ファントムオブキル―浄罪の大罪人―   作:三水レイシャ

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epilogue

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 核爆弾。

 それは人類が生み出した、最も悍ましく、最も嫌悪すべき科学の悪魔。

 人類に対して使われたのは太平洋戦争時の二度であり、東西冷戦時に開発競争が盛んになった人類史上最悪の大量殺戮兵器の一つ。

 異界存在の侵攻を食い止めることが出来なかった無価値な有害なだけの役立たず(ゴミ)である。

 一度は、二十二世紀初頭に起きた杉山義弘のテロによって全ての核兵器とそれを製造し得る危険国家が壊滅させられ、核兵器製造禁止条約によって核兵器の根絶が世界によって選択された。それにも関わらず、大国によって極秘裏に製造されていた国が縋る悪夢だ。

 そして。

 現代兵器とは無縁なはずの天上世界にて。

 人類に振るわれた三度目の惨劇の結末を、シンは目の当たりにしていた。

(何が……起きている……?)

 予想の埒外の現実がシンを困惑の淵に立たせていた。

 今回の一万体の異族の裏には間違いなく計画派(きょうかい)の目的がある。

 その目的はキラープリンセスを意図的に暴走させ、暴走時のエネルギー保有量を計測するというもの。

 少なくとも、シンはそう考えていた。

 それは間違いではないはずだ。少なくとも、コルテ大規模討伐戦の真なる目的を言い当てているはずだ。

 では、何故、何故コルテが爆破される。

 理解できない。意図が見えない。

 どうしてコルテを爆発させたのだろうか?。

 忌々しい惨劇の結果を睨みつけ、シンはひたすらに思考を巡らせた。

 何処で間違えた。何を間違えた。俺はまた失敗したのか。

 繰り返す自問自答。けれど、答えは見つからず。

 睨みつけていた巨大なキノコ雲はもくもくと天へと昇っていった。お前のしていることなど取るに足らないことだと、嘲笑っているようにシンには見えた。

 シンが思考の海に溺れている最中、唐突に左眼の人工知能〈ana(アナ)〉が画面を赤く点滅させた。

『六時方向!生物反応あり!』

 不自然な警告に、パッと背後を振り返る。

「お前は………っ!」

 そこにいたのは白衣(・・)の女。金髪のアメリカ系の顔立ちをしている白人の女だ。

 シンは胸の内で燃え上がる黒い憎悪を隠しきれず、吐き棄てるようにその名前を呼ぶ。

「計画派の〈女帝〉アンナ・エフェンベルグ!」

「その〈女帝〉という呼び方、随分耳にしていなかったように思います。元々は天才マック・フューリーが大アルカナになぞらえて研究員に付けた渾名でしたね。であれば、こちらもそちらの作法に合わせましょうか」

