【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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キンジ(よし、今の内に逃げる準備しよっかな。うん、それがいい)

 どうも、ふぁもにかです。前回までで鬱展開極まりないIFストーリーは終了、ということで今回からは晴れて第四章、原作四巻の話に突入です。つまり緋弾のアリアをアニメだけで知っている人にとってはここから先は完全に未知の世界になるわけです。といっても、今回の話は第四章というよりは第三章エピローグの方に属している気がしますけどね。

 まぁそれは置いといて。他の緋弾のアリアの二次創作をも楽しんでる人ならアニメ派でも先の展開を知ってるのでしょうが……これからは原作を知らない人でも置いてきぼりにならないように特に地の文に気を配らないとですね、ええ。



第四章 熱血キンジと砂礫の魔女
89.熱血キンジと新たな住人


 

 

 どうしてこうなった。

 うん、ホントにどうしてこうなった。

 

 

 7月上旬のとある日。男子寮の一室にて。今現在、朝食作りに取りかかっているキンジ。傍から見ればごくごく自然体に料理をしているように見えるキンジだったが、それはただキンジが平静を装っているだけで、その脳内は「どうしてこうなった」の文字でびっしり埋め尽くされていた。

 

 その原因はキンジが台所から見据える先にある。キンジの視線の先にいるのは二人の少女の姿。その二人の少女は椅子に座ってキンジの作っている料理を今か今かと待ちわびている。

 

 ブラドとの激戦を経て負った怪我を治すための三週間。長いようで意外と短い武偵病院での入院期間を終えた今、実を言うと、俺の部屋にはアリアの他にもう一人の女の子が滞在している。

 

 あらかじめ言っておくが、ユッキーではない。魔剣(デュランダル)の件を経て幾分かマシになったとはいえ、相変わらず女子寮で自堕落生活を送っているユッキーが俺の部屋に自らの意志で来たことなど数える程度しかない。よほどの抜き差しならない事態(例:餓死の危機)が発生した時ぐらいだ。ゆえに。そんなユッキーが自らの意思でここまで赴き、そのまま住まうなんて展開はまずあり得ないだろう。というか、もしもあり得たのなら俺は槍の豪雨を警戒しないといけなくなってしまう。

 

 無論、レキでもない。俺を永遠のライバルと位置づけるレキは武偵高内や登下校中では何かと襲撃してくるものの、プライベートで俺と接触&戦闘に突入することはほとんどない(例外:23話参照)。ましてや感情を表に出さないことに定評のあるレキが椅子に座って鼻歌混じりに足を交互にぶらつかせて俺の料理を待つことなど、それこそ天地がひっくり返ってもあり得ない。

 

 

 ――では、果たして俺の部屋の新たな住人は誰なのか。

 

 

「へぇー! キンジくんってそんなに料理上手いんだ。な、何か意外かも」

「ええ。さすがに高級レストランのシェフほどの腕ではありませんが、腕前は中々のものです。家庭内で食べられるお手軽料理の作り手としては最高レベルではないでしょうか。キンジにその気があれば行列のできるレストランのシェフとして活躍することだって絵空事ではありません」

「そっかぁ。アリアさんがそこまで絶賛するキンジくんの料理、楽しみだなぁ。ごっはん、ごっはん♪ おいしーごっはん♪」

 

 正解は峰理子リュパン四世である。アリア目線からのキンジの料理の腕前を聞いた理子は謎の歌――『ご飯の歌』とでも命名してみるか――を口ずさみながら足をブラブラとさせている。どうやらキンジの料理への期待値がグングン上昇しているようだ。ツーサイドアップに結った金髪がヒョコヒョコ揺れる様は眺めていて実に微笑ましい。アリア同様、お前ホントに高2かよとキンジが理子に問い詰めたい気持ちに駆られるのも詮なきことであろう。

 

 

 さて。どうして理子がキンジの部屋に滞在しているのか。その理由はを語るにはキンジ&アリアが無事退院した時までさかのぼる。久しぶりのマイホームだといった感じで武偵病院から男子寮へと帰還した二人を待ち受けていたのはリビングの入り口部分にてニコニコ笑顔で立つ理子だった。

