わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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けなみのめんてなんすなのである

 ……む? うむむ。

 吾輩はむっくりおきてあくびをしてみたのである。ここはどこであったかなんだかよく思い出せぬ。外でちゅんちゅん鳥の声がするのである。

 そうである! 昨日はこがさともみじと別れてから神社に来たのである。

 巫女はさすがに寝ている様子であったから、吾輩も眠ることにしたのである。楽しかった後にはすぐに眠ることができるのである。

 

 天井が目の前にあるのである。たぶん、のきしたを借りたのであるな、吾輩は昨日の記憶はあいまいである。

 のそのそ、

 吾輩は外に出るために動くのである。なんだかおなかも減ったのである。

 

 お天道様である! なんだか久しぶりと思うのであるが、吾輩はちゃんと挨拶をしてから、体をその場で伸ばしてみるのである。こういう時にのコツとしては前足をそろえてから、後ろ足を伸ばすと背筋がぐーーと伸びるのである。

 

 ぽかぽかあったかいのであるな。

 そうである! 巫女にあってこみゅにけーしょんをとらねばならぬ。そう思って吾輩はあたりをきょろきょろしてみるのである。

 誰もおらぬ。

 にまにま両手を後ろで隠してちかよってくるふとしかおらぬ。

 ……誰もおらぬことにするのである。吾輩はなんだか近寄ってきているふとに背を向けて歩き出したのである。

 

「ちょ、ちょっと待つのだ。猫よ! 我を無視するでないっ」

 

 後ろから声がするのである。

 吾輩は忙しいのである! たったか走り出すのである。

 

 とっとっと

 神社の周りを走ってみたのであるが、巫女がおらぬ。

 

「はあはあはあはあ。わ、われをむしするな」

 

 ふとはずっとついてくるのである。吾輩は仕方なく後ろを振り向いて挨拶をしたのである。するとふとは疲れた顔をあげて、ふーんと鼻を鳴らしてあごを上げたのである。なにか企んでいるような気がしてならぬ……。

 それでも吾輩とふとの仲である。まあ、仲といっても何かあったわけでもないのであるが……。

 

「ふっ、やっと観念したようじゃな。ほれほれ」

 

 ふとが吾輩の前で手のひらをひらひらさせているのである。おてをさせようとしているのであるな、ううむ?

 それにしてもまだ片手を後ろに隠しているのが怪しいのである。

 

「ほれほれ」

 

 ……ううむ。どうするべきであろうか。吾輩はおてはあまりしたいわけではないのであるが……しかし、ここまで期待されたかおをしているふとをみると、こうかわいそうな気もするのである。

 吾輩は紳士である、ここは吾輩がおとなになるのである。

 吾輩は前足を上げて、ふとの手に置いたのである。すると、ふとはきらきらした目で吾輩を見てくるのである。なんだか口をもぞもぞさせているのである。なんというか、あれであるな。

 うれしそうな顔をしているのである。

 

 急にふとがたちがったのである! 両手をきゅっと構えて……吾輩は知っているのである。これはがっつぽーずであるな。というか吾輩がびっくりするのである。

 ? 手に何か持っているのであるな、それは何であろうか。

 

「ふ、ふっふふ。この猫もようやく我の教導の成果でおてができるようになった! ついに我の努力が実ったのだ!」

 

 そこまで喜ばれると照れるのである。

 

「そあ、褒美を授けよう! ……ほら、こっちおいで」

 

 

 なんかふとも急に優しい口調になったのである。その場で座って自分の膝をぱんぱんたたいているのである。吾輩はまあ仕方なくそちらにその膝の上に乗ってみたのである。

 

「人里はずれた雑貨屋? でな外の世界でぶらっしんぐなるもののをする器具が売ってたから買ってきたやったぞ、我がこのぶらしでぶらっしんぐをしてやるっ!」

 

 ざっかやとは何のことかわからぬが、ふとは吾輩を膝に寝かせるとその手に持った「ぶらし」を吾輩の首においてずずずっと体に沿わして動かしたのである。

 

 !!!!!!!!!!!!

