夏のお祭り   作:あっさりぽん酢

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時系列無視、キャラ崩壊注意、作中の京黄は別に付き合ってません、仲はいいけど。題名が何の捻りもないのは許してください。そんなのがOKって人はどうぞ。


1話

遊園地から日は巡り、土曜日の朝。目覚ましが鳴ると同時に目が覚める。静かな部屋の中で俺のあくびだけがゆったりと漂う。

 

「っあぁー・・・眠・・・」

 

小さく呟いて布団を退ける、二度寝したい気分ではあるがそこまでだらけた生活は体に良くない、騒ぐ目覚まし時計を叩き、鳴り止ませる。

 

部屋着に着替え目元を小さく擦り、シーツを整えて部屋のドアの開けて1階へ向かう。階段を降りる途中にリビングから音と声が聞こえるたので、母さんが飯でも作ってくれているのだろう。

 

「おはよう母さん」

 

「おはよう京介、ご飯出来てるから早く食べなさい」

 

「おはよーやんね剣城!あ、おばさんご飯おかわりー!」

 

「はいはい、どんどん食べてね。あ、黄名子ちゃん隣のおかずは京介のよ」

 

朝の決まりの挨拶をするとしっかりと二人の返事が帰ってきたので、山盛りのご飯とおかずを貪る黄名子の隣に座り、手を合わせて箸を取る。

 

「黄名子も朝早いんだな、てっきり寝てるものかと」

 

「うちは朝はちゃんと起きる子やんね!」

 

「そうかそうか・・・・うん?」

 

ふと部屋の壁にかけてある時計を見る、その短針が示すのは7時。寝ぼけ気味の頭を回転させて考える・・・までもなくこの状況はおかしいと理解できた。

 

別に黄名子が俺の知らない間に家に上がって飯を食べているのはいつもの事なので驚きはしない、ただこんな朝早くに来るのは珍しい。

 

「今日は家にくるのが随分早いんだな」

 

「良かったじゃない京介、朝イチで黄名子ちゃんの顔を見れて」

 

「一番最初に見た顔は母さんだ」

 

「・・・・・ごめんね京介・・・母さんったら償いきれないわ・・・」

 

「そんなに重罪だったか!?いや土下座は止めてくれ!俺が悪かった!」

 

床に額を擦り付ける母さんを無理やり起き上がらせる。まさかそこまで罪悪感を持たれるとは思ってなかった、冗談でもこの手の発言には気をつけるべきだろう。

 

「で、話を戻すが、今日は随分と早いんだな」

 

「そうだった!早く伝えたい事があって思わず来ちゃったやんね!そしたらおいしそうなご飯の匂いがしたからそっちを先に頂いてたやんね!」

 

そういいながらご飯を口にかきこみ、もぐもぐと動かす黄名子。

 

「・・・・・お前、自分の家で朝食べなかったのか?」

 

「勿論食べてきたやんね?」

 

あえて何も言うまい。

 

「それよりほらほら!これ一緒に行こー剣城!」

 

丁度ご飯を食べ終えた黄名子が、近くに置いてあった自分の鞄から一枚の紙を取り出す。カラーで書かれている花火、屋台、夏祭りと言う大きな文字を見て分かる通り、これはそのチラシだろう。

 

「どれ、開催日時は今日・・・なるほど、これに行きたいという事か」

 

「すごいんだってここ!お店もいっぱいあるし、大きな花火もあがるやんね!夕方の6時くらいから行こうと思うんよ!」

 

「6時から?開催時刻は3時からって書いてあるぞ?」

 

黄名子の事だから、少しでも長く楽しみたいとかの理由で早めに行くものかと思ったが、本人が希望するのはそこから3時間も遅い6時。終わるのが9時頃なので時間が無いわけではないが、少し違和感を覚えた。

 

「んー、そうなんやけど、やっぱり6時やんね!・・・駄目?」

 

「あぁ、いや別に駄目じゃない。なら6時でいいんだな?」

 

「うんっ!」

 

黄名子が声を弾ませて笑顔を浮かべた、俺はその笑顔を見ていると何故か顔が赤くなるのを感じ、手元のチラシに目を落とす。

 

チラシを見る限り、祭りの場所は稲妻町から少し離れた所なので移動は電車になるだろう。しかし夕方6時か、それまでまだかなり時間があるがどうしたものか。

 

 

予定を確認してから席に座る。とりあえず目も覚めてきて腹も減ってきたし、あれこれ考える前にさっさと朝飯を食べるとしよう。そう思い箸を手に取って空っぽになった茶碗を――――――――

