どうも。ふぁもにかです。今回は久しぶりに最近登場してなかった性格改変キャラたちが出てきます。でもって、今回の話はまさかの熱血キンジくん不在という緊急事態回です。よって、サブタイトルから熱血キンジの文字が消失しております。バスジャックの話が思いのほか長くなりそうだったのでどこかキリのいい所で2話に分割しようと考えてたらこうなりました。声を大にして言わせてもらいましょう。どうしてこうなった!?
※私のうっかり属性が発動したせいで5月8日に『熱血キンジと神崎かなえ』が投稿されてしまいましたことをここに私に代わってりこりんが全力でお詫び申し上げます。今回の話の文字数が少ないことも兼ねて謝罪します。
理子「ご、ごごごごごめんなさぁぁぁあああああああああいッ!!」←土下座ッ!
今現在。武偵が利用する通学バス――G3号車――の車内は緊迫していた。理由は簡単、このG3号車がバスジャック犯の標的にされたからだ。あらかじめとある女子武偵の携帯を自身のものとすり替えていたバスジャック犯が無機質な機械音声でバスに爆弾を仕掛けたことを宣言したのが数分前。個人差はあれどこれまで幾度となく現状のような緊迫した空気を味わってきた2,3年生は比較的冷静だが、武偵高付属中学校を卒業したばかりの新入生の中には青ざめている者も多い。パニックに陥らないだけでも及第点だろう。
余談だが、バスジャック犯が用意した携帯(今は武藤が持っている)はこれでもかと取り付けられたありとあらゆるマスコットキャラのキーホルダーが携帯本体以上に重さを主張する、ピンクのデコレーション携帯である。決して携帯をすり替えられた女子武偵が元々持っていた類いのものではない。装飾過多な携帯は犯人の個人的な趣味嗜好のようだ。
『スピードを下げやがると爆発し、やがりマス。……あらかじめ言っておきますけど、フリじゃないですからネ。スピード下げるな=スピード下げろって意味じゃないですからネ! そこんとこ勘違いしないでくださいネ! お願いしマス!』
曲がり角にぶつかりバスの運転手がわずかに速度を下げて右折すると、すかさず機械音声が流暢な口調で警告を飛ばしてくる。その警告は後半に差し掛かるとどこか気の抜けた懇願に変わっていったのだが、それでバス車内を覆う切迫した雰囲気が揺らぐことは一ミリたりともなかった。
ちなみに。装飾過多極まりない桃色携帯から放たれる機械音声を誰かの質の悪いイタズラだと推測する武偵は誰一人いない。武偵たるもの、悲観論で考え楽観論で行動するのは基本中の基本だ。爆弾が仕掛けられてるはずがないと根拠もなしに都合のいいように思い込み、バスの速度を下げた結果爆発しました、なんてことになったら目も当てられない。それに何より、この場にいる誰もが2日前にチャリジャックに遭った運の悪いSランク武偵の話をよく知っているからだ。
「ほ、ホントにこれ、バスジャックなんですかぁ!?」
「……おそらく、間違いありません。先日、似たような事件に巻き込まれた哀れな武偵がいましたので……。とにかく。命が惜しければ……今はスピードの維持を頼みます……」
「は、はぃぃぃいいいい!!」
本当にバスジャックされたのか。誰かの質の悪いイタズラじゃないのか。武偵殺しの模倣犯による犯行自体をただ一人疑う壮年のバスの運転手の元に背後から武藤が忍び寄り、ボソッと脅し混じりの言葉をプレゼントする。間違っても運転手がバスジャック犯の脅迫電話をデマと思い込み、バスの速度を下げることがないように。武藤の低音ボイスがよっぽど怖かったのか。中年のバス運転手は裏返った声で悲鳴に似た返事の声をあげる。後にバス運転手は声を震わせながら語る。バスジャック犯よりも這いよる武藤剛気の方が遥かに怖かったと。
「……不知火。爆弾は……?」
「あったぜ、武藤。今見つけただけでもう36個目だ。この分だとまだあるぞ」
「くそッ。バスジャック犯の奴、どんだけ爆弾仕掛けてんだよ!?」
「舐めやがって……」
これでひとまずバスの運転手が速度を下げることはないだろう。許容量オーバーの恐怖でヒーヒー言っている涙目の運転手をしり目に武藤は内心で安堵の息を吐く。そして。そのまま武藤はバスの後方で爆弾探しをしている不知火に現状を問う。てっきり爆弾は1,2個だと思っていたのだが、現実は甘くないらしい。これだけ大量の爆弾を犯人はどうやって仕掛けたのだろうか。お金とか大丈夫だったのだろうか。打開策の見えない状況に悪態をつく
「……不知火。爆弾、貸して……」
「あぁ。そういや武藤、爆弾処理とか得意なんだっけか」
「……あくまで、趣味の範囲内……」
『余計な真似はし、やがるなデス。武偵は大人しくし、やがれデス』
