放置してた小ネタ(ネギま)   作:Par

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久々に過去データ漁ってたら見つけた黒歴史
P4にはまって「P4に近い世界観、オリ設定ペルソナ×ネギま」をやろうとして挫折したモノの出だしのみ


ネギまでペルソナなやつ

 

 

 ……これは、我々の知る世界とは少し違った世界の物語。

 奇妙な事件と、人の出会いの物語……。

 

 

 

 

 

 

 ──2003年 4月

 

 ……。

 …………。

 ふと……気が付くと、自分は何処かの店。内装から見て、小さな「喫茶店」に居た。人が入るには10人……いや、5、6人が限度だろうか。それ程に小さな店だ。

 しかし可笑しい。自分は今、入学のため電車に乗り埼玉へと向かっていた筈だ。

 ここは時間がわからないほどに暗い。記憶が正しければ、まだ外は朝。日が差し込んで無ければおかしいのに、窓からは日の光は入ってこない。それどころか、月明かりも無い。それなのに、不思議と違和感はない。むしろ、それも“ある種”の雰囲気を出しているかのように感じる。

 

「……ようこそ、ベルベットルームへ」

 

 焦りもせず、ただじっと立っていたが、突然声をかけられる。驚き声の方を見る。すると、いつの間にか店の中で唯一二人は坐れるソファーに人が一人、腕を組み、口元を隠す様に座っていた。

 

「おや……? これは、また珍しい“定め”を御持ちの方が来られた」

 

 座っていた男。正確な歳はわからないが、初老の頃だろうか? 閉じていた目をギロリと開け、こちらを見た。今にも飛びだすのではないかと思う様な眼球に、長い鷲鼻。不気味、と言えば無気味であった。それでも何故か恐怖は無い。

 

「はじめまして。私の名はイゴール……ここの主でございます」

 

 老人の名はイゴールと言うらしい。彼はマジマジと自分を見ている。まるで珍しい動物を観察するように、じっくりと。

 

「ここは夢と現実、精神と物質の狭間の世界……。そして、ここは何か“契約”を果たした人物が訪れる場所。しかし、貴方はまだ“契約”を果たしてはいない……と言う事は、貴方はこの先で、何か“契約”をなさる事になりましょう」

 

 イゴールが汲んでいた手を解き、そっと自分に席に座る様に促す。それに応じて、自分は彼の前にある一人用の腰かけに座った。

 

「そうですな……先ずはお客人の、お名前を教えていただきましょうか?」

 

 イゴールは心なしか愉快そうに名を訪ねた。何故、あって数分も経ってないのに彼の感情が読めたかはわからない。何となく、だった。

 ……名前。取りあえず、名前を名乗る。不思議と気合が入った。一言一句、間違えず答える。

 

「ふむ、“岸野 淳司”と言うのですな。……さて、では少し“占って”見ましょうか」

 

 イゴールがテーブルに向かい手の平を出し、横にはらう。するとどうだろうか。何も無かったテーブルに、突然何枚かのカードが虚空より現れた。長方形のそれは、タロットカードと思われた。タロットカードは、綺麗な形に並び、全てが裏面を向いている。

 

「“占う”のは、貴方の“未来”……占いは信じますかな? 何時も使うカードは同じである筈なのに、結果は変化し続ける。フッフ……まるで、人生の様ですな」

 

 彼は手のひらをクルリと、カードを捲る様に返す。すると、一枚のカードが捲られた。絵柄は……。

 

「ほう……? 近い未来、それを示すのは“塔”の正位置。どうやら、近く巨大な災難が貴方に起こる様だ。ふむ、さて……その先の未来は……」

 

 イゴールが再び手の平をヒラリと裏返す。そして、二枚目のカード。その絵柄は……。

 

「“刑死者”の正位置。試練、修行を示すカード」

 

 現れた二枚のカード。それをじっと見つめた後、イゴールが自分の方を向いた。

 

「どうやら、貴方は近い未来、“災難”を被り、大きな“試練”に立ち向かう事になるでしょう……。その“試練”はとても難しい、貴方にとっては大きな“選択”と言えるかもしれません。果たして……」

 

 イゴールは手を払い、並んでいたタロットを消す。元の何も無いテーブルのままだ。

 

「……貴方は近く何か“契約”を果たし、再びここに来られるでしょう。そして、貴方は迫る“試練”に打ち勝たねば、貴方だけでなく、大切な人の未来も閉ざされる事になる。私の役目は、お客人がそうならぬ様、手助けをするために居ります」

 

 “契約”。……果たして如何言った物だろうか? 