 

「・・・・・おい黄名子、何故俺の茶碗と皿が空っぽなんだ」

 

「あ、あれぇー?うっうち知らないやんね?」

 

「味はどうだった?」

 

「剣城の卵焼きは関西風だったやんね!」

 

「この暴食ストライカーがっ・・・!」

 

「ほっへはふへらないで~!(ほっぺたつねらないで~!)」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

朝。カーテンから差す光が俺にそう知らせる。目覚まし時計がなるより早く目が覚めるのはいつもの事だ、これでは目覚ましである意味がないな。

 

少し朝の眠気に負けてもう一度だけ目蓋を下ろす。堕落していると指摘されれば否定できないが、最近は疲れがよく溜まるので少しくらいは許して欲しい、原因の大体は雷門の白髪GKのせいなのだが。

 

少し寝返りを打つと、背中の方に感触があった。

 

朝方のベットにいるという事はまたアリアか。リュートと違ってアリアはよく俺のベットで寝ていたりする、夜中に入り込んだりするので朝の毛の処理が大変なのだ。

 

体を隣にいるであろうアリアの方へ向け、その頭を優しく撫でる。

 

「おはようアリア。駄目だろ?寝てる間に勝手に入っちゃ」

 

「おはよう神童。そうだな、これからは起こしてから入るとしよう」

 

「お前はいつ見ても綺麗な白い毛だな。反省したかアリア?それじゃ今日は部屋で遊ぶぉおおおうぅっ!?」

 

体中のバネを使ってベットから跳ね起きる。すぐさま体勢を立て直し着地、ベットの方を睨むと、どうどうとした態度の井吹が寝転がっていた。

 

「どうした神童、さっき見たいに頭撫でてくれ、あれめっちゃ興奮する」

 

「黙れ!何故お前がここにいる!窓は閉めてあるし扉はカギもつけたはず!」

 

「一番上の階の部屋、窓のカギが開いてたから侵入は簡単だったな」

 

「うちの一番上は3階で外から登れる梯子とかはないはずなんだが・・・?」

 

たまに思うんだが、こいつはサッカープレイヤーよりアサシンとかの方が向いてる気がする。

 

「そんな事はこの際どうでもいいさ、それより神童、今日の夕方頃予定はあるか?」

 

俺にとってはどうでもいい事などではないが、これ以上続けても何も進展しないと理解し、話を一旦区切り井吹に答える。

 

「いや特にはないが・・・また何かよからぬ事でも考えてるんじゃないだろうな」

 

「俺が毎日神童の事をつけ狙ってるとでも思ってるのか?」

 

「違うのか?」

 

「いや違わないが」

 

いかん、今すぐ殴りたい。

 

しかしそれで話を中断させるのはそれはそれで落ち着かないので、高まる鼓動を抑え握りこぶしを解く。

 

「実は今日の夕方頃に祭りがあるらしくてな、中々規模のでかいやつ。せっかくだから遊びに行こうぜ」

 

「祭りか・・・最近行ってないし、いいかもな」

 

井吹の提案に少し乗り気になる。実際楽しい行事は嫌いじゃない、ただ問題は井吹と一緒という事だけだ。こいつの事だから、俺に女用の浴衣を着させたりしそうで怖い。

 

「一つ言っておくが、俺は絶対に女装はしないぞ」

 

「まだ警戒してたのか。別に無理やりさせたりしないから安心しろよ、な?俺を信じろ」

 

「・・・っ!・・・・・・ふっ、仕方ないな」

 

俺の目をまっすぐと見据える井吹、その目に曇りはない。・・・・ずるい奴だ、仲間にそこまでされたら信じるしかないだろうが。

 

「それじゃ、今日の夕方は祭りだな。何時に行くつもりなんだ?」

 

「そうだな・・・色々準備とかがあるから6時辺りにしてくれると助かる、集合場所は駅近くの噴水でいいか?」

 

「6時な、分かった」

 

準備という言葉が気にかかったが、予定を決め終わった井吹が俺の衣服を盗もうとしているのを見て、すぐに考えるのをやめた。

 

「途中で危険を感じたから行くのやめたとか言うなよ?言ったら女装だからな」

 

「分かったからとりあえず今掴んでいる俺のシャツを返せ・・・おい靴下を食べようとするな!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

時は進み、約束の6時ちょっと過ぎ、夕焼けが見え始める頃だ。待ち合わせ場所である駅前の噴水の縁に腰掛け、一人佇む。

 

