わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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そらのちかくへきょうそうである

 

「ああ、重いなぁ」

 

 けいねよ頑張るのである! 吾輩はなずーりんをおんぶして歩くけいねを応援しているのである。まわりをぐるぐる回ってにゃあにゃあと声援を送ればきっと元気が出るのである。

 

「ふう、ふう。しまったなぁ、さすがに頭突きはやりすぎてしまったかもしれないよ」

 

 けいねは汗をかいているのである。なずーりんはずーっと動かぬ。

白目をむいていてこわいのである。ついさっきるーみあと真っ暗なところからけいねが引っ張り出したときにはそうなっていたのである。頭にたんこぶがついておる。ううむ、吾輩がなでなでしてあげたいところであるが。とどかぬ。

 

 吾輩は後ろ足で立って、前足をこう、動かしてみるのであるが、けいねに負ぶさっているなずーりんはちょっとだけ遠いのである。ここは工夫が必要かもしれぬ。

 吾輩はじっとけいねを見ながら考えてみるのである。

 

「ん? どうしたの?」

 

 けいねに聞かれたのである。吾輩は今考えている途中なのである。とりあえずそう答えておくのである。

 

「みゃあお、と言われてもなぁ。くす。もしかしてこの子が心配なの?」

 

 うむうむそうである。吾輩は「いたいのいたいの」をしてあげるのである。前にけいねがやっているのを見たのである。……ううむ?……いたいのいたいの……何かが足りぬやもしれぬ。

 そんな深いことを考えている吾輩の後ろをばたばたと通り過ぎたものがいるのである。吾輩はびくっとしてしまったのである。みればるーみあではないか、両手を広げて、頭の上におちゃんわんを置いているのである。

 

「こら、ルーミア。せっかく買ってあげたんだから大切にしなさい」

「はい、はーい」

 

 くるりとるーみあは回りながら、頭の上のお茶碗を両手で持ったのである。スカートが揺れて髪も揺れているのである。吾輩もちょっとやってみてもよいかもしれぬ。こう寝そべってくるりと回ってみるのである。

 

「なにごろごろしているの?」

 

 るーみあよ、吾輩はごろごろしているのではない。おぬしの真似をしたのである! しかし、まあうまくいかぬのである。もうすこしごろごろして見るのである。

 るーみあが吾輩のお腹をなでなでしてきたのである。ううむ、吾輩はごろごろできぬのである。抗議せねばならぬ。るーみあの指を前足で挟んで、なめてみるのである。

 

「……」

 

 るーみあよ、にぱーと笑ってもいいのであるが吾輩はごろごろ……いやクルリとしたいのである。

 

「おーい、置いていくぞ」

 

 けいねも呼んでいるのである。るーみあと吾輩は起き上がろうとしたのである。

 

「えい」

 

 るーみあにおされて吾輩はまたころんとしてしまったのである。にゃあ、吾輩は抗議するのである。……吾輩はこんどこそ起き上がろうとするのである。

 

「えい」

 

 ころん。

 むむむ、起き上がれぬ。起き上がろうとするとるーみあが吾輩のおなかを「えい」としてくるのである。これは難しいのである。起き上がるにも工夫がいるやもしれぬ。ううむ、吾輩は口元をとりあえず舐めて考えてみるのである。

 

 るーみあよ、そう両手を構えるではない。どうすればいいのであろうか、吾輩はとても考えるのである。そういえば、昔こんな話をけいねから聞いたことがあるのである。

 きたかぜとお天道様が旅人の服を脱がせた……いやいや、それは違うのである。その話ではないのである。なんであったであろうか……。

 

「おーい」

「はーい」

 

 待つのである、るーみあよ。

吾輩はちゃんと思い出すのである。それなのに行かれると寂しいのである。吾輩はあわてて立ち上がって、るーみあの後を追いかけるのである。たったか走って、るーみあと一緒にけいねのところへ来たのである。

 

