わたしはカミナリ   作:おぴゃん

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5『ファストフード・スローアライバル(上)』

 目の前の双子が目を見開き、顔を見合わせ、そして再びキョーコへと視線を戻すまで、歯医者の待ち合いにでも詰め込まれたような気分でキョーコは待ち続けた。

 油と塩粒に塗れた指を見て、ポテトの容器がすでに空であることを思い出し、どこへやっていいかわからず、それを空中でぶらぶらさせたまま、最悪の状況に備える。

 

 やはりよした方が良かっただろうか。

 キョーコの覚悟は早くもくじけていた。

 

 旧校舎の鬼の一件を改めて顧みれば、彼女たちにとって正体を見破られることは、トンデモなくマズいことなのかもしれない。

 

 ――――追ってきたら命はない。

 

 あの鬼にそう叩き付けられた時の怖気には、背骨を引っこ抜いて氷の棒を突っ込まれたような異質な雰囲気があった。

 未だかつて――――いや、一度だけあったか。あの「きさらぎ駅」で勇儀とキョーコを襲ってきた大狗が目に宿していたような、純粋な敵意が。

 

「オルガちゃん」

 

 マヤがわずかに身を乗り出してくる。オルガが、その横顔をうかがう。

 

「うん」

 

 最悪の状況――を考えて、キョーコは無駄と知りつつ身を固くした。

 疲れ切ったサラリーマンや塾帰りの学生、制服姿の男女でごったがえすファストフード店の、この席だけが、一秒と一秒との隙間にコンクリートを流し込まれたように鈍く時間が流れているような錯覚を覚える。

 

「な、なんか、よくない事、聞いちゃった、かな」

 

 止まる。キョーコはそう、感じた。

 時間が止まる。彼女の全神経が集中する先、マヤの唇。

 タイムラプスで撮影されたつぼみの開花じみて、形のいい唇が開ききるのを、キョーコは固唾が己の喉を滑り落ちていく音を聞きながら、待つ。

 

「あの、えっと」

 

 あぁ、地獄の門が開く。

 次の瞬間カミンスカ姉妹の口からは虹色のレーザーが吐き出され、余計な詮索をした小娘の頭を吹っ飛ばすのだ。無辜の市民たちを巻き添えに。そんな大罪を背負って死んだキョーコはきっと地獄行きだ。

 閻魔サマが説教好きで情に厚い美少女なんていう可能性は世の中曲り間違ってもあり得ないのですぐさま実刑判決だろう。そして身ぐるみはがされたキョーコは業火の前に並ばされ、筋骨隆々の世紀末覇者みたいな閻魔大王は嬉しそうに目を細め、地獄の獄卒に命じるのだ。

 

『こんがり焼いておくれ』

 

 と。

 

「ほらね?」

 

 しかし妄想の世界を驀進するキョーコの予想を裏切り、地獄門から吐き出されたものは余りにもトーンの軽い一言なのであった。

 

「思った通りお姉さまは珍しい方。でしょう?」

「そーだね。やっぱちょっとヘンだけど」

 

 じゅじゅじゅ、と音を立ててオルガがジュースをすすりあげると、その後ろ頭をマヤがひっぱたいた。いい音がした。

 

「いったぁ!?」

「オルガ、お下品。あと失礼」

「あ、あの。えっと」

「お姉さんの言ったとおりだよ」

「ボクたち、この国だと怪異とか。妖怪とか」

「そういわれる中でも特に鬼と、呼ばれるのが私たちなのです」

 

 なんなのだろうか、この肩透かし感は。

 

「はぁ」

 

 空気が抜けた風船のような気分で、キョーコは返事をする。すばやくテーブルの下を潜り抜けてきたオルガがキョーコの膝の上にどっかり腰を下ろしている。だっこの体勢だ。

 

「お姉さんみたいな鋭いヒト、たまにいるんだよ」

 