 それよりも、“災難”、そして“試練”。どうやら、幸先の良い学園生活とはいかないらしい。

 …………? 

 どうしたのだろうか、視界がぼやけてみて来た。

 

「どうやら、現実の貴方が眼を覚まそうとしている様ですな」

 

 現実……そう言えば、ここは“夢の世界”の様な物と聞かされた。

 

「……以前までは、一人、“共”が居りましたが、今は訳あってここを離れております。この場所も退屈はしませんが、貴方の様な訪問者が来るのは稀……詳しくは、また次にお話ししましょう」

 

 視界が真っ白に成って行く……。

 

「それでは、また次の訪れ、楽しみにしております」

 

 ……

 …………

 ………………

 

『埼玉ァ~埼玉ァ~……』

「……ッ!」

 

 車掌の特徴あるアナウンスが聞こえた。その声で目を覚まし、この駅が目的地だと気付くと棚から荷物を取り出し、急ぎ車内から飛びだした。

 危うく寝過ごす所だった。

 客が下りたのを確認して、自分が乗って来た新幹線は駅を離れて行った。

 ……落着いた所で、先程見た“夢”を思い出した。

 “夢”? それにしては現実味が……それも違うか。正に“現実”と“夢”の間の様な、不可思議な世界。あのイゴールと言う老人……。ベルベットルームか。

 何にしても、また自分があそこに行く事を仄めかしていた。“契約”を果たした時と言っていた。

 あそこがどう言ったところか知らないが、真実であれば、また行くのだろう。

 目的地まではもう少しだ。一先ずは、入学する学校へと向かって行った。

 

 

 ──数時間後 “麻帆良”

 

 麻帆良。それは日本きっての学園都市。小中高大、ほぼ全ての学習機関が揃い、世界レベルの頭脳、技術を持つ生徒に教師がいると言うどこかとんでも無い所だ。

 その麻帆良の高校に、自分は明日入学する。

 けど、実家はここで無く静岡。態々近場の高校では無く、県を離れここに来た。

 親は母一人。静岡で教師として働いている。父は母と同じで教師をしていたが、2年前、突然姿を消してしまった。ここ、麻帆良で。単身赴任で、ここの教師として父はここに来た。3年ほどの期間との事だった。だが、赴任してから半年後。父の行方が分からなくなった。今も捜索は続いているが、一向に見つかる気配はない。

 それが理由でここに入学を決めたと聞かれれば、きっと自分はyesと答えるだろう。だが、自分で父を見付けるとか、そう言う正義感とかじゃ無い。ただ、父が居た場所を見たくなった……そう言った事の方が大きかった。

 手にはここの地図。駅で置かれてた。地図が無いと迷う人も居るそうだ。まるでアミューズメントパークだが、ここはあくまで学園の敷地である。

 先ずは指定の寮へと向かう。ここに来る生徒の殆どは自分と同様で寮住まいが多いらしい。その分、寮の設備は凄い。これも麻帆良の凄い所。設備等が良いと言う理由でここに入学する人も居るそうだ。綺麗な大浴場に個室のバス。ネットは当たり前の様に繋がり、キッチン完備と、通常の学生寮では考えられない環境だ。

 周りを見渡すと、自分以外にも御荷物の若い交通人が多い。まあ、当然か。

 きっと、皆自分と同じ様にこの学校に来た人だろう。中には、クラスメイトに成る人もいるかもしれない。

 ややあって、寮へと無事に到着する事が出来た。

 寮暮らしに相部屋が多い中、自分は特別個室にして貰った。ここはある意味で常識に縛られない場所。希望を出し、条件さえ整えば数少ない個室をとる事は出来る。まだ何も無い部屋だが、三日後以降には実家から私物が送られる様にした。冷蔵庫ならあるので、それ以外のテレビ・パソコン等の電化製品が主である。

