! いや。小傘。……まあ、どうなっても多少は……あの……かばってやる! せいぜい頑張るんだな。それとこれは勇儀様からどうせなら着飾るようにとの配慮だ」
おお、もみじの手が離れていくのである。吾輩は前足を延ばしてそれをつかもうとするのであるが届かぬ。
もみじは手に持っていた包みを解いてばさっと広げたのである。
おお、お星さまである! 綺麗な羽織りであるな。黒い布にきらきらお星さまが輝いているのである。うむ、ううむお月様がおらぬな、これはかくれておるのかもしれぬ。でてきてもいいのである。
「おおー」
こがさが羽織を着てクルクル回るのである、吾輩も回ってみるのだ。めがまわる。
「動くな」
もみじが前のひもを締めてあげているのである。やはりもみじは優しいのである。こがさがちょっと動くと、ひらひらとお星様が泳いでいるのである!
もみじは「ふん」と鼻を鳴らしてから、そのまま背中を見せてかつかつとゆうぎの方に行ってしまったのである。こっちをちらちらとみてくるので吾輩はちゃんとにゃあにゃあと反応するのである。
「うーん。椛って実は優しいのかな? 猫さんはどう思う?」
ふむふむ。こがさはよくわかっているのである。吾輩はもうわかっているのである。
「ま、いいや!……それじゃあいこっか?」
こがさが手を伸ばしてきたのである。吾輩はとてとてその手に足をかけて腕を登っていくのである。下を見ればわあわあときらきら光っているのである。こがさは胸元から何かをとりだしているのである。何枚かのかーどであるな。
それから吾輩の耳元でこそこそと話をするのである。
「あの人里でのことこっそり練習してたけど、みんなには内緒ね」
くすぐったいのである。人里でみんなを驚かせたのは吾輩も楽しかったのである。
「はい。猫さん」
こがさよ、なんで吾輩を持つのであろうか、まるで投げようとしているみたいである。
「それじゃあうらめしや~~!!!」
おおぉ! 吾輩は空を飛んでいるのである。
くるくるくるくる、なんだか下には大勢のようかいたちがやんやとしているのであるが、なかなか高いのである。
「ねこさん。こっちこっち!」
こがさも吾輩の隣を飛んでいるのである。こっちと言われたからには吾輩も足をばたつかせて頑張ってみるのである。ううむ、どうにもできぬ。
「おいでー。虹符『にゃんブレラサイクロン』!」
こがさが傘を振ると、虹が空にさっとうかんだのである! きらきら七色に光る虹が綺麗であるな。吾輩はこがさの傘の裏側できゃっちされて、そのままくるくるされるのである。
わーわー
「よいしょっと」
こがさが強く傘を振ると、吾輩は真上に飛んだのである。
今度は大丈夫である。こがさのにっこり顔見えたのだ。
とん、とこがさの構えた傘の上に乗って、くるくるとそこを走るのである!
そのままゆっくりとこがさが地面に降りていくと、吾輩にもようかい達の顔が見えてきたのである。みんな笑っているのであるな。おおあれはせんちょうであるな、楽しそうにぱるすぃとお酒を飲んでいるのである。
わいわい! わーわー! がやがや!
わがはいとこがさは踊るのである。傘の上からは眺めもいいのである。高すぎると笑っている顔が見えぬ。
「ふふーん! 化鉄『置き猫特急ナイトカーニバル』!」
周りに傘がいっぱい現れたのである! 光りながらくるくる吾輩達の周りを傘も踊っているのだ。吾輩は思わず飛び乗ってみるのだ。
「おっ! やったー」
なんだかこがさも喜んでいるのである。吾輩はそのまま傘をとびのりとびのり、張り切るのである! この傘ほのかに光っているのである。
「ふふふ、猫さんがんばれー」
こがさが両手を広げるのが見えるのである。すると傘たちが上に向かいながら速く動いているのである。まるで傘の階段であるっ!
この程度、吾輩にはなんてことないのである。吾輩はとんとんと飛び移っていくのである。
周りのおまつりさわぎが楽しそうで、吾輩も楽しいのである。
「大輪『にゃーフォゴットンワールド』! ねこさんのステージを作ってあげるわ。おどろけー!」
こがさがクルクルと傘を回しながら踊っているのである。手にもったかーどがぴっかり光ってぱぁと、虹が広がっていくのである。
とんとん、とんとん。
虹の中で傘を飛び移っていくのは初めてなのである。
わーわー!
猫-がんばれー。
いつの間にかくろだにも下に降りてきているのである。
おお、空から花びらが降ってきたのである。見ればこいしがぱらぱら何かを空から撒いているのである。
とんっとん。
傘を飛び移るのである。吾輩はだんだんと昇っていくのだ。
おお? 先がないのである。もう傘がないのである! どうすればいいのであろうか!?
「そのまま飛べっ!」
もみじの声が聞こえてくるのである。わかったのである。吾輩はもみじをしんらいしているのである。できるだけ勢いをつけて吾輩は空を飛んだのである。
結構高いのである。
下を見る、
みんなが吾輩を見ているのである。虹の残りが周りでまだ光っているのだ。
「おいでませ~」
こがさが手を広げているのである。虹のように笑っているのである。……自分で言ったのであるが、虹のようにとはどういうことであろうか、まあいいのである。
おいでと言われても空中ではどうしようもないのである。吾輩はそのまま落ちるしかないのである!
「おっ、おお、おっお」
こがさよわたわたされると困るのである。吾輩はまっすぐにこがさのもとへ行くのである。
「わっ」
ばすんと吾輩は飛び込んだのである。こがさは「わっ」と言っておしりをついたのである.
それでもちゃんとつかんでくれてあんしんしたのである。
吾輩はにゃあとこがさにお礼を言うと、こがさもにゃあと言ってくれたのである。今ならこみゅにけーしょんがこがさともできるやもしれぬと、吾輩はさらに声をかけようとすると、
わぁあああああああ!
周りの声にかきけされてしまったのである。