放置してた小ネタ(ネギま)   作:Par

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魔法もなにも無い地球(現実にあらず)から転移したオリ主が、エヴァと登校地獄に巻き込まれるはなし。

登校地獄等の細かい設定は変えたり無視し、この話ではわからないが、一応オリ主最強な奴で、原作開始時は、やばい超能力に幾つも目覚めてるって奴だった。俺ツエーすぎて話まとまらないと昔放置した奴。


俺と君とで”登校地獄”

 ネギま 君と俺とで“登校地獄”? 

 

 

 

 穏やかな、朝。そして、賑やかな教室、2-A。

 

「マグダウェル……マクダウェ~ル?」

「先生、マクダウェルさんは来てません」

「なに、来てない? あん畜生、まぁたサボりやがったな」

 

 出席をとっていた教師、清水紀(シミズ トシ)は忌々しげに出席簿の“エヴァンジェリンA・K・マクダウェル”の所に「欠」の字を赤ペンで書きなぐる。が、直ぐにそれに斜線を引いて消した。

 

「先生朝一緒や無かったの?」

「一緒だったがね……絡繰、あの馬鹿ぁ何処行きやがった」

「気が乗らない、との事でしたが」

「気が乗らねぇだぁ? ……だとしたら屋上か、毎度毎度っざけた理由でばっくれやがって、絡繰! 後であん馬鹿職員室までしょっ引いて来い!」

 

 バちんッと音を立て出席簿の黒いあれ(バインダー)を畳む。なんともガラの悪い事であるが、これでも教師である。

 

「先生、申し訳ありませんが、私にマスターを連れ戻すのは……」

「あ、あー……なら那波一緒付いてけ、お前さんならあいつも言う事聞くだろ、多分」

「はい、わかりました」

 

 紀に指名され、那波千鶴はおっとりと答えた。と同時に、HR(ホームルーム)を終える鐘が鳴った。

 

「まだ出席が……まぁマクダウェル以外はいるな? いない奴は手ぇ上げろ」

 

 紀の下らない冗談に、クラスの何人かは苦笑、すると一際やんちゃそうな娘が手を上げ声を出す。

 

「はーい! ボクいませーん!」

「鳴滝姉「欠席」、と」

「あ、ごめんなさい! います鳴滝風香います! ここに居ます!」

「あいよ」

 

 自分から振っといて酷い仕打ちである。他の生徒も「うわぁ」と微妙な顔であった。

 

「ちなみに、知ってると思うが今日は高畑先生は出張でいない、そこの所宜しく」

「え゛!? 嘘ぉッ!」

「……“どっかの馬鹿”は忘れてたらしいな。まぁ良いや、じゃあ今日も頑張れよガキ共」

 

 気だるそうに教室から出てゆくその後ろ姿は、やはり教師には見えぬ物であった。

 

「先生、マクダウェルさんを“しょっ引き”ました」

「あいよ、お二人ともご苦労さん、戻ってよし」

「はい、失礼しました」

「マスター、後ほど教室で」

「うぅ、茶々丸め……」

「エヴァさん、また教室でね?」

「ひぅい!?」

 

 下手人を連れてきた千鶴と茶々丸を戻らせ、紀は片肘で頬杖付きながら目の前の不服かつ不機嫌なパツ金少女の下手人、エヴァンジェリンを睨みつけた。異様に那波に対して脅えたエヴァは、見ていて面白い物であった。

 

「さて、どうして呼ばれたかはわかっとるな」

「……その前に良いか」

「証言を認める」

「那波は反則だろう……」

 

 不機嫌だった顔をフニャリと崩し、エヴァンジェリンは不満を口にした。何があったかは知らないが、効果は高かったと紀は容易に理解できた。

 

「しかし、お前はどうしてこう授業をサボる、ええ?」

「……そんなの、私の勝手だ」

「やはり屋上で寝っ転がってたらしいじゃないか、屋上で黄昏るたぁ今時流行らん事をするんだな、お前は、一昔前のドラマかおい?」

 

 グチグチ、グチグチ。早口ではないが、次から次へと批難の言葉を浴びせる。エヴァは「うぬぬ」と悔しそうにするが、悪いのは自分なので余り言い返せなかった。

 

「はぁ……まあ、俺としてはこのまま終わりの無い説教をしても良いが、俺もお前も授業がある。一限は新田さんか、遅れると俺までどやされらぁ、とっと教室戻りな」

「ふん」

「来なかったらまた那波さし向けるからな」

「ちょ、おま!」

「うぅん~~~ん?」

「っく、帰ったら覚えてろよ!」

 

 礼儀もへったくれも無く、エヴァは職員室からズカズカと出て行き、それを見送った紀は溜息をつき、机の上の湯呑みに手を伸ばし、中身を飲み干した。

 

「ひどく御怒りでしたね、マクダウェルさん」

「ん、ああ、そうだな」

 

 ふらりと紀の傍に現れた同僚の女性、源しずなは笑顔で話しかけた。

 

