【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 どうも。ふぁもにかです。本日、緋弾のアリアの原作買いました。むしろ今まで原作持ってなかったんかい! よくそんな状態で二次創作書こうと思ったな!? ええ!? ……みたいなツッコミは遠慮してくれると助かります。尤も、ふぁもにかは大人買いが出来るほどの財政力など持ち合わせていない(伝説の勇者の伝説&ウィザーズ・ブレイン関連にお金を掛け過ぎたともいう)のであくまで数冊だけですが。


4.熱血キンジと頼みごと

 

 夕暮れ時。キンジは男子寮へと歩を進めていた。今日のキンジは強襲科(アサルト)での戦闘訓練を行っていない。要はサボりだ。今朝体験した激動の時間によって蓄積された疲労はたかだか数時間机に突っ伏して夢の国へと旅立った程度では癒せない。キンジ的には明日や明後日の分の体力をも使い切った気分でいるのでとても訓練をしたいと思えないのだ。それに今日一日くらいサボった所で何も言われないだろう。今日俺がチャリジャックに巻き込まれたことは既に周知の事実となっているのだから。

 

 さて。戦闘訓練をサボったことで早めに帰れるはずのキンジ。心身共に疲労しているキンジがなぜ今まさに夕日が地平線に隠れようとしている時間まで外にいたのかというと一重に新たな自転車を手に入れるためだ。あの時。武偵殺しの模倣犯により木っ端微塵に爆散したキンジの自転車(¥23,000(税込み))。爆発による故障は保障に含まれるのかを店の従業員に尋ねた所、自転車一台分の値段を丸々保障してくれるとのことだった。この時。初めて自転車保険に入っていて良かったと心から感じるキンジであった。キンジに説明してくれた従業員がなぜか頬を引きつらせていた点については華麗にスルーすることにして。

 

(問題はあの武偵殺しの模倣犯が誰で、どうして俺を狙ったかってことだよな……)

 

 実質タダで手に入れた新しい自転車に乗りながらキンジは思考の渦にその身を投げ出す。あの時。キンジはSランク武偵らしい見事な手際でチャリジャック犯に悟られないよう制服にあらかじめ仕込んでいた盗聴器で録音をしていた。その機械音声は今現在武藤の元で解析されている。武藤は車輌科(ロジ)所属でありながら人工浮島内のどこかに存在する武藤専用の秘密基地にて自前の高性能情報解析機器を所有している。そのためそこらの鑑識科(レピア)に頼むより遥かに早く情報を解析してくれる。しかも武藤が報酬として要求するのはライトノベルの類いがほとんどであり安上がりなのだ。キンジが武藤を頼りにするのも当然の帰結と言えよう。

 

 果たして武偵殺しの模倣犯は俺に個人的な恨みがあるのか、それとも先のチャリジャックは武偵なら誰でも良かったのか。キンジはさらに思考を掘り下げようとして首を振る。その辺りの推測はいくら時間をかけた所で所詮雲を掴むようなものだ。武藤の情報解析が終わるまでは考えても無駄だろう。キンジはペダルへ込める足の力を強くした。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ん。ようやく帰ってきましたね。待ちくたびれましたよ、遠山キンジさん」

 

 新しい自転車で風を駆る感覚を楽しみつつ家路についたキンジを迎えたのは聞き覚えのある幼い声だった。声の主、神崎・H・アリアは他人の寮でソファーに深々と座り悠然とコーヒーを飲んでいた。何様だよお前とキンジは声を大にして言いたい衝動に駆られる。とても待ちくたびれた人間の言動とは思えない。

 

「ッ!? お前!? なんでッ!?」

「お前ではありません。神崎・H・アリアです。気軽にアリアとでも呼んでください。私もキンジと呼ばせてもらいますので」

「……あー、そっか。同じクラスにもう一人神崎さんがいるもんな」

「そういうことです。ちなみに鍵は持ち前のアンロック技術で開けましたのであしからず」

 

 どうしてここにいるのか。どうやって部屋に入ったのか。多種多様な疑問がキンジの頭をグルグルと回る中、アリアは平然と言葉を返す。いかにも貴族が使ってそうな装飾で縁取られた食器に乗せられたももまんをフォークで食べるアリアの姿は何とも滑稽だ。あまりのアリアのマイペースっぷりを前にキンジの漆黒の瞳が半眼となるのも仕方あるまい。余談だが、アリアの言うアンロック技術とはドア破壊→業者さん呼び出し→スピード修理といったものである。やろうと思えば誰でもできるお手軽方法だ。

 