 さっきよりもけいねが疲れた顔をしているのである。吾輩は心配してにゃあと聞いてみるのである。

 

「なに?」

 

 るーみあに話しかけてはいないのである。吾輩はうなうな言ってみるのである。

 

「なにか文句があるの?」

 

 文句はないのである。しかし、吾輩はけいねが心配なのである。なずーりんは重たいやもしれぬ。少しだいえっとした方がいいのである。吾輩はちゃんとわかっているのである。なずーりんは食いしん坊さんである。

 前にけいねも言っていたのである。あんまり食べるといけないのである。吾輩はちゃんとわかっているのである。

 

「そうだルーミア、神社に行こう。ここから近いから休ませてもらおうか」

 

 びくっ。いきなりであるな。吾輩は驚いたのである。しかし賛成である。吾輩も巫女には会いたいのである。

 

 

「あ、ああ。わ、忘れてた」

 

 さあ、けいねよこの石段を登り切れば神社である。吾輩についてくるのである。

 るーみあもなんでにやにやしているのであろうか。よくわからぬがけいねよ頑張るのである。

 ひょいひょいと吾輩は昇るのである。後ろを振り向くと、だんだんと高くなっていく階段が吾輩は好きである。ちょっとずつ空が近くなっていくのである。

 けいねはなずーりんをおぶって頑張っているのである。吾輩は心から応援するのである! なにか手伝うことがあれば言ってほしいのである。

 

「ま、待ってくれ」

 

 うむ。待つのである。吾輩は待つことには定評があるのである。石段に寝そべるとなかなかひんやりしてて気持ちがいいのである。たまにあつあつなときがあるから気を付けねばならぬ。

 

「ひぃひぃ」

 

 けいねよ頑張るのである。神社はすぐそこである。きっとおいしいものを用意して巫女がまって……くれぬであろうな。るーみあよ、ちょっと手伝ってあげるのである。吾輩も手伝ってあげたいのであるが、手が届かぬ。

 

「飛べばいいのに」

「こ、こんなところで飛ぶわけにはいかないだろう……?」

「どうせ巫女くらいしかいないわよ」

「いや、たまにだけど参拝客もいるんだ……。人里で寺子屋をやっているからには下手なことはしたくない」

 

 何を話しているかわからぬが、吾輩はちゃんと覚えたのである。わからないことはあとでよーく考えたらわかることもあるのである。またたびの良くなる場所もよーく考えたらわかったこともあるのである。

 

「も、もう少しだから」

 

 石段を頑張ってけいねが昇るのである。うむ? 今ちらりと背中のなずーりんと目があったのである。もしや、なずーりんは起きているのではないであろうか?

 吾輩は前に回ってみるのである。なずーりんは目をつぶっているのである! さっきまで白目をむいていたのである! 吾輩の眼はごまかせぬ。

 

 にゃあにゃあ! そやつ起きているのである!  

 

「にゃあにゃあ」

 

 いや、るーみあよ吾輩の真似をしなくてもいいのである。それよりもたぶんなずーりんは起きているのである。そこに気が付いてほしいのである。るーみあは吾輩をじーと見てから、ニヤッとしたのである。

 

「競争ね」

 

 たったっとるーみあが石段を上がっていくではないか! 競争である! 吾輩は負けぬのである。吾輩も負けずに石段を上るのである。

 

 よじよじ。よじよじ。たまに背の高い石段があるのである。るーみあは両手にお茶碗のつつみを持っているから追いつけるやもしれぬ。吾輩は頑張ってるーみあに追いついたのである。

 

「おお」

 

 るーみあが驚いているのである。負けないのである。

 おおっ。るーみあが石段を二段飛ばしで上がっていくのである、卑怯である! あ、足を引っかけてこけそうになっているのである。吾輩はその横をすいすい抜けていくのである!

 

 るーみあも追いかけてくるのである。最後の段である!

 

「とうちゃく!」

 

 到着である。

 

「帰れ」

 

 ……箒を構えた巫女が迎えてくれたのである。

 


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