「怒りすぎとか言うなよ」

「そうは言いませんよ」

「そうかい。ま、あいつの気持ちもわかるがね、同じだから」

「しかし、清水先生と彼女では境遇に違いがありますよ?」

「そうかわらんよ、歳食うか食わないかだけだ。さあ、授業だ、俺も行くかね」

「頑張って下さいね」

「おまえもなー」

 

 出席簿の黒いあれ(バインダー)で手を振りながら、紀は授業に向かう。また、それを見送ったしずなも、自身の授業へと赴いて行った。

 

 

 ***

 

 

 2003年、この年を迎え、俺は31のおっさんだ。指先の油が少なくなり、反面鼻の頭に若干の“てかり”が見える、気になるお年頃になっちまったわけだ。

 仕事は教師をやってる。かれこれ高校を出てからと言う物、行く気も無かった大学に入り、それはもうひたすらに勉強をしたものだから、生憎人に物を教えるのに困る事は無かった。やる事がそれ以外に無かったからな。

 やる気も無かった勉強を生かす仕事は結局教師とかしか無く、それ以前に俺は現在の住処を離れる事を許されないゆえに、就職する仕事も限られていた。

 自分がまだ社会も知らないケツの青いガキンチョ共に人生の道徳を学ばせることになるとは思いもよらなかった。

 まあなんだってこんな事になったかと言えば、色々と有った訳であるのだが……。

 あれは本当に突然だった。何せ、死を自覚する暇も無かったんだからな。自覚も出来なかったのだから、分かりもしない話だが、少なくとも人は死ぬ時ってのは何かしら思う所がある筈だ。「あ、死んだ」位の事は思うだろう。俺は、そう言う事を思う暇も無く“こっち”に飛ばされた『らしい』。

 今と成っては思い出すのも難しく成ったが、確かそう、何処か高い場所(恐らく高層ビル)から落ちたのだと思う。多分そうだ。如何してそこに居たのとか、如何して落ちたのかと言うのももう忘れた。大方足でも滑らしたんだろう。

 そうだな、瞬きをするよりも短い感覚と言うべきか、そのぐらいの感覚で目の前に迫っていた地面が、突然一人の少女に変わっていたのだ。

 地面にぶつかる筈だった俺の頭部は、唐突に現れた(向こうにとっちゃ俺が)少女にぶつかった。そして、死ぬほどではないにしろ、激しい痛みを感じた瞬間、その衝撃とは別の“衝撃”を俺と少女は纏めてうけた。俺に良くわからんもんを打った野郎は突然現れた俺を見て「やっべ」と“素”で青い顔をした。

 俺は俺で混乱の最中、死んだと思ったらこれだ。同じくよくわからんもんを喰らった金髪少女は、俺を見て騒いだ。それに対し、俺も騒いだ。と言うか、何故かそこは深い落とし穴で、野郎は上から俺達を見降ろし、俺と少女は何故かニンニク塗れになり、やたらと臭い穴の中だった。

 取りあえず俺達二人を穴から引き揚げたあの野郎は、俺を見て「一般人かよ」と困惑し、少女は少女で相変わらず騒いでいた。さりげなく俺達を引き上げる為に俺達の体を宙に浮かせたのには驚いたが、まあ今では慣れた物だ。

 一先ず、状況の確認が必要であると話し、俺はあの野郎に案内され、少女と共にある老人の持つ所へ案内された。

 

 

 ***

 

 

「良いかぁ、人と言う字は、人と人が寄り添って」

 

 御昼前の授業、紀は2-Aにて授業を行っていた。黒板に大きく「人」の字を書き、何処かで聞いた事のある喋り方で感じの説明をする。だがそこで、一人手を上げ異を唱える者が一人。

 

「先生」

「何だ、雪広」

 

 クラス委員長雪広あやかは堂々ながらも、控え目にその口を開き紀に言った。

 

「先生の担当教科は「社会」です」

 

「人」の字は全く関係無かった。

 皆がわかっていながら突っ込むタイミングを外す中、KY勇気ある行動で紀に指摘を入れた彼女は勇者と言えよう。

 

「……なあ、雪広」

「は、はい?」

「お前、寿司は好きか?」

「へ? まあ好きですけど?」

 

 何を突然とも思うが、あやかは質問に答えた。

 

「そうか、なら例えば、毎日ずっと晩飯に寿司食ったら、お前どう思う」

「毎日? それは、飽きるんじゃ無いのでは? 幾ら美味しくても毎日となると」

「そうだろう? つまりさ、そう言う事だ」

「は?」

「毎日似たような授業やってっとな、飽きるんだよ」

 

 実に身も蓋も無い、仮にも教師の言葉であろうか。

 

「先生、それはどうかと……」

「いいんちょ、先生に対してそれは今更だよー」

「いやしかし」

 

 雪広としても授業を進めて欲しい。何しろ、彼女たちには今度定期試験が待っているのだ。試験範囲はしっかりと知っておきたかった。

 

「……まあ冗談だがな。あぁほれ、そこの馬鹿ども、今日は授業潰れると思って教科書しまったみたいだがそうは行くか、机の中のもん出せ」

「え゛ー? 今日は休もうよー」

「めんどいアルー」

「阿呆、休んだって結局一時間授業はあるんだよ、その悲しい事にキャパシティーを大いに余らせた脳みそに知識を詰めろ、バカレンジャーめ」

 

