『弟』を支えた仲間達   作:ロア

8 / 8
なんとなく阿呆を書きたくなったので30分で書きました。内容はお察し。


07

『はいはい、姉御。どんなご用件で』

『ちょっと話しておきたいことがあるんだが』

『うっひょう姉御のお話とな……って、そんな露骨に嫌そうな顔しなさんな』

『ぼくが嫌がってるのは――』

バキッ、ガシャンッ

『そうやってこれ見よがしに録音しようとすることだ』

『ああっ! 折角ナグリーに作ってもらった「高音質で録音できる小型マイク」と「録画容量3ギガれこ~だ~」がぁ!』

『長いしセンスの欠片も無いしそもそも真面目に名付けようとすらしてない名前だな……で、これでオフレコだな?』

『ああ、まあね。流石にあんな高価なもんを量産はできんし。で、なんだよ話って』

『ぼくのことを(ひが)んでる連中がいるの、知ってるだろ?』

『ほう、僻み? 姉御にか』

知ってるだろう(・・・・・・・)?』

『……ハイ』

『まあ当然だな。お前らが嫌がらせしてる連中だ』

『あ、知ってたん?』

『当たり前だ』

『……それがどしたん?』

『やめろ。用件はそれだけだ』

『……僕らがやめたら、また連中は動くぞ』

『構わないさ。ちょっかいを出されるのは慣れてる――それだけだ。じゃあな』

『…………』

 

 そこで再生が止まった。私は机の上に置いていたそれを手の中で弄びながら、皆を見渡す。

 

「と、いうことだが。みんなどう思う?」

「姉御が半ギレだったのに隠れて録音するお前に感心した」

「そこじゃねえよ」

 

 ふむ、とヴィンズが顎に手を当て、

 

「姉御に無駄で無意味な心労を強いることは無い」

「オレも賛成」

「ぶっちゃけマリク、自分がやりたいだけっしょ」

「あ、バレた? エヘヘ」

「うわキモいな」

「表出やがれピンク野郎」

「んなっ……」

 

 マリクがヴィンズの事をピンクと呼んだが、その理由はヴィンズの魔力光に由来する。

 つまるところ、ピンクなのである。ヴィンズの魔力光はそれはもう見事なショッキングピンクなのである。年頃の少女でさえドン引きするレベルの、それはそれは鮮やかなものであった。

 正直同情する。ちなみに私の魔力は暗い青色である。

 

「ボケ茄子野郎が。それ以上くだらん事を言うと(ヘタ)を抜くぞ」

「うわぁピンクに暴言言われちまった。ショッキングだわぁ」

「表出ろゴラァ!!」

「上等だゴラァ!」

 

 二人はいがみ合いながら部屋を飛び出していく。

 ちなみにマリクが茄子と呼ばれたのも彼の魔力光が所以(ゆえん)である。

 つまるところ、紫なのである。限りなく黒に近い紫。それはまるで収穫適期のナスビを思わせるほどである。よくてブドウゼリーの色である。

 子供の頃、「古来より紫は高位の色よ」と縁日でカキ氷グレープを頼んでいる銀髪の少女を見たことがあるが、あの少女はともかく、あんな阿呆には高位や高貴など欠片も見出すことはできない。

 

「なんであの二人仲悪いのかね」

「知らね」

「一途に想う純情少年と、好きな子を苛めたくなる捻くれ者。まあ馬は合わんわな」

「えっ、マリクも姉御のこと好きなんです?」

「そういえばあいつ、男の娘モノのエロ漫画読んでたな」

「えっ、姉御って男の娘なんです?」

「微妙なとこ。ぶっちゃけ12の少年ってヘタな少女より可愛い顔してるのいるだろ」

「フェミニストとしちゃあんまり肯定したくない意見だが……まあ、わからんでもない」

「フェミニストとか自分で言っちゃう辺りがもうダメだね」

「つまり姉御は……童顔ってことか」

「突き詰めて言えばそうなる。姉御は極限なまでに中性的なだけ」

「きっと大人になれば俳優もかくやというイケメンになるであろう」

 

 うむうむ、と全員で頷く。

 

「んじゃこれで解散?」

「本題忘れてるぅ!」

「えっ、なんでしたっけ?」

「姉御の長所を語る祭りじゃないの?」

「なんだその祭りは」

「姉御の身を守り隊でしょ」

「なんだそのちゃっちぃ自治会の集まりみたいなのは」

 