 カバンを床に投げ出し、ベッドに横たわった。時間は夕方。旅の疲れが出た様だ。今日は早めに寝ようか。風呂は、明日の朝に入れば良い。

 ……入学式は明日。果たして、どの様な学園生活を送れるのだろうか。ベルベットルームでの事もあったが、楽しみでもあった。

 一先ず、今は睡魔に身をゆだねた……。

 

 

 

 

 

 

 ──“??? ”

 

 真っ暗な世界。光はまるで存在しない世界。果たしてそこが何処かはわからない。が、その世界のとある場所、暗がりだが、何処かのバスルーム……だろうか? そこには、二人の女性が居た。

 何やら騒がしい。狭い空間で二人はお互いで激しく争っている。どうも、穏やかな雰囲気ではなかった。危機迫ると言うのか、一方の女性から、強い殺気が溢れていた。

 叫び声を上げ、片方の女性が自分の腕を掴もうとした女性を強く突き飛ばす。倒れ込んだ女性。それをチャンス見て、もう一人の女性は逃げだそうと駆け出した。暗がりの中、何とか一つの扉を見付ける。必死にその扉に駆け寄り、扉を開こうとした。

 しかし……開かない。何度も扉を引いても、ガチャガチャと音がするだけ。女性は力の限り扉を叩いた。薄い樹脂で出来た引き戸。もしかしたら壊せると思った。必死に叩く拳からは、ジワリと血がにじんだ。それでも、叩く。が、壊れない。開かない。

 開かない扉。混乱した女性の後ろに、倒れ込んでいたもう一人の女性が近付き女性を強く、掴んだ。

 

 ……闇に、一人の女性の悲鳴が木霊した。

 

 

 

 

 

 

 ──翌朝 麻帆良高等部校舎

 

 次の日の朝。自分は他の生徒と共に入学式に出ていた。麻帆良のウルスラ女子高等部との合同で行なわれる入学式は、広い運動場で行なわれた。

 ざわざわと生徒達が話している。新しく知り合ったルームメイト。元からの友人。他にも色々な経緯で知り合った人。そう言った人物と話しているのだろう。

 反面、自分は特に誰と話すと言う事はない。こうやって、他の人達の様子を見ているだけだ。まだ知り合った人間は一人も居ないのだ。だから、周りの人間を見ているしかない。

 

「静粛に、皆さん静粛にぃ~」

 

 教師の一人がざわつく生徒に静かにするように言う。その声を聞いた生徒達は、皆直ぐに静まった。流石に、初日から騒がす様な事はしないか。

 

「……はい、ではまず学園長先生からの挨拶があります」

 

 皆が鎮まったのを確認すると、教師が壇上から降りると、入れ替わる様に一人老人が昇る。

 その姿を見て、自分も含めてだが、静まっていた生徒が波状に驚きの声を上げる。学園長の見た目に驚いたのだ。何と言うか、まるで妖怪の“ぬらりひょん”の様な見た目だった。

 

「ふぉふぉ。まあまあ、落着きたまえ。ワシはこんなナリじゃが、人間じゃからね? 結構気にしてるから言わないでくれい」

 

 そうは言いつつ、学園長は長い後頭部をペシリと一つ叩いた。ドッと笑いが起きる。

 

「さてさて、笑いが取れた所で生徒の諸君。この度は入学おめでとう。今年もこんなにも素晴らしい生徒が入学してくれた事、ワシも嬉しく思っておる。中には、中学からそのまま進学した子も居るじゃろう。その子達はまた暫く宜しくの」

 

 “中学からそのまま”という言葉の意味は、麻帆良は基本的にエスカレーター式でもあるからだ。中学をここで過ごした学生は、特に難しい試験も無く進学が可能と成っている。

 

「特に難しい話をする気も無い。皆にはしっかりと学生としての責務を果たしてくれればよい。つまり……良く学び、良く遊び、良く育ちなさい。それが学生としての責務じゃよ」

 

 最後に「御清聴感謝、感謝」と言いながら一礼して学園長は壇上から降りた。

 長いスピーチを予想していたのだが、大変短いスピーチで皆心なしか嬉しそうである。

 その後は他の教師達の話や、生徒代表の挨拶があり、一時間程で入学式は終わった。

 

