あの魔王の城の中であった話である。俺、デューマは自分の出生の話をしようとしたのだ。まぁ「そんなこと」と一蹴されたが。
私はアウラウネのユウ。ただの極度の人見知り……だと思う。デューマは私たちの世界に足を踏み込み私たちに新しい世界を見せてくれた。だからデューマには感謝してる。だってこんなにも世界は広いってわかったから。私の世界は屋敷の蔵書管理室と繋がった森の中くらいだった。本を読むくらいなら光合成しながらできるから、本は好き。世界を知ったのは、サーヤがくれた本がきっかけ。物語の英雄が数々の悪を懲らしめていくお話。私の知らない何かを運ぶ存在。世界の中心。それが私の憧れだった。
だからこそ彼の出生話を辞めさせた。明らかに辛い話と分かったし、辞めさせないと永遠に卑下し続けると思ったから。私の英雄はそんなやわじゃない。
あの時語ったのは、良かれと思って言った俺の昔話である。俺の自虐ネタを笑えると思って言ったのだが三人、特にアウラウネにそんなことで片付けられたわけだからここに書き記そうと思う。
俺の出生はとある小さな村だった。この国の習慣として教会で出産しそのまま神の信託を受ける。村の人々は信託によっては疎まれたり、喜ばれたりするのだ。しかしあの時、両親がどう思ってたかなど知らない。ましてや顔すら見たことがない。俺の信託は魔王を討ち亡ぼすものだったらしい。どこが!?まぁそんなことはいい。俺はそのまま首都の教会で育つことになる。勇者になるための英才教育である。この世界に神がいるかというのは愚問とされるが俺はいないと思う。一回教会の人に聞いたことがある。その時は散々体を痛めつけられた挙句地下倉庫に監禁された。それ以降無闇に疑問を口にはしなくなった。俺の両親だった人は俺が勇者になると同時に待遇の改善を求めた。ある時は教育費、ある時は膂力を上げる食料をといった有る事無い事言って私腹を肥やす豚になったのだ。遠目に見ても裕福ではなかったが初めて得た権力にあぐらをかいたようだ。そんな最期は同じ村の人による暗殺であった。死んでも特になんとも思わなかったのは顔も育ててもらった恩とか記憶なんてなかったからであろう。旅立つ時にはこの国有数の有力者が共に行くことを志願してきた。俺としてはこの国を出てから勇者という肩書きを捨て一人で魔族でもなんでもいい辺境の地へと行って奴隷でもなんでもいいからと泣いて懇願する気だった。そのための準備もしていたのに。命あっての物種と言うくらいだ神託に従う気は無い。だから別に魔族とかそういうのは偏見とかないからと俺に付く事になったという泣いて悲しむ彼らの事へのフォローをしたかったわけだ。まぁ重ねていうが、「そんなこと」らしいよ?話を聞かない従者にはほんと疲れてるよ。戦士1しかりアウラウネしかり。
と言う生まれた時からまさかの職業が決まってたというこの世界の常識は嫌でしょうがなかったというお話である。