 そのままもしゃもしゃと彼女がキョーコの頭を揉みだすのにもロクに反応できないくらい、緊張の糸がほつれ切ってしまっていた。

 

「ちょっと、オルガちゃん」

「んー、待っててね」

 

 尚も額をもみもみされているキョーコには、彼女が何をしたいのかなんとなくわかる。

 

「わたしは鬼じゃないよ。たぶん」

「うーん。そうは言えども、お姉さんからはどことなくアヤシイ気配がですね」

 

 オルガはキョーコの角を探すことをやめて、あずき色のジャージの胸ぐらをつかみ上げると、ためらいなく鼻を押し付ける。

 奇行の連発にさすがに周囲の注意が集まりだす中、彼女の頭越しに、向かいに座ったままのマヤが目で謝った。

 

「お金ずっと握ってると手からお金のニオイするじゃないですか。あんな感じの」

「移り香です」

「そう。ウツリガ的なのがお姉さんからプンプンするんですよ。くんくん」

 

 鬼の移り香というものがあるのなら、キョーコにとって心当たりがありすぎるくらいあった。

 

「最近よく鬼に会ったからなぁ」

 

 全員が鬼と自称したわけではないが、明らかに尋常でない存在となら、かなり交流があった。

 

「たぶん、それだと思う」

「会ったって……どのくらい?」

「たぶん二人か三人くらい?」

「うひゃー、お姉さん、よく無事だったね」

「だよねぇ」

 

 言われるまでもなく、五体満足でこうしていられるのはキョーコ一人の力によるものではない。

 座り心地がいいのかキョーコは膝の上でうとうとし始めたオルガを抱いた。ひまわり色の髪からはシャンプーと汗の混じった甘い香りがして、キョーコは束の間サキ先輩のことを思い出す。

 

「ボク、重くなーい?」

「ん。だいじょぶ」

 

 妖怪とか怪異とか、難しい漢字を使って書くんだろうなってことくらいしか分からないが。きっと、彼女たちの温厚さは特別なものなのだろう。

 

「ごめんなさい。オルガちゃん、甘えんぼで」

「別に甘えちゃいないけど」

 

 いぢわるに笑って、オルガはマヤを見返った。

 

「本当はマヤちゃんもこうしたいくせに」

「お姉さまがメイワクがってます」

 

 双子の会話はキョーコの意識を素通りしていく。

 旧校舎に潜む鬼からの警告、そして、「きさらぎ駅」で大狗と影鬼たちから助けてくれた星熊勇儀のことを。

 

 そう、勇儀。

 

「ねぇ、君たち、星熊勇儀って鬼のこと、何か知らない?」

 

 何故この瞬間まで忘れていたのだろう。

 しかしキョーコの質問に、双子の鬼たちは「分からない」と言葉短く答えただけだった。

 

「そっか。そう、だよね」

 

 無理もない。カミンスカがどこの国の姓かは知らないが、ひょっとすると地球の反対側から来たばかりかもしれない相手である。

 ホシグマ、なんて風変わりな名前を知っている人間が一体この地球上にどれだけいるのやら、とキョーコは天井を見上げる。

 

「ごめんなさい。力になれなくて。ただ」

 

 そこで言いづらそうに口をつぐんだマヤがテーブルに視線を落とした。

 

「ただ、鬼が身の回りに集まってきたんなら、気を付けたほうがいいよ」

「気を付けるって、どういう風に?」

「わかんない。ただ、これから何が起こっても驚かないこと。かな」

 

 キョーコの胸元に頭を預けていたオルガが、ねむたそうな眼を薄く開いてマヤの言葉をつづけた。

 

「ま、ボクたちが言うなよってカンジだよね」

「そういえば、二人はどうしてK市に?」

「えっとね」

 

 むくりとオルガが体を起こし、テーブルの下に滑り込んでいった。そうして並んで座ったマヤがオルガと交わす表情には、はっきりと迷いが見て取れた。

 

