わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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おふろとばんしゃくである

 どたどた音がするのである。きっとけいねがやってきたのであろうな。

 

「な、なんだ今の声は!」

 

 慌てたけいねがお風呂場に入ってきたのである。ぬえはあわてて「な、なんでもない」と言っているのであるが、ううむ。けいねよ、ぬえが体を抱きかかえるようにして寒そうである。何とかしてほしいのである。

 けいねははあとため息をついているのである。

 

「また、行水をしようとしているのか? まだ寒くはないからって自分を痛めつけるようなことには関心出来ることじゃないな。妹紅。ほら、とりあえずこれでで体を拭いて待っててくれ。今私が外でお風呂を沸かすよ」

 

 けいねは白い布をぬえに渡したのである。

 

「まあ、私も甘えたのが悪かったしなぁ。悪かったよ」

 

「あぁー」

 

 ざばーとぬえが肩までお湯につかったのである。吾輩はあふれ出したお湯に前足をつけてみるのだ、おお、いい湯加減である。

 

「まさか、水風呂だったとは思わなかった。妹紅ってやつは風呂焚きをさせられているんだなぁ。ああ、寒かった」

 

 お疲れ様である。ぬえは気持ちよさそうに両手をあげて右手で左手の肘をもったまま、体を伸ばしているのである。吾輩も少し真似してみようと思ったのであるか、なかなかむずかしいのである。

 

 吾輩は湯舟にとんと飛び乗ったのである。目の前にぬえの顔があるのである。まつげが長いのであるな。こう、きらきらしてて綺麗である。

 

「お! お前も入るのか?」

 

 ううむ。少し深いのである。ぬえよ吾輩を抱っこしてほしいのである。妹紅も川でやってくれたのであるが、あれは寒かったのである。……そう考えると吾輩はぬえの気持ちがよーくわかるのである。冷たいのはいやであるな。

 

「ほらほら」

 

 ぬえが手ぬぐいをお風呂につけて、ぷくぅっと膨らませたのである。おお、なんであろうか! とても気になるのである。吾輩は前足を伸ばしてぱんちしてみるのである。柔らかいのである。

 

「お前、砂がついているな。よっと」

 

 ぬえが吾輩を持ち上げて湯舟から上がったのである。それから木の椅子に座って吾輩にお湯をかけたのである! ビックリしたのである! 

 

 にゃあにゃあ。

 

「風呂に入る前にちゃんと綺麗にしておかないとな」

 

 ごしごし、ごしごし。手ぬぐいでこすってもらった後にお湯をざばーとかけられるのである。なかなか気持ちいかもしれぬ。慣れてきたのである。

 吾輩もぬえにやってあげてもいいやもしれぬ。しかし、なかなか難しいのである。どうすればいいのであろうか。

 

「よし、綺麗になったな」

 

 きれいになったのである! しかし、吾輩の毛並みがびしょびしょである。こう、濡れていると体が重くていやであるな。ぬえは湯舟にざばーんと入ってしまったのである。吾輩はなんとかよじ登ったのである。ううむ、重い。

 

 ぬえの顔がまた近くにあるのである。吾輩はお風呂の中を覗き込んでみたのであるが、やはり深いのである。泳げぬことはないのであるが、こうくつろげぬ。

 む? いいところがあるではないか。

 ぬえが膝をあわせて座っているのであるからして、その上にぴょんとのってみるのである。

 

「うわっぷ」

 

 膝にのると吾輩はちょうど首くらいまで出るのであるが、乗るときにお湯を飛ばしてしまったのである。申し訳ないのである。

 

「……まったく」

 

 ぬえは怒ったようであるが、膝は貸してくれているようである。ぬえは両手を頭の後ろで組んで体を反らしているのである。こう、吾輩はとても気になるのであるが、前の「いく」もそうなのであるが首のつけねのあたりが突き出ているのはなんでであろうか……いくはさこつと言っていた気がするのである。

 

 ぱんち。

 

「あ?」

 

 ぬえに睨まれたのである。いかぬいかぬ。いたかったのかもしれぬ。悪かったのである・吾輩は叩いたところを舐めていたわったのである。

 