 アンナはニッコリと微笑んだ。

「お久しぶりですね、〈愚者〉。貴方との再会は実質時間では三千年、体感時間としては五年ぶりと言った所でしょうかね」

 シンはアンナの会話に応じなかった。

 間髪入れずに、懐に忍ばせていた拳銃を引き抜いて、発砲する。

 パン、パン、パン、と乾いた音が三回花畑に響いた。

 小さな鉄の塊はアンナの頭蓋を撃ち抜き、真っ赤な血の花を咲かせる。そのはずであった。

 キィィィィン、という耳を貫くような甲高い音が空気を震わせる。

「なっ!」

 シンは弾丸の結末に目を見開いた。

 防ぐ術などない筈の無抵抗の女は、武器も楯も持っていない筈の女は。

 生きていた。ニマニマと憎たらしい笑みを深めながら、平然と生きていた。

『不可視の壁が〈女帝〉の前に形成されています!巨型種の物と同一です!』

 〈ana〉の観測通り、三発の銃弾は壁に突き刺さっているようにアンナの目の前で静止していた。弾丸の先は潰れ、運動は停止している。

 弾丸は音を立てずに地面に落ちた。

 それを皮切りにシンは口を開く。

「マナの障壁か……」

「ええ、その通りです。便宜上、魔術と私たちは名付けていますがね」

「ハッ、生粋の科学者がオカルトに頼るとは」

「別にオカルトの魔術とマナ操作の魔術とは別ですしねぇ。馬鹿にされましても」

「知っている、わざとだよ」

 シンは馬鹿にするように笑った、嘲笑った。

「どうして、此処にいる?」

「貴方がいるからですが」

「どうして俺が此処にいると分かった?」

「先日私達のネットワークにハッキングの後が見られましたから、貴方が復活してるのはわかっていたんです」

「待て、ハッキングの後が残ることなんてありえないだろう。〈adma(アドマ)〉は天才マックが作った人工知能だ。ハッキングの痕跡を残すようなへま(・・)をするとは思えない」

「簡単なことですよ。ダミーのネットワークを別口で用意したんです。よりセキュリティを固くして、如何にもこちらが本命だと思わせるようにして、です。詳しい説明ははぶきますが、ハッキングされると、極めて複雑かつ偶然的にプログラムが構築されて、私達に信号が送られるようになっていましてね。この天上世界でハッキングという過去の技術を実行できるのは維持派の生き残りでしかないですし」

「くっ、人工知能対策かっ。位相融合前に既に画策していたな!」

「計画派にはプログミングに強い人はいませんからね。その道の人に頼んで作っていただきました。一応の保険みたいなものだったんですが、役に立ってよかったです。もしマック自身がハッキングしていたのなら簡単に見破れたのでしょうけど、マックは既に計画実行前に死亡していることは確認済み。警戒する必要がありませんでした」

「それで、肝心の俺の居場所の探知方法は?」

「いえ、探知したのではありません。誘きよせたのです」

 その発言で、シンは全てを察した。

「………電波か」

「天上世界の技術レベルでは存在しない場違いな科学技術。電波を使えば、貴方は計画派が何かをしようとしていると考え、動いてくれる。後は私が罠にかかった貴方を回収すれば良い」

 つまり、シンはまんまと誘き出されたわけだ。食虫植物にかどわかされた昆虫のような無様と滑稽さににシンは自分を笑う。

「しかし、よくも俺の前に姿を現せたものだ。俺の左腕の力は知っているだろうに」

「今だからこそ、現したのですよ。五日間戦い通して、ブラフマーストラβの連発によって貴方の体が限界を迎えている時にね」

 ちっ、思わず舌打ちを打つシン。

「最初からブラフマーストラβで異族を吹き飛ばさなかった理由ははM細胞が足りなかっただけではありません。貴方自身、短時間でブラフマーストラβを打てないからです。ブラフマーストラβの体に対する負荷は尋常ではありません。一日で一発、無理をして二発くらいでしょうか?とにもかくにも、貴方の左腕が再生しきっていないのが証拠です。今の貴方は限界を迎えている。左腕を再生しきれないほどにです」

 的確な判断だった。

 ブラフマーストラβを撃つために必要なものは、M細胞の凝固体だけではない。巨大な砲門を形成するのにも、多大なエネルギーを必要とする。アンナは一日に一発、無理をして二発と言及したが、実際は一日に一発が精々で、それから次弾を撃つには二十時間以上のレストが要求される。

 これらの事情を踏まえるとシンがどれほどの無理をしてきたのかがわかるだろう。実際シンは栄養失調と似た状態に陥っている。連日のブラフマーストラβの使用と何度も行われたスリロスの形成。その負担はあまりも大きい。

M細胞はヴァナルガンドで補填できるけれども、エネルギーや栄養素ばかりはどうにもならない。彼が自分の口から補給し、消化器官で栄養を取り込むしかないのだ。

 そうした無理を重ね、栄養補給も行っていないシンは、今すぐにでも意識を失いそうな状態にあった。それでも、強く意識を保っているのは唐突に現れた忌々しい女のおかげである。

 シンは自分自身の失敗を認めがらも、全てを崩壊させた計画派の一人が憎くてたまらない。

「さて、久しぶりの再会ですので、こちらにも伺いたいことがあるのですが―――」

「枢機卿!どうしてこんな所に!」

「――彼女達が居ては、色々不都合ですからね。ご退場願いましょう」

 アンナがシンから視線を移したのは、声を張り上げたアスクレピオスだ。他キラープリンセスたちも怪訝な表情を浮かべて、枢機卿と教会の重鎮に憎悪を向けているシンを見ていた。

「退場って、まさかお前!」

「いえいえ、殺しはしませんよ。彼女達は私達の計画の大事な燃料(・・)。無駄死にさせるものですか」

 女は少々不機嫌そうに言うと、一呼吸の間を置いて口を開いた。

私は世界を定義する(I redifine the world)風は貴方に微笑みかけ、(Goognight , my child.)やがて夜の帳が降りる。(Have a nice dream.)