 一部ブーイングが起きるが、紀は問答無用、教科書を開き授業を今度こそ開始した。

 

「よし、マクダウェル、教科書45ページ四行目から55ページの終わりまで読め」

「なんで私が、ってながッ!? ほぼ10ページじゃないか!」

「そうだな」

「輕ッ!? ああ! しかも殆ど図の無い、無駄に文が多い所を! ハッ! そうか、貴様朝の事で意趣返しか!? 陰険な!」

「フッ!」

「きゃんッ!?」

 

 エヴァが激しい抗議を行ったが、瞬間、紀の右腕から高速で放たれた白き弾丸(チョーク)がヘッドショットされ、チョークはエヴァの額で粉微塵となり、可愛らしい悲鳴を上げてエヴァは仰け反った。

 

「文句言わず読め、それと俺は“貴様”では無い、先生と呼べ?」

「く、っくぅ~覚えてろよ!」

 

 悔しそうにエヴァは教科書を持ち指定されたページを読む。最中、紀と言えば悪い笑みを浮かべていた。

 ついでに茶々丸はじっとエヴァを見つめていた。同時に何かカメラが回る音、録画されている様な音が聞こえるが気のせいだろう、きっと。

 

 

 ***

 

 

 連れて行かれた先に居たのは、切り落としたい衝動に襲われる頭部を持つ爺のいる部屋であった。入り口、と言うかここに向かう途中の看板にあったのだが、この場所はどうやら学校であった様だ。そして、目の前の爺はそこの学園長だった。

 俺達はあの少女に野郎を含めて四人で色々と話をした。聞くに、彼等は「魔法使い」だと言うではないか。この時は信じられぬ者であったのだが、直ぐに信じる事に成った。実践してもらったからだ。

 金髪の少女は“吸血鬼”だった。驚くが、それ以上にあのニンニクの山に納得した。本当に苦手なんだな、ニンニク。

 また、よくわからないもん撃った野郎はめっちゃ強い魔法使いらしい、爺もやり手との事だが、俺には良くわからん。更に良くわからない事だったが、吸血鬼の少女と彼等の間でいざこざがあって、その騒ぎの中に俺が現れた、と言うことらしかった。

 爺さんが言った。俺は何者かと。

 何者も何も、俺はただの高校生になりたての小僧(当時)だと言うと、爺と野郎は頭を悩ませた様子だった。更に爺は悩み抜いた後に聞いた。君の記憶を見せてくれないか、と一言。

 

 

 ***

 

 

「……ふむ」

 

 午前の授業を終えた紀や他の教師たちは、半分は職員室へ、残り半分は学食へと向かう。目的は簡単、昼飯だ。

 この時間の食事と言うのは、生徒との授業と言う戦いを終えた彼等にとっても至福の時であった。

 紀は職員室で椅子に座り、広げた弁当を見て唸る。

 “中くらいのお弁当箱に”と懐かしの歌じゃないが、大きすぎない弁当箱に綺麗に収められた食材は、見ているだけでも食欲をそそる。割合は緑黄色野菜のオカズが多く、少量だが肉も添えられている。ヘルシー志向らしい。

 そして、そこにひょっこり現れたのはしずなだった。

 

「あら、今日も“絡繰弁当”ですか?」

「ああ、頼んだわけじゃないが、御苦労な事だよ」

「けどありがたいのでしょう? はい、お茶です」

「ありがとさん」

 

 濃い緑茶の入った愛用の湯呑みを受け取る。生憎、茶柱と言う粋な物は浮いてはいなかったようだ。

 

「おや、また絡繰の弁当かね」

「あ、新田先生」

 

 またも現れたのは教師の年長者、新田だった。新田は紀の弁当を見ると、微笑ましそうに話しかける。

 

「生徒に弁当作らせるとは、とも最初は思わなくも無かったが、慣れれば微笑ましく羨ましい物だね」

「思い立つと作るみたいで、こっちも朝突然渡されるんですよ」

「けど上手に作りますね、絡繰さんって。味も良いのでしょう?」

「そう、困るんだこれが、これ食うと学食行けないんでな」

「それは何故だい?」

「そらまあ、こっちの方が美味いんで」

 

 おどけた様子の紀。二人は釣られて笑った。

 

 

 職員達が食事をとると言う事は、当然生徒達も食事をとる。うら若き乙女たちは、果たしてどの様な食事をとるのだろうか? 