「そうか。じゃあアリア。お前はどうしてここに? 俺に用事か?」

「はい。その通りです。単刀直入に言います。……私のパートナーとなってくれませんか、キンジ?」

「……とりあえず満面の笑みでももまんを食べながら人に頼みごとをするのは止めようか、アリア?」

「ッ!? す、すみません! ついうっかり」

「ついうっかりね。まぁいいけどさ……」

 

 いそいそとももまんを食べるアリアにキンジはジト目をお見舞いする。無意識に松本屋の袋からももまんを取り出し高価そうな食器に乗せてフォークを突き刺していただくなんてあり得ないだろとの思いを込めて。こいつどんだけももまん好きなんだよ。確か俺がチャリジャックに遭ってた時も食べてたよな? 今朝の一幕を思い出したキンジはただただアリアのももまん好きに呆れるのみであった。

 

「で、どうして俺をパートナーにしたいんだ? アリアからすれば俺は強制わいせつ犯みたいなもんだろ?」

「みたいではありません。強制わいせつ犯そのものです。強制わいせつ犯の権化です。ですが、今朝のことは目を瞑ります。キンジとの勝負には負けましたし。キンジをパートナーに求める理由は貴方の並外れた強さにあります。より正確に言うなら今朝のキンジとの戦闘で貴方の実力の一端を垣間見たからです」

 

 アリアがももまんを完食した頃合いを見計らってキンジが疑問を投げかける。コホンと咳払いをして話し始めたアリアによると俺のSランク武偵としての力がアリアのお眼鏡にかなったらしい。俺自身を高く評価されるのは素直に嬉しい。ましてや俺と同レベルもしくは俺よりも強いであろうアリアからの評価なら尚更だ。だが。俺が聞きたいのはそこじゃない。

 

「えーと。じゃあ質問を変えるぞ? お前の目的は何だ? お前は俺をパートナーにして何がしたいんだ?」

「ッ!? そ、それは……」

「言えないような理由なのか? だったらこの話は拒否するぞ。俺は武偵を止めるわけにはいかないからな」

 

 俺の質問にアリアは口ごもった。言いよどんだ。それが意味することが何かはわからないが、俺としては犯罪の片棒を担がされるなんて事態はゴメンだ。アリアだからそれはないとは思うが、万が一がないとは断言できないからな。

 

 キンジとアリア。Sランク武偵同士の視線が交錯する。バチバチと火花が散るようなものではない。しかし。ジリジリといった、針を突き刺すような、一瞬でも気を抜けば射殺されてしまうような綿密な視線の交錯は壮絶なんて言葉が生ぬるいほどの睨み合いの様相を呈していた。その辺りはさすがはSランク武偵といった所だろうか。

 

「……わかりました。明日、明日に理由を話します」

「わかった。それじゃあその理由次第でアリアのパートナー申請を受けるかどうか決める。それでいいな?」

「……わかりました」

 

 結局。折れたのはアリアだった。気まずそうに視線を逸らし消え入りそうな声で妥協案を提示してくる。アリアが目的を話してくれるのなら何ら問題ない以上、キンジがアリアの提案を断る理由はない。キンジは妥協案を間髪入れずに受け入れる。対するアリアは意気消沈といった雰囲気で松本屋のももまんを食器に出す。尤も、ももまんを口に入れればすぐさま可愛らしい笑みを浮かべるのだが。

 

 この日。アリアは計13個ものももまんを輝かしいばかりの笑みで頂いた。あの小学生相当の小柄な体のどこにあれだけのももまんが入るスペースがあるのだろうか。アリアの体の仕組みが一体どうなっているのか、不思議でならないキンジであった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「おっ起きたかアリア」

「はい。おはようございますキンジ。昨日はお見苦しい所をお見せしました」

 

 翌日。朝4時に起床し一通り自身の定めた門外不出の訓練メニューをこなしたキンジが寮に戻ると相変わらずアリアがソファーを占拠し優雅にコーヒーを啜っていた。どうやらアリアも見た目にそぐわず朝型のようだ。他人の寮内だというのに馴染み方が半端じゃないなとキンジは思わずにはいられない。

 

 ちなみに。実は昨日、アリアはキンジの寮で一夜を明かした。アリアの名誉のために記しておくが決してアリアが進んでキンジの部屋に泊まったわけではない。ももまん中毒重篤患者たるアリアが食した松本屋のももまんの中になぜかウィスキーボンボンまんという明らかに邪道極まりない食べ物(毒物?)が紛れ込んでいたのだ。あくまでウィスキーボンボンまんの擬態を見破れずにそれを頬張ったアリアがすぐさま顔を紅潮させ目を回して気絶した結果である。アリアはアルコールへの耐性が全く備わっていなかったらしい。

 