 力がある言葉だった。力があると言っても、それらが持つ力は力強さという類のそれではなく、何処か惹きつけられるような神秘性を含んだそれだ。

 アンナが言葉を言い終わると同時に、コテン、とレーヴァテインを除く四名のキラープリンセスが地面に倒れ込んだ。

「彼女たちに何をしたっ!」

「いちいち吠えないでください、鬱陶しい。少し眠ってもらっただけですよ」

 アンナの行ったことを知ってシンは戦慄する。

(マナとはそんなことまでできるのか……!)

 マナという物質についてシンは様々な考察をし、計画派が行使するであろうマナを警戒してきたが、アンナの魔術(・・)を見て、更にマナへの警戒心を引き上げた。

「ふぅ、これで何にも気にせずに話すことができますね。彼女達には無知でいてもらえないといけませんから、私たちの会話を聞かせるわけにはいけません―――どうしたのですか?顔が強張っていますが」

「いいや、何でもない。それより、会話をしよう。こちらには聞きたいことがある」

「いいでしょう。では、そちらからどうぞ」

 アンナはシンに質問を促した。

 シンは目下最大の疑問をアンナに問いかける。

「何故コルテを爆破した?」

 女は何の感情も籠っていない声で、平然と宣った。

「邪魔だったからですよ」

「―――邪魔?」

「はい、コルテは私達の計画にとって邪魔なものでした。だから、消し飛ばしたんです」

アンナの答えを聞いたシンは、ふと五日前レーヴァテインがラーメン屋で言っていたことを思い出す。

『あまりにも無謀すぎる。異族の数に対してキラープリンセス側の戦力が圧倒的に足りてない。それに作戦の詰が甘すぎる』

『きっと、教会はこの街を守る気なんてない。元々潰す気』

『――王族が人口調整を行っているって噂話もあるんだし、そこ関連だったりして―――』

 またコルテの街の誕生時に、こんな疑問の声があった。

『こんな辺境に街を作らなくても、村の位置を調整すれば経済的ではないか?』

 加えてコルテの街には他の街とは違う所があった。

『コルテには街を覆う堀がない』

 それらを思い出した時、シンは一つの答えに辿り着く。

「まさか、元から廃棄するつもりだった……?」

「ええ、その通りです」

「では、何故コルテを建設した?邪魔ならば、建設する必要がないじゃないか、結局廃棄するつもりだったのだろう?」

「理由として、大規模な実験ができかつ失敗しても問題ない実験場が欲しかったというものがあります。今回の実験は――貴方も予想はついているでしょうが――キラープリンセス暴走時のエネルギー保有量の観測、付け加えると共鳴により保有するエネルギーの変化量を測ることを目的とした物です。その目的遂行のためには、どうしても、かつてマックが提示した二百人以上のキラープリンセスが必要だった。それほどの数のキラープリンセスを集めるには、それなりの御題目が必要です。ラグナロク教会が組織である以上、枢機卿(わたしたち)の思惑を押し通すわけにはいきません。司祭や神官、奏官やキラープリンセスを納得させる相応の理由が必要でした。そう、例えば、今回のように異族が一万体現れたなどという未曾有の災害のような、そんな理由が必要でした」