 

 なぜ理子が俺の部屋で待ち受けていたのか。理由を尋ねてみた所、理子曰く『新しく友達となった子とは近い内に一緒にお泊りして【エクストリーム・まくら投げ大会】をしないと親友になれないってお母さんが言ってた』だそうだ。理子の発言から察するに、どうやら理子の母親は頭のネジが何本か抜けたタイプの天然さんだったようだ。もしくは理子にあることないことテキトーに吹き込んで理子の反応を楽しむ悪戯(ユーモア)気質に溢れた人だったのかもしれない。

 

 どっちにしろ、己の敬愛する母親に明らかに間違ったことを吹き込まれていたらしい理子は俺たちと親友になるため、どこからか取り出した鉄製(・・)の枕を両手で抱きかかえた状態で『エクストリーム・まくら投げ大会』を開催しようと迫ってきたのだ。

 

 俺たちと親友になりたい一心でしきりに『エクストリーム・まくら投げ大会』を要求してくる理子。あまりに必死過ぎる理子の気迫に押される形で俺たちは早速その『エクストリーム・まくら投げ大会』とやらを始めることとなったのだが……詳細は語らないでおこう。とりあえず、これを入院中にやっていたら絶対傷口が開いて入院期間が長くなっていただろうな、とだけ言っておく。

 

 とにかく。色々な意味で危険極まりない遊びだった『エクストリーム・まくら投げ大会』。それに体力を使い果たした影響で糸の切れた人形のようにリビングに倒れ、そのまま一晩ここに泊まった理子。その後。親友になるための条件をクリアした理子は安心して翌日に自分の部屋に帰っていった――かと思いきや、なぜか登山家のように大量の荷物を背負った状態で再びここへと舞い戻って来た。そして。結局、なし崩し的に理子もアリアと同じくここに居を構えることとなったのだ。うん、ホントに何がどうしてこうなった。

 

 

 キンジは内心で深々とため息を吐きつつも、今しがたできあがったばかりの朝食の配膳をアリアと理子に任せる。そして。キンジたち三人はそれぞれ椅子に座り、「「「いただきます」」」との言葉とともに朝食を食べ始めた。

 

「おい、しい……!」

 

 パクッと一口目を頂いた瞬間、理子が目をパチパチと瞬かせて喜色に満ちた声を上げる。どうやらキンジの料理は理子の期待に沿える出来だったようだ。アリアのせいで期待値が跳ねあがっていただけに予想と現実とのギャップに落胆してしまわないだろうかと密かに心配していたキンジはホッと胸を撫で下ろすのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「えーと、アリアさん? ずっと気になってたんだけどさ、ももまんってそんなにおいしいの?」

 

 朝食タイムが終わり。食後のデザートとして無駄に洗練された無駄に流麗な動きとともに松本屋の袋からももまんを取り出したアリア。食べる前から既に幸せの絶頂にいるかのように破顔しているアリアを前に理子は前々から感じていた疑問をぶつけてみる。

 

「当然です。……ももまんはですね、理子さん。21世紀における人類の偉大な発明品であり、人類の英知と技能――その集大成といっても過言ではないほどの食べ物です。折角ですし、気になっているのなら一つ食べてみませんか? きっと、新たな世界への扉を開くことになりますよ?」

「え!? いや、でッ、でも、それアリアさんが買った物でしょ!? お金を払ったのはアリアさんなんだし、受け取れないよ!」

「私はももまん一つに目くじらを立てるような狭量な人間ではありませんよ。それに、理子さんがももまんの魅力に気づいて虜になってくれるのならそれこそ本望ですしね」

 

 ズイズイとももまんを差し出してくるアリアに負けた理子は「そ、それじゃあ……い、いただきます」と、おずおずとももまんを両手で受け取りハムッとももまんを食べてみる。そして。理子の反応を逃すまいとレーザービームでも出てるのではないかと思ってしまうほどのアリアの眼光が理子に注がれる中、当の理子は「あ、おいしい……」と本音を零した。