 

「いやぁー、学園長の頭スゲエなぁ。俺びっくりしちまったよ」

「俺は中学からいたから慣れたけどな。実は妖怪何じゃないかって言われてるぜ?」

「わかるわぁ~」

 

 教室に移動すると、クラスメイトと成った人と話す人が多い。女子は女子で、男子は男子で。其々グループを作っているのはとても学生らしかった。

 自分は窓際の席で、肩肘を着いて外を見ていた。

 

「しつれい、君」

 

 突然声をかけられた。声の主を見ると、丁度隣の席の男子生徒が隣に立っていた。

 

「あー……なにか?」

「いやなに、折角クラスメイトになったんだから、声をかけようと思ったんだ。先程からボウッとしていただけみたいだったしね。あッ、もしかして迷惑だったかい?」

「いや、そんな事は……ボウッとしてただけだからね」

 

 そう言うと、彼は「そうかい」と笑った。

 

「僕は山下慶一。これから三年、宜しく」

「自分は岸野淳司。宜しくだ、慶一」

 

 お互い握手を交わした。見た目中々な好青年の様だが、中々に熱い男の様に感じた。

 慶一は一度席に座り、色々と話し始めた。

 

「君は元からここに?」

「いや。今年からだ。実家は静岡でね」

「へぇ、そうなのかい? ここはエスカレーター式だからね、割と高校の新しい生徒ってちょっと珍しいんだ。他は殆どが中学からの友人さ」

 

 その言葉には頷ける。クラスの生徒達も、二人に一人の割合で“エスカレーター組”だからだ。

 

「かくいう僕もエスカレーター組。で、見知らぬ君に声をかけたってわけ。君は静岡から何故ここに? 目標でもあるのかい」

「ふむ、目標は特には……後は、設備が良いから、か?」

「や、疑問で返されても」

「けどそれ抜きでも良い学校と聞いたし、良い所に入れば自ずと目標も出来ると考えた」

「成程ね。ちょっと納得」

 

 そうこう話をしていると、扉が開き教師が一人入って来た。

 

「おっと先生だ。また後で」

「ああ」

 

 こそこそと、お互い姿勢を正して席に着いた。

 一先ずは、学園生活の本格スタートである。

 

 

 ──昼休み

 

 昼までの授業は、殆どがオリエンテーションの様な物で、生徒の多くは初めこそ真面目に先生の話を聞いてはいるが、途中からは船をこぎ出す者、配られたプリントに落書きする者、ペンを回す者等々、少し緩んでいた。

 自分はそういた人を見て暇をつぶした。自分で言うのも何だが、趣味が悪いかもしれない。

 

「確かに悪いな」

 

 話しを聞いていた慶一に言われてしまった。

 今自分達は学園の食堂に居る。初日とあって弁当の用意をしていた人が少ないのか、流石に多い。

 

「食券なんだな、ここ」

「そうさ。普通の店と変わらないよ」

 

 二人列に並びながら呟く。自分は「カレーライス」を、慶一は「日替わり定食」の食券を持つ。

 

「良かったのか? 他に知り合いと食べても良かったのに」

「他の奴等は今まで何回も一緒に食事をしたよ。けど、君は違うだろ?」

 

 にこやかに答える慶一。

 どうやら、自分は非常に良い友人を作れたようだ。

 

「そら順番だ」

 

 気が付くと並んでいた列が一気に進み、自分達の晩に来ていた。

 食券をおばちゃんに手渡し、それぞれ「定食・カレー・丼」と書かれ下がるプラ版の所へと向かう。

 

「食堂は他にもあるんだ。ここは基本的に全学生対応の食堂。僕も中学からずっと利用してる」

「食事充実してるのは良いなぁ」

「ああ、見てみな。制服が疎らだろう? あれはウルスラの。あっちは女子中等部のかな? 位置の関係で高等部の利用者が多いけど、こうやって他の所からも来るんだ。私服は大学生だろうね」

 