「で、実際それを実行しても、廃棄する予定の街だから、もし防衛に失敗して異族の巣窟となっていても跡形もなく消し飛ばしてしまえば問題ない、というわけか」

「そういうことです」

 胸糞悪い話だ、とシンは吐き捨てた。

「そこまで堕ちたか、計画派」

「今更ですよ、維持派」

 三千年ぶりの敵対者との邂逅。

 維持派(シン)の計画への憎悪も計画派(アンナ)の計画への執着も、何一つ変わっていない。

 シンは腹の中で煮えたぎる憤怒と憎悪の衝動を抑えることなく吐き出し始める。

「どうして、この結末を受け入れられない?お前たちの計画は失敗した。異界存在の脅威を取り除くために、異界存在の位相でも俺達の位相でもない、もう一つの位相に穴を開ける。そして、その位相に人間のみを移動させるなんてことは無茶だったんだ。位相に穴を開ける結末なぞ、失敗技術の例を見れば明らかだろうに!お前たちの計画は実行する前から確実に(・・・)失敗する、そんな計画だったんだ。だというのに、たった一つの〈運命の輪(イレギュラー)〉に夢を見やがって!お前たちに何ができた?お前たちの計画は何を生み出した?何も生み出してないじゃないか!お前たちが生み出したのは、新たな悲劇と絶望だけだ!お前たちが計画を実行しなければ、何億の人間があんな異形に成り果てることもなかった!」

 一つ、シンが掴んだ残酷な真実がある。

「異族とは、人間だ」

 ブラフマーストラβ。その弾頭。

 それはM細胞を凝縮させた肉柱だ。

 M細胞の採取元は異族だ。

 つまり、異族はM細胞を保持している生物である。

 しかし、異界存在研究機関を管理する人工知能〈adma(アドマ)〉はシンにこう報告していたはずだ。

 異界存在は消滅している、と。

 疑問。命題の設立。

 異族とは何者だ?

「奇妙な話ではあった。異界存在は天上世界(現位相)から消えている。なのにM波は観測できた。キラープリンセスや俺のものもあった。しかし、記録にない類似波形が一種類存在したんだ」

 同じ異界存在、同個体のキラープリンセスであれ、M波の波形はそれぞれ多少ながら差異が存在する。なのでM波の種別は似た波形や振幅を基準に類似波形として分類している。

 研究所にある機器で観測できる範囲は大して広くない。だが、最も多く観測できたのが、未分類の正体不明のM波である。

「異界存在はいない。けれど、数が多い謎のM波。一体何者かと調べれば、白い謎の異形群体だ。すぐさま殺して、解剖したさ」

 解剖の結果は不可思議なものだった。

 人間の細胞と異界存在の細胞が有り得ない形で異族の体を構成していた。

 形容するならば、臓器移植の拒絶反応が起きながらも生きている状態。

 本来ならば、死んでいるような存在なのだ。異族という異形は。

 彼らはそういう矛盾、ないし不条理(・・・)を抱えた存在なのである。

 そして、シンはそうのような不条理を為し得る存在を知っている。

「位相融合、それを引き起こした〈運命の輪〉の結末だ。そして元を辿れば、俺の失敗とお前たちの計画のせいだ」

 三千年経っても死んでいないシンや腐らない仲間たちの死体。

 有り得ない事象はシンの近くでも起きている。

 だが、位相融合という宇宙規模の災害が起きる中で、〈運命の輪〉が引き起こす不条理がそんな小さな世界だけに影響を与えるなんてことあるはずがない。

 位相融合は全てを呑み込んだ。ほんの少しの例外を除いて。

「俺の失敗とお前たちの愚行が不要な犠牲を生んだんだっ!」

 位相融合の際異界存在と融合して異族と成り果てた数億人の人々は、もしシンが失敗しなければ、もし計画派が計画を実行しなければ、人として死を迎えることなどなかったのだ。

 シンはアンナに尋ねる。

「まだ進める気なのか?あの計画を、楽園計画(プロジェクト:エデン)を」

 アンナはシンに答えた。

「まだ進める気ですよ。あの計画の後継を、第二次楽園計画(プロジェクト:エデン:セカンド)を」

 そうか、ならば死ね。

 自然とその言葉が口から出る寸前に。

 ずっと沈黙していた彼女(・・)が飛び出した。

 

 

