『弟』を支えた仲間達 作:ロア
『はいはい、姉御。どんなご用件で』
『ちょっと話しておきたいことがあるんだが』
『うっひょう姉御のお話とな……って、そんな露骨に嫌そうな顔しなさんな』
『ぼくが嫌がってるのは――』
バキッ、ガシャンッ
『そうやってこれ見よがしに録音しようとすることだ』
『ああっ! 折角ナグリーに作ってもらった「高音質で録音できる小型マイク」と「録画容量3ギガれこ~だ~」がぁ!』
『長いしセンスの欠片も無いしそもそも真面目に名付けようとすらしてない名前だな……で、これでオフレコだな?』
『ああ、まあね。流石にあんな高価なもんを量産はできんし。で、なんだよ話って』
『ぼくのことを
『ほう、僻み? 姉御にか』
『
『……ハイ』
『まあ当然だな。お前らが嫌がらせしてる連中だ』
『あ、知ってたん?』
『当たり前だ』
『……それがどしたん?』
『やめろ。用件はそれだけだ』
『……僕らがやめたら、また連中は動くぞ』
『構わないさ。ちょっかいを出されるのは慣れてる――それだけだ。じゃあな』
『…………』
そこで再生が止まった。私は机の上に置いていたそれを手の中で弄びながら、皆を見渡す。
「と、いうことだが。みんなどう思う?」
「姉御が半ギレだったのに隠れて録音するお前に感心した」
「そこじゃねえよ」
ふむ、とヴィンズが顎に手を当て、
「姉御に無駄で無意味な心労を強いることは無い」
「オレも賛成」
「ぶっちゃけマリク、自分がやりたいだけっしょ」
「あ、バレた? エヘヘ」
「うわキモいな」
「表出やがれピンク野郎」
「んなっ……」
マリクがヴィンズの事をピンクと呼んだが、その理由はヴィンズの魔力光に由来する。
つまるところ、ピンクなのである。ヴィンズの魔力光はそれはもう見事なショッキングピンクなのである。年頃の少女でさえドン引きするレベルの、それはそれは鮮やかなものであった。
正直同情する。ちなみに私の魔力は暗い青色である。
「ボケ茄子野郎が。それ以上くだらん事を言うと
「うわぁピンクに暴言言われちまった。ショッキングだわぁ」
「表出ろゴラァ!!」
「上等だゴラァ!」
二人はいがみ合いながら部屋を飛び出していく。
ちなみにマリクが茄子と呼ばれたのも彼の魔力光が
つまるところ、紫なのである。限りなく黒に近い紫。それはまるで収穫適期のナスビを思わせるほどである。よくてブドウゼリーの色である。
子供の頃、「古来より紫は高位の色よ」と縁日でカキ氷グレープを頼んでいる銀髪の少女を見たことがあるが、あの少女はともかく、あんな阿呆には高位や高貴など欠片も見出すことはできない。
「なんであの二人仲悪いのかね」
「知らね」
「一途に想う純情少年と、好きな子を苛めたくなる捻くれ者。まあ馬は合わんわな」
「えっ、マリクも姉御のこと好きなんです?」
「そういえばあいつ、男の娘モノのエロ漫画読んでたな」
「えっ、姉御って男の娘なんです?」
「微妙なとこ。ぶっちゃけ12の少年ってヘタな少女より可愛い顔してるのいるだろ」
「フェミニストとしちゃあんまり肯定したくない意見だが……まあ、わからんでもない」
「フェミニストとか自分で言っちゃう辺りがもうダメだね」
「つまり姉御は……童顔ってことか」
「突き詰めて言えばそうなる。姉御は極限なまでに中性的なだけ」
「きっと大人になれば俳優もかくやというイケメンになるであろう」
うむうむ、と全員で頷く。
「んじゃこれで解散?」
「本題忘れてるぅ!」
「えっ、なんでしたっけ?」
「姉御の長所を語る祭りじゃないの?」
「なんだその祭りは」
「姉御の身を守り隊でしょ」
「なんだそのちゃっちぃ自治会の集まりみたいなのは」
~~~~~
らちがあかないので各々が好き勝手にやることにした。
廊下で姉御にぶつかろうとした大柄な男をマリクが時速23キロのタックルで吹き飛ばし、訓練中に姉御を
とうとうしびれを切らしたのか彼らは訓練で真っ向から模擬戦を挑み、非殺傷を切って襲い掛かった。まあ私達が動く前に姉御の砲撃に黒焦げにされたが。
本人相手はダメだと思ったのか、姉御のルームメイトである兄貴に闇討ちを仕掛け、しかし察知されてやはり兄貴の炎に丸焦げにされた。
しかしまあ、よくも懲りないものである。私は一連の流れを見ながら少しだけ感心する。
「なんかわかったか?」
「連中はみんなミッド出身。親も管理局員の佐官。つまりは七光り。実力としては――座学B、実技C+。実力は大した事無いが、プライドは高い。つまりは……高町一尉
「ほーん」
私はマリクの報告に対し、興味なさそうに呟く。そう、興味なさそうに装ったのだが、
「楽しそうだな」
マリクにはバレてしまった。
「ん、まあね。よくわかったな」
「なんとなくだがな」
私はくっくっ、と嗤い、
「訓練校では
その言葉にマリクもけけけ、と嗤い、
「ま、上等だし、正論だし、奴等は不快だし。オレらはやりたいことをやるだけ。自分の
「ああ、まったく、その通り。僕達を敵にしたら、どんだけ嫌な目に合うか……連中の身に刻んでやろう」
私たちは一分ほどけらけらと嗤い続け――即座に無表情になると、その場から一瞬で飛び去った。
~~~~~
『正座しろこの阿呆が』
『……この「セイザ」とかいう座り方って、姉御の国じゃ罰則なわけ?』
『いいや。由緒正しい座り方だよ……なにか言うことは?』
『無いけど』
『……そうか』
『おんや、簡単に引き下がった……まさか信じた訳じゃあるめぇに』
『それ、嘘を吐いてるって言ってるようなもんだろ』
『エヘヘー』
『――――』
『いでででいだいだいだああぁあああぁっ!』
『何もするなって言っただろ。なんだよあいつらの
『んー。まあ、魔力が使えない状態にして目の前で
『明らかにそれだけじゃないよな』
『人にゃ弱点なんて幾らでもあるし……あ、そうだ姉御。ルーフェス嬢知ってる?』
『ルーフェス……?』
『ほら、あの赤髪ポニーテールの可愛い娘』
『――ああ、彼女のファミリーネーム、そんななのか。あの子は確か、空の騎士だっけか?』
『由来は
『どんな?』
『ただ剣を構えて貰ってた
『……そうか』
『まあ、同い年の少女に見られても問題ないレベルの行為には収まっている。安心するがよろし』
『あのな……ぼくは、自分でなんとかしようとしたんだ。姉の七光りとか、そういうのは関係ない、って。姉さんは姉さんで、ぼくはぼくだ、って』
『ふむ。なかなか、「弟」ってのも大変なんだな』
『昔からそうだよ。ともかく、もう勝手なことはしないでくれよ』
『まあ、考えとくがね。僕らも、自分のやりたいことをやっただけ、ってのは理解してくれよ?』
『ああ、はいはい。わかってるよ……ありがとな』
『もっかい言って』
『断る。それで? またお前は懲りずに――っ!』
『あっ! やめて! 本当にやめて! 今回は一個しかな――』
ドカッ、バリンッ、グシャッ!