 慶一は自分が県外から来たと知ると、こうやってわかりやすく説明をしてくれる。“麻帆良では先輩”と言う事だかららしい。自分としても大変ありがたい。

 食事を受け取ると、開いている席を探す。が、どこも混んでいて開いていない。

 

「うーん……流石に直ぐは開かないか。知り合いでも居ないかな?」

 

 慶一はキョロキョロと見渡すが、どうやら知り合いは居ない様だ。

 まあ、昼休みなので、生徒もずっと座っている訳でも無い筈だ。のんびり探そうかと言っていた時だった。

 

「あの、すみません」

「え? あ、はい」

 

 ちょうど傍の席。四人席のテーブルに一人座る少女に声をかけられた。

 彼女も食事中で、テーブルには食べかけのサラダと食べ終えた食器が置かれている。

 

「席を探してる様ですが……?」

「ああ、そうなんだ。こうも混んでるからねぇ」

「あらやっぱりそうですか。あ、もしそちらが良ければここに御座り下さい。私と相席に成ってしまいますけど」

 

 そう言って少女は開いている三席を指した。

 

「え? いやぁ、けど……良いのかい?」

 

 慶一は少し言葉を濁した。まあわからないでも無い。本来四人座れる席であっても、一人でも座ってると不思議と座り難い。

 

「ええ。友人が居ましたが、先にクラスに戻ったので。私も直ぐに食べ終わりますし」

「あーどうする?」

「……いいんじゃないかな?」

 

 慶一がこちらを見て意見を求めたので答える。まあ断る理由も無い。ここは彼女の好意に甘えても良かろう。

 

「そうか。なら失礼するよ」

「はい」

 

 自分達は愛想笑いで席に着いた。

 早速食事を始めるが、何となく目の前の彼女の事も気になる。それは慶一も同じ様で、食事を口に運ぶ作業の中、偶にチラリと彼女を見た。それに気付いた彼女と眼が合うと、彼女はニッコリと微笑み返した。何と言うか、社交に慣れた感じだった。

 折角相席に成ったので、話題の一つでも出してみようかと思った。

 ……そう言えば、彼女の制服は、先程慶一が説明してくれた女子中等部の物だ。

 

「君は、中等部の子なんだね」

「ええ、そうですよ。今年から中学一年生です」

「へぇっ、落ち着いた雰囲気だから三年生位かと思っちゃったなぁ」

 

 慶一が若干驚いた風に言った。

 ……そう言われると、あまり気にしなかったが、中一の割には大人びているかもしれない。

 

「……ふふ、良く言われます」

 

 彼の言葉に肯定の意を示し、やはり優しく微笑んだ彼女。

 しかし、少し間があった様だが……。

 

「そちらの制服は、高等部の物ですよね? では、先輩ですね」

「はは、そうだね」

 

 ……まあ、気のせいだろう。

 暫くの間、三人で楽しく食事をした。

 

「あらあら? もうこんな時間だわ」

 

 ふと彼女は時計を見てそう言った。昼休みが終わるまで、残り15分程である。

 

「次の授業、外でのオリエンテーションだったわ」

「おや、なら早めに戻った方が良いね。すまなかったよ、なんか、引きとめちゃって」

「いえ、そんな事無いですよ? 先輩方のお話、とても楽しかったです。それでは、これで」

 

 一礼して去る彼女に、自分も慶一も手を振って見送った。

 

「……あ」

「どうした?」

「自己紹介とかしなかったなぁ」

 

 ……そう言えば、お互いに名前を名乗って無かったな。

 

「“縁”があれば会える」

「そうだな。次会えたら、改めて自己紹介でもするか。……っと! そう言えば僕達も次オリエンテーション外じゃないか!」

「っ!」

「ああ! まだ今日の日替わりのヒラメのフライ残ってた!」

 

 自分はカレーのルーが妙に残っていた。どうやらライスを中心に食べ過ぎたらしい。

 

「早く食べよう、残すのは勿体ない!」

 

 ……。

 こうして、二人で残りの食事を急ぎ食べ、教室に戻った。

 一気にかき込んだ昼ご飯は、若干重く。午後の授業は少し辛かった……。

 

 

 ──放課後

 

 初日の授業は早めに終わった。もう皆帰路につき始めている。

 