25

 レーヴァテインにはシンと枢機卿が言っていることはこれっぽちも理解できなかった。

 それでも、彼女が知っている知識で理解できたことが一つある。

 コルテの街を滅ぼしたのは枢機卿だということだ。

 だから、彼女が枢機卿(アンナ)に向かって牙を剥くのはある種の必然だったのかもしれない。

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 警告の痛みを声で打ち消して、レーヴァテインは定石通りの一撃必殺でアンナを討ち取ろうとした。

 無論、マナの障壁で防がれると見越して、討ち取るつもりでという意味である。

 巨型種のマナの障壁は打ち破れなかったが、普通はマナを使えない人間が扱うならば、マナの障壁であっても破壊できるという自信がレーヴァテインにはあった。

 彼女はかつて異族を率いる使徒のマナの障壁を破ったことがある。ならば、使徒の部下である異族(巨型種)のマナの障壁は破れなくとも、普段マナを使わない人間の付け焼刃のマナの障壁ならば破れるのではないか。

 そういう心積もりで、レーヴァテインはアンナへと斬りかかったのだった。

「レーヴァテインっ!」

 男が引き留めるような声色で叫ぶ。

 当然レーヴァテインはそれを無視する。

 たかがマナ操作を覚えただけの人間に、キラープリンセスが負けるはずがないと信じて。

 レーヴァテインはアンナへと肉薄する。

「……ふむ」

 殺意をぶつけられている当の本人はどこ吹く風と言った様子で泰然自若としていた。

 その女の態度がレーヴァテインを更に腹立たせる。馬鹿にされている、そう思った。

「ちぃっ!」

 レーヴァテインとアンナの距離は長くはない。すぐにレーヴァテインの剣先が女の首元に食らいつく。

 アンナの首が飛ばされようとする、その刹那。

 女は再び力ある言葉を呟いた。

進軍を止めよ、(Fit your sowrd )大義は我らにある(under my law.)

 直後にレーヴァテインの動き止まった、いや止められた。

 レーヴァテインがほんの少し力を入れれば女の首が刎ねられるという位置で、彼女はまるでポーズ画面の中の俳優のように静止していた。

「なっ!」

 正体不明の現象に驚愕するレーヴァテイン。

 アンナが身動きの取れないレーヴァテインの眉間に人差し指を立てた。

 ニタリと女が嗤う。

開け(expose)

 

26

赤黒い雲に覆われた空keijれjnejgオiosj荒廃した高層ビル群hajieugアnwheksジjahnsh巨大な怪物の影jjieuはjihuいおhjisk腐りかけた死体jsikゆjihuうhjhusehuつあjissクリームシチューajsjierjahisu赤と緑の聖典jishuwhjeowaお姉ちゃん、ありがとうsjifuhenaハゲタカの泣き声asjifhwiuイajise呻き声shjiu助けてhusijsiajewuiaイチゴのショートケーキejaheu不味い携帯食料ashiejいajskisue暖炉の炎hiew撃墜される戦闘機sjhiehsud人類に希望はないdashuじsikこoeuhjusむさぼられる人間jisiekaiうkijiこの化け物どもめっ!skiぅejぃujehaju穴開く空dajieuああァ、あぁdkkoskjeiahきkゆishueツkajisue天を突く光jishejiu世界の慟哭jisekhaehudaiaa全てが白にksijuehajfiwjshenifajipjfaniaeiajajosijosnijsioejovskksejiwpjaosjispfjijidisaoisjiajiweruaovfjosidjaoisidojfsiopajfdoisjfoisfafnbjanviobnxmisjiejaoijfoisjaf;ivfifoajiojsaoijifvniiajofdsiaoifjaiosfjaiofjvnaifijjfjhseuyfuaisjdfndoaijfafdnslijsiaojiosjafoirjaoijoajorjpaorfiajpafjapofjaipdfjpaofjasjgfvniajoidsfjaihfuashaoiapiewoijrvnaiawoajiepwajirpiopajfioapodjfpa―――――――

 

 

                「どうか、幸せに。レーヴァちゃん」

 

27

 そして、レーヴァテインは全てを思い出した。

「レーヴァテインっ、レーヴァテインっ」

「ん、ぅん」

 自分自身の正体。キラープリンセスの根幹、その製造理由。過去人類が直面した危機と人類の抵抗。与えられた感謝の言葉と向けられた恐怖故の罵倒。ここ最近行動を共にしてきた男のこと。