「ま、大丈夫じゃない?」

 

 対するオルガは首をすくめて三杯目のコーラを注文したくらいだ。

 

「お姉さんがなんか知ってれば儲けものだし」

「そうね。そうなんだけど」

「そんなに言いづらいの?」

「というか、私たちですら妙な感じがするというか。現実味がないというか」

 

 キョーコもオルガも相変わらずの態度を保つばかり。

 やがて、観念したようにマヤはため息した。磨き込まれたテーブルに移り込む彼女の憂い顔が、くもりの中に消える。

 

「結構傷つくんで『何それ』みたいな顔しません?」

「しないしない。だって鬼とか妖怪とかヘンなのたくさん見てきたし」

「ヘンでゴメンね!」

 

 ふんだ、とわざわざ口に出したオルガがわざとらしく音を立ておかわりのジュースを一瞬で飲み干した。マヤはオルガの無作法についてあれこれ言うことはせず、コップの底の形にテーブルの上に残った水滴を撫ぜながら、やはりためらいがちに口を開いた。

 

「鬼の王様に会いに来たんです」

「鬼の、王サマあ?」

 

 思わず素っ頓狂な声を漏らすキョーコに「むぅ」とマヤが唇を尖らせた。

 

「ほら、やっぱりそんな顔するじゃないですか!」

「うーん。だってさぁ」

 

 鬼は乱暴で協調性がない生き物だ、と。当の鬼である星熊勇儀はキョーコに語って聞かせたものである。

 それを纏め上げる首領がいるのならよほどの変人か、乱暴者か、あるいは両方でしかない。鬼の王が君臨するというのなら、K市はとっくの昔に修羅の国と化していたに違いない。

 

「でもそいつ、確かに何十年も前からこの町にいるんだって。それに、そいつが生きていようが死んでいようが、それはボク、たち、の――」

 

 聞きなれぬ単語に、それ以上の掘り下げを試みることはできなかった。

 

「いらっしゃいませー」

 

 なんの前触れもなく『彼女』が入ってきた瞬間、明らかに周囲の空気が一変したからだ。

 かつ、かつ、かつ、と高らかに踵をタイルに鳴らし、明らかに彼女たちをめがけて近づく足音が、三人に自然と口をつぐませていた。

 

 か、つ。

 

 足音のペースが緩まるにつれ、キョーコの背後に向けられた双子の視線が、上がっていく。やがてキョーコの座るシートの背もたれにかけられた、細く、しなやかな指。

 

「あなた、T女の生徒さんですわよね」

 

 その指先に僅かな体重がかけられると、きゅう、と。シートは小動物の悲鳴にも似た音を発した。

 

「あ、はい。何でしょ」

 

 顔を上げれば、豊かな銀髪が藤棚の藤のように垂れていた。気づけば店は静かになっている。その理由がキョーコの傍に立つ女性であることは間違いない。巨大なトランクケースでも、見慣れない制服にでもなく。ただただ、その、月の光を帯びたような銀色に、言葉を発する機能を奪われてしまっていた。

 

「あ、あの。ガイコクの方ですか……?」

 

 なんとかキョーコが声を発すると、女性は碧眼を細めて微笑む。頭の芯が痺れるような、不思議な魅力というか、魔力があった。

 

「ふふ。やあねぇ。別に、カツアゲをしにきたわけではなくってよ」

「か、カツ、え?」

 

 シトラスのような爽やか香りは、香水だろうか。それとも、女自身の体から発せられるものだろうか。自然と香りの源を嗅ぎ辿ったキョーコは、不意に顔をしかめた。

 

「どうか、なさいましたか?」

「あ、いいえ。ゴメンナサイ。それで、どうしました? なにか、お困りですか?」

 

 赤茶く、錆びた異臭。

 それはキョーコが慌てて頭を振るうちに、柑橘の香りに覆い隠されていった。

 