 

「ッ! そうでしょうそうでしょう! ももまんは実に最高なのです! 人類の生み出した最高傑作なのです! だというのに! その実、ももまんの魅力に気づいている者はあまり多くないのです! ホント、理解に苦しみますよね全く! ねぇ、理子さん! ねぇ!」

 

 理子の反応によほど機嫌を良くしたのか、アリアはガシッと理子の両肩を掴むと前後にガクガクと揺さぶりながら、ももまんの素晴らしさについての同意を求めにかかる。半ば興奮状態になっているらしい今のアリアはいきなり肩を揺らされたことで「み、みゃうああああ!?」と目を回す理子に全く気が回っていないようだ。

 

 

(にしても、まさか理子までここに住むようになるとはな。人生ってのはホントになにが起こるかわかったものじゃないな。……ここ、一応男子寮だぞ?)

 

 理子がアリアの手によってももまん信者への道を進みつつある様子をリビングのソファから眺めていたキンジは、アリアがここに住んでいる時点で今更な事実を脳裏に上げる。

 

 いい加減、そろそろ寮の管理人さんに何か言われそうで怖い。アリアが住み着いた時は特に何も言ってこなかったが、理子まで住み着いたとなればさすがに何らかのアクションを仕掛けてくるだろう。となると。俺は部屋の主として、その時までに相手を説き伏せられる上手い言い訳を考える必要があるわけだ。……とても管理人さんを納得させられるとは思えないけど。

 

 それにしても。ホームズ四世とリュパン四世とが友達関係になるのはまだしも、同居することになるとは。こんな未来、一体誰が想像できただろうか。少なくとも二人の先祖たちはそんな日が来ることなど夢にも思わなかったことだろう。

 

 

「いっそのこと、ユッキーもここに移住させるか?」

 

 キンジはポツリと自身の考えを声に出してみる。ここまで来れば三人での生活も四人での生活も大差ないだろうし、もはや慣れているとはいえ、ユッキーの世話のために一々女子寮に足を運ぶのはやっぱり面倒だ。この部屋は元々四人部屋だということや、ユッキーが以前この部屋で過ごしていたことを鑑みても、ユッキー移住計画はそう悪いものではないだろう。

 

(というか、これ即興で考えた割には結構ナイスアイディアじゃないか?)

「ん? ユッキーさんもですか?」

「あぁ。多少改善されてるとはいえ、どうせ女子寮で堕落した生活送ってるんだ。だったら静まり返った部屋で1人寝転がるのもここで寝転がるのもそう変わらないだろ。それに、一々女子寮に向かう手間も省けるしな」

「……それもそうですね」

「え、ユ、ユッキーさん? えっと、もしかして……生徒会長の人、だよね? その人もここに住むの?」

「まだ未定ですけどね。っと、そんなに緊張する必要ありませんよ、理子さん。ユッキーさんは怠惰なことを除けば凄くいい人ですから」

 

 生徒会長の肩書きを持つ人間と一緒に住まうことになる可能性にビクビクと怯えっぷりを見せる理子。アリアは理子を安心させる目的で白雪の人間像を軽く伝え始める。いかに面倒事を嫌い、ダラダラしているかを教え始める。

 

 

 つーか。どうして今まで思いつかなかったのだろうか。ユッキー移住計画。アリアが男子寮に住み着いた時点でもう言い訳なんて通用しないというのに。

 

 とはいえ、もちろん理子がここに住まう現状を維持することやユッキー移住計画を実行するにあたっての懸念はある。管理人さんの件や東京武偵高三大闇組織(ファンクラブ)と称される『ダメダメユッキーを愛でる会』と『ビビりこりん真教』の件、あと周囲からハーレム野郎との偏見に晒されかねない件が主なのだが……まぁ、その辺は何とかなると信じよう。なるようになるはずだ。

 

