吾輩とあうんは並んで座ったのである。あうんは下を向いて正座しているのである。背筋がぴんとしてなかなか姿勢がいいのである。吾輩はちょっと疲れたのでくつろぐのである。
ドンっ
吾輩達の目の前で巫女が足を踏み鳴らしたのである。吾輩はちょっとびくっとしてしまったのである。あうんもびくっとしているのである。おそろいやもしれぬ。
「あんたたちはいったい何をしているのよ」
巫女が怒っているのである。うむ? 巫女の後ろで青い髪の少女がそっぽを向いているのである。
吾輩とあうんは巫女に座るように言われたからここにいるのである。何を怒っているのであろうか、あまりあうんを責めるのではないのである。あうんも反省しているのである。
「ううー。でも猫さんが逃げるのを一生懸命おいかけたんですよ~霊夢さん」
とても楽しかったのである。
吾輩はまたやりたいのである。あうんに近寄って頭をすりすりとこすりつけてみるのである。
吾輩は思ったのであるが、こみゅにけーしょんは言葉以外でも意外といけるやもしれぬ。
「はあ、なんかあんたなつかれているわね。まあ、こいつは誰にでもなつくけどね」
巫女よ、吾輩はなついたりはせぬ。ただ、ちょっと遊んであげるにもやぶさかではないのである。巫女にそう抗議しようと近づいていったのである。
「あれ、リボン」
おお、そうである。吾輩は地底にいったときにさとりからリボンをもらってつけているのである。どうであろうか、吾輩は胸を張ってみたのである。
おお、ぉお。巫女が吾輩をなでなでしてくれたのである。なんだか珍しいのである。
ぅおぅうおぅ。なんだかうれしいのである。そこである、おお、巫女がなでなでしてくれることはたまにしかないので吾輩はうれしいののである。二度もうれしいと言ってしまったではないか。
「あ、思わず。……こいつ」
「そんなことよりも」
後ろにいた青い髪の少女がしゃべったのである! 長い髪がきらきらしていて、かぶっている帽子に果物がついているのであるな。すごいのである、すかーとが七色に光っているのである。すかーともがんばり屋さんなのであるな。
「天子……」
てんしであるな覚えたのである。しかしである……
「そんな猫なんてほおっておいて、さっきの話の続きをするわよ」
ふふんとてんしは両手を組んで鼻を鳴らしているのである。巫女がてんしをみているのである。吾輩はこう、思うところがあるのである。
「地上の奴らの度肝を抜くくらいの宴会を開いてやるわ。霊夢ももちろん呼んであげる」
「はあ、そう……ん?」
吾輩は負けぬ、巫女の手を舐めてこっちを向いてもらうのである。おお、巫女よこっちをみるのである。てんしよ、珍しい巫女のなでなでを邪魔されては困るのである。
ころん。にゃあにゃあ。
ぉお、おなかをさすってくれるのである。てくにしゃんであるな。あうんがそおぉと頭を下げているのである。わかるのである。なでなでしてほしいのであな。しかし、吾輩はここは譲らぬ。あまりないのである。
「霊夢? 聞いてるの?」
にゃあにゃあ! 巫女よ、吾輩と遊ぶのである。てんしにはまけぬ。吾輩は巫女の指を前足でつかんで舐めるのである。
「くすぐったい……、てん」
巫女が天子に話しかけようとしたときあうんがじりじりと近づいて巫女の前でころんと寝転がったのである。
「あ、霊夢さん。私もなでなでしてもらってやぶさかではないですよ。いえ、むしろ、いいですよ」
「いいって何がよ」
「霊夢! 宴会のこと」
にゃあにゃあ
「霊夢さん! はやくはやく」
てんしと吾輩とあうんが同時に巫女に言うのである。巫女は立ち上がったのである。
「う、うるさい! 何なのよあんたたち!」
怒られたのである。いや、吾輩はただなでなでが嬉しかっただけである。
「だって、霊夢さんが猫さんだけ撫でてて……」
「あーもうほら」
巫女があうんをなでなでしているのである。あうんは「うん、うん」と言いながら頷いているのである。吾輩ももう少しなでなでしても構わないのである。巫女よ開いた右手を使っても構わぬ。
みゃー。と鳴いてみると巫女は吾輩をちらりと見たのである。
「はあ、なんなのよ」
! 顎の下をこちょこちょであるか、吾輩は……吾輩は……好きである……。ううむ。吾輩とあうんは一緒にこちょこちょとなでなでをされて満足である。
「…………っ」
はっ、てんしが吾輩を睨んでいるのである。こちょこちょしてほしいのであるな……巫女よてんしもこちょこちょしてあげるのである。またはなでなででもいいのである。
てんしもきっと巫女のことが好きなのであるな。吾輩にはよーくわかっているのである。
「ふんっ」
てんしが踵を返してどこかに行こうとしているのである。吾輩は巫女の手を振り払って、てんしの前に出たのである。
「なによ」
両手を組んでてんしは吾輩を見下ろしているのである。なかなか迫力があると思うのである。しかし、吾輩も負けてはおれぬ。後ろ足で立ち上がってみるのである。
いかぬのである、巫女もいいやつなのであるから、ちゃんとおねだりせねばいかぬ。正直になでなでしてほしいといっても恥ずかしいことはないのである。
「? おまえ」
うむ! なんであろうか。
「もしかして私を……慕っているのか」
……ふとのようなことを言い出したのである。しかし、吾輩はもうなれっこである。はんろんはせぬ。
「きっとだっこしてほしいんですよ」
ぬっとあうんが顔を出してきたのである。てんしは「あんたは誰だっけ」と言っているのである。あうんは、
「やだなぁ、高麗野あうんですよ。比那名居天子さん」
「……どこかであったかしら」
「ずっとみてましたから! それに今日は霊夢さんとのお話を邪魔されないように頑張ったんですよ……まあ、ちょっと失敗しちゃいましたけど」
にこにことあうんが笑っているのである。巫女はなんだか呆れている顔であるな。それにしても吾輩はそろそろこの姿勢がきつくなってきたのである。どうにかしてほしいのである。
「ほら、だっこだっこ」
あうんがてんしの後ろをいったり来たりしているのである。てんしは「はあ?」といっているのであるが、吾輩はきついのである。巫女よなんとか言ってやるのである。
「天子、とりあえず抱っこしてあげれば」
「……し、しかたないな、ん」
てんしが吾輩に手を差し伸べてきたのである。片手だけである。
……どうすればいいのであろうか。吾輩は片手だけ差し出されてもどうしようもないのである。上るには前足が届かぬ。
「天子……。たぶんそれじゃあ無理じゃない?」
「そうですよ。比那名居さん、こうっ両手で」
あうんも巫女もちゃんと言ってやるのである。てんしよそんなやり方では吾輩は抱っこできぬ! ううむ、そんな気合を入れて言うことでもなかったやもしれぬ。
「……こ、こう?」
てんしが吾輩の前足を持ったのである。これはだんすようであるな、しかし、天子がしゃがんだのである。吾輩はシュッと足をおろして、てんしの膝を土台に胸元まで上ったのである。
「おっおお……」
顔が近いのである。吾輩はてんしの肩に前足をのせてにゃあと鳴いてみたのである。するとてんしふんぞり返ったのである。
「動物に慕われてしまうとは、これも天人としての徳かな」
ほっぺたがなんだか赤いのであるが、なんであろうか、吾輩はちょっといたずらをしたくなったのである。しっぽをてんしのまえでふりふりしてみるのである。
「……へっくち」
てんしがくしゃみをしたのである。