 

「おい茶々丸!? 如何言う事だこれは!!」

「如何なさいましたか、マスター?」

「私の弁当が梅干しと白飯だけとはどう言う事かと聞いている!」

 

 機械的に静かに食事をとる茶々丸にエヴァは詰め寄り、彼女の目の前に自分の弁当箱を乱暴に置いた。人気沸騰アニメ、ビブリオンのキャラクター柄の弁当箱の中身は、美しい白飯の中心に“ちょこん”と「カリカリウメ」が置かれていた。

 

「……も、申し訳ございません、甘い梅干しの方が宜しかったでしょうか?」

「ちっがーう! 主菜、主菜は如何した!? 戦時中か! これでは主食9に副菜1ではないか!? あ、しかも何の味も無い!? 素材か、米で勝負なのか!?」

「それは、今日先生にお弁当を作った時に時間が間に合わず……」

「私の方が後回しか!?」

「おお! エヴァちん日本男児みたいなお弁当」

 

 ギャーギャー騒ぐものだから、光による無視の如く野次馬到来。そりゃこれだけ騒げば来ると言うもの、エヴァも「しまったッ」と思ったが、時既に時間切れ。初めに寄って来た明石祐奈を筆頭に、クラスの騒がしい連中が寄るわ寄るわの大騒ぎ。

 

「なになに、どんなお弁当だって、ってブハッ! こ れ はッ!」

「エヴァさんマジ男前、白飯にゴマ一つない」

「塩すら無いがなッ! と言うか散れ貴様等、見世物では無ーい!」

 

 腕をブンブン振り上げ威嚇するも、小柄のエヴァがそんな事やった所で、はた目から見れば「なんか微笑ましい生き物」にしか見えない。

 

「いやぁー見事な日の丸弁当ですね、どうですか解説の四葉さん」

「競うな、食材の持ち味を活かせ、ということですね」

「……」

 

 突然、そっと横からハンバーグをエヴァの弁当に乗せる手が見える。

 はっとハンバーグを自分に施した人物を見るエヴァ、そこには静かにザジ・レイニーデイがいた。

 

「おい……なんだ、レイニーデイ、そっと自分のオカズを私の弁当に置いて」

「……」

「その哀れんだ視線は止めろっ!!」

「あ、私もあげようっと!」

 

 ザジの行動を見て、他のクラスメイト達も次々と自分のオカズをエヴァの貧相な弁当に分け始めた。

 

「エヴァちゃん唐揚げ好き? 私のあげるー!」

「お、おい貴様等!」

「なら私はこの卵焼き!」

「ならボクはこのガーリックチキン!」

「最後のは絶対にいらんぞ!?」

 

 取りあえず、賑やかな食事であったとさ。

 

 

 ***

 

 

 正直、(当然と言えば当然)気のりはしなかった。記憶、つまりは頭ん中見せろってこった。相手が如何俺を見てるか知らなかったが、流石に二つ返事でOKは言えない。だが爺達にも事情があるのはわかる、俺は爺の提案から暫くじっくり相談をした。

 結果を言えば記憶を見せる事に成った。向こうも、俺も、色々と確かめる手段がこれしかないと判断したためだからだ。

 爺は全てを見る訳でなく、必要な部分だけを見ると一応は約束してくれた。口約束だから帆書は無いが、まあ致し方なしである。

 爺は俺のオデコに杖を付けると、何やら聞き慣れぬ言葉を口ずさみ、俺は直ぐにそれは呪文だと理解した。そして20秒程経つと、爺は杖を離した。

 如何だったと聞くと、爺は少し困惑気味に答えた。「君は一般人で間違いない、間違い無いのだが……」と途中言葉を濁した。俺は先を離すよう促すと、爺は気不味そうに口を開き言った。「君は、『別の世界』から来たのかもしれない」。

「何を馬鹿な」と言いたかった、が、つい今しがた、俺は魔法を見せられていた。「世界を超える。大いにあり得るのでは?」そう思える事が恐ろしかった。何故と爺に問うと爺は答えた、「記憶が妙な所で途切れ、そしてナギ達の場所に移った」と。如何見えたのかは知らないが、記憶を見た爺にはそう見え、俺が『別の世界』から来たように思えたのだろう。

 言いたい事はある。あるが、俺は不思議と冷静だった。よしんば『別の世界』から来たのであれば、何か違いがあるだろう、そう、例えば『時代』。俺は爺に聞いた、「今は何年だ?」と。帰って来た答えは「1988年」。決定、異世界でしたとさ、俺が居た世界は「2010年」である。どうやら俺は、魔法がある過去の地球に来てしまったようだ。これには俺だけでなく、この場に居る全員驚きであった。

 しかし、本当に重大な問題はこの事では無かった。爺が確かめたかった事は、要は俺が『真に一般人であるか、どうか』だった。

 一般人で無いならばそれで良し、仮に『別の世界』の人間であっても、最悪こちらから巻き込んでしまえば良いのだ。力があれば雇う、知識があればまた雇う、取り込み方は色々だ。だが、俺が本当に、何の力も知識も無い『一般人』だったら? (魔法使いは一般人を護るらしい)。

 そうだ、俺はこの世界に来た時、何があった? 少女とぶつかり、そして、俺は野郎が撃った『魔法』を喰らったのだ。

 

 そうだ。俺は、『巻き込まれた』のだ。

 

 

 ***

 

 

「じゃあ今日の授業終わりー気を付けて帰れよガキどもー」

「終わったー!」

「部活だー!」

「遊びだー!」

 

 紀が本日の授業終了を告げると、着席していた生徒達は一斉に立ち上がり、其々が思い思いに行動を開始する。

 一人は部活へ、また一人は友達と外に遊びにへと向かう。それらの生徒を暫し見送ると、紀はまだ席に着いたままのエヴァと茶々丸の席に近付いて行った。

 