「ぃぃ」

 

 ぉおお、ぬえが動いて、吾輩はお湯の中に沈んだのである。

 

 

 もぐもぐ。

 これは吾輩ではないのである。けいねと向かい合ってぬえがご飯を食べているのである。丸い机の上に吾輩が載ろうとするとけいねが「めっ」としてくるのである。

 しかし、おいしそうなご飯が並んでいるのである。吾輩は机に前足をかけて、けいねをじっと見つめてみるのである。

 

「こら、物欲しそうにしてたらダメだぞ」

 

 難しいのである……。けいねはお箸をつかってご飯をパクパク食べているのである。吾輩も箸を使うべきであろうか。

 

「そういえば、妹紅。そのねまきは大丈夫か、私のだから少し大きいかもしれないが」

「ああ、うん」

 

 ぬえはご飯を食べながら答えているのである。そうである。ぬえならば吾輩に何かくれるやもしれぬ。吾輩はのそのそ近づいていったのである。

 

 ぬえはちらっと吾輩をみて、べーと舌を出したのである。

 吾輩も負けてはおれぬ、同じように舌を出してみるのである!

 

「ああ、この子をお風呂に入れてくれてありがとう。お酒でも温めてこようか!」

「……うん!」

 

 ぬえが笑ったのである。けいねよ吾輩もお助けするのである。

 立ち上がったけいねにとてとてついていくと、台所の前でけいねが言ったのである。

 

「それにしてもびっくりしたよ。さっきまで妹紅に見えていたんだけどなぁ……できるだけ強い酒をのませてみようかな」

 

 うむ?

 けいねよ何か言ったであろうか?

 

「……ん? お前にお酒をあげるわけにはいかないからな。そうだな、麦茶をあげよう」

 

 うむうむ。

 

 

「あー」

 

 ぬえよ、寝転んでおなかをかくでない。

 それにしてもよく飲んだのである。お酒を吾輩は飲んだことはないのであるが、みんな気持ちよさそうになっているのである……吾輩も少し飲んでみたいのである。

 吾輩はそう思って、ぬえの使っていたおちょこを舐めようとしたのである。

 

「こら」

 

 けいねに怒られたのである……今日はよく怒られる気がするのである。けいねは食器を片付けているのである。吾輩も手伝おうとしたのであるが、尻尾を掴まれたのだ。

 

「ううー」

 

 ぬえよ、離すのである。寝ぼけているようであるな。吾輩はぬえのほっぺたをパンチしてみるのである。それにしてもだらしなく口が開いているのである。それにねまきもちゃんと着ておらぬ。

 ぷに、ぷに。

 ほっぺが柔らかい。吾輩はなんどかパンチしてみるのである。しかし、吾輩は前に噛まれたことがあるのであるからして、ちゃんと気を付けてこうパンチするのである。離すのである。

 

「ぅう」

 

 おぉ、逆にだっこされたのだる。

 

「ゆたんぽ」

 

 ゆたんぽではない。吾輩はわがはいである。しかし、もぞもぞ動いてもぬけだせぬ、吾輩は仕方なく、ぬえと一緒に寝ることにしたのである。

 

「あ、ほんとに寝ちゃったのか。やっぱり強いお酒を飲ませすぎたかな」

 

 けいねであるな。吾輩はそっちを見てみたのである。手に掛布団をもっているようである。それをぬえにそっとかけてあげているのである。吾輩はぬえと布団の間のどーくつのようになっているところから、にゃあと言ってみるのだ。

 

「ああ、おやすみ」

 

 ! けいねに吾輩の言葉が通じたやもしれぬ。うれしいのである。

 これで安心して眠ることができるのである……。今日はいろいろあって楽しかった。

 

 

「おひさしぶりですね。猫さん」

 

 みゃあぁ……。ここはどこであろうか、吾輩はすくっと立ち上がってみれば神社の真ん中にいるのだ! 吾輩はなんでここにいるのであろうか?

 

「困惑しているようですね。しかし、安心してください」

 

 頭に帽子をかぶった……ドレミーがそう言っているのである。久しぶりである。

 

「ここは夢の世界ですから」

 


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