「やぁ、雄英の諸君。とは言っても、一クラスしかいないけどねー」
「おい熾音、何ヒーロー共に手なんか振ってんだよ」
「えっ何何?手を振って欲しいって?仕方ないな〜ほら、ペロキャンあげるから勘弁して」
「誰が手を振ってほしいっつたよ!ふざけんなよ熾音!」
ペロキャンを差し出してくる熾音にキレながらも、素直に受け取り、包み紙を開いて口に含む弔に子供だな〜と思いつつも、弔から視線を外し、雄英生のいる場所へと視線を向けた。視線の先には、縮れ毛のそばかす少年━━緑谷出久の姿があった。
熾音は口角を吊り上げ、ニヤリと笑って見せた。
「さて、ひと暴れしますかな」
その言葉と同時に、全身黒い服を身にまとい、首元には包帯のようなものを巻いた男━━イレイザーヘッドが飛び込んできた。
◆
雄英のゲートを破壊されたのは、先日の事だった。
簡単には壊れない様に造られたはずのゲートは、口の中に含めば、直ぐにボロボロと崩れてしまうお菓子のように、崩されていた。マスコミ達の仕業でないとすれば、それはもう、敵しかいない。
そう思ったからこそ、教師を二人から三人に変えたのだ。
念の為の警戒態勢が、役に立つとは……そう思いながらも、イレイザーヘッドこと相澤消太は、生徒達を守る為に、飛び出した。
飛び出したイレイザーヘッドは、自分に攻撃を仕掛けてくる敵達を、首元に巻いてある包帯のような物を使い、個性を消しながら、敵を倒していた。
イレイザーヘッドこと相澤消太の個性は『抹消』見ただけで相手の個性を消し、その一瞬の隙を狙って相手を倒す。首元に巻かれた、包帯のような物は実は武器であり、その布は特殊合金で造られた、とても硬い布なのだ。その硬い布を使い、相手を捕まえる捕縛武器を、相澤は愛用していた。
「生徒達の事を思っての行動かな?イレイザーヘッドさん」
「………ツ!」
敵を地面に打ち付けた直後、相澤の耳に届けられた声の主は、いつの間にか相澤の背後にいた。慌てて後ろを振り返れば、そこには青黒い髪をゆらゆらと揺らし、ニヤリと口元に笑みを浮かべている、ぐるぐる巻のメガネという可笑しなものを身につけながら、そこから覗く群青色の瞳を持った青年が、そこに居た。先程まで弔をからかっていたその青年━━熾音は相澤を真っ直ぐと見つめた。
いつすり抜けたのか、どうやって気付かれないように通ったのか、そいつの個性なのか、そして、あのメガネは何なのか、疑問が相澤の頭に浮かぶ。だが、その事を考えるよりもまずは、先に目の前の敵を倒す事に集中しようと思考を中断させる。
「………どんなものであれ、俺がお前らを食い止める。ここから先には、行かせねぇ」
絶対に行かせまいと、相澤は目の前の青年を睨みつけた。すると、ザワザワと相澤の髪が何かに引っ張られるようにして、オールバックになり、瞳の色が赤く光った。個性を発動したのだ。だが、熾音は攻撃を仕掛けようとはせず、ニヤリと笑みを浮かべているだけだった。
「イレイザーヘッド、……いや、相澤消太」
「?!」
突然フルネームを言われ、相澤の身体が硬直した。それもそうだろう。見ず知らずの人間に突然名前を呼ばれれば、誰だって驚く。
名前を呼ばれたことから、相澤は自分の素性を把握されていると思い、警戒心を強めた。
(やっぱ名前呼ばれると警戒するよな〜いい事学んだ。転生前の記憶もあるに越したことはないな……)
熾音は心の中で呟きながら、うんうんと頷いた。
「ところで、何で俺がアンタの名前を知ってるのか気になるだろ?」
「ああ……だが、教えてくれそうには見えないな」
相澤の言葉に、熾音は楽しそうに笑った。
「正解。教えるつもりはないよ……それよりも、俺と話してていいのか?ヒーロー」
熾音の言葉に眉を顰める相澤だったが、次の瞬間、
SKLIT!
BOOOOM!
階段の上の方から爆発音が、響いた。
顔を上げて、音のした方へと視線を向ける。そこには、逃げ道を塞がれ、逃げられない雄英生と雄英生の前に立ちはだかる、全身黒い靄に覆われた敵が対峙していた。先頭には赤い髪の少年━━切島鋭児郎と目付きの悪いクリーム色のツンツン頭の少年━━爆豪勝己がいた。先の爆発音からして、この二人が攻撃したのだろう。
━━しまった一瞬まばたきの隙に…!一番厄介そうなやつを!
首元の捕縛武器を掴み、瞬きをしてもう一度個性を使い、助けに行こうと駆け出すが、次の瞬間、
「行かせるわけないだろ」
「がはっ……!?」
背中から地面に叩きつけられ、息が止まりそうになるほどの強烈な衝撃が、相澤を見舞う。
「悪いな、行かせるわけにはいかないんだよ」
群青色の瞳で相澤を見た熾音は、優しい笑みを浮かべ、呟いた。
「………できれば、このまま眠ってくれると助かる」
熾音は立ち上がり、未だ動いていない弔の方へ視線を向けた。
全身に手をつけた細身の男は、熾音と視線が合うとにやりと口端を吊り上げ、笑う。
「俺らの役目が無くなっちゃうだろ熾音?折角
そう言うと細身の男は、背後でじっとしている脳みそが丸出しの怪物を指さした。玩具をひけらかしたい小さな子どのように。
「
「はぁ?何だよそれ、黒霧に頼んで買ってきてもらうからいいよもう……」
「黒霧頼るなよ弔ちゃん。甘えん坊さんだな〜」
熾音はケラケラ笑いながら、一瞬で弔の背後でじっとしている怪物の前に移動した。
━━速い!?
それはとても捉えきれない速度だった。未だ地面に倒れ込んでいる相澤は、一瞬の出来事に目を見開いた。
捉えきれない速度、恐らくオールマイトの速さと同等。いや、それ以上なんじゃ━━━
でかい爆発音は聞こえない。まだ戦ってる最中かな?出久
熾音はニヤリと口元を吊り上げた。