 膨大で脈絡のない情報の中でやけにはっきりと聞こえた女の言葉はまだはっきりと思い出せていないが、大凡全ての記憶をレーヴァテインは取り戻した。

「貴方が黒腕(Black Arm)だったってわけ。人間でありながら、スリロスを扱う妙な研究者がいるって聞いてたけど、まさかこんなことになってから会うなんて思ってなかった」

 レーヴァテインがそう言うとシンがキョトンとした顔をするが、発言内容を理解すると彼女を問い詰めた。

「レーヴァテイン、まさか記憶を……」

「そう、取り戻した。でも、そうこういうことなの……なるほど得心言った。私が暴走しない理由も、この異常な強さも」

 レーヴァテインの中で長年の疑問が氷解した。彼女は確認の意味を込めてシンに問いかける。

私がオリジナル(・・・・・・・)。数多いるレーヴァテインの中の始まりの一ってわけ」

 オリジナル。イミテーションとの淘汰の果てに成り上がることができる至高にして唯一存在。

 ただ、それは天上世界においてでの話、ラグナロク教会が宣っている話である。

 真実は違う。

 シンは語る

対異界存在兵士製造計画(プロジェクト:キラープリンセス)によって対異界存在兵士(キラープリンセス)は個体につき一人のみだった。何故ならば、キラープリンセスを誕生させるには相応の手間と時間がかかるからだ。だから異界存在研究機関は一つの方法を国連に提示し、国連が採択したのがクローン技術だ。そして天上世界で言う所のイミテーションとなるのがクローンで、対異界存在兵士製造計画の被検体が本当の意味でのオリジナルでありお前もその一人というわけだ」

 キラープリンセスたちが模倣体(イミテーション)などと呼ばれ、呼ぶのであれば、イミテーションを定義した誰かが基準となる原始体(オリジナル)を知っていなければならない。そうでなければ、イミテーションを定義できないからだ。

 真作がないなら、何を贋作と呼べようか?真作があるからこそ、初めて贋作が成り立つのだ。そして、キラープリンセスもまた同様の話である。

 オリジナルがいなければ、イミテーションを断定できない。この世界のキラープリンセスがイミテーションと呼ばれている以上、オリジナルと呼ばれるべきキラープリンセスは確かに存在しているはずだ。

 そして、そのオリジナルのキラープリンセスの一人がこの数日間シンと行動を灯してきたレーヴァテインである。

(そういえば、コルテに来た時の宿屋でそんなようなこと言ってたような気がするわね)

 ほんの五日前のことなのに随分と遠く感じるとレーヴァテインは思う。

 それほど多くのことが五日間のうちに在りすぎたのだ。さもありなん、と言う所だろう。

 レーヴァテインは男の言葉に補足するように、あるいは自分の記憶を確かめるように告げる。

「ただ、イミテーション(クローン)たちはオリジナルほどの性能はない。当然よね。細胞は劣化してるから、身体能力はオリジナル比べて脆弱、テロメアの問題を解決できていないから短命でもある。ま、それでも確実に同個体を手っ取り早く増やせるから、人間にとっては好都合ってわけだけど」

 クローンたちの身体能力はどうしたってオリジナルには劣る。それはクローン技術の弊害であるし、より確実に対異界存在兵士を複製できるように遺伝子を操作した結果でもある。

 レーヴァテインが異常に突出して強いのは、彼女と同じオリジナルが居ないからであり、他のキラープリンセスが全てクローンであるからだ。

 ではレーヴァテイン以外のオリジナルは何処にいるのだろうか?

