『弟』を支えた仲間達 作:ロア
あの少年の謎のカリスマ性に惹かれた私は、三人と一緒にあの『高町』についての情報を集めた。
そして、思ってたよりあっさりと『高町一騎』という本名を知ることになる。そりゃ寮の部屋に名前が書かれてたら阿呆でもわかる。
そうしたことを部屋に戻ってマリクに話すと、彼は空き缶を指先でくるくると回しながらぼやく。
「高町、ねぇ。エリートの家族はエリート校に通う、ってことか」
「そうかもしらんね。けど、実力は充分あるようだった。射撃も飛行も、間違いなく訓練校で一番だ。すごいのがもう二人。背の高いチャラそうな奴と、目立たなかったけど、真面目そうな金髪も居た。けど、やっぱ高町が一番だ」
「ふーん……陸の方には、教官殴り倒した炎野郎が居たぜ」
炎野郎ってなんだ、と私は聞く。
マリクは両拳を握って胸の前に持ってきた。その隙だらけの格闘技の様な構えに、私は疑問顔を向ける。
「格闘タイプの男だ。ミッドチルダじゃ珍しい黒髪で、炎熱の変換資質があるっぽい。手足が燃えてたし」
「ふーん」
「興味無さそうだな」
~~~~~
次の日はいきなりチーム戦。
私は一応魔力弾を撃つなり空を飛ぶなり出来るのだが、やはり出来ない人も沢山居た。
結果は推して知るべし。だが運よく私の居たチームは勝利をおさめ、現在上空で高町と教官が暴れまわっている。
「……」
空いた口が塞がらない、というのか。隣のナグリーの顎を戻してやりつつ、私は高町を観察する。
「ディバイン――バスタァーッ!」
吼えながら砲撃を撃ち出すその動き。両手で杖を保持して歯を食い縛る。先程までの無表情さが嘘のように獰猛な
まるで戦いを楽しんでいるかのようだ。
教官が反撃に撃った散弾を防ぐと魔力弾を生成し、弾幕を張るようにして撃ち出す。
それらは確実に教官の弾を撃ち落としていく。
「――なんだ、あれは」
そんな呟きが聞こえてきた。
それを発したのは隣で同じく高町を見上げている、金髪で背の高い男。
私の視線に気付いたのか、彼は指をさした。それに従って眼を凝らす。
「誘導弾を撃ち出している中に、スフィアが構築されている」
言われてみると確かに。魔力弾と似た形なのでわかりにくいが、少しずつ魔力スフィアが展開されている。
「誘導弾を撃ちながらスフィア生成!?」
ナグリーが驚きの声をあげる。当然だ。そんなことをするにはインテリジェントデバイスと分担して構築するか、
高町は改造こそしているがストレージデバイスしか持っておらず、後者が正しいと考えられる。が、誘導弾を撃ち出し、操作しながらスフィアの構築など、処理能力が飛び抜けている。普通の魔導師では考えられないことだ。
「ファランクス・セット!」
その言葉に続き、高町の
「打ち、砕けぇっ!」
教官が瞬時に多重盾を展開する。同時、展開されていたスフィアから集中的に直射弾が教官に襲い掛かる。
圧倒的な数。直射弾は誘導弾と違って硬質的な弾を形成する。それは同じく、
一枚を砕いても勢いは収まらず、二枚。三枚。そこで一斉射が止まる。
教官の盾はあと一枚。それに対し、高町はスフィアを自らの左手に集めていくと、スフィアは一本の剣に形を変える。
「おおおおおおおおおおおおっ!!」
吼えた。ストレージの杖を待機状態に戻し、その魔力剣を左脇に構えると、恐ろしい速度で突進する。
速度を維持しながら横に回転。そのまま遠心力とスピードを乗せて薙ぎ払う。
「ぐっ――」
教官の最後の盾が砕けた。
高町は薙ぎ払った体勢から肩に担ぐように握り直し、振りおろす。
教官が左の杖でそれを防ぎ、右の杖で高町の腹に魔力弾を撃つ。
その衝撃に高町の身体はくの字に折れ曲がり、両手の杖で砲撃をチャージする。
「
それが撃ち出される直前、高町は魔力剣を投げた。
魔力剣は教官の左杖に展開されていた砲撃用魔方陣に突き刺さり、魔力が暴発する。
しかし教官は怯まず右手の杖から砲撃を撃った。
高町も左手を突き出し、掌から砲撃を放つ。
「――っ!」
高町が息を呑むのが見えた。
なんだ、と訝しく思うと同時、理由がわかった。
高町のスマッシャーの威力がみるみる衰えていく。拮抗状態にあった砲撃は教官が勝り、それは高町を呑み込んだ。
砲撃に弾き飛ばされるように、真っ逆さまに高町が落ちていく。
「まずい!」
隣の金髪が即座に飛び出し、ライアも続く。
二人は高町が地面に墜落する前に受け止め、ゆっくりと降り立つと横に寝かせた。
「どうしたんだ、こいつ。急に威力が弱まったみたいだが」
「魔力切れだよ」
ライアの呟きに、ナグリーが答えた。
「たぶん、素の魔力はあんまり多くないんだな。見た感じあのデバイスも
ナグリーの分析に、私とライアは感心して声をあげた。この男、飄々としているように見えるが、魔法学の知識はかなり持っているようだ。
ヴィンズが心配そうに気絶した高町を覗き込む。
「大丈夫なのか?」
「魔力切れなら、すぐに眼を覚ますだろう――それと、お前、名前は?」
「あ? ライア・ゼルヴィッズ……だけど」
「俺はティルク。ティルク・アローンだ。協力感謝する」
金髪――ティルクがライアに言った。ライアは少し面食らったような表情をしたが、すぐに手を振った。
「どっかの
ライアはそう言っていたが、それが照れ隠し、もしくは自分への過大評価を消すための嘘だというのが、今の私ならはっきりとわかる。
ライアは高町が落下した時、ティルクとほぼ同時に飛び出していた。おそらくティルクが居なかったとしても、一人で高町の救助に向かっていただろう。
基本的に、ライアは優しい男なのだ。おそらく、私よりもよほど。
「しかし、ティルク。お前も凄いな。真っ先に飛び出して。失敗するかも、とか考えなかったのか?」
ヴィンズの言葉に、ティルクは首を振った。
「『失敗するかもしれない』なんて考えていたら、何もできないさ」
その簡潔な返答に、ヴィンズは驚き、数秒後に笑って頷いた。
「なるほどな。大した奴だ。俺はヴィンズ・バリアント、よろしく」
「ああ、こちらこそ」
話の流れで私とナグリーもそちらに近付き、自己紹介を始める。
「僕はクォーツ・ディレンド」
「オレはナグリー・ベレンズ」
「改めて、ティルク・アローンだ。近代ベルカ式で、剣を使う。よろしく頼む」
そして、私達が自己紹介を済ませている間に、高町は目を覚まして教官と話をしていた。
「高町一騎、か。凄い奴だな」
「是非ともお近づきになりたい――いや、変な意味じゃ無くてな」
私の呟きに応えたヴィンズが、一人で慌てていた。