「無事一日授業受けたな」

「当然だ、私にかかれば授業など容易い」

 

「ふふん」と自慢げに言うエヴァであるが、そもそもサボろうとした奴の台詞では無かった。

 

「無い胸を張るな。自慢したいなら授業を受けろ」

「もう何度も受けた授業だ、意味無いだろ言う、と言うか、胸の事は余計だ!!」

 

 意味が無い、その言葉に紀は半分諦めに似た表情に成るが、直ぐに切り替える。

 

「まあそこ等辺の話しは良い、それより今日は職員会議で少し遅い、先に食事は取っていて良いからな」

「畏まりました、先生」

「ふんっ、精々頑張るんだな」

「へーいよ」

 

 紀は手を振りながら教室を後にした。向かう先は会議室。至って面倒な職員会議の時間であった。

 

(どうせ、ツマラン話だ)

 

 主に生徒指導に関連した話だ。特に変わり映えしない話し、もう何度も聞いて来た。

 今日も変わらぬ会議だ。そう紀は思っていた、この時は。

 

 

 *** ***

 

 

「“登校地獄”?」

 

 紀は間抜けな声で聞き返した。何とも“スットコドッコイ”な魔法であるが、実際の所地味に辛い魔法であった。それは魔法を使った本人、ナギ・スプリングフィールドに、この場所の責任者、近衛近右衛門も理解している。

 

「……読んで字の如く?」

「字の如く。どっちかてと、魔法つか『呪い』かね。これをかけられると強制的に学校に通う事に成る……感じの魔法だったと思う」

「おいィ、なんですかァー? そのいい加減な言い方はー? この魔法使ったのあんたですよねぇ?」

 

 紀は抗議した。当然だ、自分に意味不明な『呪い』をかけられたのだ、これは堪った物では無い。そして、その呪いを受けたもう一人とて、その気持ちは同様であった。

 

「そうだ! 第一こんな所に私を縛って如何言うつもりだお前は!?」

「いや、お前は封印の意味もあったけどよ、爺が警備員欲しいって言ってたし」

「いや、わしの所為にされても」

「いやいや、ここは最高責任者の責任で」

「いやいやいや、魔法使ったのお前さんじゃし」

「いやいやいやいや、爺で」

「いやいやいやいやいや、お前さんで」

「いやい」

「いい加減にしろッ!」

「見苦しいぞ貴様等!」

 

 バンッと机を叩く紀達呪い掛けられ組。怒鳴られた方は「ひっ」と身を強張らせた。

 

「くっそー聞く限り俺とばっちりじゃねーか、解け! 俺にかけたそのふざけた『呪い』解け!」

「ついでに私のも解け!」

「あ、いやえーと、ちょいっと待てお二人さん」

 

 ナギは“ちょいちょい”と手招きをして、近右衛門を呼んだ。近右衛門は坐っていた席を立ち、ナギの方に近寄って行く。

 

「……二人共、少し待っておってくれ」

 

 どうやら聞かれると不味い事らしい。二人はそそくさと廊下へと出て、小声で会話を始めた。

 生憎、「待っていろ」と言われて待つ様な奴はこの場に居らず、二人が廊下に出た後、紀達は扉に聞き耳を立てた。ピッタリと身体奥っ付けて、何とか会話を聞き取ろうとするが、かなりの小声で会話している様で、聞きとる事もままならない。その矢先。

 

「……ブホッ!? な、なんじゃってー!?」

「馬鹿声が大きい!」

 

 近右衛門はナギの言った何かに驚いたらしい、その驚愕の声は大きく、部屋の二人にも容易に聞き取れた。

 

「なんだ!?」

「あ、いやなんでもねーよ、もうちょっと待ってな」

 

 扉を開けようとしたが、その前にナギが扉を閉めたため出る事が出来なかった。一体二人は何を話しているのか。紀だけでは無い、『呪い』をかけられた、もう一人も同じ事を考えていた。

 五分、また十分か、二人の話し合いはやっと終わり、部屋の中に入って来た。近右衛門は早足で席に戻ると、短めに溜息をはいた。

 

「……で?」

「う、うむ……その、非常に言いにくいのじゃが、落着いて聞いて欲しい」

 

 バツの悪そうな二人に、紀は不安を覚えた。こう言う時の不安は大抵当たる。

 

「……ぶっちゃけ、『呪い』解けんそうじゃ」

「……なん」

「だと……?」

「テヘペロッ」

 

 “さら”っと言った近右衛門、(半ばヤケクソ気味に)舌を出してうざいナギ。

 

「解け、ない? おい、解けないとはどういう事だ己等ァーッ!」

「ス、スマンっ、マジ今は解けないんだって、これ」

「無責任すぎるだろー! 毒には解毒をセット! 魔法だかなんだか知らんが、そう言うのはアレだ、同じ感じだろー!?」

「正論過ぎて何も言えんがマジ無理なんだって! チビとお前は中学高校の学生として三年は通わなきゃ『呪い』解けないの!」

「……本当に?」

「本当にッ!!」

 