(見た所、アリアも理子もユッキー移住計画に反対じゃなさそうだし、ユッキーもここに呼び寄せてみるか。あくまで本人の意思を聞いてからだけどな)

 

 アリア目線の白雪像を聞いて白雪への警戒心を解きつつある理子を見やると、キンジは白雪のいる女子寮へ向かうまでの短い休憩時間をソファに寝転がる形で過ごすことにしたのだった。

 




キンジ→着々と複数の女の子を手元に置きつつある熱血キャラ。本人にヒロイン勢を侍らせてウハウハしたいという願望はないものの、傍から見れば明らかにハーレムを築いているようにしか見えなかったりする。
アリア→新たなももまん信者を獲得するための布教活動に余念のないメインヒロイン。現在、理子を引きずり込もうとしている模様。
理子→キンジの部屋の新たな住人たるビビり少女。『エクストリーム・まくら投げ大会』なる危険な遊びをマスターしている。アリアを話を聞いたことで白雪と会うのがちょっと楽しみになっていたりする。

 というわけで、89話終了です。前回までの鬱展開から一転、友達となった三人のほのぼのライフでしたね。ええ。……さて。とりあえず、キンジくんちょっと爆発しようか。大丈夫、気づいた時には全て終わってるから。ね?

キンジ「怖ぇよ!?」

 まぁそれはさておき。第四章突入ということでカナさんの登場を期待した方も多かったかと思うのですが、カナさんとの再会はまだもうちょっと先となります。焦らしちゃってごめんね! 悪気はないんだよ! 本当だよ! ふぁもにか、ウソツカナイ! イェス!


 ~おまけ(とある夜の一幕)~

キンジ(あー、眠れないなぁ……)
理子「……ん(←眠そうに目をゴシゴシとしながらフラフラとどこかへと向かうりこりん)」
キンジ(理子? トイレにでも行ったのか?)

 1,2分後。

理子「……う(←寝ぼけてるりこりん)」
キンジ(あ、戻ってきたっぽいな)
理子「すぅ……(←キンジのベッドに潜り込み、( ˘ω˘)スヤァとなるりこりん)」
キンジ(――って、ちょっ、待て待て待てェ!? 何この状況!? 何なんだこの状況!? つーか、前にもこんなのなかったか!? なんでどいつもこいつも自分の寝るベッドの場所間違えるんだよ!?)
理子「えへへ~(←幸せそうな寝顔)」
キンジ(にしても、マズい。これはマズい。何がマズいって、さっきから胸が、胸が当たって、これヒステリアモードになるんじゃ――って、早まるな! 今この状態でヒステリアモードなんかになったらますます収集が付けられなくなるぞ! 落ち着け、落ち着くんだ、遠山キンジ! 血を沈めるんだ! じゅ、寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の新八の人生雲来末風来末食う寝る処に住む処やぶら小路の藪柑子パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイ裏切りは僕の名前をしっているようでしらないのを僕はしっているグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーのぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ長久命の長助ぇぇぇええええええええええええ!!)
理子「だうー(←無駄に可愛らしい寝言)」
キンジ(――よし。落ち着いた。超落ち着いた。さて、現状を整理するか。理子が俺の腕をしっかりホールドしてるからここから逃げられそうにないし、あの様子だと理子は自分から俺のベッドに潜り込んだことに気づいてなさそうだ。となると、このまま朝を迎えると……泣く、理子なら絶対泣くな。でもって、理子を泣かせたとして修羅を纏ったアリアが襲ってくるな、絶対。……うん。ヤバいな、これ。絶体絶命だ)
理子「みぃ……(←もぞもぞりこりん)」
キンジ(考えろ、遠山キンジ! 現状を切り抜ける最良の策を! 明るい未来を迎えるための起死回生の一手を! 何か、何かないのかッ!?)

 こうして、キンジの眠れない夜は更けていくのであった。


 あい。というわけで、今回のおまけは40話のりこりんバージョンです。
 ……お、『ビビりこりん真教』の方々がアップを始めたようですね。ワクワク。

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