久しぶりであるな巫女よ。吾輩は会えてうれしいのである。
「あぁ? 何か言いたいことでもあるの?」
巫女が腰をまげて顔を近づけてきたのである。なんだか不機嫌であるな。いかぬのである。怒っていてはダメなのである。
吾輩はそう思って巫女ににゃあにゃあと言ってみるのである。吾輩は地底にいってこみゅにけーしょんを学んだのであるから、きっと巫女にも通じるのである。
「ご飯ならないわよ」
そうであるか……いや、そうではないのである。吾輩は食べ物をねだったのではない。
「あーあつい」
るーみあが首元を緩めて手でぱたぱたしているのである。巫女はるーみあをにらみつけているのである。
「なんであんたはいるのよ」
「さあ?」
「さあ?ってここは妖怪の来るところじゃないわよ」
「いまさらー」
るーみあは両手を広げて、くるくると回ってみているのである。なんだか楽しそうであるな。吾輩もその場でクルクルして見るのである。るーみあが巫女の周りをくるくる走っているのである。吾輩もやってみるのである。
「……!」
巫女も肩を震わせているのである! 吾輩達のいきのあったくるくるに感動しているのかもしれぬ。るーみあも吾輩をみてにやっとしているのである。
「い、いい加減にしなさ~い!!」
ビックリしたのである。吾輩はその場ですってんころりん、としてから丸くなったのである。巫女を見ると顔が赤くなっているのである。
「今日は妙な奴もくるし……あんたたちにかかわっている時間はないのよ」
「ぜーぇぜー」
おお。けいねである。死にそうなかおであるな……吾輩は心配である。
「や、やっと着いた……。あ、あれ。霊夢、な、なにかあったの?」
「いや、むしろそれはこっちのセリフなんだけど……あんたはなんで死にそうな顔をして昇ってきたのよ。……なんでそいつ担いでるの?」
「え? ああ、うん」
足がぷるぷるしているのである。なんだかおもしろいのである。……いや心配である。そういえばさっき吾輩はなずーりんのことで伝えたいことがあったような気がするのであるが、るーみあとのかけっこで忘れてしまったのである。不覚である。
「どっこいしょ」
おお、そんなことを想っているとるーみあが吾輩の両脇をもって抱き上げてくれたのである。なにか用であろうか。
「よしよし」
るーみあによしよしされたのである! いや、別に驚くほどのことではないかもしれぬが、うれしいのである。耳のところを撫でると喜ぶかもしれぬ、吾輩が。
「そ、それで何しに来たのよ」
巫女とけいねが話をしているのである。
「実は近くで陶器市があってこの子を」
けいねがなずーりんをゆさゆさしているのである。
「頭突きで気絶させてしまったんだ」
「なんで?……お茶碗を取り合いでもした?」
「いや、ヤマメを取り合いしてた」
「なんで陶器市で魚めぐって頭突きするのよ……?」
「いや、これには深いわけがあってだな。それよりも霊夢。少し休ませてくれないか」
「……はあ、少しだけだからね」
巫女がはぁあと大きなため息をついているのである。
*
ごろごろー
「ごろごろー」
ごろごろー
るーみあと吾輩は畳の上でゴロゴロを満喫しているのである。吾輩はまけぬ。吾輩はくつろぐことにかけては幻想郷一番やもしれぬ。いつかはみんなで畳の上でごろごろ勝負をしてもよいやもしれぬ。
うーむ。こがさやふとも強敵やもしれぬが、意外ともみじも強いやもしれぬ。
「すーすー」
なずーりんも寝ているのである。ほっぺたがもちもちであるな。吾輩はちょっと肉球で触ってみようとしたら、るーみあが吾輩を引っ張ったのである。
「わしゃわしゃ」
おなかを触るのは卑怯であろう。おおぉ、おお。るーみあはすぐに吾輩を離して、四つん這いでるーみあがなずーりんの寝顔をうかがっているのである。
「しー」
楽しそうな顔で吾輩をふりむいて、口の前で人差し指を立てているのである。吾輩は知っているのである。静かにするということであるな。るーみあはなずーりんの耳を引っ張っているのである。
「こら、君」
なずーりんが起きたのである。むっくりと起き上がって、吾輩達をじっと見ているのである。るーみあは気にせず耳をフニフニしているのである。
「や、やめないか、起き上がったら普通やめるだろう!」
なずーりんがていこーしているのであるが、るーみあはにやにやしながら耳を動かしているのである。
「く、くすぐったい、やめ、やめるんだ」
おぉ、るーみあになずーりんが反撃しているのである。なかなか見ごたえのある戦いであるな。だきついて、ごろごろしているのである。楽しそうであるな。
にゃあにゃあ
吾輩も混ぜるのである。ふたりだけで楽しむのはダメなのである。なずーりんもるーみあのほっぺたを引っ張っていないでこっちを見るのである。
ふりふりとなずーりんの尻尾が動いているのである。パンチしてみるのである。なかなか楽しいのである。はむ、噛んでみるのである。
「はぅ」
びくっ
なずーりんが妙な声をあげて転げまわっているのである。尻尾を抱いて、吾輩を睨んでいるのである。
「し、尻尾を噛むんじゃない!」
も、申し訳ないのである。そこまで反応されるとは思わなかったのである。
うむ? どたどたどたと音が聞こえるのである。誰か近づいてきたのである。吾輩はるーみあの足元に隠れてみるのである。座敷の障子に影が映ったのである。頭に角があるのである! ……なんか見たことがあるのである。
ぱぁーんとふすまが開いたのである。
「こんにちはー。つめたーい麦茶が入りましたよー」
こまの である!
手にお盆を持っているのであるな。いくつかの茶碗に麦茶が入っているのである。
「誰だ君は」
「誰?」
「やだなぁー。高麗野あうんですよー。霊夢さんを手伝っているんです。それよりさあさぁ、麦茶をどうぞ」
吾輩も、吾輩も。
「ふっふっふ。ちゃんと猫さんの分も用意してますよ。水で割った麦茶ですよー」
吾輩の前にお茶碗が置かれたのである。吾輩は、ぴちゃぴちゃ舌でそれを飲むのである。るーみあとなずーりんも何か言いながら飲んでいるのである。
おいしいのである。麦茶を飲んだのは初めてである。こまのは吾輩の前に座って「おいしいですかー」と言っているのである。吾輩は、みゃあと言っておくのである。
「猫さんとは毛づくろい友達ですからね―」
毛づくろい友達であるか、ふともそうなのかもしれぬ。吾輩も毛並みのめんてなんすをかかさぬからこんどこまのにもしてあげるのである。
そういえばけいねと巫女はどこに行ったのであろうか。吾輩は起き上がってこまのの開けたふすまからとことこ歩いていこうとしたのである。
「ダメですよ~」
こまのが吾輩の前に立ちふさがったのである。
「今日はほかにお客がきているんです。しばらくの間皆さんをここから出しません。霊夢さん曰く『あったらめんどくさいことになる』だそうです!」
とことことこ、こまのの脇を通って吾輩は外に出ようとしたのである。
「あーだめですって」
おお、捕まったのである。るーみあとなずーりんよ気を付けるのである。こまのもなかなかやるのである。
「ふっふっ。このねこさんが大切なら、おとなしくしててください」
すまぬ人質になってしまったのでる。
なずーりんがぱんぱんとお尻を叩きながら立ち上がったのである。
「猫質というやつか、私はもう帰るだけでいいんだ。そこをどいてもらおうか」
なずーりんがキリっとした顔で言った後、後ろからるーみあが膝カックンしたのだ。