「淳司、君はこれからどうするんだい?」

 

 慶一に声をかけられた。見れば、彼は学生鞄とは別に、大きめのバッグを持っていた。

 

「あ、ああ。これかい? 胴着一式が入ってるんだ。実は今から“中国武術研究会”に顔を出すんだよ」

「中国武術?」

「そうさ」

 

 そう言えばHR(ホームルーム)で先生が言っていた。麻帆良学園は、希望があれば下級生でも大学や高校の部活やクラブ活動に参加できる。“中国武術研究会”と言うのも、その活動の一つだろう。

 

「実はこう見えて体術には自信があるんだ。けど僕の扱う武術が一般的じゃないからさ、クラブとか無いんでこうやって他の所に顔だして、ちょくちょく腕試しさせてもらうんだ」

「一般的じゃ無い?」

「うん。“3D柔術”って言うんだけど」

 

 …………。

 き、聞いた事無い格闘術だ。

 

「やっぱ知らない? 面白いんだけどなぁ……」

 

 溜息を吐きうなだれる慶一だが、何でまたそんなマイナーな格闘術を扱うのだろうか。と言うか、マイナーかどうかもわからないほどにマイナーだ。もう少し親しくなったら、それとなく聞いてみても良いかもしれない。

 取りあえずは、一度今日は帰る事にした。

 

「そうか。良かったら来てくれても良かったんだけど……初日だしな。ああそうだ、同じ寮だろ? 僕の部屋教えておくよ」

 

 慶一は自分の寮の部屋番号を教えてくれた。

 ……! なんと、自分の部屋の隣だった。

 

「えっ、隣同士! 気付かなかったなぁ……。あ、それじゃあの個室って淳司だったのか」

「昨日は来て直ぐ寝たから、お互い気が付かなかったみたいだ」

「みたいだな。ま、今日また会おうじゃないか。それじゃな」

 

 バッグを担ぐと、慶一は颯爽と去って行った。

 自分も帰るとしよう。折角なので、少し学園を見て回りながら帰る事にした。

 入学初日の新鮮さもあるが、麻帆良と言う場所は本当に凄い所だと実感する。歩いているだけなのに、まるで飽きない。

 桜通り何て言った名所みたいな道を歩きながら、春を感じてのんびりしていた。

 

「待ってよぉ~!」

「へっへ~! 早くしないと置いてくよー!」

 

 歩いていたら、脇の方を小柄の少女が二人駆け抜けて行った。少し驚いてしまったが、思わず駆けて行った落ち着きのない少女達に眼を移す。

 ……。良く見れば制服があの食堂での少女の物と同じものだ。

 しかし……今度は違った意味で中学生に見えない容姿だった。失礼だが、とても幼い。先程“小柄”と言ったが、その時は小学生が走っていたと思っていた。

 双子だろうか、とても二人は似ている。違うのは髪型ぐらいだ。道を駆けまわる二人を何となく危なっかしいと思いながら、見ていたが……。

 

「アウッ!」

「あ!」

 

 ……案の定、後ろから追いかけていた少女がこけてしまった。

 

「うぅ~痛いよぉ……お姉ちゃん」

「ふみか、平気?」

 

 こけた少女は眼に涙を浮かべていた。姉と思われる、少女が心配そうに近寄る。

 ……そう言えば、自分は“絆創膏”を常備している。それと、こう言った時に使う未開封の“ポケットティッシュ”

 

「大丈夫?」

「え?」

 

 恐らく、これも“縁”であろう。二人に近付いて、声をかけた。

 

「え、えっと」

 

 しかし、物騒な今の御時世。見知らぬ人に声をかけられると言うのは、例え相手が心配して声をかけたとしても少し焦るものである。あまり親身に成り過ぎると、損をする時代に成ってしまった。それでもやる事はやっておく。

 

「これ、使って」

「あ、これ絆創膏」

「もし嫌なら捨てて良いから……あ、けど最初にちゃんと傷を洗って、それとキトンと消毒してから使って。うん、それじゃ」

 

 渡すだけ渡し、とっとと歩きだす。

 姉妹は一瞬ポカンとしていたが、ある程度離れると。

 