 それはきっとニマニマ笑っている女が知っている。

 キッ、とレーヴァテインはアンナを睨んだ。

 アンナはパチパチパチと手を叩き、微笑んでいる。まるで出来の悪い生徒を褒める教師ように。

「どうやら記憶の再生は問題なく行われたようですね。良かった。初めての試みでしたから、失敗したらどうしようかと思いましたよ。いくら記憶再生の正規手順で施術の相手がオリジナルとはいえ、暴走されてはたまりませんからね」

「あっそ。で、他のオリジナルは何処にいるの?」

「あら、相変わらず面白くない娘ですね。もう少し遊びがあっても良いと思うですけれど」

「ちっ」

 アンナからは答える気がまったく感じられなかった。

 苛立つレーヴァテインにシンが捕捉する。

「おそらく――とはいっても確定事項だが――他のオリジナルは全員捕えられて王都セリア、もっと言うと計画派が根城にしているだろう教皇庁にいる。おそらくはチェリーの中に入れられて」

「チェリー……確か私達を生み出す時に使った培養器の渾名だったかしら」

「ああ、あれには人間で言う所の胎盤としての役割があり、疑似羊水を入れれば生きたまま生物を保存できる。きっとオリジナルたちはチェリーに入れられていると思う。研究所の設備的にもあちらに渡っていることは確認が取れている。しかし、全てのオリジナルが教会によって確保されているわけではない――――そうだよな、女帝」

「ええ、その通りです。計画派(わたしたち)は四体のオリジナルを確保できていません。先の創世戦争時に参加したキラープリンセスのみを私達は確保しています――そして、私がお願いしたいのはそのことについてなのです」 アンナの発言を受けて、シンとレーヴァテインの二人は怪訝な顔をする。

 よくもまぁ、厚顔無恥に依頼ができるな、という思いで。

 シンもレーヴァテインも同じくらい目を鋭くしてアンナを睨んでいる。その眼光に込められた怒りは、その感情の源泉は別にしろ、やはりそこにあるのは純粋な怒りであり憎悪であり殺意であった。

 しかし、アンナはその全てを無視して語る。

「お願いというのは愚者、貴方にレーヴァテインと他三体のオリジナルを回収してきて欲しいのです。愚者なら既に三体の居場所を掴んでいるでしょう?キラープリンセスを追うのは貴方が一番得意なはずですから。私達がこの世界で都合良く動くために、人々の探求心を封じ、ラグナロク教会を建てたのは良かったのですが、枢機卿という立場についてしまっては迂闊に外にも出れません。かといって奏官を動かすこともできませんし、〈黒〉もそれなりの大義名分がなければ出動できません。故に計画派としては立場的にオリジナルを確保しづらいのです。ですから、お願い(・・・)です。愚者が動いている間、私達は手を一切出しません。取引に応じてもらえませんか?」

 言ってくれる!

 シンは口にはしなくとも、そう憤った。

 アンナが要求したのは、シンと計画派の一時的な不戦を引き換えにシンにオリジナルを回収してほしいというものだった。

 だが、こんなもの取引でもなんでもない。

 なぜなら、シンの目的である計画派打倒の条件にはオリジナルとの合流がある。実行しなければならない案件なのである。

 であるならば、アンナのお願いは取引ではない。

 事実上の宣戦布告。シンが四体のオリジナルを回収したら、本気で奪いに行くという未来の開戦の通告だ。

 だから、シンは言ってやる。臆することなく、真っ直ぐ強大な宿敵を見据えて、愚者は女帝に宣言する。

「ああ、受けてやる。そして、叩き潰してやる。お前たちの目論見も、その願望も何もかも全てぶち壊してやる!二度とあんな悲劇を起こさせない!」

 レーヴァテインは、ふん、と満足気に鼻を鳴らす。

 アンナは、ふふ、と蠱惑的に微笑む。

 戦跡(いくさあと)の花畑。

 過去の青年はもう一人の過去へと宣言する。

 声を張り、強い意志を込めて言い放つ。

 

「だから待ってろっ、計画派!必ず計画派(おまえたち)を打ち倒し、俺と維持派(おれたち)のラグナロクに懸けて、人間とキラープリンセスが当り前の平和を享受する幸せな世界を築き上げてやる!」

 

 

 




次章予告
―――こんな再会、誰も望んじゃいなかった。

この物語は優しい少女の泡沫の夢の終わり。
親と子。
親友と親友。
先輩と後輩。
青年は、少女は、郷愁に別れを告げる。

第二章 さよならノスタルジア

「お久しぶりです、先輩。早速ですが、死んでください」
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