 その後。朝食だしということでキンジはご飯に味噌汁にハムエッグといったありきたりなものを作り、二人で食べることとなった。簡素な朝食だったのでどことなく高貴な雰囲気漂うアリアの口に合うか非常に不安だったのだが、その辺の心配は杞憂だったようだ。「……これが和食というものですか。優しい味わいですね」とアリアはおいしそうに食べてくれた。ただし箸を上手いこと扱えなかったのでフォークを使ったのだが。

 

(……元々、兄さんに褒められたい一心で磨いてきた料理スキルだけど、こんな所でも役に立つとはな。世の中わからないもんだ)

 一足早く朝食を食べ終えたキンジは喜色満面で朝食を食べるアリアをしり目に食器を台所に運ぶ。兄さんが亡くなり今や料理を振るう相手が一人しかいないキンジにとって逐一「おいしいです」と言いながら朝食を食べてくれる二人目――アリア――の存在は素直に嬉しいものだ。無意識のうちに頬が緩んでしまうのも当然と言えよう。

 

 と、そこで。キンジは今の今まですっかり忘れていたある日課を思い出す。昨日はトチ狂った時計のせいで遅刻の危機に追いやられたためにすっかり頭の中から抜け落ちていた日課。決して放置してはならない用事を今更ながらに思い出したキンジはハッと我に返った。

 

「ッ! そうだすっかり忘れてた! アリア、俺今からちょっと用事あるから出かけてくる。先に学校行っててくれ!」

「はぁ。それは構いませんが、どちらへ行かれるのですか?」

「どちらへって、女子寮だけど?」

「えっ?」

「ん?」

 

 急いで身支度を終えてすぐさま用事を済ませに外へ繰り出そうとするキンジに背後から声がかかる。朝食をきちんと完食し、食後のももまんを緩みきった頬張るアリアの問いにキンジは何の気なしに答える。その時。アリアが目を丸くした。その手から食べかけのももまんが離れてボトリとテーブルに落ちる。何をそんなに驚いているんだとキンジは首を傾げて、そこで今自分が何を口走ったのかを理解した。ちょうどその時。キンジの言葉の意味をアリアが咀嚼し終えた時。比喩でも何でもなく、空気が凍りついた。

 

「「……」」

 痛いくらいの沈黙が二人を包む。季節は春のはずなのに秋特有の乾いた風が吹き数羽のカラスが空気を読まずに「お前バカだろ」と言わんばかりに鳴いたように思えたのはきっと幻聴の類いではないだろう。

 

「キンジ? 女子寮に何の用事があるのですか? あの場所は確か男子禁制だったはずですが」

「あ、いや! ちょっ待っ、これは誤解だ、アリア!」

「……どうやらこのヘンタイはここでしっかり教育しなければいけないようですね。さらなる強制わいせつの被害者を出さないためにも」

「待て待て! 銃を取り出すな! 弾を装填するな! 頼むから俺の言い分を聞いてくれッ!!」

「問答無用! 風穴の時間ですッ!!」

 

 キンジはアリアを落ち着かせるため必死に声を張り上げる。だが。キンジの努力もむなしく、ヘンタイを撲滅するという使命を心に宿したアリアはキンジの顔面目がけて容赦なく発砲。自ら墓穴を掘ってしまったキンジは銃を両手にそれぞれ装備しゴゴゴゴゴと威圧感を放つ修羅を纏った桃髪ツインテール少女に命を狙われる羽目となったのであった。口は災いの元とはまさにこのことである。

 

 ちなみに。キンジの部屋は家具に始まりスリッパに至るまであらゆるモノが防弾&防刃仕様となっているため、キンジの部屋が怒れるアリアの影響でメチャクチャになることはなかった。備えあれば患いなし。

 




キンジ→料理上手な熱血キャラ。料理スキルAランク。朝練は欠かさない。女子寮に向かうのが日課の模様。その目的はいかに……?
アリア→ももまん中毒重篤患者。ももまん中毒Rランク。ふと我に返ったらももまん食べてましたなんてことは日常茶飯事。箸を使えない。ただ突き刺すのみ。
武藤→割と万能。自前の高性能情報解析機器を有している。寮内に置くわけにはいかないため、人工浮島内にある武藤専用の秘密基地で保管している。情報解析技術Sランク。鑑識科(レピア)も涙目な実力保有者。

 以下、おまけ(突発的に浮かんだネタ ※本編とは関係ありません)

アリア「私には嫌いな言葉が3つあります」
キンジ「? どうしたんだ、いきなり?」
アリア「『友情』、『努力』、『勝利』。この3つは人間を無駄に調子づかせる、よくない言葉です」
キンジ「え?」
アリア「ですので、私の前では二度と言わないでください」
キンジ「……お前、今凄いこと言ったな」
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