わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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かえりみちもにぎやかである

 ちゃきちゃき

 くるくる

 にゃあにゃあ

 

 吾輩はもみじとこさがをしっかりと連れて地底の街を歩いているのである。もみじの腰につけた剣がちゃきちゃき鳴っているのである。それに歩きながらこがさが傘をくるくる回しているのである、何をしているかはわからぬ。

 

「あー。なんだかあっという間だったねー。あれだけ騒いだのに、お祭りの後ってさびしいかも」

 

 こがさが言うのである。吾輩もそう思うのである、だから後ろをちらっと見て目でこがさに訴えてみたのであるが、こがさはあくびをしているのである。

 

「まあ、温泉にも入れたし。お前も曲りなりには目的を達成できてよかったじゃないか。……私は逆に疲れがたまった気がするけど」

 

 はあ、ともみじがため息をついているのである。吾輩は心配である。そう思って足元に近づいてみるのであるが、下駄は危ないのである。吾輩の尻尾を踏みかねぬ。

 もみじもこがさも着替えているのである。こさがの泥だらけの服もちゃんと綺麗にしてもらったらしいのである。泥遊びは大変であるが、楽しいのである。

 

 ちゃきちゃき

 

「おーい」

 

 吾輩達が声をする方向をみるとくろだにが手を振っていたのである。こがさが手を振っているのであるが、吾輩は不満である。

 くろだにはヤマメをくれなかったのである! 吾輩はげんじゅうなこうぎの意味でそっぽを向いたのである。見ればもみじもそっぽを向いているのである。もみじもきっとヤマメが食べたかったに違いないのである。

 

「またきなよー」

 

 くろだにの

 こえがとおく

 なっていくのである。

 吾輩は思わず後ろを振り向いてにゃあと返してみたのである。もみじも見れば後ろを見ているのである。

 

 くるくる。

 

 少し歩くとおまんじゅうを食べながら歩いているせんちょうとすれ違ったのである。

 

「おや、お帰りですか? 小傘さんに猫さん。また命蓮寺に遊びに来てくださいね」

 

 みょうれんじであるか。うむむ。もしかしたらせんちょうもひじりとともだちなのかもしれぬ。こがさも知り合いだったのであろうか?

 

「ふっふっふ。私は鬼も驚かせたんですから。これから人間たちをきょーふのどんぞこにおとしてやるわ」

「それはそれは。お寺の境内で見世物をしてくださるなら暇つぶしになりますね」

「……み、見世物じゃないわ」

「ふふ、冗談ですわー。それじゃあ、また」

 

 せんちょうも歩みを止めぬ。振り返ったまま、後ろむきで吾輩達と逆方向に歩ていくのである。お風呂で沈めようとしたりわけのわからぬせんちょうであったが、にっこりわらっていたのである。

 

「あ、天狗の人もおまけで遊びにきてくださいね~」

「だ、誰がおまけだ……」

 

 もみじが怒っているのである。

 

 とことこ。

 さらにしばらく歩いていると街かどでちらちらしているぱるすぃがいたのである。何か手に抱えているようあるな。何かの植物であろうか? 吾輩はとことこ近寄って、みゃあと挨拶をしてみたのである。

 

「……」

 

 すっと植物をぱるすぃが差しだしてきたのである。

 ! これはねこじゃらしであるな。吾輩はもうこんなもので遊ぶほど子供のではないのである! ちょっとしか付き合わぬ!

 

 ふりふり

 この、ねこじゃらしの動きがいかぬ。吾輩の前足で追いかけるのである。この先っぽのふわふわしたところが捕まえられた時が嬉しいのである。

 

「妬ましいわぁ。またね」

 

 ねたましいのであるか。

ぱるすぃも元気でいるのである。ひとしきり遊んでから吾輩はもみじとこさがの方にもどっていったのである。こさががちょっと考えた顔で、自分の傘を閉じてふりふりしてきたのであるが、わけがわからぬ。

 

 思えば楽しかったのかもしれぬ、そういえば地底に落ちていくときにみょうな夢で出会ったものもいたのである。元気であろうか。吾輩を撫でてくれたずっと黙っていた半分羽の生えたものもどうしたのであろうか。

 