 何と言う事であろうか、清水紀16歳元。確かに、彼は高校に通う事は決まってはいた。が、違う世界で、こんなふざけた『呪い』で学校に強制登校させられるとは夢にも思わぬ事。見知らぬ世界で、行動の自由を奪われた。

 

「……泣きっ面に蜂じゃが、“登校地獄”はただ学校に通う事を強制させられる魔法に有らず」

「は? 何、これ以上なにがあんの?」

「そのな、この魔法が使われ指定された場所、つまりここ「麻帆良」の敷地内から……出る事ができん」

「…………待て、爺。そ、それはつまり? おお俺は学校に通うのは勿論、ここの敷地外に出れない、と? むこう三年間?」

「そういう、事じゃな」

「北海道は!? 沖縄は!?」

「……無理じゃ」

「じゃあ大阪、京都、せめて東京は!? 修学旅行だってあるだろ!? ああ、それにここは埼玉って言ってたよな? そのくらいなら」

「スマン、東京どころか県内の外にも行けん。行動できるのは、「麻帆良」の敷地内だけじゃ」

 

 怒る気力も無い、言葉も出無い。

 紀の口から魂の様な物が出てる気がした。

 

「そんな、俺ァまだ若い青春を生きる16歳だぞ? それが、その青春を? 青く酸っぱい三年間を、学校の敷地で?」

「申し訳無いが、そうなる」

「ああああ──―……」

 

 余りに惨め。立ち尽くす紀に、ナギ達はかける言葉が見つからなかった。

 そこで紀は気が付いた。

 

「おい! お前!」

「うぉ!?」

 

「そうだ、俺には仲間が居る!」紀は半歩ほど後ろに居た少女の肩を掴み揺らす。

 

「お前は良いのか!? このまま、このまま終わって良いのかあああぁぁ────ー!?」

「だあああ! おち、おちつ、っけ! 揺らすな! わかった、おちつけええええ!?」

 

 傍から見れば残像が見えるほど揺らされる少女、される方は堪った物では無い。何とか紀を引き剥がし、息を整える。

 

「うぅ、ちょっと酔った……くそ、良いも何も、こいつ等が「無理」と言う以上、無理だ」

「言い切れるのか!?」

「お前は知らんだろうが、この二人は一応高い実力を持つ魔法使いだ。その二人がそう言う以上、そう何だろう。試しに敷地外に出てみろ、弾き出されるかするだろうさ」

「ぬぬぬ」

「なにが、ぬぬぬだ。ふふん、かく言う私も名の知れた魔法使い、この『呪い』が解くのが難しいのは、かけられる時に理解したわ」

 

 自棄に自慢げな態度に腹が立つ紀である。

 

「……お前さっき一緒に驚いてたじゃん」

「う、うるさい!」

 

 取り繕うと格好は付かない。八方ふさがりとはこの事か、紀は100%以上の決定事項を見せつけられたわけだ。

 

「ま、まー何じゃ? 言うほどここの暮らしも悪く無いぞ? 施設は下手な都市より充実! 敷地内と言っても、この麻帆良の広さを舐めてはいかんぞ!」

「そ、そうだよなあ! おい坊主、ここは前向きに行こうぜ! ここの飯も美味いだろうさ!」

「その言葉は魅力的だが、今てめえ等の言う台詞じゃねー!」

「で、ですよねー」

 

 これ以上慰めの言葉を言ったとしても、焼け石に水。近右衛門は、一先ず二人を休める所に適当に案内させ、何とかこの場の収集を付ける事にした。

 

「くそ……三年、三年か」

「ええい、男がメソメソと嘆くな! 鬱陶しい!」

「お前には理解できんのか! この惨めな気持ちが!」

「やかましい! 私なんてな、青春を謳歌する前にこの身体にされたんだぞ!」

「……そういやお前吸血鬼だっけか、名前って何て言うんだっけ」

「何だ、言って無かったか? ふふ、よーく覚えておけよ? 私はな、『悪』の魔法使い、エヴァンジェリ」

「今日はホテルかな……ああ、けど外に出れないんだっけ」

「って、聞かんか貴様!?」

「悪い夢であってほしい……」

「聞けよっ!!」

 

 二人は漫才をしながら部屋を後にした。

 

 

 

「……行ったかの?」

「……行ったな」

 

 残った二人は盛大にホッとする。

 

「正直誤魔化せるとは思えんかったわい」

「けど付け焼刃だぜ」

「まあの。後々二人には、特に彼は最大限のサポートをせねば成るまい。確定ではないにしろ、世界の迷子と言って良い様な境遇にコレじゃ、申し訳なくて泣けて来るわい」

「だよな……言えるわけ無いよな」

「言えんじゃろぉ。『実は三年たっても『呪い』は解けない』なんて」

 

 何と言う事だろう、この二人、嘘を付いていた。

 

「お主が馬鹿みたいな魔力でこんな『呪い』使うからじゃ」

「だってこんな事に成るなんて思わねーもん!」

「……まあ、お主の事だから考えなしに使ったんじゃろうな、相手はあのエヴァンジェリンだったから理解は出来るが」

「そう、エヴァだけだったらなぁ、別に三年過ぎても誤魔化しようがあったんだが、良くも悪くも。うう、今に成って勉強をもう少ししとくんだったと後悔するぜ……昔の俺のアホ」