「そうか。ならちょうどいい。おーい! てめえら! 爆弾見つけたら武藤に回せ! 後は武藤に――」
『警告は、ちゃんと守り、やがれ――』
「うるせえええええええええ!! 今俺が喋ってんだァ! 武偵殺しの模倣していい気になってる三下ごときがァ、人が喋ってる時に割り込んでくるんじゃねえ! 八つ裂きにすんぞ、ああ゛!?」
『ひぅ!? ご、ごごごごっごごごごごごごめんなさあああああああああいッ!! ボクがいけませんでしたああああああああ!! 許してくださああああああああああい!!』
空気を読まずに指図をしてくるバスジャック犯に完全にブチ切れた不知火は武藤が持っていたバスジャック犯との通信手段たる携帯をふんだくると憤怒の感情を一ミリも隠すことなくぶつけに掛かる。不知火の怒りようが相当怖かったのか、携帯からは悲鳴とも思えるような謝罪の絶叫が機械の無機質な音声を通して伝えられる。
だが。その全力の謝罪とは裏腹に、バスジャック犯は通学バスの背後に待機させていた無人の黄色のオープンカーを遠隔操作してバスと並走させる。そして。あらかじめオープンカーに備え付けていた機関銃をギュインと隣のバスへと向けた。
「ッ! てめえら伏せろッ!!」
いち早く機関銃を向ける無人車両の存在に気づいた不知火の言葉と機関銃が火を放ったのはほぼ同時のことだった。機関銃から放たれた銃弾の弾幕はバスの窓ガラスを容易に粉砕し、武偵たちに襲い掛かる。武偵たちが不知火の警告に咄嗟に反応しすぐさま身を伏せたことにより、幸いにも頭を撃ち抜かれて即死する武偵は現れなかった。無論、バスの運転手も無事である。しかし。途切れることのない銃弾の嵐はバスの運転手や一部の武偵たちを恐慌状態へと移行させ、悲鳴を上げさせるには十分過ぎるものだった。
だが。無人オープンカーの無差別攻撃もそこまでだった。突如、オープンカーは木っ端微塵に爆散する。不知火が割れた窓からオープンカーへとこっそり放り投げていた小型爆弾が火を噴いたのだ。ちなみに。不知火はバス内にこれでもかと仕掛けられていた小型爆弾の山の中からちゃっかり拝借したものを使用している。まさかバスジャック犯も自身がバス内に仕掛けまくった小型爆弾で機関銃つきオープンカーが撃破されるとは予想だにしなかったことだろう。ざまあみろと不知火は口角をニィと吊り上げた。
けれども。今の銃撃でバスの窓ガラスは大破。ガラスの破片を頭から被ったことでバス車内の約半数の武偵が手傷を負うこととなった。その中には運の悪いことにガラスの破片が頭部に突き刺さった状態で地に伏す武藤の姿もある。返事がない。ただの屍のようだ。
模倣犯の奴を刺激し過ぎたな。不知火はうめき声を上げる負傷した武偵たちを前に苛立ちを思いっきり舌打ちにぶつける。怒りの矛先は頭に血が上ってしまった過去の自分だ。爆弾処理を一手に引き受ける役割をかって出た武藤が気絶したことで状況は一気に厳しいものへと変貌してしまった。今、この場において、武藤以外に爆弾処理のできる人材はいない。どうする。何か打開策はないのか。不知火は頭をフルに回転させて起死回生の策を探る。しかし。バスジャック犯優位の現状を逆転させる案は一向に浮かびそうになかった。
ちなみに。武藤が「……おのれ、不知火……」と怨嵯の声を上げつつ、ささやかな仕返しを込めて血に濡れた指で書き残した『犯人は不知火』というダイイングメッセージなんて見ていない。見ていないったら見ていない。
武藤→爆弾処理も趣味の範囲内でこなせる車輌科(ロジ)専攻の男。何という万能。
不知火→話を遮ると大抵ブチ切れる不良さん。以前から自分に対して怯えに怯えてくれる理子の存在にちょっといい気になっている。
理子→用意周到。爆弾をこれでもかと仕掛けまくっている。爆弾の無駄遣い。この一件で不知火を完全に恐怖対象として認識したビビりさん。今回のバスジャックに多額のお金を投じている。イージーモードで楽々操作できるオープンカーにひどく愛着を持っている。
バスの運転手さん→さすがに変化なし。昔F1に出場してたって設定でもよかったんだけど、それだとスピード下げるな→ヒャッハー、血が騒ぐぜええええええええ!!→バスのスピード超絶アップ ――ってなりそうで何か嫌でした。それにあんまりスピード上げられると色々と面倒なことになりそうですし。
ということで、今回は久々にビビりこりんやら魔改造武藤やら不良不知火やら出せて楽しかったです。尤も、理子は音声だけの出演ですし、主人公キンジくんに至っては出番すらありませんが。それにしても、話が全然進まねぇ……。原作一巻クライマックスまでの道のりはまだまだ遠そうですね。はい。