「わたくし、どうやら迷子になってしまったようですの」

「は?」「まいご?」

 

 双子がこんがらがった視線を向ける先で、女はきまり悪げに顔をそむけた。

 

 ◆◆◆

 

 風間は下宿屋の門前に据えられた長イスに腰かけていた。

 駅前アーケードの遠い喧噪をBGMにはぐれ蛍のごとくタバコをふかす中年フリーターの顔は虚無的で、自嘲に歪む頬元にはバンソーコーが張り付けられ、鼻の穴には固まった血の染みたティッシュが詰め込まれていた。

 

「ちくしょう、また負けちまった」

 

 因縁抱える二つのチーム、『南町サンダース』と『西商店街カーディナル』の激戦は、泥芋を泥沼で洗うようなドロ仕合の末に大差を付けられたサンダースの敗北に終わった。

 

『あー、今日も負けちゃったー』

『帰りにケンジんとこ寄ってこーぜー』

『カントクー、早くスシ行きましょうよー、スシぃ』

 

 もとから、食い意地の張った子供エサで釣って結成したようなチームだ。試合後のマウンドで背中から怒気をスチームのように発散しているのが風間だけというのが、また敗北の虚しさを煽り立てた。

 

『カザマぁ、その薄汚れたドテラもそろそろ質に入れなきゃいけないんじゃないかぁ』

 

 帰り際にカーディナルの監督を務める八百屋オヤジに掛けられた一言が致命的だった。

 

『あ“ぁ!?』

『あ、カントクが怒った』

 

 鬼のような形相で風間が振り返ると、チーム関係なく子供たちがはやし立てた。風間がドテラを脱ぎ捨て、子供たちは乱闘(ほんばん)の予感にエキサイトする。

 

『おい、いぶちゃん!』

 

 しかし、その日は勝手が違っていた。八百屋のオヤジは応戦のために上着を脱ぎ捨てビール腹を晒すかわりに、ベンチに向かって顎をしゃくったのだった。

 

『はいよぉ、ボスぅ』

 

 ろれつの回らない声がベンチの奥の暗がりから放たれた。

 ふらりふらりとおぼつかない足取りでやってくるのは、最近ふらりと現れてカーディナルの助監督の座に収まった少女。子供たちは『いぶちゃん』と、彼女を呼んでいた。

 

『出番ね。出番。うっへへ』

 

 千鳥足が一歩進むごとに、酒の匂いがぷんと強くなる。

 カーディナルのマークが入った赤いキャップにスタジャンを身に纏った少女は、それまでひとまとめにしていた後ろ髪を無造作に解いた。その背は、風間の腰ほどもない。

 

『いぶちゃん、やるならボディにしときな』

『うん。分かったよ』

 

 現に風間の前にやってきた少女は、敵手の顔を確認するのにほとんど真上を向かなければいけなかったくらいだ。

 

『よろしくぅ。お手柔らかにねえ』

 

 それだけの身長差に物怖じする様子もない少女が、いっそう口角を吊り上げると鋭い鬼歯が真上の陽を反射してキラリと光る。底知れぬ強敵とのバトルの予感に、風間の体を武者震いが駆け抜ける。

 

『お、おう。いいぜ。俺は大人だから、優しくしてやるよ』

 

 いや、やっぱりブルっただけだったかもしれない。

 

 ◆◆◆

 

「草野球チームでプロの助っ人とかオトナゲないにも程があるだろうが、クソ」

 

 結局試合がコールドなら、乱闘も風間のコールド負けに終始したのであった。

 

「おーいて」

 

 結局フェイスもぶん殴られ、戦いがヒートアップするうちに騒ぎは商店街中に波及。両チームとも一か月の試合停止を喰らって帰ってきてみれば下宿屋の灯は消えており、案の定正面玄関の引き戸はミヨシらしくキッチリ施錠されている。

 

「むおおおお」

 