「今も、じゃろ?」

「うっせ! とにかく取りあえず三年の猶予を作ったんだ。何が何でも解除法を見付けて来る」

「本来ならお主もワシもオコジョじゃよ。しかしお主程の魔力が無ければ、あの『呪い』は解けん、頼むぞ」

「任された」

 

 

 

 *** ***

 

 

 

 暗い、もう日は沈んでおり、紀はそんな夜道を勢いよく走っている。暫くすると見えてきたのは、すこし彼には不釣り合いなログハウス。だが、紀は真っすぐにそこへ向かう。

 

「ただいまだ!」

 

 紀はやけに大きな声で、ログハウスの勢い良く扉を開けた。彼は目に見えて上機嫌だった。

 

「お帰りなさいませ、紀様」

「ああ、ただいま絡繰! エヴァは……ッエヴァは、居るか!」

 

 帰って来た彼を出迎えたのは、茶々丸だった。学校で来ていた制服では無く、メイド服を身に纏っている。呼び方も「先生」では無く「紀様」と成っていた。

 彼女は息を切らし興奮している紀の荷物を受け取った。

 

「マスターでしたら、今リビングに」

「そうか、ああ! ありがとう茶々丸!」

「ッ!!?」

 

 紀は徐に強く茶々丸を抱きしめた。感極まった故の行動のようだ。しかしそれをされた茶々丸は、無表情で顔を強張らせると言う器用な事をしながら、顔を赤くし頭から文字通り湯気が出るほどであった。

 

「じゃあエヴァんとこいくわ!!」

「……は、い」

 

 ビシッと固まったままの茶々丸の返事を聞くと紀はかけ足でリビングに向かう。

 リビングには、確かにエヴァが一人大きなソファーに転がってテレビを見て寛いでいた。

 駆け寄って来る大きな音に気が付き、エヴァは紀の方を向いた。

 

「騒がしいぞ、静かに帰ってこれないのか貴様は」

「んなこたどうでもいいんだよッ!」

「わあ!?」

 

 かけ足のままエヴァの転がるソファーに跳び移り、マウントポジションをとる。馬乗りをされる方は驚くのは当然で、エヴァは非常に驚いた。

 

「と、突然なんだ帰って早々に!? 早くどかんか!」

「スマン! だが朗報だぞ! 聞けよエヴァ!」

「はあ? 何だと言うんだ一体」

 

 興奮気味に語る紀に、一体如何したのかと思うエヴァ。

 

「実はな、今日の職員会議で、爺が今度教員が増えると発表したんだ」

「教員が増える? それだけか?」

「ああ、それだけ、それだけなんだけど違う! 教員の名を聞いた時、俺は叫んだね! 会議中でも爺に詰め寄って確認した、「本当か」ってな! 本当だった、マジだったんだぜ! 信じられるかよ!」

「うぅ、もったいぶるな、良いから続きを話さないか!」

 

 一人芝居みたいになる紀に、先が気に成るエヴァも興奮気味に紀をせかした。

 

「ああエヴァよ、聞いて驚くなよ、その教員はな、まだ子供、10に満たないガキンチョだ!」

「子供だと?」

 

 全く笑えん冗談だ。子供が教師とは、エヴァは「ついにあの爺ボケたか」と思った。

 

「子供が教員とはどう言う事だ?」

「そう思った、俺もそう思った俺も! けど聞けばそいつは優秀と言うし、学力は大学主席並らしいが、そんな事は如何でも良い! 良いか、エヴァ!? こいつ、そのガキの名前はネギ・スプリングフィールド!」

 

 紀が叫ぶ、する、エヴァも眼を見開き反応を示す。マウントポジションから脱出、紀の肩に手を伸ばし身を乗り出した。

 

「なに? も、もう一度、もう一度言え、紀! そいつの名前をもう一度言うんだ!」

「何度だって言うさ、スプリングフィールド、ネギ・スプリングフィールド!」

「スプリングフィールド……スプリングフィールドだと!? で、ではそいつはまさか!」

「そうだ、わかるだろう! あの『糞っ垂れ』のガキだ!」

 

 エヴァはその答えに、「おお……ッ」と声を上げた。紀はエヴァを思わず持ち上げた。まるで子供にやる様な、脇に手を回して「高い高い」をするようにだ。普段であれば、エヴァはきっと子供扱いするなと怒るだろう、しかし、怒る事も忘れてエヴァは歓喜の声を上げ、されるがままだった。

 衝撃だった。激しい衝撃。

 スプリングフィールド、何と忌々しくも、愛しく懐かしい名であろうか。紀はエヴァを持ち上げたまま部屋をグルグル回り、エヴァもワーワー歓声をあげた。そして部屋を一周するとソファにボフンと座った。

 

「野郎のガキだ、正真正銘な! やりようによっては、こんなふざけた『呪い』ともおさらば出来る!」

「ああそうだ、その通りだぞ紀! そうか、奴の息子か! …………息子?」

 