「ありがとうございまーす!」

 

 と、二人分の礼が聞こえた。

 ちょっと照れくさかったので、振り向かず軽く手を振って帰った。

 風吹き、桜舞う。そんな午後。

 

 

 ──“淳司”の部屋

 

 夕方、と言うには遅い時間。腕試しとやらを終えた慶一が、部屋に遊びに来ていた。

 

「漫画みたいな事してたんだな、君」

「そうかもな」

 

 中学生の姉妹の話しをすると、今の様な感想を貰ってしまった。

 

「そっちはどうだった?」

「いやぁ~ボロボロだった、おはずかしながら。淳司来なくて正解だったよ。僕カッコ悪い所だけしか無かったし」

 

 慶一の顔には擦り傷がある。それ以外にも腕に包帯を巻いたりと、かなり激しく組み手をしたらしい。

 

「部長の子が強くてね、これがまた。その子は中学生何だけど、実力じゃ麻帆良でも上位なんだよ」

「中学生? どうも中学の子に“縁”があるな、今日は」

「まあ多いしね、中学の子もさ。それと、不思議と中学生を中心に変わり種が多い傾向があるし、この学園」

 

 よくよく聞けば、今年は特に面白い子が多いそうだ。

 初等部の頃から騒がれた天才発明家。彼が今日戦ったと言う天才格闘家。帯刀してる子。自費で寮の部屋を改装した子。色々と騒ぎのタネになる子が多いみたいだ。

 

「しかし、今日だけでもよくわかったんじゃないか。この、麻帆良の事がさ?」

「……そう、だな」

 

 勉強に成った。と言えるかは知らないが、ともかくは色濃い日ではあったのは確かだ。

 

「まあ明日からは通常授業。気張って行こうじゃないか」

「ああ」

 

 互いに「おやすみ」と言って、慶一は部屋から出て行った。

 時計を見れば、消灯時間が近い。風呂は帰ってから直ぐに入ったので、もう寝るだけだ。

 高校へ入学するからと、母に買ってもらった携帯を慣れない手つきで操作してアラームをセットする。PC等は使う方ではあるのだが、自分は割と“ロートル”な所があるので、精密機器の操作に慣れ無い。未だに、PCや携帯でのメールは使いこなせていない。

 そう言えば、“ロートル”とは元々中国語で“老頭児”と書くそうだ。ずっと英語だと思っていたが、意外にトリビアか。

 ……豆知識をセルフ披露した所で照明を落とし、布団にくるまった。

 ああ、良い夢が見れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 ──深夜 麻帆良市内 某所

 

 とある民家。その周辺には何台ものパトカーが止まっていた。

 音こそ今は出してはいないが、先程までは慌しい、民家の並ぶ通りには相応しくないサイレンを鳴らしていた。

 時折光るフラッシュは、現場を写真に収めているのだろう。

 警官達は家の内部に入り、現場検証をしている。そして、その指揮官と思われる中年の人物は、“血塗れ”のバスルームでいぶかしんだ顔のまま立ちすくんでいた。

 

「……これで“四人目”か」

「はい」

 

 中年の男の言葉に、その隣に立つ若い落着いた男が肯定した。

 

「こいつは?」

「ここの家主、三原知恵27歳。結婚はしてますが、現在夫の三原晃司とは別居中。ここには最近までは夫と暮らしてたようですね。で、その別居中の夫が第一発見者って訳です」

「突然連絡が取れなくなって、家に合いカギ使って入ったらこれか……まあ、あーも成るわな」

 

 現在その夫、三原晃司は気絶して病院に運ばれた。ショックの所為で、意識不明と成っているのだ。

 

「しかし、嫌なもんだな。死体にゃ慣れてるが、こう立て続けにこれはなぁ」

「ええ。上半身と下半身、綺麗に“別れて”まるでカガミから出て来てるみたいですよ」

 

 彼等が見る“死体”。それは、衣服を着たままの状態で、身体を美しく“分断”され、“上半身”が“鏡”から這い出る様に置かれていた。

 

「で、“下半身”は?」

「例によってどこにも。少なくとも、この家には無いでしょうね」

「チッ! ……一件目から“上半身”だけの死骸ばっか残しやがって……おい、運んでくれ。どうせもう何も出ん」

 