 それが力づくで開くはずもなく。体は疲れ果て、頭は困り果て。そんな状態で二階の自分の部屋を見上げて見れば、なんと窓の間に僅かな隙間があるではないか。

 

 ――おぉ、ここまで不運が重なればさすがにイイコトの一つくらいあるじゃねえか。

 

 なんて思って木製の壁を指先の力でよじ登り、雨どい伝いに窓を目指したまではいいものの、そこは築年数不明の下宿屋。

 雨どいは風間の浅知恵をあざ笑うような音を立ててアッサリ外れ、数秒後に目を覚ました風間は自分が干からびたカエルのような姿でアスファルトの上に伸びていることに気づいたのであった。

 

 そうして自分の部屋に戻ろうと思っても戻れそうにないので、風間は完全に考えることをやめた。路地裏のホタル族としてミヨシの帰りを待つだけのオブジェと化す道を選んだのだった。

 

 そんなこんなで日も高いうちに帰ってきたカザマが足元に吸殻山脈を築き上げるころにはとっぷり日も暮れていた。

 

 で、至る現在。

 ようやく路地の曲がり角からミヨシのつっかけたサンダルの足音が聞こえてきた時には一日の大半を使い潰していた。

 

「おい、ミヨっちゃんよぉ」

 

 待たされた苛立ちからついつい負け試合の怒りを彼女にぶつけるところであったが、路地の角から彼女が完全に姿を現すにつれて――正確には、彼女に肩を借りる形でここまで歩いてきたものが街灯の灯かりの下にはっきり見えてくるにつれ、それどころでないのが理解できた。

 

「その子、どったの」

 

 ミヨシは頭を振る。こんな時でも、彼女はかたくなに口をつぐんだままだった。

 

「おいおいおい、こんなんどこで拾ってきたんだって」

 

 尚も黙して語らないミヨシの隣で、それが大儀そうに頭をもたげた。

 燃える稲穂のような黄金の髪から、固まった血のかけらがぱらぱらと落ちる。

 

「よぉ。さっそくメイワクかけてるよ」

 

 謳うような、叫ぶような、不思議な熱を帯びた声だった。

 

「ヤバそうだな。代わるから、カギ、開けてくれ」

 

 カザマに頷いたミヨシが、氷細工でも扱うように、慎重に女の体を預けてくる。その理由はすぐに分かった。風間とも並ぼうというほどの身長にも関わらず、彼女の体は軽すぎる。足りな過ぎた、と言い換えてもいい。

 

「おねーさん、戦争でもしてきたのか?」

「……ハハ。そうだったかもしれないねぇ」

 

 眠たげに瞬きしていた女が、風間の軽口に力なく笑って咳き込む。

 本来その口元を覆っていたはずの右腕は肘先から鋭利な刃物で斬り落とされたようにすっぱりと失われ、残された左目だけが深い疲労を訴えかけてくる。腕の傷にも右目にも包帯が巻かれ、一応の処置はされているようだった。

 

「これ、ミヨっちゃんが?」

 

 血で指先がぬめるのか、鍵開けに苦心するミヨシから答えはない。

 ただ風間の素人目にも包帯の結び目は古く、ここまでのすったもんだで風間の鼻から吹っ飛んだティッシュ以上に、包帯に染みた血は黒ずんでいた。

 

(……こりゃ、どこの誰の仕業なんだか)

 

 口には出さず、風間は内心で吐き捨てていた。

 

「まぁ、ケガ人同士、仲良くしようや」

 

 女は見ただけで重傷であることが分かるが、「なんとかなりそう」ではあることも分かる。いつものペースに戻ってみせた風間が名乗ると、隻眼の大女も口元を緩めた。

 

「あぁ。よろしく。あたしは――星熊勇儀、ってんだ」

 

 風間の握手に応じようとして右肘の先がないことを思い出した勇儀が豪快な笑い声を漏らすと、丁度鍵を開けたミヨシが戻ってくるところだった。

 

 

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