 ここでふと、エヴァは固まる。喜びでは無い、ある意味最も重大な事に気が付いたのだ。

 

「如何したエヴァ」

「……む、息子と言う事は、あれか? あいつ、なんだ、その……『ヤル』ことは『ヤッテた』、と言う事に」

「なるだろう、実の子だし、どう言っても奴は男だ」

「~~~~ッ!」

 

 今度は違う方向で声を上げる。むしろ、声にならない悲鳴と言って良かった。

 

「そんな、私達が縛り付けられてる間に? こさえた? 子供を? あいつが?」

「お、おい如何したエヴァ!」

「アーア、コリャ魂ヌケテルゼ」

 

 壊れた人形の様にうつろなエヴァを見て、横から奇妙な声が入りこむ。

 

「チャチャゼロ、こいつどうしたんだ一体」

 

 紀の向いた先、声の主が笑った。一体の人形が、置かれていたがその口からは声が流れる。チャチャゼロ、意思持つ人形だった。

 

「忘レタノカヨ? 御主人ハアイツニ恋シテタンダゼー?」

「おおッ!」

 

 そういやそうであったと納得する紀。目下エヴァは放心中。彼女の中では既に終わった恋だが、やはりショックはショックであるようだ。

 

「ドウスンダヨー、シバラクハコノママダゼ」

「……ふむ」

 

 紀は立ち上がり、エヴァをそのままソファーに転がした。転がされたエヴァは抵抗もせず、横たわる。

 

「腹減ったし、ほっとこう」

「ワーオ、無責任! ダガソレガイイ!」

「絡繰ーめしー」

「用意してあります」

 

 紀は去り、残されたのは動けぬ人形に壊れた少女、吸血鬼だった。

 

 

 

 ──―15年、15年だ。

 あの『糞っ垂れ』が言った三年間を過ごした俺達は、無事中学と高校を卒業した。

 だが、『呪い』は解けなかった。麻帆良から出れ無かった。

 騙された。俺達は騙されたんだ。元より『呪い』は解ける代物じゃ無かった。ナギはの野郎は、それを知ってこの魔法を使ったんだ。

 エヴァだけであったなら、ある意味問題は無かったろう。だが、問題は俺だった。

 巻き込まれた異世界からの一般人、清水紀。異世界から巻き込まれた男。理解は出来る。突然放りこまれた見知らぬ世界で、こんな『呪い』を事故とは言えかけてしまったのだ。解けないと如何言えようか。

 だが、それとこれとは問題は別だ。『呪い』は解けて無いのだ。

 怒り狂ったのは俺達二人。しかし、どれだけ文句を言っても、爺達には解除できないほどに高度且つ、馬鹿みたいに高い魔力で縛られた『呪い』だった。ナギは、俺達の『呪い』を解く方法を見付けると約束していたらしい。俺達は、それを信じて待つ他なかった。

 結果、歳食わぬ不死の吸血鬼であるエヴァは引き続き中学生を続けねば成らなくなり、たとえ呪いの効力で高校生活を続けても違和感を持たれないとは言え、俺は相応に年をとる。だから高校卒業後も外にも出れず、行く気も無かった大学に進学。そのまま勉強を続けた。一年、また一年と過ぎて行き、ナギはまだかと首を長くして待った。

 そして1993年、ナギは行方不明と成り、後に死亡したと発表。その知らせを受けた時、俺は大学三年生、エヴァは依然中学のままである。

 絶望以外の何でも無い、道は断たれた。その日、俺達は珍しく酒におぼれた。エヴァにしたら思い人を失ったのだ。そら荒れるってものである。俺達は、一生旅行にも行けない、旅行番組を見て「ああ、ここに行くならアレとか持ってきたいな」と考えて溜息を吐く生活。俺は高校の、エヴァは中学の修学旅行を二人揃って欠席し、土産の温泉まんじゅうを貰うだけ。教員になってからだって、修学旅行はもちろん行けない。

 ああ、一度でいいから土産物屋の木刀を買ってみたかった。「○っちゃん」や「B○SS」のパチもんのシャツとかハンケチ買ってみたかった。俺は中学の時、風邪で修学旅行行けなかったんだぞ。くそう。

 それでも、何とか俺が教師なんて仕事に着き、エヴァも一応は中学を続けられてるのも、まあ一重に爺の尽力ありきかもしれん。俺達、特に俺に負い目を感じているらしく、爺は俺には出来る限りの援助をくれた。普段はふざけた爺だが、感謝してる。だから、俺はずっと教師として働いている。まあ、悪く無い仕事だ。やりがいもある。魔法使いなんて奴等も多いが、俺は上手く接している。

 そんな事もあって、遠くには行けないが、まあ(あきらめとも言えるが)悪く無いんじゃないか、そう思った。

 そんな時、あの『糞っ垂れ』の子供が来ると来た。

 ああ、待っていたさ、この時をさ、来るんじゃないか、そう心のどこかで思い続けてた。子供だか何だか知らんが、とっとと来るが良い。

 親の「付け」は子供に払ってもらう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子供、ナギに、子供……」

 

 

 吸血鬼、哀れその恋、破れ去る。

 清水紀、希望を胸に、膨らます。

 

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