 男がそう言うと、数人の男達が現れ、知恵の“上半身”を専用の袋に包み、バスルームから運び出して行った。

 

「ふぅ……、三週間前から続くこの犯行。ま、同一犯だろうな」

「もしこれが模倣犯なら、この街は“■■■■”ばかりですね。ああ、私はこの街を逃げ出したい所存です」

「残念だったな。まだまだ付き合ってもらうぞ」

 

 一時この場を他の者に任せ、二人は外へと出て行った。

 

「しかし、“また”ですね」

「何がだ?」

「“鏡”ですよ。害者、常に真っ二つで鏡から這い出る様に置かれてるでしょう」

「ああ、たく、気味が悪いったらねぇ……」

「しかも、一つも証拠らしい証拠ないですね。指紋どころか、人が入った痕跡に、あれだけの惨状で現場以外に血の一滴も無い。“その場”のみで行われた犯行ですよ、まるで」

 

 その場で服を着替えた? 例えそれでも人が入ったと言う何か証拠や痕跡が無ければ可笑しい。だが、無いのだ。一切、人どころか、被害者以外の“何者”かが居たと言う痕跡が一切ないのだ。

 

「相手は“魔法”でも使ったのでしょうかね。それとも、“悪魔”の仕業か……」

「なら堂々と俺たちゃお手上げ出来るな。そんな奴が相手じゃ敵わんよ」

「そうですね。……ま、何にしても“魔法”なんてないですよ。“悪魔”の様な存在が居るのには違いませんが」

「……違いない。とにかく、夫の三原晃司が眼を覚ますまで、戻って状況整理だ。やれることするぞ」

「はい」

 

 二人は一台のパトカーに乗り込み、走り出す。夜の暗闇に、白黒のカラーが消えて行く。

 若い男が運転しながら思った。

「何故、全ての被害者達は、あんなにも“安らかな顔”だったのだろう」かと。

 

 

 




後書きと言う名のプロット語り

あんまメインにならないキャラを使おうとして、設定ばかり考えてやめたもの。文章も今見れば迷走してるけど、話としては当時好きで書いてた思い出。
一応物語は、残ってたプロットのデータとしては――

「2002年4月が少し過ぎた頃の事。主人公は新天地、埼玉麻帆良へと向かい、その土地に存在する大規模な学園「麻帆良学園」の高等部へと入学する事と成った。そこで一人寮暮らしを決める主人公。彼の入学した麻帆良学園の生徒の間では、ある一つの噂があった。「カガミの怪談」である。眉唾物と言う者あれば、真実と言う者あり。主人公達もその話に興味を抱き調べ始めるが、何と彼等は鏡の世界へと入り込んでしまった。そして、勃発する猟奇殺人事件。現在と過去未来が入り混じり、全てが逆の世界で奮闘する主人公達。徐々に広がる怪事件。主人公達はこれ等の事件が繋がってると疑い始めるのだが……。今、“謎”を追う一年が幕を開ける。」

――って感じにやろうとしてたらしい。

コミュとかは――

・エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル アルカナ・皇帝
チャチャゼロ(仲間予定だった)の住む家の主。やたらと高圧的な態度をとる。とある理由で遠出が出来ないらしく、ひょんな事から主人公に「お使い」を頼むに成る。

・龍宮 真名 アルカナ・節制
長身の大人びた生徒。麻帆良の龍宮神社で巫女をしている。神社で知り合い、困った事があれば“報酬”次第で何でもすると言って来た。

・新田 アルカナ・法王
麻帆良女子中等部の教師。学院の生活指導も担当しており、生徒からは「鬼の新田」と呼ばれている。何やら、自分の教師としての仕事が生徒にわかってもらえない事に悩んでいる様子だが。

――とか色々

ペルソナとかは、アステカ系をメインでやろうとしてた。


別にネギまに拘らず、オリ設定ペルソナでやってもいいかもな感じ。けど、前書きの通り当時P4にはまって「オリ設定ペルソナ×ネギま」やりたくなったものだから、やっぱその通りに書いてもみたい黒歴史
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