 吾輩はそうふかい考えに陥りながらとことこ歩いていると、

 

「こら、猫。こっちだ」

 

 もみじに叱られたのである。吾輩は恥ずかしいのである。急いで戻ろうとしたとき、ふと真横に黒い猫がいることに気が付いたのである。

 

 にゃー

 にゃー

 

 挨拶をして別れるのである。しっぽが二つになっていて痛そうなのでちゃんと治すのである。そういえばおりんとも会っておらぬ。

 うむ? くろねこが吾輩の前に立ちふさがっているのである。なんであろうか、うむ?? なんだか誰かに抱きかかえられた気がするのである。これは、後ろを向かぬでもわかるこいしであるな。

 

「もしもーし。今あなたのうしろにいるのー」

 

 言わなくても分かるのである。

 ?

 何かを首につけられたのである。

 

「蝶ネクタイをお姉ちゃんからお土産だって」

 

 吾輩はネクタイをしたのは初めてである。似合っているであろうか。ありがとうなのである! さとりとお話したことも忘れないのである。

 

「それじゃあね、またねー」

 

 吾輩は突然地面に下ろされたのである! あわてて後ろを振り向いてみると、

 誰もいなかったのである。

 なんだか寂しい気もするのであるが、仕方ないのである。またこいしとは会える気もするのである。いつのまにかくろねこもおらぬが、あっちはまあいいのである。

 吾輩はとことこもみじ達のもとにもどっていったのである。

 

「あ、猫さんネクタイしてる」

「誰からもらったんだ?」

 

 二人ともしゃがんでみてくるのである。そういえばどういうねくたいなのであろうか、吾輩は首をこう曲げてみようとしてもうまくいかぬ。むむ。難しいのである。見えぬ。

 

「似合ってるよ」

 

 こがさがにっこり言うので吾輩はそれでいいと思ったのである。

 

ちゃきちゃき

くるくる

とことこ

 

 大きな広場についたのである。見ればゆうぎが立っているのだ、周りにはなんだか鬼がいっぱいいるのである。

 

「おお、来たか」

 

 もみじがいっぽ前に出ていったのである。吾輩も前に出ると、こがさもあわてて前に出てきたのでもみじがさらに一歩前にでて、吾輩も一歩前に

 

「こら!!」

 

 もみじに怒られたのである。吾輩はおもわずこがさの足元に行くと、こがさが抱き上げてくれたのである。

 

「こほん。勇儀様このたびは」

「あーかたっ苦しいのはいらないから」

 

 ゆうぎは歯を見せて笑ったのである。

 

「地底は楽しめたかい?」

「……」

 

 もみじがちらちらと吾輩達を見てきたのである。それからそっぽを向いたり変な方向を見てから言うのである。

 

「……はい」

「そうか、それはよかった。また来るといい」

 

 ゆうぎが近寄ってきたのである。そのままもみじを抱き上げたのだ。

 

「ゆ、勇儀様。な、なにを」

「地上まで送ってやろうといっただろう」

「そ、そんなこんな、お、お姫様だっこ……い、いえ」

「おひめさま、あはは。そんないいもんじゃないさ。よいしょ」

 

 ゆうぎがもみじをもって振りかぶったのである。

 

「え? え? ちょ――」

「おぉりゃあ!!」

 

 ゆうぎが真上にもみじを投げたのである!!

「あああああああぁ……!!!」

 

 おお、お星さまである。もみじが空に飛んで行ったのである! 楽しそうである!

 

「さてと」

「ひ、ひぃ。わ、私はじ、自分でか、帰れます、お、おかまいなく」

 

 こがさが吾輩を抱いたまま後ろにさがろうとしているのである。するとゆうぎが抱き着いてきたのである。

 

「遠慮するな、こっちのほうが速い」

「ひ、ひえ」

 

 ぎゅっとこがさが吾輩を抱いてくるのである。ぐらりと体が揺れるのである。ゆうぎがふりかぶったのであるな、

 

「いつでも地底においで」

 

 その言葉を吾輩はちゃんと聞き取ったのである。

 それからすぐに、空に向かって投げ飛ばされたのである!!

 

 




いちわちていへん(地底じゃあない) 話がのびたのである

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