 ……吾輩はその場でみぶるいしたのである。な、何をするのであるか。吾輩は、吾輩は、とても気持ちいのである。

 ぞりぞり。

 ううむ、ぶるぶる。くすぐったいようなちょっと痛いようなきもするこれが、おおう。これはいいではないか。

 

「ふーふふーん。そうであろう、そうであろう! それにてもおぬしリボンなどつけてめかしこんでいるのう」

 

 ふとはなにが「そうであろう」かわからぬが、何か言っているのである。そんなことよりももっとしてほしいのである。

 

「それはともかくかくごするが……い、い……?」

 

 手が止まっているのである。ふとよ、にゃあにゃあ。いかぬいかぬ、あまりのきもちよさに我を失っていたのである。しかし途中で止められると困るのである。なんで止まっているのであろうか。

 吾輩も止まったのである。

 なんかふとの真横で少女が寝ているのである。緑の髪をした赤い服の少女であるな。頭に角が生えているからして人間ではないのである。

 

「あっ!? 私もやってもらってもやぶさかではないですよ」

 

 期待した目をしながらなにか言っているのである。

 

「な、なんだおぬしは! いきなり現れてっ!」

「挨拶まだでしたね。こんにちは」

「あ、これはご丁寧にこんにちは……て、そんなことじゃなーい!」

 

 おおふとよそれはのりつっこみというやつであるな!

 

「いやだなぁ。いつも会ってるじゃないですか。高麗野ですよ」

「お、おお久しぶり……いや、我は知らぬ! あったことないぞ!」

「ひどーい。まあ、それよりも最近守ってばかりでぶらっしんぐなんて、ちら。興味深い。ちら。ことを聞いて、ちら、思わず」

 

 すごいちらちらしているのである。吾輩もこのこまののことは知らぬはずであるが、なんでであろうかよく知っている気もするのである。ううむ?

 

「さあさあ、遠慮なく」

 

 おお、こまのがふとににじり寄っているのである。

 ふとよ吾輩をぶらっしんぐするのである! ふとはきょろきょろと吾輩達を見比べているのである。

 

「わ、我は……この……ぶらっしんぐを……思ったのじゃ……」

 

 汗を流しながらこごえで何かふとが言っているのであるが、よく聞こえぬ。こまのはさらにふとに近寄ってくるのである。吾輩も負けてはおれぬ。吾輩はふとのひざ元でたちあがり、ふとに目で訴えるのである。

 

 すると、こまのも立ち上がって強い目でふとを見ているのである。

 

「う、うう」

 

 ふとの眼がおよいでいるのである。

 吾輩をブラッシングするのである、……いまなんか、うまく言えたかもしれぬ! ぶら、ぶらっしん、ぶらっしんぐダメである……。

 

「仕方ないなぁ。じゃあこうしましょう。その猫さんが先客でしたから、先にしてもらって。その間は私がしっかり守っておきます」

「ま、守……まもる? な、なにいっておるのじゃ?」

「さあ、さあ。後は任せて早く。あ! 終わったらお願いしますね」

「う、うむ」

 

 よくわからぬが吾輩をぶらっしんぐしてくれるのであるな! 大歓迎なのである。吾輩はにゃあと言ってから、ふとの膝の上で長くなって寝転んだのである。

 

 ごりごりごり

 おお……ぉお、なんだかこまのがちらちら見てくるのであるが気にしてはおれぬ。おおぉ、気持ちいいのである。

 

「……まあ、いいか」

 

 ふとが何か言いながら吾輩にぶらしを当てるのであるが、気持ちよくて聞き取れぬ。しっぽが勝手に動くのである。

 

「おお、猫よ気持ちいいのであろう、そうであろう」

 

 ふともうれしそうで吾輩もうれしいのである。

 

「最近皿を割りすぎてへったおこづかいをはたいて買ったのじゃ。喜ぶがいい!」

 

 すっすっ。

吾輩はとてもうれしいのである。うずうずとこまのが吾輩に言うのである。

 

「あっ! 代わってもらってもいいですよ?」

 

 まだいやである!

 


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