「黄名子の奴はまだ来てないか」

 

辺りを見渡しても黄名子の姿はまだない。駅前にいつもより人が多いのは祭りがあるからか、離れているとは言えそこまで遠くない場所で規模も中々、電車で向かう程の価値があるという証明だろう。

 

何気に自分の装いを確認、ちなみに今の俺の服は浴衣である。それと言うのも、何故か俺の部屋から服が全て撤去されてこれ一つだけがベットに畳んで置いてあったのだ。間違いなく母さんの仕業だが、俺自身なんとなく着てみたさがあったので文句を言わずに着ている。

 

「つーるぎー!お待たせやんねー!」

 

離れた所から名前を呼ぶ声がしたので、その声の主を探すと、大急ぎでこちらに走り寄ってくる影があった。

 

「別に待ってないから慌てるな、転ぶぞ?」

 

「そこまで子供じゃないやんね!って剣城も今日浴衣だったやんね?」

 

「母さんに無理やり着せられてな、お前も浴衣で来たんだな」

 

黄名子が着ているのは黄色い布地に赤色の帯、派手な色をした綺麗な浴衣だ、いかにも黄名子の色って感じがする。

 

「実はこれ今日の3時くらいに届いたんよ、お祭りにどうしても着たくて買っちゃったやんね!」

 

「なるほど、だから集合時間を遅めにしてたのか」

 

首をうねらせて自分の服装を見る黄名子。相当お気に入りなのか、何回も見直しては笑顔を浮かべている。遅れたのも着付けに時間がかかったのだろう。

 

そんな様子を眺めていると、不意に黄名子が顔を上げて、俺の顔をジッと見つめる。

 

「・・・?・・・なんだ?」

 

「なんだ、って・・・普通女の子が浴衣着てたら言うべき事があると思うやんねっ!」

 

「うぐ・・・」

 

黄名子に指摘され息が詰まる。確かに女子の浴衣姿を褒めるというのはよくある事だが・・・・それを素直に伝えるのは、少し気恥ずかしさが・・・・、とりあえずそれっぽく言っておくとしよう。

 

「・・・その、似合ってるなその浴衣」

 

「むー・・・剣城はオンナゴコロが分かってない!そこは可愛いねっ、とか綺麗だっ、とか言う場面だったやんね!」

 

「ぐっ!・・・あ・・・・・か、かわ・・いいぞ・・・黄名子・・・」

 

「・・・・・にひひー♪ありがとー剣城ー♪」

 

ふくれっ面の黄名子に負けて、仕方なくその言葉を口に出す。するとさっきのふくれっ面が嘘のように、にやけ顔に変わった。

 

「調子のいい奴め・・・ほら行くぞ、そろそろ電車が来る」

 

「りょーかいやんね!」

 

スマホの画面を見るともうすぐ電車がやってくる時間だ。俺は黄名子に声をかけホームへ向かって歩き出す、黄名子はすぐに俺の隣へ立ち、その足を進めた。お互い慣れない浴衣での移動に戸惑い、顔を見合わせ小さく笑う。

 

「剣城剣城、ちょっと屈んで耳貸してー」

 

「ん?なんだ?」

 

「・・・・・剣城の浴衣もかっこよくてステキやんね」

 

そうして耳元で小さく聞こえた声に、俺は盛大に咳き込んだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

いつもと違い、少し賑やかな駅前。俺は噴水の縁に座り、一人の仲間の到着を待っていた。

 

時刻は6時丁度、だというのに今だ井吹の姿は見えない、今日の朝頃言っていた用事とやらが長引いてるのだろうか。ズボンのポケットからスマホを取り出し再度時間を確認する。

 

周りにいるのは祭りに行くであろう家族やカップル、中高生のグループがちらほら見える。中には浴衣を着ている人もいた。

 

尚、俺は至って普通の私服だ。浴衣を持ってはいるが仲間内、しかも男同士で出かけるのに必要ないし、何より動きにくい。別に着るも着ないも個人の自由なのだからいいだろう。

 

「待たせたな神童、少し準備に手間取った」

 

「っ!?・・・って井吹か」

 

突然隣から名前を呼ばれビクっと反応する。何時の間にか俺の隣にいた井吹の声だ、片手に持っている袋は荷物か?それにしては大きすぎるような気がするが・・・。

 

「っていうか気配を出さずに近づくなよ・・・」

 

「そっちの方が可愛い反応がもらえると思ってな」

 

相変わらずイラっとくる言い方だが特に何も言わずにスルー、言い返してもこちらが疲れるだけだと最近察し始めた。

 