 

~~~~~

 

 

 らちがあかないので各々が好き勝手にやることにした。

 廊下で姉御にぶつかろうとした大柄な男をマリクが時速23キロのタックルで吹き飛ばし、訓練中に姉御を誤射(・・)しようとした小柄な男はヴィンズが放り投げた杖によってタンコブをつくり、教官に姉御の悪評を吹き込もうとしたガリガリな男をライアが本気で脅して失禁させ、夜中に姉御の部屋に侵入しようとした愚か者は私が翌朝まで磔にした。

 とうとうしびれを切らしたのか彼らは訓練で真っ向から模擬戦を挑み、非殺傷を切って襲い掛かった。まあ私達が動く前に姉御の砲撃に黒焦げにされたが。

 本人相手はダメだと思ったのか、姉御のルームメイトである兄貴に闇討ちを仕掛け、しかし察知されてやはり兄貴の炎に丸焦げにされた。

 

 しかしまあ、よくも懲りないものである。私は一連の流れを見ながら少しだけ感心する。

 

「なんかわかったか?」

「連中はみんなミッド出身。親も管理局員の佐官。つまりは七光り。実力としては――座学B、実技C+。実力は大した事無いが、プライドは高い。つまりは……高町一尉ごとき(・・・)の弟、ってだけで周りからちやほやされてる姉御が気に入らん、ということかね」

「ほーん」

 

 私はマリクの報告に対し、興味なさそうに呟く。そう、興味なさそうに装ったのだが、

 

「楽しそうだな」

 

 マリクにはバレてしまった。

 

「ん、まあね。よくわかったな」

「なんとなくだがな」

 

 私はくっくっ、と嗤い、

 

「訓練校では実力が全て(・・・・・)だ。だからこそ、僕達はかの名高き『エース・オブ・エースの弟』に心酔している。名ばかりの『弟』だったら、そもそも周りに人など集まるまいよ。連中には、それをわからせる必要があるんじゃないかね」

 

 その言葉にマリクもけけけ、と嗤い、

 

「ま、上等だし、正論だし、奴等は不快だし。オレらはやりたいことをやるだけ。自分の好き嫌い(・・・・)に応じてな」

「ああ、まったく、その通り。僕達を敵にしたら、どんだけ嫌な目に合うか……連中の身に刻んでやろう」

 

 私たちは一分ほどけらけらと嗤い続け――即座に無表情になると、その場から一瞬で飛び去った。

 

 

~~~~~

 

 

『正座しろこの阿呆が』

『……この「セイザ」とかいう座り方って、姉御の国じゃ罰則なわけ?』

『いいや。由緒正しい座り方だよ……なにか言うことは?』

『無いけど』

『……そうか』

『おんや、簡単に引き下がった……まさか信じた訳じゃあるめぇに』

『それ、嘘を吐いてるって言ってるようなもんだろ』

『エヘヘー』

『――――』

『いでででいだいだいだああぁあああぁっ!』

『何もするなって言っただろ。なんだよあいつらのあれ(・・)。何をやったらああなるんだ』

『んー。まあ、魔力が使えない状態にして目の前で十字砲火(クロスファイア)構えたりとか』

『明らかにそれだけじゃないよな』

『人にゃ弱点なんて幾らでもあるし……あ、そうだ姉御。ルーフェス嬢知ってる?』

『ルーフェス……?』

『ほら、あの赤髪ポニーテールの可愛い娘』

『――ああ、彼女のファミリーネーム、そんななのか。あの子は確か、空の騎士だっけか?』

『由来は赤の(rufus)騎士(eques)らしいよ。彼女も協力してくれたんだ』

『どんな?』

『ただ剣を構えて貰ってただけ(・・)

『……そうか』

『まあ、同い年の少女に見られても問題ないレベルの行為には収まっている。安心するがよろし』

『あのな……ぼくは、自分でなんとかしようとしたんだ。姉の七光りとか、そういうのは関係ない、って。姉さんは姉さんで、ぼくはぼくだ、って』

『ふむ。なかなか、「弟」ってのも大変なんだな』

『昔からそうだよ。ともかく、もう勝手なことはしないでくれよ』

『まあ、考えとくがね。僕らも、自分のやりたいことをやっただけ、ってのは理解してくれよ?』

『ああ、はいはい。わかってるよ……ありがとな』

『もっかい言って』

『断る。それで? またお前は懲りずに――っ!』

『あっ! やめて! 本当にやめて! 今回は一個しかな――』

ドカッ、バリンッ、グシャッ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。