「お前、今日は甚兵衛着てるのか」

 

「あぁ、夏祭りだしそれっぽい格好はしてみたいだろ?どうだ、似合うか?」

 

井吹は私服ではなく甚兵衛を身にまとっている、浴衣より断然動きやすいし、いかにも夏という雰囲気だ。しかもよく似合っている。

 

「いい感じじゃないか、俺も着てくれば良かったかな」

 

「やっぱり神童も着てみたかったりするのか?」

 

「まぁ夏祭りだし、和服で楽しみたい気持ちもあるな」

 

「・・・そうか」

 

おっと、話し続けてばかりじゃ時間が過ぎるばかりだ。とにかく井吹とも合流できたし行くとしよう。そう思い噴水の縁から腰を上げ――――――

 

「すまん、手が滑った」

 

―――――俺は噴水の中へ頭から突っ込んだ。

 

跳ねる水しぶきが夕焼けの赤を反射し幻想的に映る。俺は全身びしょ濡れのままムクリと起き上がり、静かに立ち上がった。

 

「・・・・・・・・なぁ井吹」

 

「すまん神童、手が滑ったんだ。だが濡れたままでは風邪を引いてしまう、そこで俺に良い考えがあるんだが」

 

「これはどういう事か説明しろ」

 

「実は俺の手元にたまたま女物の浴衣があってな、なんとこれが神童にピッタリのサイズで」

 

「確信犯だよな!それ絶対確信犯だよな!?」

 

立て続けに建前を重ねる井吹に、びしょ濡れのまま叫ぶ。俺には見えない!井吹が嬉しそうに取り出している女物の浴衣なんか見えない!

 

「大体無理やり着せないと言ってただろ!それはどうなんだ!」

 

「別に神童が何も着ないという選択をするなら、それはそれで興奮する」

 

「変態がっ・・・やってられるか!なら俺はもうこのまま帰るぞ!」

 

「途中で帰ったら女装って約束したから今すぐ着替えようぜ」

 

「あの時の質問は伏線かよ!あと少し意味合いが変わってないか!?」

 

右を見ても女装、左を見ても女装。くそっ・・・これは王手をかけられた状態だ・・・だがまだ諦めるわけにはいかん・・・そうだ、この状況を打破するには難点を指摘すればいいんだ!現実的に不可能、または無茶だと理解させることが出来れば井吹も諦めるはず。

 

「そうだ着付け!着物は着るのに30分、下手したら1時間かかる代物と聞いた。それなら一度家に帰って服を着たほうが」

 

「最近着物の着付けにハマッててな、5分で終わらせられるようになった」

 

王手じゃなくて手詰まりだった。

 

―――――――――――――――

 

「俺はなんて無力なんだ・・・惨めなんだ・・・」

 

「ヤバいぞ神童、可愛すぎて心臓が弾けそうだ」

 

トイレで迅速に着付けを終わらせた俺達は再び噴水前に集まっていた。絶望している俺と対極的に、前回の遊園地でシャッタ-音に文句を言われたからか、音量が小さいカメラで連写している井吹の顔は生き生きとしている。

 

「今日は・・・今日こそはゆっくり楽しめると思ったのに・・・!」

 

「見てみろ神童この写真、お前やっぱりすごく似合うぞ」

 

「お前のせいだからな!?遊園地の時も言ったが似合ってるとか言われても嬉しくないんだよ!・・・ん?」

 

井吹に怒鳴りながら今撮られていた画像を見ると、案外違和感がない・・・?髪を結っているせいか俺自身、これが自分だと判断できないくらいだったのだ。

 

「どうした?自分の可愛さに惚れたか?」

 

「いい加減にしないと締めるぞ。ただ、俺と判断できないくらいに完成度が高いのがある意味助かっただけだ」

 

前回の遊園地では恥ずかしさがあったが、今回は2回目。恥ずかしさがまったく無いわけではないが、1回目に比べれば全然マシだ。見た目でバレないという安心感もアドバンテージになり、精神的に少し楽になった。

 

「神童が女装を受け入れるとはな、俺は嬉しいぞ」

 

「決めた、今日が終わったらお前を締める」

 

殺気を渦巻かせ、歩き慣れない浴衣に四苦八苦しながらも改札へ向かう。

 

どうやら今日も俺は、こいつに振り回されることになりそうだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




ここまで読んでいただきありがとうございます。まだ夏祭り会場に着いてすらいませんが、それは次回という事で。宜しければ次もお願いいたします。
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